紙の本
それでも翻訳家になる、あなたへ。
2021/03/08 11:36
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:菫 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の翻訳人生のジェットコースターに相乗りするかのように一気に読みました。
翻訳者や彼らの担うテクストのクオリティーに敬意を払わない出版社に編集者(なぜ偉い先生を「監修者」にした本がこれほど多いのか、事情を知って愕然としました)。そのやり方の汚さ、往生際の悪さに幻滅し続けながらも堂々と戦い続けた宮崎さん。
その闘争には時に胸のすく思いがし、やがて燃え尽きてしまった心境にも大いに共感を覚えます。
私もフリーランスだからでしょうか、他人事とは思えないのです。
出版翻訳家としての「職業的な死」を迎えるまでのドキュメントとして書かれた本書。それでも(それだからこそ)、業界の闇に絶望し退きながら、レジスタンスを止めない著者の姿勢が震えるほど伝わってきます。「誠実な出版社からの依頼であれば引き受けたい」というのは著者本人の率直なスタンスであり、業界への痛烈な皮肉なのですよね。
本書に綴られた闘争の過程で、宮崎さんは繰り返し「これは私一人だけの問題ではない」と言われています。自分が我慢して出版社の理不尽な要求を受け入れてしまうと、彼らは翻訳家が折れてくれるものだと「学習」してしまい、やがて一人の力では変えがたい出版業界の悪しき慣習が形成されてしまう。
これは、私たち一人ひとりの戦いでもあるんです。だからこそ翻訳家を志す人、フリーランスでお仕事されている人に全力でお勧めしたい本。
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一気に読みました、面白かったです!
まるで1本のドラマを見ているような気分でした。
私自身、外国語を勉強してきて、翻訳についても少し学んだことがありますが、非常に専門的で神経を使う職業であるにもかかわらず、このように「言葉」を扱う仕事へのリスペクトはまだまだ小さく、軽視されているなと思います(意識的な意味でも、金銭的な意味でも)。
この本に登場するような出版社や編集者ばかりではないとは思うものの、あとがきに記載されている宮崎さんの祈りが、多くの関係者に届くことを願うばかりです。
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契約に関するトラブルと裁判の話。適当な出版社が多いのだなあと思う。わりとなあなあでうまくできていたのだろう。私も仕事の報酬を踏み倒されたことあるから怒りはわかる。裁判などしてこないと舐めているのだろう。
この著者は裁判を続け、そして勝ったが、精神を病んでしまった。戦わないのが精神的には良いということだろう。
どんな仕事にせよ、信頼関係を築いてから仕事したいものである、とつくづく思わされた。
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出版社や編集者にもいろいろあるのだろうが、結構ヤクザな世界に思える。
ハイリスクローリターンな出版翻訳家もいてもらわないと困ってしまう。
ビジネス書はほぼ読まないので、著者の翻訳本に触れることはなさそうだが。
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出版業界ってこんなに酷い業界なのか、口約束は守らない言葉巧み嘘はつくは連絡しないわ、裁判所での調停にも出て来ないわ、これでは翻訳家はたまったものでは無い。日記シリーズの中でも1番身につまされた。
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久々にガツンときた力のある文章でした。
筆者の翻訳家人生における心から訴えが詰まっています。筆者がひときわ誠実な人間だからこそ行った行動や世直しのための訴訟など、翻訳家という立場だけでなく人生の先輩として見習いたいと思いました。
あと、出版社がここまで不誠実なものだとは思いませんでした。
なにかと1番重要であるはずの、実際に物を生み出している人達がなぜこういう軽んじた扱いを受けるのか、普段から思うところではありましたが、翻訳家さんもそういう立場だとは。翻訳家さんだけでなく作家さんたちの扱いも心配になります。この方々の生み出すものに日々楽しませてもらっているいち読者としては、出版社は持ち上げるまではいかなくとも、誠実な対応をするべきだと強く思いました。
好きな作家さんがこの方のように、もし出版業界から足を洗ってしまったらやり切れません。
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出版翻訳者の著者が、出版業界でいろいろトラブルに巻き込まれて廃業するまでの話。面白いけど、ちょっと怒り過ぎな感じもした。
僕も出版でいろいろ仕事をしているけど、こういうひどい経験はないな。人に恵まれてきたのもあるだろうし、あまりぴんとこない話は最初から相手しないからかもしれない。
出版業界というのは契約書をちゃんと作らないことが多くて、この人の怒りはちゃんと契約書があれば解消されるのが多いな、と思った。
契約書を作らないことにはいい面も悪い面もあると思っている。僕はわりと、きちんと契約する関係ではなく、人と人との曖昧なやりとりで本ができていくゆるい感じが好きで合っているのだけど(作家か編集者か出版社のどれかのやる気がなくなったらぼんやりと企画が消えたりする、とか)、この著者みたいにきっちりした人には全く合っていなかったのだろう。
たまに出版業界ではないウェブ業界と仕事をすると、契約書をきちんと書かされて驚くことも多い。出版業界の曖昧な仕事のやり方も、前時代的なものとしてそのうち駆逐されていくのだろうか。
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出版翻訳家として活躍しながら、今は足を洗っている著者が、その天国と地獄を振り返る。
出版業界の伏魔殿ぶりに驚いた。著者も結構クセがあると見受けられたが、自分に非がないと思うトラブルの際にはちゃんと白黒をつけることの大切さを教えられた。
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出版翻訳家の波乱万丈ストーリ。
翻訳業界自体が未知な職業なのでその舞台裏がわかるのがとても面白い。
そしてその業界で起きている信じられないような出来事。
トラブルは避けられないものだったのかもしくは自ら引き起こしてしまったものなのか微妙な部分もあるが、かなりのストレスだったのは間違いない。
精神的に追い詰められた結果、翻訳業界から足を洗って今は警備員をしているのだからなんだかせつねいですね。
非常に興味深い本でした。
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現場からの業界リポート、出版編。
フリーで働くクリエイターは大変。
このシリーズおなじみの現場エピソードとグチの集大成。今作では主に編集者と著者の丁々発止のやりとりが展開される。
ひどいやつらとの戦いのグチをまる一冊読むと、ぐったりする。
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「なるんじゃなかった」理由が、翻訳の苦労じゃなくて出版社の不誠実な対応ってところがリアルで苦しい。
味わった精神的苦痛の数々を読みやすい軽い文章で書ける文章力も構成力もすごい。
引いてはいけないところで引かずに戦うのは、大切だけど苦しい。
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面白くスラスラと読めたけど、タイトルから予想していたものとは違いました。
翻訳をする上での苦労話ではなく、出版社との契約に関する様々なトラブルをまとめた本。著者はとても真面目な方なのだと思うけど、もう少し上手に立ち回ることはできなかったのかなぁ…腕はあるのにもったいないなぁ…と思いました。
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出版界に興味ある人、
英語で収入を得たい人、
作家を目指している人、
そういった人には文句なくオススメ。
面白い。
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出版翻訳家を目指し、売れっ子になり、トラブルに巻き込まれて闘い、燃え尽きるまでが軽妙な文章で書かれていて、とても読みやすかったです。才能のある方のようなので、翻訳の仕事以外のことで力を奪われて廃業されたのはとても惜しいことだと思います。フリーランスのつらさを感じました。
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翻訳家。立場はフリーランス。出版社という組織に対して立場は弱い。世間に知れたらまずいと分かってることをしている時点で組織ぐるみで翻訳家を舐めてるし、下に見ている。自作の著者であっても同じなのだろう。不況とか事情があるのは分かるが、適当に嘘をついてごまかすとか放置プレーとか当たり前の世界だとすると嫌気がさしても無理はない。
結末は、本人訴訟をしたことが業界にしれわたって、出禁になってしまったのかと思ったがそうではなく、本人の心の問題だった。
この本の三五館シンシャさんは誠実な対応だそうで、こういうところの本が売れて欲しいなと思うし、著者や翻訳家、出版社がいい関係を築いて紙の本を盛り上げていってくれないと、ますます電子書籍にとってかわられてしまうと思う。