紙の本
民主主義の原点と責任を知る手掛かり
2021/08/08 19:28
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読人不知 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書が出版されたのは、第一次世界大戦と第二次世界大戦の間、ソビエトやドイツで革命が勃発した時期である。
マックス・ヴェーバーが講演を行った時代背景を頭に入れてから読むと、かなり尖った発言であることが窺える。
前半は、皮肉と具体例を交えた政治史。欧州と米国の政党と議会の成立過程が語られる。
日本の国内政治に関しては、民主主義の導入過程や目的が全く異なる為、あまり参考にならないが、国際政治を見る上では、現代でも有用な資料と言える。
二十世紀前半の系譜を繙くことで、各国政府や首脳陣の選挙前の動き、選挙対策としてテコ入れする政策や、どこを向いて政治を行うかなど、見通しを立てる一助になるだろう。
後半は、書名通り、政治家の資質を語る。
現代の日本でも通じる……よく考えれば「当たり前のこと」が、政治家と、彼らを選ぶ有権者に向けて語られる。
その責任が立脚する根拠と、対象とするものは何か。
信仰などに立脚する心情倫理と、現実に即した責任倫理。
心情倫理の結果に対する無責任性と、信条と信条に基づく「絶対正義」の追及は、現代のインターネット上などで繰り広げられる炎上騒動を彷彿とさせる。
責任倫理では、人間の欠陥を考慮に入れ、自らの行為の結果に対しては責任を認識するが、世の中には責任を負いきれない重大な結果があちこちに転がる。
政治と権力は切っても切れず、国民を守る為には、右の頬を打たれても、左の頬を唯々諾々と打たれてはならないのが国際政治の世界の不文律である。
侵略から自国民を守る為には、少なくとも、右の頬を打った手を払いのけるだけの武力が必要である。
どこまでを「正統な暴力」と看做し、どこからを「倫理に悖る暴力」とするか。
その線引きは、一部の政治家ではなく、彼らを選出する有権者の良識に懸っている。
政治を他人事目線から自分自身と関係のある事柄として見る為の手引書。
紙の本
政治を行う者の資格とは
2021/10/31 11:55
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かずさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
マックス・ヴエーバーが第一大戦後ドイツの敗戦後、政治家はどの様な資質と倫理を持つべきかを講義した内容をまとめてある。政治とは何か。から始まり政治家の持つべき資質、必要な倫理へと述べている。少々読みにくい部分もあるが100年前に講義したことは今の政治や政治家にも大いに通じるところがあると思った。「政治の領域にとって大罪は仕事の本質に即しな態度と無責任な態度」「政治家にとって大切なのは将来に対する責任」「政治家にとって虚栄心は不倶戴天の敵」どこかの国の政治責任者に読ませたい一冊。
投稿元:
レビューを見る
マックス・ヴェーバー(1864~1920年)は、ドイツの政治・社会・経済学者。社会学の第二世代を代表する学者で、「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」(1905年)は、社会学の名著として有名である。
本書は、第一次世界大戦(1914年7月~1918年11月)終戦直後の敗戦国ドイツの革命的状況の中で、著者が死去する前年の1919年1月に、ミュンヘンで大学生向けに行われた講演(更にパンフレットとして出版され、死去後『科学論論集』に収められた)の邦訳である。(姉妹編の『職業としての学問』もほぼ同じ時期のものである)
本書でウェーバーが言わんとしたことは、大まかにいえば以下である。
◆「政治とは、国家相互の間であれ、あるいは国家の枠の中・・・であれ、ようするに権力の分け前にあずかり、権力の配分関係に影響を及ぼそうとする努力である。」
◆「ぎりぎりのところ道は二つしかない。「マシーン」を伴う指導者民主制を選ぶか、それとも指導者なき民主制、つまり天職を欠き、指導者の本質をなす内的・カリスマ的資質を持たぬ「職業政治家」の支配を選ぶかである。」
◆「政治家にとっては、情熱、責任感、判断力の三つの資質がとくに重要であるといえよう。」「政治家は、自分の内部に巣くうごきありふれた、あまりにも人間的な敵を不断に克服していかなければならない。この場合の敵とはごく卑俗な虚栄心のことで、これこそ一切の没主観的な献身と距離にとって不倶戴天の敵である。」
◆「人が信条倫理の準則の下で行為するか、それとも、人は(予見しうる)結果の責任を負うべきだとする責任倫理の準則に従って行為するかは、底知れぬほど深い対立である。」「およそ政治をおこなおうとする者、とくに職業としておこなおうとする者は、この倫理的パラドックスと、このパラドックスの圧力の下で自分自身がどうなるだろうかという問題に対する責任を、片時も忘れてはならない。」
◆「政治とは、情熱と判断力の二つを駆使しながら、堅い板に力をこめてじわじわっと穴をくり貫いていく作業である。・・・自分が世間に対して捧げようとするものに比べて、現実の世の中が-自分の立場からみて-どんなに愚かであり卑俗であっても、断じて挫けない人間。どんな事態に直面しても「それにもかかわらず!」と言い切る自信のある人間。そういう人間だけが政治への「天職」を持つ。」
信条倫理と責任倫理は両立し得ないこと、政治は「暴力」であることを明らかにした上で、「それにもかかわらず」の精神を持った人間のみが政治を行うことができるとの主張は、高度な普遍性を持ち、現代においてもその重要性が薄れることはない。
翻って、現代の世界・日本を見回してみて、この天職を持った政治家がどれほどいるかと考えたとき、絶望的な気分になるのは私だけではないだろう。ヴェーバーが今の世界を見たら、どんなことを言うのだろうか。。。
(2020年11月了)
投稿元:
レビューを見る
「にもかかわらず!」
この本の意識は政治に携わる人が(受け入れるか、それは違うと否定するかは別として)政治を行う上での基準になるのでは。
投稿元:
レビューを見る
●政治とは、権力の配分関係に影響を及ぼそうとする努力である。
●政治家は、その専業度に応じて①臨時の政治家(例 選挙投票、政治集会における拍手)、②副業的政治家(政治団体の世話役や幹事、諮問機関構成員)、③職業政治家の3類型に分類できる。③は更に政治によって生きている人と政治のために生きている人に分けられる。
●政治家は自ら責任を負うことが重要(⇄官吏)。
●政治家の重要な資質は情熱、責任感、判断力。
●現実の世の中がどんなに卑俗であっても、dennochの精神で挫けずにやっていける人の天職(Beruf)。
投稿元:
レビューを見る
多少難しいが、解説が分かりやすいので、大まかに理解出来た。
当時のドイツの時代背景を踏まえると、政治に対する熱い想いや危機意識が伝わってくる。
投稿元:
レビューを見る
公共政策学に興味があり、参考図書に挙げられていたので読んでみた。内容はパラパラと読むだけでは理解が難しく、あまり理解できない部分が多かったので、誰かと読み直してみたいと思った。政治家に必要な3つの資質として、情熱、責任感、判断力が挙げられていた点と、最後の主張のあたりにある、「それにもかかわらず!」と言い切る自信を持つ者が政治家という職業の天職をもつというところは印象に残った。
投稿元:
レビューを見る
もうずいぶん昔のことになるのですが、池上彰さんが選挙特番で小泉進次郎議員を取材した際に話題にしていて、気になっていた本書。
ちょうど夏に文庫フェアが開催されていて、比較的ページ数が少なめだったこともあり、気軽な気持ちで手にとってみました。
著者のマックス・ヴェーバー(1864-1920)はドイツの政治・社会・経済学者。
本書は彼が1919年に行った学生向けの講演が元になっています。
当時のドイツは、第一次世界大戦での敗戦後、ドイツ革命と後に呼ばれた動乱のさなか。
・「政治」とは「権力の分け前にあずかり、権力の配分関係に影響を及ぼそうとする努力である」
・「国家」とは、「ある一定の領域の内部で(中略)正当な物理的暴力行使の独占を(実効的に)要求する人間共同体である」
との定義のもと、ドイツの現状を批判的に捉えながら、職業としての政治はどうあるべきかが述べられています。
まわりくどいところが一切なく、はっきりしていて、「直截」という表現がぴったりくるヴェーバーの文章。
なかでも、職業としての政治に身をささげる人間は、「信条倫理」と「責任倫理」のパラドックスに挟まれることになる、という部分が心に残りました。
理解しきれていないかもしれないけど、「信条倫理」は、自分が正しいと信ずるところを行って結果は神に委ねること、「責任倫理」は、人間の欠陥のあれこれを計算に入れること、つまり結果のためには時として手段を選ばない、ということかなあ。
そしてヴェーバーは「信条倫理家はこの世の倫理的非合理性に耐えられない」と指摘しています。
私は別に政治を職業にしているわけではないけれど、自分には「信条倫理」に偏ったところがあるかも、と読みながら少しぎくっとしました。
正しいと思うことに則って行動すること自体は良くても、それが独善的になったり、結果に結びつかなかったりする場合もあることに、注意しないとなあ。
「修練によって生の現実を直視する目をもつこと。生の現実に耐え、これに内面的に打ち勝つ能力をもつことは欠かせない条件である」という言葉がヒリヒリと沁みました。
もうすぐ、衆議院議員選挙がありますね。
投票した議員が必ず当選するわけでもないし、自分の望みが政策に反映されることも果てしない道のりで、それが「生の現実」ではあるけれど……ヴェーバーにならって「それにもかかわらず!」と心の中で唱えながら、投票所に行ってこようと思います。
投稿元:
レビューを見る
タイトルに興味を持ち購読。第一次大戦後の講演録ではあるが、「職業としての社長」など、いろいろ読替えが効きそうな内容。「どんな事態に直面しても、それにもかかわらず!(やるのだ!)」と言い切る自信のある人間だけが、政治への天職を持つ」とある。これは全てのリーダーにも言えること。