紙の本
語りかけてくるような文体
2023/04/09 21:17
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投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書の中心となるのはスピノザの著書『エチカ』であり、その中の個々のテーマを具に且つ丁寧に解説している一書です。『エチカ』を読む前に読了しておけば、より原書の理解を得易いと思います。
また國分氏の文体は一文一文が比較的短いので、端的に分かり易いという点もあります。この手の分野の解説はなかなか短文ではないので、かなり有難いです。
それらに助けられてスピノザの主張を繙いていくと、スピノザは非常に真っ当な哲学理論を打ち出している、と理解出来ます。中でもスピノザとAI・医学との関係性については瞠目しました。
國分氏の解説は例示が多いのが特徴なので、それ故に他の哲学者の解説も是非解説して欲しいと思います。
紙の本
ありえた「もう一つの近代思考」で自由になる
2023/01/10 21:53
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投稿者:サンバ - この投稿者のレビュー一覧を見る
17世紀の哲学者スピノザの人生と思索を追いながら、「意志と責任」がまとわりつく現代的思考と異なる思考法を提示し、現代的思考から距離を取ることを試みる本。
本書にもある通り、スピノザの考えは現代とは「思考のOS」が異なる。そして、17世紀という近代直前の時期に、デカルトなどと異なる方向を示しており、こちらが主流となっていれば、いまの私たちなら思考の「常識」は変わっていたかもしれない。それくらい、ありえた「もう一つの近代思考」だったと分かる。
スピノザの3つの名前の由来など、物語としても引き込まれ、神の表現としての私たちという考えは読むと非常に説得的。率直に面白い本。
電子書籍
スピノザ哲学の難解さと魅力を知ることができるが、入口に過ぎない。
2020/12/11 22:56
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投稿者:オートン - この投稿者のレビュー一覧を見る
定理と証明の林立する、難解な『エチカ』を読み解いた本。
しかし、「属性」や「変状」などの用語について、著者も説明に難儀している部分もあり、今ひとつ腑に落ちない部分も少なくはなく、この本を読んだだけでは原書を理解できるとは思えなかった。実際に『エチカ』を読み始めたが、理解できない箇所は読み飛ばしながら格闘しているところである。
本書でも、スピノザの思考のOSがデカルトを基調とした近代以降の思考のOSとはかけ離れていると説明されており、スピノザのそれに馴染むまでには時間がかかるように思える。
スピノザ哲学の入口にはなった本だが、それでも原書を読み続けるのは厳しい。他の研究本を読み、デカルトの思考のOSからの切り口に任せず多方面から原書に攻めかかる必要があると感じた。
以下は余談。
著者は微塵も触れていないが、必然性における自由については、この感染症が蔓延する状況下での感染防止という「必然性」の中で自由を模索すべき、というメッセージがこめられているのではないか、と解釈した。
また、真理獲得のための主体の変容というのも、閉塞した社会の中で1人1人が閉塞感に打ち勝つための真理を獲得するために変容していく必要があるのだ、という願いがあるのかもしれないと思った。
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
哲学というと、大学生が学ぶような学問……というイメージでした。かくいう自分は、理系でしたから、哲学の一般教養課程しか知りません。しかし、この本は、わかりやすいので、高校生でもいいのではないでしょうか。
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おもしろかったよ。
「トリカブト自体は悪くない」
「個物は神の属性をある一定の仕方で表現する様態である」
「神は無限であり外部がない」
「精神が身体を動かすことはできない」
「神、あるいはおのおのが永遠・無限の本質を表現する無限に多くの属性から成っている実体、は必然的に存在する」
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「100分で名著」で見ていると思うが、まったく記憶にない。そして、本書も3日ほど前に読み終わっていたのだが、これまた、ほぼ記憶に残っていない。そんなこともあろうかと、読みながら気になったところをツイートしているのでそこから拾ってみよう。引用文については最初からあきらめていて、軽く読み流して、著者の解説を読んでいる。「賢者とは楽しみを知る人、いろいろな物事を楽しめる人」うーん、どんな文脈でこのことばが出てきたのか。「優れた教育者は、生徒のエイドスに基づいて内容を押し付けるのではなく、生徒に自分のコナトゥスのあり方を理解させるような教育ができる人」うーん、これまた、エイドスとコナトゥスの意味が分からくなっているから、まったく何が言いたいか分からない。これを読んだときには理解していたはずだし、感動してツイートしたはずなのだけれど。「どんなものも光をあてないと見えない。しかし、ただ一つだけ光をあてなくても見えるものがある。それは光だ。光は光だけで自らを顕わすことができる。真理もまたそれと同じだ。」うーん、これは何となく理解できる。しかし、光もまた、何か照らすものがなければ見えないということがありそうな気がする。あぁ、とにかく、もう1回さらっとでも読み直さないと、何が書いてあったか、まったく思い出せない。もっとも、読みながら、これってふだんから自分が考えていることだな、というような感想をもっていたから、もうすでに身についているのかもしれない。もちろん、自分で勝手に考え出したことではなく、テレビで見たり、他の本で読んだりしているうちに自然に身についているということだけれど。
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國分さんの「スピノザ」の入門書ということで、なにも考えずに(?)、ポチった。(これは中動態的?)
後書きとかをパラパラと眺めていると、NHKの「100分de名著」に短めの1章をつけ加えたものだった。「100分」は、比較的、最近、読んだばかりなので、しまったと思ったが、復習をかねて読んでみたら、印象的なエピソード以外は、ほとんど覚えていなかった。。。。。
衝撃
今回、読んで、もうちょっと頭に定着するといいな。
今回、追加となった第5章は、デカルトとスピノザの類似性をのべたもの。しばしば、対比的に論じられる2人なのだけど、実は、デカルトのなかにスピノザ的な読みの可能性があるというのは、ちょっとスリリング。
國分さんのこの2人の関係については、「スピノザの方法」が詳しいとのこと。こちらはまたハードル高そうな本だな〜。
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2021/1/4
めーちゃくちゃ面白かった。スピノザはただただ難しいという印象で遠ざけていたけど、かなり身近な存在にしてくれる一冊。難しいところは國分先生自身が「自分も理解に苦労した」と目線を同じにして教えてくれる。
スピノザの出自から思想、現代への落とし込みまで網羅。特に4章のAIに関する箇所は勉強になった。
『エチカ』下巻ちまちま読もっかなー。
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中動態や責任の生成に、スピノザ哲学で横串を刺している感じ。組み合わせと活動能力を尺度としての善悪や、自由についての考え方が新鮮で興奮した。
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年末年始の読書その4
『はじめてのスピノザ』國分功一郎
「100分de名著」のテキストをベースにしつつ、スピノザの主著『エチカ』冒頭の最難関箇所、神の存在証明に言及した第5章を増補したスピノザ入門の決定版です。
改めてゆっくり読んでいます。
これはオススメの一冊。
第5章は、真理に到達するには主体の変容が必要で、変容は私的なものだから「描写」されるって方向で書かれています。
ドゥルーズの『スピノザと表現の問題』
にもう一度チャレンジしてみたくなりますた。
この数日、親鸞論を読んでいたら、ふとスピノザのことを思い出してしまって、年末に買ったこの本をこれを再読。した次第。
プラトンの『メノン』(ソクラテスの対話のお話の初期)をお正月に読んでから、そのあたりのことをうろうろしています。
そのあたり、とは、神といってもいいし、仏といってもいいのですが、存在の前提となる「平面」というか「可能性条件」というか、「存在根拠」というか、そういうものを巡って展開される言葉たちの身振りに対する興味がわいてくるのです。
そんな前提とか条件とか根拠なんてものが、あるわけはない、と言ってみたくなるのもたしか。
神も仏も物理的にはいるわけがない、そんなことは分かっています。
だが「より良く生きる」ということを「世迷い言」といって済ませる気にもなれないのです。
親鸞における悪と信、一遍における名号と遊行、スピノザにおける神もしくは第三種認識、プラトンにおける想起もしくはイデア……
でも、年末年始の「暇」だけのせいでもなく、そんなものについて考えてみようと思います。
道元と日蓮、そして空海あたりも回遊してみようかな。
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とても面白かった。スピノザについて私が知っていたのは『エチカ』の人で、若くしてコミュニティから追放されたということだけだったけれど、もっと学んでみたくなった。
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読了。100分で名著が面白かったので。大変読みやすい。國分さんはスピノザの思想の翻訳者のような立場で書いているので、読者はさらに自分の言葉で思考できる。
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すごく面白かったな。スピノザという人のエチカを読んでみたくなった。でもここで感じたことは、この国分さんという人がわかりやすく解説してくれたからなんだろうな。
こういう哲学の本を読んでいて、どう自分の人生に活かすのかということを説明してくれている本にはまだあまり出会ってないのだが、この本はちゃんと触れてくれている。ただしあくまでも触れているなんだよな。
この国分さんに、もっと詳しくそういうテーマで書いてもらえたものがあるならぜひ読んでみたい。
最後の方で、AIが人間に近づいているのではなく、人間がAIに近づいている、そういう存在としか見られなくなっているというくだりは、膝を叩くような思いだった。
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ねたみ分析、欲望、自由へのエチカ、意思と意識、能動と受動、そしてデカルトの存在証明と流れていく、國分功一郎さんのわかりやすさにいつも助かります。途中のカッコの文章が丁寧で優しく気配りのあるコメントがあり個人的に好きです。また國分功一郎さんの本を読んで癒されたいです。
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講義のような語り口調でとてもわかりやすい。
スピノザの思想の概要を知るにはもってこい。
デカルトとライプニッツも一緒に読むと良さそう。
「自由意志はない」と言う説が新鮮。
確かに自分では気が付かない遠因があって、その行動をとっているということは自分でもあったし、他人の行動に感じることもある。
本当の自発性を発揮してゆくというのはむずかしいな。
デカルト以降の近代思想に対し、スピノザは選択されなかったもう一つの近代思想。
哲学者それぞれの「神」の捉え方を色々比較すると面白そう。