紙の本
切り捨てなければならないという選択
2022/05/31 15:25
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投稿者:みつる - この投稿者のレビュー一覧を見る
同著者の「神様のカルテ」とは一味違った、
「高齢者の医療に向き合う」話でした。
現実問題、超高齢化社会になりつつある日本ですが、
その現状を見事な切り口で描いている作品です。
第二章に登場する谷崎先生の
「山のような高齢者の重みに耐えかねて悲鳴を上げている、倒壊寸前の陋屋です。倒れないためには、限られた医療資源を的確に効率よく配分しなければいけない。そのためには切り捨てなければいけない領域がある。」104頁
この言葉に、祖母を看取った病院を思い出しました。
狭い病室に10人もの患者を無理やりつめこんで、
部屋には、オムツの交換ができていない人ばかりで、
ひどい尿臭がする。その中で祖母に
「少しでも何か食べてね」とは言いつつ。
こんな病院では食べるに食べれない。と思いました。
しかし、もう祖母も89歳、看取りの時と思われたから、
この病院に運ばれてきたのかもしれません。
最期に無理やり好きだったコーラを紙コップに半分入れて
飲ませました。結局、3分の1も飲めませんでしたが、
それでも、一口飲んで、笑顔になってくれたのを思い出しました。
病院は清潔できれいなところばかりではないことを知りました。
そうやって、どこかでもう「これは看取りだ」と判断されているのかもしれません。
しかし、そうしていかなければ、若い人たちを救っていけないのが現状なのです。その難しい葛藤を、研修医の桂先生と看護師の美琴が体験していく物語です。
神様のカルテのイチさんもチラリと登場?する、
神様のカルテにはない、新しい切り口の本でした。
紙の本
勿忘草の咲く町で安曇野診療記
2021/06/27 22:41
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投稿者:岐阜チャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
神様のカルテが好きで買いました。やっぱりすてきなお話です。
紙の本
いつか眼前に来る話
2019/12/12 06:22
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投稿者:sora - この投稿者のレビュー一覧を見る
母がいつも言うのは、「私は薬に負けるから死にかけたら治療しないで。
でも、あなたにとって親を生かすことが必要なら治療して良い」です。
いざその場になった時、母の意思を尊重して良いのか選べないでしょうが、考えなきゃいけないことだと思い出しました。
一止先生との出会いはいつかあるんでしょうか…。
紙の本
清々しさが漂う
2021/03/11 03:24
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投稿者:Pinokonokonoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
読んでくれと手招きしているような感覚になり手に取った。
読者に清々しさを感じさせる読後感も爽やかさを保った作品。
何年か前に読もうとして挫折した『神様のカルテ』にも再度挑戦してみたくなった。
紙の本
『神様のカルテ』と同じ爽やかな読後感
2020/11/14 19:13
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投稿者:makiko - この投稿者のレビュー一覧を見る
看護師3年目の女性と研修医1年目の男性医師の話。随所に折々の花が出てきて、主人公二人のひたむきな生き方と相まって、爽やかな小説でした。「花の美しさに気づかない人間を信用するな。そいつはきっと人の痛みもに気づかない奴だ」という部分に深く同意。
続きも出ると嬉しいなぁ。
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『神様のカルテ』のスピンオフのような作品。爽やかだが、テーマは重い。医療も転換期になってきているのかなと感じた。
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この話を読み始めたとき、有川浩さんの『植物図鑑』の冒頭、川端康成の引用『花の名を一つは教えておきなさい。花は毎年必ず咲きます。』という一節を思い出した。
長野の舞台の医療現場の話かぁ……。『神様のカルテ』と被るなぁ。でも、今度は看護師さんの話か。ふむふむ……
てな感じで読み進めていたが、『神様のカルテ』とは、明らかに違うテーマが書かれていた。
それは、『死』と向かい合う医療とはどういうものか、ということだ。
主人公は、看護師と研修医。どちらも若く、自分の『仕事』をこなすのに精一杯。ベテランの先輩の在り方を見ながら、自分達で考え、答えのない問題に、何らかの答えを出さなければならない案件に直面していく。
難しい問題なのに、日頃は、どこか遠くの話のように、それこそ、小説やドラマを見ているような客観でいた『死』や『老い』というものは、実は隣り合わせにあるのだと、重くないタッチで、切実に描かれている。
いろいろ考えされられながらも、楽しんで読めた。
あの人がちらりと気配を見せたときには、わぁ・:*+.\(( °ω° ))/.:+ってなったよ!
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「生」と「死」。
延命治療という選択が患者にとって、家族にとって最善な道なのか。
超高齢化社会と医療の限界。
高額な最先端の全ての治療を施して行かされる選択が、果たして患者にとって1番望む事なのか。
この本の全ページに日頃まだ「死」に直面する機会がない私に
見えない物、見えているけど考えない様にしている事が
たくさん書かれていました。
研修医、桂を取り囲む癖がある指導医達の
厳しい医療に対しての向き合い方。
また、その厳しさの中にある優しさと包容力。
「悩みなさい」そう·····悩む事を止めたら何も得るものが無くなってしまう。
何度も鼻の奥がツゥーンとした。
死神の谷崎の言葉が、とても重く·····ただ、現実にそれは間違っていなくて·····冷たさの中に谷崎本人が医者として悩み決断している姿が胸に残りました。
1人の研修医を育て上げていく谷崎や三島の指導の言葉に
何度、涙した事か。。
神様のカルテも凄く好きで似た感じではあったけど、納得いかない医療の現場の空気を「花」に絡めて伝えていくのは、花好きとして大変興味深かったです。
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終末医療を縦糸に、研修医と看護師というハードワークを横糸に、松本を舞台に描く恋の話。『神様のカルテ』の著者の作品ということで新聞広告を見てすぐポチる。『神様のカルテ』で描かれる医師にはベテランが多いが、本書では若い研修医、看護師が中心になり、医療とは、医療のこれからを考えさせられる。このシリーズも続くといいなと思う。『神様のカルテ』が好きなら必読。
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いやぁ、久しぶりに夏川小説のやさしさにどっぷりと浸りましたよ。
もともと信州も安曇野も大好きなので、その町で研修医として働き始めた桂先生の奮闘に心の底からエールを送りたくなりました。
いまや、どこの科に掛かっても待合室はお年寄りばかり。たくさんのお年寄りがあちこちの病院にかかり、たくさんの薬を飲んだり管を通されたりしながら長生きしている。それはある意味幸せな社会なのだろうけど、それを支える若者にとっては大きな負担でもある。
そういう医療が直面する問題や、人手不足に振り回される医療従事者のことをもっと身近に考えなければいけない段階なのかも。
そういうあれこれを、大上段に構えることなく描いているこの連作短編は安曇野のさわやかな初夏のようにすがすがしい。
登場する患者さんも、同僚たちもみんなが幸せな笑顔で明日も過ごせますように、と思わず祈ってしまいました。
それにしても真面目で不器用な桂先生の愛らしさたるや。
完全に美琴ちゃんに尻に敷かれますね。
一年後、一回り大きくなった桂先生と美琴の物語も読みたいです。
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これからの日本が向き合わなくてはいけない高齢者医療。どう生きるかだけでなく、どう死を迎えるかということも考えていかなくてはいけない時代になってしまったんだなぁと思いながら読んだ。もはや、何が何でも命を救えればいいというわけにはいかない。
今は、「死」というものが日常の生活から隔絶されていて、「死」というものを見なくても済むようになっているという指摘にそのとおりだなぁと感じた。
それにしても医療従事者のおかれている労働環境もきっと教育の世界以上に過酷なのだろうなと思う。患者の立場からしたら、主治医がいつもいてくれることに、やはり安心してしまう。きっと勤務時間外でも、様子を見に顔を出してくれると、ほっとしてしまう。ありがたいなぁ、いい先生だなぁと思ってしまう。でも、それで、その素敵な先生が倒れてしまったら困るのだ。
死神と言われようが、谷崎先生も素敵なお医者さんだ。きちんと研修医がなぜその処置をおこなったのかに、きちんと耳を傾ける人だから。価値観や考え方が違う相手でも、その人の話に耳を傾けられる人になりたいなと思った。心をやわらかくやわらかく、固まらないように。
はねっかえりの看護師の月岡さんや、日々に忙殺されずに、立ち止まって悩むことができる桂先生のように、"あなたになら、安心してお願いできる”そんな風に思ってもらえるような人になりたいと思いながらも読み終えた。
どうやら続きがありそう。そして、『神様のカルテ』とつながっていきそうなので、楽しみに待ちたいと思う。
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看護師の月岡美琴目線で進む話かと思いきや、研修医の桂正太郎目線もあり。やはり医者の話になる。新たな医者の物語で楽しい。とはいえ、
高齢者医療の難しさ。死と向き合う。いかに生かすかではなく、いかに死なせるかという問題。難しくて悩んで答えを出すしかない。
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地方病院での高齢者医療や経営を題材にした一冊。
看護師3年目の美琴と研修医1年目の桂を始め、会話は軽快。花の名前もたくさん出てくる。
そのためか、重い題材なのに、軽くサクサク読めてしまい、自分の中で戸惑いが生まれました。
認知症や寝たきりの高齢者への治療をどこまで行うのか、どのように考えるのか。
ままならないこと、納得いかないこと、様々な現実を目の当たりにしながら、二人は様々な個性のある先輩たちに揉まれて成長していく。自分なりの哲学を作ろうとしていく。
医療に正解はなくて、やれることすべてをおこなうことが正しいわけではない治療。家族の希望もふまえ、そのときそのときの最良の治療を行う。時には指導医に意見しても。
難しいテーマでしたが、この作家さん独特の優しい世界で溢れていました。主人公二人の今後も気になるところ。神様のカルテのあの方らしき方もちらりと登場。姉妹編になるのかな。
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考えることを放棄してはいけない。
どの本も心地よい気分にさせてくれる。特に最後のシーンは美しかった。読んでよかった。夏川草介さんリスペクト。
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快復した患者を送り出すのと同じくらい看取ることも多い地域医療の現場。超高齢化社会を迎える現代の日本は大きな問題を抱えている。登場人物の言葉を借りれば「山のような高齢者の重みに耐えかねて悲鳴を上げている、倒壊寸前の陋屋」なのだ。この重たい現実は親の看取りや自分自身の人生の終焉に必ず関わってくることなので、いろいろと考えさせられることも多かった。
地方の病院で働く看護師の美琴と研修医の正太郎。ふたりの視点から描かれるこの作品は、高齢者医療の現場の姿と、若いふたりのほのかなラブストーリーを、四季折々に咲く花とともに伝える物語だ。
正太郎はこの後『神様のカルテ』でおなじみのあの大学病院で研修することになるようだ。今回の物語ではニアミスに終わった彼と出会うことがあるのだろうか?次回作が楽しみだ。