紙の本
生きるのに不可欠な「逃避」という名の「休息」「充填」
2022/05/05 17:57
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:永遠のチャレンジャー - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書を読み始めた当初は、人間の精神面での防衛本能とその行動を肯定し、随分と人生に疲弊(疲労困憊)している様子の著者を、人生は辛さ苦しさの繰り返しだと諦念した“根暗人間”だと想像した。
創造(想像)力を要する作家特有の「漠とした」不安が為せる業か、女性につきものの更年期障害が不調原因なのか。副題で「特に深刻な事情」は無いと断っているから、うつ病などの精神疾患ではなさそうだが…。
敢えて「逃避」を用いずとも、「休息」や「気分転換」(リフレッシュ)、「癒し」「非日常感」「趣味・レジャー」「遊び」といった言葉で、人は何かしら心身の疲れを取り除くことを欲するものだ。エネルギーの「充填」(リチャージ)と言っても良い。
「名言」頁を繰るに連れて、著者への印象が変わった。赤裸々に(あからさまに)己の弱点(「逃避」志向)を吐露できるのは、本当は精神的にタフで、強靭な克己心の持ち主ではないかと思えて来た。オン・オフの切替えが実は巧みなのではないか。
裏付けを挙げると、「「人に意見を求めない」強情さが必要になってきます」(41頁)とか、「「何もしないでいることの大切さ」を忘れては、ぜったいに、ぜったいにいけません」(71頁)とか、自己判断や精神休養に重きを置く姿勢が顕著に窺える。
評者の私は、折節に自然美を観照し、禅哲の語録を紐解き、歴史上の人物のこぼれ話(アネクドート)・逸話(エピソード)に浸るのが好きだ。ぼーっと生きているとチコちゃんに叱られそうだが、無為の中に有為を見出だすのが人間だもの。
サナトロジー(死生学)の先駆者エリザベス・キューブラー・ロスの言葉が印象深い。「人生最高の報酬は、助けを必要としている人たちにたいしてこころをひらくことから得られるのだ。最大の祝福はつねに助けることから生まれる」(191頁)
吾を忘れて他人に尽くす様を仏教では「菩薩」行(利他行)と呼ぶ。「人」という漢字が支え合いを表象し、「人間」が「人」の「間」で生きる相互依存の存在なのだと実感させてくれる。
紙の本
人生を 生き抜くための 逃避かな
2023/01/26 23:17
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:清高 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1.内容
タイトルの副題になっている、「特に深刻な事情があるわけではないけれど 私にはどうしても逃避が必要なのです」という本。11のチャプターに分けて、作品の引用を元にした言葉が右の(偶数)ページに書かれており、その説明が左の(奇数)ページに書かれている。チャプター12からは展開がガラリと変わり、なぜ逃避するのかについての著者の見解が書かれており、チャプター11までのフォーマットも継続されている。ファイナルチャプターは、山口路子が感銘を受けた本に関するエッセイ。
2.評価
引用されている文章やその説明は、なかなか見ない見解なので、面白かった。ただ、筆者としては、p.86やp.92のように、賛成しないところがあるので5点から1点減らして4点とするが、生き抜く以外の、日々感じる嫌なことからの逃避に役に立つかもしれない。
紙の本
希望にもつながる
2022/04/12 08:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:マリコ - この投稿者のレビュー一覧を見る
逃避と相まっているけれども、そこから先にある希望についても言及した一冊だと思いました。たまに見返してみましょう。
投稿元:
レビューを見る
多くの本や作家たちの言葉があって、そこに出会いがあるという点でとても良かった。サガンは改めて読んでみようと思ったし、新しい作家への出会いも。
投稿元:
レビューを見る
帯の、「逃げなさい。」って文字に惹かれて、パラパラと開いたら、自分がいつも考えてるようなことを痛快に肯定してくれる言葉がいっぱいで、すぐに買って1日で読んだ。
仲間を見つけた感じ。いつも持っていたい。
投稿元:
レビューを見る
落ち込んでいたり、絶望している時に、逃避の言葉はどこか寄り添ってくれているような同情してくれているような気がするかもしれない。
この本は紛れもなくそのような本だが、心を前向きにしてくれる力がある。
副題に「特に深刻な事情があるわけではないけれど私にはどうしても逃避が必要なのです」とある。
僕自身、まさにその通りだったかもしれない。
励ましたり、鼓舞することだけが人を立ち直らせるわけではない。
この本には人間の心を深く見つめさせてくれる言葉が散りばめられている。
「逃避の名言集」とはいえ、現実をよく見て人生をいかにして生き抜くのか。
決して人生から逃げるということではないということがわかる。
最終章「それでも人生にイエスと言う」で心が昇華させられた。
最後に出てくる「生きるということは、ある意味で義務であり、たった一つの重大な責務なのです」
生きて行くうえで悩んだり、迷ったり、探したり、紆余曲折しているその人生はすでに、役割を実行している。そう思えるだけで救われた。
投稿元:
レビューを見る
逃げることは弱いこと、というのは幻想で、これは生きぬく力であり生命力。
この考え方にはとても救われる。
「この狂った世の中で狂わないでいることがおかしい。お金でしか価値をはかれなかったり、放射能をばらまいたり、嫌われたくなくて嘘ばかりついたり。そんな生物が
蔓延するこんな世の中を生きている。」
たぶん、私も無自覚なだけで、傍から見れば狂っているのかもしれない。
生きることに悲しくなったり、苦しくなったりするのは決しておかしいことなんかじゃない。人生の明るい面を見られる人でいたいけれど、それしか見ないということはしたくない。自分や周りの悲しみにも敏感でありたい。
投稿元:
レビューを見る
この手の言葉集みたいな本はだいたい書店で引き込まれて、でも実際読むとそうでもなくなるのだが、これは言葉の数々や筆者の視点に共感できることが多かった。
アナイス・ニンと大庭みな子の割合が多いが、読んだことがなかったので読みたい本が増えた。
投稿元:
レビューを見る
逃げてもいい、じゃなくて「逃げなさい。」と言い切る帯が良い。
ネガティブなイメージのある“逃避”を前向きにとらえる言葉のオンパレードで読むと気がラクになる。
いつかはその問題に立ち向かうつもりでいる。
だけど今は無理。
そんな逃げたい気持ちを仕方ないねと許してあげたくなる。
投稿元:
レビューを見る
琴線に触れるのは、たいてい大庭みな子さんの名言だった。書店で立ち読み程度のつもりが、思いの外良い読書体験をさせてもらって感謝。
生きているとどうしても納得できないことがあるけれど、それも含め人生で体験し得る全てのことが尊いと思わせてくれる一冊。すこし視点を変えるとこんなにもフッと心が軽くなるのか、と。そしてたまに自分の奥深くに潜って自分の感性とじっくり相談するのも良いものだなと思えた。
個人的にはヴィクトール・フランクルやロマン・ロランが引用されていてなんかグッときた。
どうでもいいけど著者山口路子さんと干支や星座が同じであることを知り、自分と近いところもあるのかなと思ったりした。
投稿元:
レビューを見る
逃避に限った事でなく、色々な場面で心に刺さる言葉が沢山あった。
自分では読んだ事の無かった国内外の作家さんのエッセイや日記が引用されていて自分でも引用元を読んでみたいと思った。その言葉が書かれた時の作家が人生においてどんな状況にあったかが詳しく記載されていて、より理解が深まるというか、共感する気持ちが強くなった。
なんとなく元気が出ない、このままでいいのかぼんやりとした不安がある方におすすめ。自分の心のぼんやりとした不調がどこから来るのかヒントが得られるはず。
投稿元:
レビューを見る
自由丁で出会ったSさんが繋がる本棚から選んだ本。
Sさんがたまたま開いて惹かれた頁をみんなで読んだ。
>貞操ばかりをみていると、ずっと大切なことを見のがします。
>貞操を失うことと魂の純血は関係ないのです。(坂口安吾)
わたしの魂は健全に生きていると思った。
投稿元:
レビューを見る
自分への嘘は致命的です
カラマーゾフの兄弟、読まなくては。となる。
その他気になる作品がいろいろ。
投稿元:
レビューを見る
表紙のサガンの名言に心惹かれて手に取ったけど、読み進めていくと、本当に「逃避」の名言なのかなあ…結構ファイティングポーズ取ってるよねえ…と思ってしまう言葉が多くて、期待していたものとはちょっと違った。
まあ、掲載されている名言それ自体には、励まされたり、考えさせられるものは多かったですが。
投稿元:
レビューを見る
言葉自体もよかったが、引用してきている映画やドラマも興味を惹かれた。言葉の解説ものっており、本来であれば言葉だけで良いとわかるべきなのかもしれないが、文脈があることでより真意を理解できる。もっと真意を理解するために引用された映画やドラマや小説を読みたい。