パスティーシュ文学の走り
2019/07/20 08:50
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投稿者:Otto Rosenthal - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本の近代文学の揺籃期に生まれ、栄え、ひっそりと忘れられていった〈明治娯楽物語〉を、肩に力の入っていない文体で紹介しています。当時の大衆娯楽読み物の主役であった「講談速記本」の解説が興味深かったです。
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投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この題名だけでつい読みたくなりますよね。
国語の教科書に載ってた「舞姫」。女子から大ブーイングが起こった(笑)あの主人公をボコるんですよ。そりゃ読みたくなる。
実際、この本ではほんの数ページでしか紹介はされてません。
じゃーこの本は何なのか?って言うと、明治の娯楽小説についての解説です。
新しい時代を迎えて秩序もへったくれもなかった社会を反映して小説もグダグダだった面白作品が紹介されてます。
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『「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本』 これまでに読んだ中で、間違いなくいちばん長いタイトルを持った本は、明治時代の娯楽小説を徹底的に紹介する痛快な一冊。いやいや、これは楽しい。底抜けに楽しい。
このタイトル通り、森鴎外「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする小説が本当に存在したほか、鞍馬天狗が登場した大正13年の10年以上前に現れた覆面ヒーローの名が悪人退治之助(あくにんたいじのすけ)だったり、無敵のヒーローが死後仙人として登場したり、身長と肩幅の寸法が同じで馬鹿力を持ったヒーローが躍動したり、破茶滅茶度合いが半端ない。こんな小説を支持した明治人のセンスに敬意を表したい。
と言いつつも、本書の筆致は至極冷静で、相当な調査のうえ書かれたことがよく分かる。明治の庶民文化を伝える歴史書としても秀逸な出来になっているのがすごい。
この著者の名前は覚えておいた方がよさそうだ。
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近代的な物語の作法ができあがる前の「明治娯楽物語」がどのようなものだったのかを、実際の作品と共に紹介する。横田順彌「日本SF古典こてん」にテイストは近い。横田のは「SF」だけど、こちらは娯楽小説全般と広範にわたっている。
中に登場するお話の荒唐無稽さもおもしろいのだが、それを紹介する著者の視点がよい。単に「ツッコミ」視点で面白がるのではなく、当時の世相や文学史的な観点を説明し、なぜこの作品が受けたのかをしっかり分析してくれるのだ。
ここで登場する「明治娯楽物語」は、いわゆる「大衆小説」と呼ばれるようなジャンルが発展するにともない、消えていくのだが、個人的には戦後の梶原一騎作品や貸本マンガにエッセンスが受け継がれているのではないかと思った。ある意味では、オタク的感性の源流な気がする。そういうことを考えさせてくれる良作です。
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ぶっ飛んだタイトルに惹かれて手にとってみたけど、内容は堅苦しくなくむしりラノベみたいな感じで軽く読める(だが量が多い)。学術系というよりは、こんなぶっ飛んだ物語が売れた時代があったと紹介する本に近い。
今でもなろう系だったりと言った小説投稿サイトがあるのだから、明治から大正においても、有名じゃないけど一時すごい流行った物語があってもおかしくはない。もしかしたら文学系で研究をされてる本職の方もいらっしゃるのかも……?有名な人物が何度も登場したり、時の有名人が主役になったりっていうのは、現代でも小説に限らず漫画やゲームで多くみられる(FGOだったり……)。歴史は繰り返されるんだなーとか考えてしまう。
ぶっ飛んだ物語に驚き、笑いあり単純に楽しむことも出来る。とにかくぶっ飛んだ物語が多いので、深く考えない方が良い(
ぶっ飛んだタイトルにもなっている舞姫の主人公をボコボコにする話も、なんていうかすごいなって思ったし、妙に納得してしまった。
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明治時代の大衆むけ本の、おおおまかなジャンル分け、中でも
・明治時代を中心に、江戸から引き継がれてきた豪傑譚が……
・講談を軸にいかにして明治人の「合理性」を、駆け足で身に着けようとしている時代精神に合わせてきたか……
・大人むけから子供向けへの変遷が、昭和へと引き継がれた可能性の指摘……
など、興味深い内容でした。
ていうか当時から、トヨの野郎ムカつくわーぶん殴ったれって気風はあったのね。(でなきゃ、本書タイトルにあるような内容の本が、大衆向けに執筆されるわけがない)
本書を読みながら、マンガ『ゴールデンカムイ』、実はこの明治時代の犯罪実録ものや講談速記本の世界を再現しようと試みているのでは?とさえ思えてきて、明治時代を舞台にした他の作品を読むのが楽しみになりました。文句なしの星5つです。
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ポップなタイトルと軽妙な語り口ですらすらと読める、が、なんせ量がたっぷり!
更に、紹介された小説のほとんどが国立国会図書館デジタルコレクションで閲覧可能ということなので、これ一冊あればもう死ぬまで読み物に困ることはないのではなかろうか。助かります。
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本文を補強する身も蓋もなく魅力的なキャプション。以下、一例。
(p.29本文)
昔から海の家はあったし、女性は日焼けするのが嫌だったんだねぇといった文章だ。救命具や潜水眼鏡などの海水浴グッズも登場する。これらも目新しいものだったのだろう。流行りもの好き水陰の面目躍如といったところだ。なお、江見水蔭の姿だが、海水着の写真が発見できなかったため、相撲大会前にまわしを締め気合十分なものを掲載しておく[図3]。
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(p.29キャプション)
細い。(『[自己中心]明治文壇史』挿絵、昭和2年)(図3)
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舞姫の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本
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明治の物語についてツッコミを入れながら解説していてクスッと笑いながら読んだ。読んでいくうちに理解できて面白くなる。相手を梅干しにするというシュールな忍法が好き。楽しく読めた。
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明治時代の庶民のための娯楽小説を紹介する本。
言われてみると明治の小説って教科書でちらっと読んだくらいで、しっかり読んだ記憶がない。
様々なジャンルの娯楽物語を紹介しているが、文体は軽くふざけていると感じる人もいるかも。
でも、多くの作品を読み、背景を調べていることから文学に対する誠意と、愛情を感じる。
明治の娯楽小説、楽しめればそれでよしで、脈絡やつじつま等関係ないという潔さ。もうメチャクチャ。
とりあえず夏目漱石の「坊ちゃん」を読んでみようと思った。
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作る側も消費する側も、おでんのような粗悪な作品で満足しはいけない。
明治時代は信じられないほど急速に西洋文明を取り入れて発展していた時期であり、紳士はおでんを食べてはいけないと風潮が生まれ、煩悶し、苦悩する真面目で高尚な純文学があった。
このような時代でも、大衆文学誕生以前の粗野で稚拙な明治娯楽物語があったのだ。
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【生まれた時から市兵衛は横に広かった。父親・市左衛門のコメントは<オヤッ、妙な子が出来た、此奴四角張っている>であった】(文中より引用)
文豪たちの名作の陰に埋もれてしまい、今日に到るまで日の目を浴びることが(ほぼ)なかった明治娯楽小説。思わず笑ってしまう奇抜な展開や設定を追いかけながらも、そういった物語の数々が今日のエンタメにつながる要素を内包していた点を指摘した作品です。著者は、古本屋を巡りながらどうでもいい書籍を読み続けてきたと語る山下泰平。
電車の中で気軽にページをめくってはいけないほどに笑えて笑えて仕方ない作品。それでいて笑っているうちに、小説とは何か、物語とは何かといった大きなテーマにも近接していく稀有な一冊かと。
引用したい箇所がたくさんありすぎて困る☆5つ
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たまたま図書館の新着本で見つけて、タイトルに惹かれてしまい、つい。どんな本か、まったくわからずページ開いたのですが、すごい本でした。先ず、取り上げているテーマが新鮮。文学の歴史からすっかり零れ落ちている〈明治娯楽物語〉に光を当てています。それは、2019年の我々がテレビを見て、映画を見て、小説を読み、ゲームをして、最近では動画にハマっているように、明治の人々が「お楽しみ」として消費してきたコンテンツのこと。まだ坪内逍遥の小説神髄とか二葉亭四迷の言文一致とか知的活動としての文学以前、圧倒的に庶民の時間塞ぎとしてのエンタメの再発見です。それを現在、出版最大手の講談社の社名の由来のように、語り芸としての講談を速記する「講談速記本」、今でも続く、例えば週刊新潮の黒い事件簿の先祖みたいな「犯罪実録」、そしてヒーローものの原点のような「最初期娯楽小説」、この三つの方向から論考しています。音から文字へのシフトとか、新聞記者の小遣い稼ぎとか、初期映画からの影響とか、めちゃめちゃ多彩な視点から、エンタメの夜明けを解説しています。ものすごくクセのつよい文章ですが、それもクセになっていきます。〈明治娯楽小説〉が生んだ「子供豪傑」が日本のアニメヒーローに繋がり、アベンジャーズなのど舶来ヒーローとの違いになっている!とひとり合点したりして、楽しみました。そういえば、仮面ライダーのスタッフって東映映画の時代劇のスタッフだったとか。「光あるところに影がある。まこと栄光の影に数知れぬ忍者の存在があった。」これはアニメのサスケのナレーションですが、現在のエンタメの源流としての数知れぬ〈明治娯楽小説〉の存在を明らかにした本です。
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読まなくても人生に何の影響もない本。
個人的にはとんでもなく好きだし参考になる。あらすじ本で読み物として面白いの初めて?久々?(覚えてない)。
しかしこの本、おおよそ明朝体で書く文章ではない。(フォント厨
一次創作(マンガ書きラノベ書き)、独自設定多めの二次創作者、そういう作品が好きな人に読んでほしい。