紙の本
最後は、あたたかい春
2019/12/10 20:28
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たあまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
上・中・下の3冊目。
あざやかなどんでんがえしがあるわけではない。
大きな謎の流れが見えてきたが、その細部が詰められていく。
最終的には、
重興君、よくがんばったね、琴音もよくがんばった、
石野の爺も医師白田もいとこの半十郎もよくがんばった、
と、ほめてやりたくなる。
多紀は幸せになれてよかったね、お鈴も明るくなってよかったね。
そんなふうに声をかけてやりたくなる。
さんざんおぞましい話を聞かされ、
恨みや呪いや怨念や、そういういやらしいものを見せられても、
黒幕は誰なんだ、という触れられない謎が残っても、
元には戻せない別れを受け入れても、
最後は、あたたかい春を感じて読み終えられる。
『この世の春』という題名の意味は、
冬のように暗くてつらい、この長い物語を読み終えて、
初めて理解できるんだ。
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宮部みゆきさんらしい良い物語でした。
早く結末を知りたい気持ちと、終わってしまう残念な気持ちがせめぎ合い、終盤は本を閉じたり開いたり落ち着かない感じでした。もう一度、ゆっくり楽しもう。
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しんしんと雪が降り続ける、どこまでも深く永い冬の夜。その夜が多紀をはじめとした登場人物たちの暖かさで少しずつ明け、そして春のあけぼのを白々と迎えるような。そんなイメージが読後に浮かんできました。
宮部さんの作品ではこれまでも度々、説明のつかない尋常ならざる人の悪意と、それに冒され消耗していく人々、というテーマが描かれてきたように思います。
今回の悪意も一応動機はあるのですが「それにしても、ここまでやるか……」と思ってしまうような説明しがたいものでした。そしてその悪意と、そこから生まれた闇は、一人の人間を完全に壊す手前まで追い詰めます。
そしてこの悪意や闇は、周りの人間にも影響を与えます。あのときああしていれば、という後悔。そんなことが起こるわけがない、という逃げ。信じてきたもの、尊敬していたものが突き崩される衝撃……。過去を知る人物たちの心は大いに揺れます。
闇を明かすためには、灯りを持って闇の中に飛び込み、そして灯をともしていかなければなりません。それは、自分が見ないふりをしてきた、あるいは見たくない闇すらも照らします。それは悪意を向けられた本人である重興も同じで、忌まわしい、恥ずべき過去の闇に自ら飛び込み、見たくないものを自ら照らしていく作業になるのです。
徐々に明かされていく闇は、底なしに深く感じられます。でもそれは、闇に立ち向かう人自身の勇気、その人を支える周囲の人間たちの勇気や優しさ、そして善意の証でもあるのです。結局のところ、人の悪意や闇に対抗できるのは、人が持つ明るい部分なのだということを、改めて強く感じました。
終盤の多紀と重興の会話の部分は、宮部さんの作品の中でも指折りに美しいのではないかなあ。このシーンを読んでいて、これまでの冷たい闇の部分が一息で吹き飛ばされるような感覚を覚えました。正直、ここまでの流れって少し冗長なところもあったかな、とも思うのですが、それも全てどうでもよくなるというか。終わりよければ全てよしというか。
あと、お鈴ちゃんも可愛かったなあ。自分がおじさん化してきたからか分からないけど、下巻のある一部分が、とにかく微笑ましくて「よかったねえ」と言いたくなりました(笑)
レビューを書いてるときに表紙を見ていて、ふと思ったのですが、下巻の表紙って初めは雪が舞っているように見えたのですが、これって桜の花びらも一部混じっているのかな? もしそうならカバーを描かれた藤田新策さんもニクいなあ。
底なしの闇と悪意に対し戦い続けた重興。そして多紀を始めとした周囲の人たち。彼らが灯してくれた、かすかな灯に導かれて、最後の光景にたどり着けたような気がします。自分を導いていくれた登場人物たちと、彼らを生み出してくれた宮部さんに、心から感謝です。
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再読。面白かった。
事件の謎は解けたが、藩の解体を防ぐために黒幕は追及せず。
しかし、重興の中の人格なのに、なんであんなに強いのか。
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宮部みゆきに嵌ってしまいました。「三島屋変調百物語」の新シリーズも出版され、後しばらく宮部作品から離れられません!
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「そういうことであったか!」の下巻。明かされた父君の行動の要因に救われました。
宮部みゆきさんの本は最後に救いがあって読後感が明るいのがうれしいです。読後心が軽くなっているところが好き。
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あっという間の下巻。
重興に迫る刺客を退け、多紀たちはその正体に迫る。重興も自らの過去と向き合っていく。
重興のことを大切に思ってくれるひとたち。そのひとたちが重興を深い闇の底から救いだしていく様子が、改めてひとはひとりで生かされているんじゃないと思い知らされました。
重興の妻だった由衣の思いが多紀の気持ちを後押ししたのは、なんか良かったです。由衣様へのやりきれない気持ちもあるけど。
藩の組織の併合への反対勢力は、現代の省庁の既得権益を巡る醜い争いにも感じられました。昔も今も、こう言ったひとの欲望は果てがないのだなと。
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感想を言うとどうしてもネタバレになってしまうが、最高のミステリ&サスペンスの時代小説。宮部ワールド全開
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超常現象モノかと思いきや、そうではなかった。
時代物で、解離性同一障害。
物事を大きく変えるのは大変なことだな。
どれほどいいことであって周到に用意をしても、誰かしら泣く人がいる。
しかし、幼子が犠牲になる話は、読んでいて気持ちの良いものではない。
呪の方法については、ちょっとカッコ悪かった。
お殿様までお面被って、一体なにやっとるんや。
宮部みゆきさんの描く、嫌な女、怖い女が本当に恐ろしい。
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謎が一気に解明されていく疾走感がいい。
飽きることなくまた、自分のはやる気持ちを抑えながら読み進めることができた。
『黒幕は、誰だ?』と疑問を持ちながら、『そういうことか』と納得せざるを得ない悔しさを抱えなければならない。
けれども読後、消化不良な気持ちにならないのが不思議だ。
本当に、多紀殿が幸せになって嬉しい。
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上中下巻通して、あっと言う間に読み進めてしまいました。
個人的にはハッピーエンドが好きなので、読後感はほっこりしてて良かったです。
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上・中・下巻を通して
この時代背景にこの設定…。面白くてあっというまに読んでしまった。恥ずかしながらあまり読んでいない宮部みゆき作品、ほかも読みたい。
個人的には田島様がいい味だしていてよかったなあ。
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謎が明らかになり、関わった人も先に進むことができるようになった。ただ、この先収まるの?
でも前に進む覚悟をした人々は、幸せになって欲しい。
でてくる女性は、皆強いね。多紀、お鈴、しげ、おごう、美福院、由衣の方。。。
お鈴を思う金一と多紀を思う半十郎。
その真っ直ぐな気性はすがすがしい。
陰惨な題材だが、暗くなりすぎずに読み進めることができた。
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途中から読むのが辛くなってきましたが、謎が明かされ、明るい終盤に繋がっていったので救われました。宮部作品ならではの、人に寄り添う温かい眼差し。清涼な読後感。幸せな時間でした。
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全ての謎が明かされ綺麗に物語が終わる最終巻。
物語の謎は背筋が凍るほど闇が深く残酷なものであり、抗いようもない人々が犠牲になっていた。
真実が明らかになるにつれ多くの人が後悔を口にした。あの時ああしていれば残酷な運命を変えられたかもしれないと。
しかし、重興は自身の過去を受け入れ、本当の重興となっていく。そしてその側に多紀がいる。読んでいてこれほど満足のいく結末はないと思った。