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歴史にはなにかしら根拠が必要であるが、それを理系的な視点から見ると新たに分かることがある。特にこの本は気象や土地移動の速度など、当時の日本の状況や人間の能力をしっかりと数値で把握して書かれている。
秀吉の中国大返しは成功した事実のみ語られていたが、それがなぜ、どのように行われたのか、史料だけでわからない部分を数学、理科を用いて研究する面白さを感じた。
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船の設計者である著者が、日本史を科学的に検証する。
蒙古襲来ではなぜ蒙古軍は一日で退却したのか→(当時の船、海流からシミレーションすると、相当船酔いしていた。300隻もの船が一度に博多湾に投錨するのは不可能。季節風の向きによって、早く撤退しないと戻れない)
本能寺の変から、なぜたった9日で秀吉は高松城から山崎まで220キロも2万の兵を引き連れて移動できたのか?
戦艦大和は無用の長物だったのか?
の3点を詳しく検証していてとても分かりやすく、エキサイティングだった。
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読み応えのある本だった。
蒙古襲来(文永の役)で、なぜすぐに蒙古軍が撤退したか。
秀吉の中国大返しはどうして可能だったか。
戦艦大和はなせうまく活用されなかったのか。
この三つの謎に、艦船の設計士の視点から挑む。
ここで展開される技術的な話を、批判的に読む力は、自分にはない。
では文系的な領域の歴史についても、通り一遍の知識しかなかった。
と
本書での検証は、一つの歴史的事象を考えるうえで、かくも多くの条件を勘案しないといけないことを教えてくれる。
例えば、蒙古軍の持つ条件を考える際、高句麗に用意させた軍船はどんなものだったか、900隻の軍船を半年で準備することは可能なのか、どれだけの木材と大工、人夫が必要か、と考えていく。
その結果、実際の軍船は、新造ともとからあったもので約300隻、運んだ人は約44000人、馬は1000頭くらいまで、と推測する。
そして、これらの人馬を養う水と食料の確保の問題や、この時期に玄界灘を渡ることで起こる船酔い、上陸に要する時間などを推定。
最後に武器、人数の比較をしながら、どのような戦略をとったときに、どちらが勝利するかを割り出す。
何と言うか、圧巻である。
蒙古襲来と、日露戦は、太平洋戦争での判断を誤らせたことを考えると、歴史をどう解釈するかは命にかかわる問題だと改めて認識した。
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・元寇で元軍は攻めていたにも関わらず、何故か進撃せずに一夜にして兵を引き、その夜に台風で難破した。こう書くと確かに神風神話を感じさせる。これを人員や船の規模などを勘案し、科学的に推測したその説を理解したら、全く妥当な状態だったと感じる。改めて数値的論理的説明の力を知った。
・通説、伝説の前に、巨大な数字のリアリティ、物理的なリアリティに目を背けない。
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歴史の謎を科学で読み直してみるというもの。
やはり、ある程度の歴史の専門家の意見も考慮できれば、より深い考察になるのでは。
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・元寇、秀吉の大返し、戦艦大和について検証。
元寇はベースになっている通説が「八幡愚童訓」であることを主張しているが、もう「通説」ではないだろう。この史料を否定する本はかなりの数にのぼるので、今更感もある。
元寇のところで上げている参考文献は全部読んだことがあった。船酔いに関しては北岡氏の著作からの引用だろうか。
弘安の役については、記載がない。
秀吉の中国大返しは、兵站の考察が面白かった、どこから物資をかき集めたのか?その準備時間は?ってのを考えると確かに面白いかもしれない。
大和に関しては、考察が古いです。大和については出尽くしている話なので、一般啓蒙書レベルだとアウトレンジ戦法とか論じているくらいの深さで仕方ないかなと思う次第。
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リアリティのある具体的な検証が非常に興味深いです。特に、戦艦大和は単なる無用の長物ではなく、戦後の復興や日本人の誇りとして役立った話は嬉しくなりました。
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日本史の謎を船の科学で仮説、検証し、読み解く意欲作。教科書、小説で語られる、あの歴史がリアリティを持って、ベールを脱ぐ。続編もあれば、読みたい。
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(借.新宿区立図書館)
3つの歴史的謎を工学的見地から論じたもの。いろいろと細かい計算を積み重ねて歴史を違う面から解き明かそうとしている。確かにそういう面から飲み方も必要だろう。現状での問題点としては前提となる根拠部分の歴史的理解が不足していると思われること。たとえば大返しで、人の歩行速度の基準を4km/時と考えているが、それは現代人で当時の人たちはもっと早かったはず。江戸期の旅人でも急ぎであれば一日40キロぐらいは歩けたようだ。その辺からちゃんと歴史的知識を確認して行かないと論だけが浮いてしまう。面白い見かたではあるが今のところ独善的部分が多いといえるだろう。あと、日本史サイエンスという題は大げさすぎだと思う。
一般的に理系の人が歴史関係を語ると歴史知識不足のためちょっとおかしなことになりがち。一方歴史関係の人は理系にはあまり興味がない。その辺をうまく関連付けられるようにすればもう少し研究は進むと思うのだが。
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船の専門家の視点で歴史の謎に迫る。単純に兵士の人数や船の数だけでなく、実際に動かすときに何が起きて何が必要なのかを説明。「AHP」や「ランチェスターの法則」のような検証方法や、実際の地図やデータを用いると通説では確かに説明しきれない部分が出てくるため見方が変わって議論のもとになると思う。また「アルキメデスの大戦」を読みたくなってきた。
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造船エンジニアが計算で読み解く日本史。
詰めの甘いところや推測で補っている部分はあるものの、特に中国大返しの現実的な考察は面白い。
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タイトルに魅かれて読んでみました。歴史は「素人」だとおっしゃる、船の設計者の方が書かれた本でした。
なるほど、タイトルが「日本史」+「サイエンス」なのはそういうことなのですね。
蒙古襲来の謎を、船の設計者の視点で検証するところからこの本が企画されたそうです。
面白い見方ですよね。
まるでイノベーション。既知のものと既知のものの組み合わせで新しいものができる。新たなジャンルの誕生ですね。
蒙古襲来の謎を解いた後は、本能寺の変。
移動距離、兵士や軍馬の数、物資、気候、地理的条件から考察するという、これもまた面白い切り口だと思いましたが、よく考えたら当たり前のことですよね。
学校教育の「日本史」ですり込んだ見方が頭に凝り固まっている自分に気づかされました。
最後に、時代は進んで戦艦大和が取り上げられています。単に、軍用というだけでなく、日本経済の発展に寄与したこと、確かにそうだと思いました。
3つの史実を、少し違った角度から分析するという面白い内容でした。様々な専門家が、このような切り口で過去の出来事を紹介してくれると、歴史的事実を立体的に理解できるでしょうね。
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元寇
秀吉の中国大返し
戦艦大和
いずれの戦いや行動の可否、戦力などを数学や科学で検証。
元寇については神風が吹いて元寇は失敗し、集団戦法で戦う元に対して、ひとりで立ち向かう日本の武士というステレオタイプの考えがありました。
実際は台風はなかったし、日本の武士の騎馬隊の活躍、敵方の戦意の低さや、地形などで存分な戦力を送り込むことができなかったことが原因でした。
秀吉の中国大返しについても、陸路でなく海路を利用したのではというお話や、2万人の戦力を当てにしていなかったことも面白い話だと思いました。
大和についても、ほとんど活躍の機会が与えられないまま海の藻屑と消えましたが、当時にして最先端の戦艦を作り出せた日本人の凄さを目の当たりにした感じがします。
どんなに素晴らしい技術的があっても、それを活かせるのは、結局は人なんですよね。
未来においても技術立国と呼ばれる様な舵取りを、本気で政治家のひとには考えて頂きたいです。
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3.8。異業種ならではの着眼が面白かった(信頼のブルーバックスだからこそだが)各章で扱ってる内容に強い歴史研究専門の人の意見も載ってたら良かったな。というか見たい。
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造船技術者としての立場から見た日本史上の大事件の検証もの。技術者としての立脚点から語られている範囲ではなかなか面白いのだが、それ以上の考察になると「〜と思う」で語る部分が増えてしまっていたのが残念。
蒙古襲来については、船の設計建造についての考察が技術者らしく興味深いのはもちろんだが、「上陸」についての視点と考察が大変良いと思った。船が身近であった人ならではだろう。海峡を隔てているというのは日本の安全保障上大きな利点であったことを改めて感じる。
秀吉の大返しについては、近年、兵站も網羅した軍事技術的な研究が増えているので、秀吉が海路を取った可能性も含めてあまり目新しいところはなかったように思う。秀吉が資金を潤沢に持っていたことと、兵站を重視する実務家だったことが大返しにおいては欠かせなかったと思うのだが、この点にあまり触れられていなかったことも残念。
戦艦大和については確かに時代遅れ説が巷間で語られがちだが、ドレッドノートを分水嶺として大型戦艦は建造に費用がかかりすぎ見直さざるを得ない時期を迎えていたのも定説である。それよりは、陸軍よりはリベラルとされがちな海軍においても、偉い人の設計ミスを指摘できないという組織的な問題により、致命的な構造欠陥が引き継がれていたという指摘の方が面白かった。
まあ結局けっこう面白かった。