紙の本
その大元は何だ!という疑問に応える
2020/07/11 09:49
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ニッキー - この投稿者のレビュー一覧を見る
とくにアメリカ合衆国南部の奴隷制については、数多く書籍はあります。奴隷貿易に関する書籍もある程度あります。しかし、なぜアフリカの黒人を近代に奴隷として、ヨーロッパ人がアメリカに売り飛ばしたのかという、政治経済的原因はあめり述べられていません。そういう書籍は少ないです。本書を、その問に正面から答えたものです。とくに資本主義の発展を背景に奴隷制を考えたことが素晴らしいです。黒人への差別や偏見は、奴隷制の原因ではなく、ほぼ結果でしょう。少し文章(翻訳もあぶん原文も)が難解な感じが為ますが、良く咀嚼すれば、味が出てきます。
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世界システム論や従属化論が歴史学の共通財産になっている今でこそ、本書の主張を読んで驚くということはないものの、本書が書かれた時代における歴史学を含む社会状況を考えると、その歴史的意義の重要性が改めて思われる。
産業革命や自由貿易主義展開という輝かしい歴史を、植民地側からの視線で見ていくと、どのように見えるものなのかを、本書は明らかにする。
奴隷貿易、奴隷制を巡って、西インドプランター、製糖事業者、奴隷貿易商、毛織物業者、綿織物業者、金融業者、地主、資本主義者、政府等々の様々な利害集団が、時代の推移によって、考え方も変われば、敵味方の関係も変化する。大きくは、重商主義から自由貿易主義に、保護主義から自由放任主義に移っていく。
航海条例、穀物法、選挙制度改正問題なども、それらのせめぎ合いの中での出来事であり、世界史で習った事項の意味合いが、だいぶなるほどと分かってきた。
著者の叙述は、時に皮肉に満ちたものや辛辣な指摘など精細に富んでおり、文章的にも読んでいて面白い。非常に啓発される内容であったが、イギリス政治、経済史にある程度の知識がないと、十分な理解が難しいことも否めない。
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産業革命の資本は奴隷制。そして人道的な意義の旗を掲げつつ、それが経済的メリットがあるから廃止したのだという事実。データに基づく金言、80年前の著作から学ぶことは多い。
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黒人奴隷というとアメリカが有名だが、イギリスが黒人奴隷と貿易をうまく組み合わせて近代化した事は知らなかった。
人間として扱ってもらえず、過酷な環境で使い捨てられてきた奴隷たち。昔の可哀想な人たち程度の認識しかなかったが、実はとても能力が高く、人知れず、近代化の一端を担っていた事に驚かされる。
報われない、踏みにじられた沢山の人達のおかげで、今があるのかもしれない。
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【文章】
読み辛い
【ハマり】
★★・・・
【気付き】
★★★・・
奴隷の多くが黒人であったのは、人種差別的なものが元にあったからではなく、あくまで経済的な理由からであった。白人や、アメリカ先住民より、労働に対する能力が高かった。
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黒人差別のルーツが奴隷制にあったと短絡的にイメージしていたが、アメリカにおける奴隷制のルーツを本書で捉え直すとその認識も変わる。
また、著者は奴隷貿易に当時携わった人間の人間性を否定するのではなく、当時の価値観としてそれは倫理的に問題視されていなかっただけと述べる。別の章では奴隷制廃止論者の根拠は倫理観ではなく商業的都合であった例を取り上げている。
奴隷制や人種差別問題は、それを考える際にイメージや感情のバイアスがかかりやすいが、本書ではその認識や姿勢を改めさせてくれる。
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「ウィリアムズ・テーゼ」と言うらしい。産業革命に必要だった設備投資の資本はその前夜どう蓄積されたのか。