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SFのSってサイエンスとは限らないかな?
2022/11/30 13:49
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投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
SFはサイエンス・フィクションの略とされるが、Sはサイエンスと限らないようになってきた現代。不思議だったり、切なさを含んだり。短篇なのちょこちょこっと味わえる。
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ベテラン作家たちの共演
2020/07/23 22:24
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投稿者:里 - この投稿者のレビュー一覧を見る
傑作選1はベテラン篇としての構成で(2巻は新鋭編)、全10編も収録されているが、書けるものだけ感想を。
「滑車の地/上田早夕里」
人類のたそがれそのものの、泥と薄曇り、襲い来る奇怪な泥生物の世界。自らを機械の部品に過ぎないと認める獣少女のパイロット、と背景はまるで逆だがこれは「リリエンタールの末裔」で青い空と海と白亜の海上都市を背景に描かれた、鉤腕を持つ少年の飛翔のイメージと重なる。
つまらぬ愚かさを超えて、鮮やかに未来へ飛行する「新しい者」。
同じ話だと非難したいのではなく、このイメージは好きなのでもっとやってもらいたい。できればその前に、この話の三村と一翔とリーアがどうなったのか読ませて頂けると嬉しいが。
「大卒ポンプ/北野勇作」
ちょっと変わっていますが、題名そのものの作品。なんだかわからなくて気になる方は読んでみましょう。全体に漂うブラック企業感、労働への底知れない徒労感、誰一人幸せでは無い感が現代日本人の共感をかき立てると思いますが、この笑っていいのか悲しむべきなのか戸惑う感じが味わい深い。
「海の指/飛浩隆」
もはや地球全体が灰洋(という、なんでも分解して呑み込む海)に囲まれ浮かぶ町のドラマ。え?なんでそんな場所が残っているのかって?それは本編を読んで下さい。SFを文芸として「清新で、残酷で、美しくあること」と定義した飛浩隆そのものの物語です。
いわれのない敗北感と意味の無い残酷さ、これは他の収録作品でも多く感じられ、10年代を総括すればそれはこうなるよね、とは思いますがちょっと悲しいのも事実。ここに書く事でもありませんが20年代は勝てるかどうかはどもかく、少しだけでも心優しい時代でありたいと、そう願います。
「怪獣キンゴジ/田中啓文」
ブラックジャック後期時代の手塚治虫画風に酷似の漫画を描き、それ故か文章でもどこかいかがわしさの漂う(すいません。もの凄く失礼な事を書いてます)作者のいかがわしさ全開!面目躍如の一遍。
怪獣好きの尽きせぬ欲望を見事に掬い取ってくれていて、燃えるというか、たぎる場面があるので怪獣マニアは必読と断言しておきます。
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2010年代SF傑作選1(ハヤカワ文庫JA)
著作者:大森望
早川書房
2010年代ベストセラーSFアンソロジー第1弾
タイムライン
https://booklog.jp/timeline/users/collabo39698
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最近出過ぎな日本SFのアンソロジー(^_^;読む方も追っかけるのが大変で正直ちょっと食傷気味ではありますが、それだけ日本SFに勢いがあるということでしょうから、喜ばしいと思うことにする。うん。
1は2000年以前にデビューしたベテラン中心、2は2000年以降にデビューした新鋭中心のラインナップ。とは言っても、古いSF者である鴨的にはどちらも十分「最近」感ありますなヽ( ´ー`)ノ
1はベテラン中心のラインナップだからか、流石の安定感。冒頭の小川一水から締めの長谷敏司まで、「あーSF読んでるなー」と充実感を持って読み進められました。
鴨的に既読は2編、飛浩隆「海の指」と長谷敏司「allo, toi,toi」。編者が解説している通り、それぞれの作者の代表的な短編を収録することを第一としてセレクトしたため、他の本と重複している作品もそれなりにあるそうです。それを勘案してもなかなかの読み応え。最近の日本SF入門編としてもオススメです。ただ、アンソロジーの宿命として、相性というか「好き嫌い」はそれなりに出てくるわけで、中には「?」って作品もあります。が、それはもぅ本当に相性というしかないかな、と。
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再読が多い。
『滑車の地』上田早夕合、『アリスマ王の愛した魔物』小川一水 は安心して読めるな。
『allo,toi,toi』長谷敬司 はやっぱり衝撃的。
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やべえくらい文字通り傑作選。
小川一水「アリスマ王の愛した魔物」 ★★★★★
• 似たような設定の小説を読んだことがないと言う意味でもすごい。物語は「むかしむかし…」で始まるが、いつの時代のどこの話かは不明。
• 数学に魅せられた小国ディメのアリスマ王は、従者の助言に従い、算廠(さんしょう)という大規模な計算機関を建て、あらゆる可能性を計算し、他国をどんどん征服していく。
上田早夕里「滑車の地」 ★★★★★
• 地上が冥海という泥海に覆われている時代。地下には地下帝国があり、人類はそこで繁栄している。地上で暮らす人間は貧しく、また泥に潜む人食い生物に怯えながら暮らす。泥海から突き出した塔に人類は住まい、塔から塔に渡されたロープを滑車で移動する。地上暮らしの人類は新たな大地を求め、飛行機を創る。
• 奇怪でありつつ、どこか美しさのある描写が上田早夕里らしい。
田中啓文「怪獣惑星キンゴジ」 ★★★★★
• 怪獣が暮らす惑星でジュラシック・パークの如く、怪獣を呼び物とするテーマパークがある。一番人気のガッドジラに人の脳を移植したヒューマジラが何者かに殺害された。探偵グレーが自らヒューマジラとなってその謎を追う。
• おバカなSFかと思いきや、結構なシリアスミステリー展開で、最後まで飽きない。
仁木稔「ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち 」★★★★☆
• 妖精と呼ばれる人工生物が街中で仕事をしている。妖精に対する反応は人それぞれあり、妖精容認派(推進派と保護派)や撲滅派などがいる。残虐な撲滅派ケイシーが主人公。感情移入できない(共感できない)キャラクターを主人公とするのはなかなか珍しい。
北野勇作「大卒ポンプ」 ★★☆☆☆
• 軍の秘密実験によって人間ポンプにされた人が地下で排水を吐き出し続けていたが、その人が脱走した。みたいな話なんだが、その発想はなかなかイカれているが、結局「なんの話やねん」感は拭えない。
神林長平「鮮やかな賭け」 ★★★☆☆
• 地球外知的生命体ならぬ、超世界的生命体がこの世界を仮想的に作り、すべての人類も仮想である、というような設定の中で、その生命体の化身であるオバアとの賭けで勝負をすることになる私。
• 設定は面白げなんだけど、どうも展開が今ひとつだったような。
津原泰水「テルミン嬢」 ★★★☆☆
• 能動的音楽治療を受けた眞理子は、体内にミジンコと呼ばれる超小型機器を組み込んでいるが、由利夫から発せられる波動らしきものにだけ共鳴らしき反応をしてしまい、アリアを歌い出してしまうという。この謎を解明するべく、学者共々研究をして…みたいな話。
• SFらしい謎理論をしっかりと組み立てつつ、ロマンチックな展開もありつつ、結局のところこれはなんだったのか感で終わる。(「五色の舟」が強烈だっただけに期待しすぎてしまったか)
円城塔「文字渦」
• またもや理解を超えてきた…ちょっとこれは評価を保留して再読しよう。
• 世界遺産でもある始皇帝の墓陵と数千体の俑(よう)。あの世界史の資料集で見たやつだ。俑作りの天才(そのまま俑と呼ばれていた)と、始皇帝・嬴政の物語。
飛浩隆「海の指」 ★★★★★
• 21世紀に存在した世界はことごとく、消滅しており、いま世界は灰洋(うみ)で覆われている。世界には1000万人ほど人類が生存してるらしい。
• 「海の指」が発生すると海から様々な物語が押し寄せてくる。海に音を当てることで海に沈んだものを引き寄せられる。ある時、大きな海の指が発生し、町を飲み込む。かつて死んだ昭吾が灰洋から現れ、志津子を狙う。
長谷敏司「Allo, toi, toi」★★★★★
• 小児愛者チャップマンにITPを埋め込み、更生しようとする。「好き嫌い」という感情の本質について
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大森望氏による序文を初めに読んだから、という先入観も多少あるかもしれないが、もちろんすべてがここ10年以内に書かれた作品であるにも拘らず、全編を通してどっしりした、どこか懐かしささえ覚えるようなヴェテラン感に満ちたアンソロジーだった。
上田早夕里氏の「滑車の地」には、椎名誠氏の古典的名作「水域」の系譜に連なっている様が見られたし(さらに辿ればオールディスの「地球の長い午後」だが)、あるいは飛浩隆氏の「海の指」も深層の出発地はその辺りにあるのかもしれない。
仁木稔氏「ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち」は、未読の連作集に手を伸ばす動機に大いになり得る魅力がある。
掉尾を飾る長谷敏司氏の「allo, toi, toi」については、SFの括りに留まりながら古今問わずに普遍的かつ根源的な命題に迫っており、その意気も含めて読み応えは充分だが、如何せんその言語化が著者のみに深い理解が可能であるような書かれ方に見え、不特定多数の幅広い読者が共感できる語彙を選択すればなお良かったのに、とちょっと残念。
設定そのものからしてイロモノ的な田中啓文氏「怪獣惑星キンゴジ」も面白く読んだが、「星間旅行や移住が可能な時代に、監視カメラが暗闇では映像を撮れないっておかしいいやろ!」と真面目にツッコんでしまったのは無粋か(笑)?
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流石、最新SF集
現時代に判明している、そこから想像、創造される世界
崩れ去る世界
近代のSFを読んだことがなかったので、驚きの世界だった
アリスマ王の愛した魔物 小川一水(オガワイッスイ)
語り部が語るおはなし
滑車の地 上田早夕里
なぜー?!!その終わり方ー!!!
怪獣惑星キンゴジ 田中啓文(タナカヒロフミ)
なぜー?!!その終わり方ー!!!パートツー(笑) これは… 解明される日はくるのかっ?!!
ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち 仁木稔
★★★★★
大卒ポンプ 北野勇作
★★★
鮮やかな賭け 神林長平(カンバヤシチョウヘイ)
オバアと私の賭け
テルミン嬢 津原泰水(ツハラヤスミ)
能動的音楽療法
文字渦(モジカ) 円城塔(エンジョウトウ)
秦の始皇帝の陵墓から発掘された三万の漢字。
海の指 飛浩隆(トビヒロタカ)
灰洋(うみ)に完全に支配された地球
志津子と和志、元旦那の昭吾
allo,toi,toi 長谷敏司(ハセサトシ)
性犯罪者の矯正機能をもつ脳に埋め込む機械のモニタリングに選ばれた、小児生虐待者で終身刑で収監されているチャップマン
最後は後味の悪い感じ(嫌な作品という意味ではなく)
ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち
「… 多年にわたる観察と研究から、彼らは次のように結論付けた。
人間の行動原理は、欠乏の充足である。暴力は欠乏を埋めるための最も短絡的な手段だ。欠乏の根源をなすのが、自尊心である。他と対等であることで満たされる者もいるが、他より優位に立たねば満たされない者は多い。だから暴力はなくならない。…」
「誤信念は自尊心の欠乏と結び付いている。如何なる反証も受け付けない…」
“不適応者”を排除する
攻撃性の低い(他と対等であることで満たされる者)個体だけを、選択的に交配する
誤信念にしがみ付き続ける攻撃性の高い者は、次世代に遺伝子を残すことをできなくし、
不敵者廃絶する
ドミトリ・ベリャーエフ
ロシアの遺伝学者
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%9F%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%BB%E3%83%99%E3%83%AA%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%82%A8%E3%83%95
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時間に余裕ができたことから、これまで積読だった本を積極的に読み始めた。特に、若い時に熱中していたSF小説を中核として、推理小説・科学系新書も時々織り交ぜている。
専ら、所謂SF第一世代中心、若い方は梶尾真司までというスタンダードなものが中心だが、第一世代で存命なのは筒井康隆なので、新作に触れる機会が激減している。
そこで、最近のSFは一体どういう状況、どんな作風のものが流行しているのか調査をしようと考えた。本書は最近10年間の著書のアンソロジーと言う事で、情報収集には全く以ってうってつけの本と言える。
最後まで読むのははっきり言って苦痛で時間もかかったが、何となく最近の流行りが判ったような気がする。この作家なら集中して読み込んでいこうという作品は無かったが、もうちょっと調査は継続していこうと思う。焦らずマイペースで出会いを求める予定。
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2010年代SF傑作選2部作の「1」は若手編とのこと。正直、ちょっと期待してたのと違って、なかなか読む速度が上がらない収録作品が多かったけど、多様な作品が読めて、気になる作家さんが見つけられれば丸儲けかなと。
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小川一水「アリスマ王の愛した魔物」★★★
上田早夕里「滑車の地」★★★
田中啓文「怪獣惑星キンゴジ」★★★
仁木稔「ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち」★★★★
北野勇作「大卒ポンプ」★★★
神林長平「鮮やかな賭け」★★★
津原泰水「テルミン嬢」★★★★
円城塔「文字渦」★★★★
飛浩隆「海の指」★★★★
長谷敏司「allo,toi,toi」★★★★★
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アリスマ王、鮮やかな賭け、文字渦、海の指は以前読んでいたが、全部ひっくるめて素晴らしい作品ばかり。まさにベスト級の面白さ!初読みの作家もいたので、読みたい本が増える増える。伴名練の飛浩隆でのまえがきで、「零號琴」前日譚の書き下ろし長編の2020年刊行の予告に対して、「俄かには信じがたい」の一文にはちょっと笑った。
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2010年代に発表されたSF作品のアンソロジーの1巻。1巻には2010年以前にデビューした作家の10作品を収録。
「滑車の地」
終焉がすぐそこに迫っているかのような世界。限られた生活圏で暮らす最後の人々を描く。諦観の中にほんの少しの希望が生まれたかのような瞬間に、襲ってくる絶望。どんな状況でも、人間は自分でなすべきことをするべき、という読後感かな。全体的に暗いのだけど、もしかしたら未来は明るいのかも、と思ってしまう。
「大卒ポンプ」
この世界の裏側にあるものを知っているか?という口上で語られそうな怪異を経験した青年の物語。世界の根幹に関わるような大きなものでないけども、個人の世界に楔を打ち込むには十分な出来事。理解できないものとの共存。それを知らない過去と、知ってしまった現在。それでも、変わりはしない日常。
不安定な気分にさせるのだけど、その連続が安定になりつつある。何かのきっかけで、踏み外しそうな安定だけど。怖さがあるけど、馴染んでいる自分もある。
不穏な気持ちになりました。そして、これが心地よい。
「海の指」
この世界観の短編は、他にもどこかで読んだ記憶がある。他のアンソロジーかなぁ。
この世界観は好き。「滑車の地」と同じく諦観と絶望があるように思えます。希望がどこにあるのかと問われたら、世界でなく人の心の中か。情がこわい世界。
どんな未来を迎えるのかはわからないが、この世界をぶっ飛ばしてしまいたい、という感情があるから好きなんだと思う。自分の中に。
2010年代ベストSFアンソロジー。収録されている「アリスマ王の愛した魔物」「ミーチャ・べリャーエフの魔物」は積読になっていました。
なんだかなぁ。欲しい本買う時って、収納や積読考えないで買うのだけど、こういった出会いをすると、考えものだなあ、と思ってしまう。
そうはいっても、見つけたら一期一会なので、買ってしまいます。読みたい時が買いたい時。見つけた時が読みたい時。
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素晴らしい作品ばかりでした。日本のSF作品はほとんど読んだことがなかったので好きな作家さんが増えてしまった。この当時のSFだとファンタジーやラノベやゲームなどと重なる要素が多いのかと思ったが、そんなことはなくてしっかりとした作品ばかりです。
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――
1のレヴューしてねぇじゃん。
表紙の名前を見れば満足、と云えるくらいのベスト・オブ・ベスト。1巻はベテラン勢揃いということもあって、質実剛健。現代の日本SFのメインストリームを感じることができる格好のガイドブックになっていると思います。
SF何読めばいいかなぁ? というひとは取り敢えずこれを読みましょう。そして気に入った作家の短編集へ、長編へ、誘われていくとよいですよ。さぁさぁ。
やはり一番のお気に入りは小川一水「アリスマ王の愛した魔物」。SFでありながらどこか御伽噺のような、けれど仄暗い怪しさも持っている千一夜的な、あらゆる物語の要素を持った傑作のひとつだと思っている。
上田早夕里「滑車の地」も鮮烈で、飽和しそうなくらいの世界観の中に現代と変わらぬ、変わりたくない生命を描く良作。
神林長平「鮮やかな賭け」。スピーディに入れ替わり、落着したようで展開する、まるで空戦をみているかのような筆致は神林節、と云えるのでしょう。雪風のイメージ強すぎィ。
円城塔「文字渦」は、個人的には文字“禍”の表記のほうが合っていると思っているのだけれど、ともかく表題とする短編集をレヴュしているので気になる方はそちらをどうぞ。
飛浩隆「海の指」も、モチーフこそあまりにはっきりとしているけれど、その中にこそある残した者、残された者の情感をSF的技術に依ることで繊細に書き出していて名作。これぞSFの役割、と思う部分もある。
流石さすが、と何度云っても足りないけれど、一番の流石、はこれらを一冊にまとめてくれたことだと思います。
ひとに本を貸すのが苦手なわたしのような人間には必携。何冊か持っていてもいい。
☆4.2