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造船のエンジニアが、科学技術と数字に基づいて歴史を読み解く本。誰もが一度は疑問に思い、なんとなく聞くに聞けずそのままにしてきたこと例えば大軍の糞尿の処理をどうしていたろうとか、も突き詰めていて面白い。
検証の1つ目は弘安の役で、蒙古の撤退は台風や威力偵察だったからではなく、純粋に武士が追い返したからというもの。まずは高麗が命令された大型軍船300隻を作るのが、大型軍船1隻あたりの木材使用量と加工前木材から合計15万㎥、東京ドーム約150個分の広さになること。その他にも必要な労働力、建造期間から新造船が150隻にも満たなかったことを明らかにする。また、船員や馬の1隻あたりの数、船酔いのシミュレーション、上陸に要する作業と時間、水深から投錨に適した位置、日本の弓や刀の優れていたことなど、徹底して数字をもとに科学的に考察している。
続いて秀吉の中国大返し。METzから必要な食糧として1日おにぎり40万個、野営と不衛生による戦力低下、水運を利用した仮説、AHPと呼ばれる意思決定分析。
そして戦艦大和。大和の船体や武器だけでなく、戦後日本のものづくりの基盤となった上、大和の存在を知った日本人の心の支えとなったこと。
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日本史について数学的視点で分析した一冊。
リアル空想科学読本ともいうべき本で、その分析の信ぴょう性はともかく、とても興味深かった。
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通説に疑問を呈する著者によるシミュレーションがなかなか面白い。文献中心の研究による世の通説に関して、サイエンスの視点による精査が必要であることを痛感する。歴史学も文理を超えた学際的な研究に進まなければならないのではないか?
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蒙古襲来、秀吉の大返し、戦艦大和の3点について歴史家の立場よりプロジェクトを策定するマネジメントの視点から、従来の定説に挑んだブルーバックス本。
3つとも歴史好きにとっては必ずと言っていいほど取り上げられるテーマで、それだけに関連図書も多い。
諸説様々、思い入れの強い人もいて批判めいたコメントも散見される。
個人的には、蒙古襲来は「神風などではない」これは常識。「上陸の不備」これも常識。何処か何かの本で読んでいる。
秀吉の大返しはNHKで何度も取り上げられているのを見た。
戦艦大和については、子供の頃の記憶に頼るしかなかったので興味深く読ませてもらった。
ただし、太平洋戦争史に関わる記載については異論が出るに違いないと感じられた。
理系ブルーバックスの編集だから出せた内容なのだろうが、同時にその事により裏切られた感も否めない。
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元軍の話と秀吉の話が面白かったです。
ただ単に、そんなことあるわけない。昔の人が話を大きくしているだけ!というのではなく
なかなかハードだけど、実現させるなら…という視点で考えているのがよかったです。
よく◯万人の兵士とか、◯隻の船で…などと教科書に書いてあって、すごい数だなぁと思いますが
必要な食料、排泄、衣類、武器、それを運ぶ馬、馬の食料…も必要で。
当たり前のことですが、視野が広がり、また違った見方ができるかなと思います。
上司が貸してくれた本で、普段読まないジャンルなのでなかなか読み終わりませんでしたが、投げ出さなくてよかったです笑
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蒙古襲来、中国大返し、戦艦大和という三つの歴史的事件に焦点を当てて、大胆な仮説を立てた本書。
著者は船の設計者であり、歴史学者ではないので、歴史学的に見れば一笑されるものかもしれない。
(私も詳しいわけではないので、何がおかしいのか、といった指摘はできない)
だが、中国大返しに船を使ったのでは?という仮説はとても興味深い。
現代人の体力(訓練された自衛隊員)と当時の騎馬武者の体力、兵站など考えなくてはいけないことはたくさんあるが、そこで船を使えば早かったのでは、なんて今までに聞いたことがない!
蒙古襲来も、いかにも船の技術者と言った内容。
造船技術、航海技術その他従来の歴史書では捉えられてこなかった視点が面白い。
実際に模型まで作っているのだから、技術者とはすごいもんだと感嘆する。
歴史学者だけではなく、このような技術者の視点というものも必要と感じた。
大発見やパラダイムシフトは、専門家だけではなく、門外漢からだって何度も生まれているのだから。
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生物学者が恐竜絶滅の原因を生物学的な学説で説明したいと思うように、
歴史学者も歴史上の出来事を組織学や、ある人物の優れた戦略や統率力の賜物だとして説明したがる傾向がある。
900隻もの大群で九州に押し寄せた蒙古軍が九州を攻め落とせなかったのは、神風が吹いたからと言われていて漠然と日本は運がいいねと思っていた。
日本は海に囲まれており、しばしば暴風雨に見舞われるので確かに攻め入るほうにとっては厳しい条件だろう。
だが、冷静に状況を考えてみると気象条件が全てではない。
何百隻もの船が着岸し人や物の乗り降りをするのにどれだけの時間がかかるのか。
何万人もの蒙古軍が、一斉に上陸して攻めてくるなんて無理だということが分かる。
本書は、物理学、気象学、統計学を駆使して、歴史上の出来事を科学的に検証してみたものだ。
戦艦大和については、実際にどんな活躍をしたのか(別段興味もなく)知らなかったが、活躍することなく敵の攻撃であえなく沈没していた。
時代は既に空中戦に突入していたということだ。
まさに今ウクライナ戦争で、ロシア海軍の艦船が相次いで黒海で炎上・沈没しているのも同じ理由だ。
私にとっては、戦艦大和は宇宙戦艦ヤマトに姿を変え宇宙船として大活躍した姿しか記憶にない。
歴史好きの人が読むと少しくどいと感じそうですが、私のような理系人間が歴史的事件の真相に触れるにはいい本ですね。
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歴史的な出来事に対し、文献のみに頼るのではなく、科学的・物理的視点からその詳細を改めて考え直してみようという本。船の設計者だけあって、蒙古襲来についての考察はなるほどと思わせるものが多くあり感心したのだが、秀吉の大返しと戦艦大和については物足りない印象が残った。終章で取り上げる「リアリティの欠如」は今の日本、今の世界が真摯に向き合わなければならない問題の一つであるのは間違いがない。
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蒙古襲来は日本の武士団もよく戦った、そもそも元と高麗の大軍が天候と海流の隘路を押して攻めてくるというのは並大抵の事ではなかった。兵員の疲労と上陸地や天候の問題があり時間をかけられなかったという事がすべて。
秀吉の中国大返しは信長継承への強い意志による、決戦のための情報入手・事前準備・周辺調略・海路利用等があった上で部隊の装備・食糧・排泄・軍馬や宿泊対応等総合ロジスティック戦の勝利であった。
戦艦大和は日本の技術が誇る世界一の能力を使いきれなかった指導体制・戦略の敗北でもあった。GDPの3%を費やし46センチ砲や鋼鉄強度と速度の卓越性は実現したが防御面で設計段階からの構造的欠陥が命とりになる。
いずれも、歴史の通説に対しては固定観念を捨てて現実を見据えデータで検証し柔軟に思考する事が肝である。
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数十年前に歴史専攻の会社の先輩が歴史は文学でなく科学だ、と言っていたが、まさに理系技術者が書いた歴史分析本として世に放たれた本。リアリティのある歴史本として傑作だ。
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過去のイベントについて技術的な観点からの考察・主張が分かりやすくまとめられている。歴史の専門家でない、と著者はいうが、色々な視点での考察を重ねることは有意義な作業だと感じた。
他にもやっていただきたい考察あるな、と思っていたら、本書の第二弾もあるとのこと。世の中にも好評だったのでしょう。
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蒙古襲来、秀吉の中国大返し、戦艦大和の3つのトピックについて、その実現可能性や代替策を考察する一冊。
著者は三井造船の設計技術者だった方ということで、特にロジスティクスの観点で冷静な分析をされている。
蒙古襲来については、冬の荒れる玄界灘、上陸に時間がかかり戦力逐次投入となった可能性にスポットが当たっている。
秀吉の中国大返しでは、二万の本隊とは別の海上移動、事前の根回しの可能性にスポットが当たっている。
今となっては分からないことばかりだが、こういうナゾに迫るのは面白い。
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猛虎襲来や秀吉の中国大返しなど、歴史的なミステリーを科学的に解析している一冊。
歴史が好きでないと、捗らないかも。
読んでいて、なるほど!と思ってしまうほど、解説は分かりやすかった。
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造船に携わっていた著者ならではの、日本史をサイエンティフィックな視点で解析し直すのが斬新で面白かった。特に船という観点で蒙古襲来などを振り返っており、船酔いで体力低下説とかはとても面白かった。
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企画として「と学会」ぽくて面白い。造船のプロである播田さん一人の視点で書かれておりまとまっている。次巻にも期待。
※終章に福島第一原子力の発電機仕様が米国式〜との記述があるが、2011年の時点では911を受けて米国NRCの要求が変わっており米国に素直に追随してれば被害が軽減できていた可能性あったことは指摘したい。