紙の本
古代官僚の勤務実態
2021/05/15 15:11
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投稿者:かずさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
律令国家成立前後から奈良時代末・平安時代初期までの下級官僚(実務官僚)の勤務実態を歴史資料から書き下ろした新書。現代の感覚では国家官僚は規律正しく勤勉で夜遅くまで働くと思っているが、古代の中央政府に努めていた官人は天皇・国家に忠誠を尽くし働いていたとは到底考えられない勤務ぶり。それでも政府は寛容な態度で臨んでいた。それで政府・行政が動いていたとは。歴史の一部を覗き見る一冊。
さぼっていた官人がどの様な生活をおくっていたかも知りたっかた。
紙の本
個々のエピソードとしては面白いが
2024/04/27 14:51
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投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
奈良時代から飛鳥、平安時代にかけて、天皇による「専制君主国家」というイメージが強いこの時代であるが実は官僚には「怠業・怠慢」、あるいは「代返」が常態化していたという。個々のエピソードとしては面白いものもあるが身分社会ゆえであり、これを「寛容」や「鷹揚」、「官僚に優しかった」とするのはどうなのかという感じもする。『ピープス氏の秘められた日記』のようなユーモラスなものを狙ったのかもしれないがあまりうまくいっていない。
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重要儀式を平気でサボるなど古代日本の官僚たちの決して勤勉でない怠慢な実態と、そのような官僚たちに寛容な律令国家の姿を明らかにしている。
少し著者が想像をたくましくして盛っている部分もあるように感じたが、これまで知らなかった非常に興味深い史実を知ることができ、面白かった。
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なるほどこういう見方もできるんだと目からうろこの本。「続紀ばかりボーっと読んでんじゃねえよ」といわれたような気が。やはり詔勅や官符など含めいろんな史料をちゃんと読まなければいけないよう。しかし、古代史もかなり進んでいるんだなと感じた。もっといろいろ本や講座などで様々な説に触れていこうと思わせる本だった。(もちろんすべて鵜呑みにするということではない)
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目から鱗が落ちるとはまさにこのこと。今まで何の疑いもなく、古代官僚は律令制のもと勤勉に働いていたと思い込んでいました。ところが、怠業・怠慢が当たり前で、「位階は天皇からの距離を示す」「儀式は君臣関係を確認する場」といった古代史の共通理解が誤ったイメージだったと思い知らされました。あまりにも衝撃的すぎて、読み終えてもなおまだ心のどこかに信じられない思いがあります。
虎尾さんの律令官人制のご研究は個人的にとても興味があり、私のかつての研究テーマとも近いので、頑張って専門書の方も読んでみようと思います。
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古代の天皇や国家の姿を勤怠から考えた本。
律令などを見ていると、勤怠についての規定は厳しくて精勤の度合いは少なくとも6つくらいの段階で細かく定められているような印象だったが、結構怠ける人がいたというのは驚きだ。
驚いたのと同時に、きちんと精読すればこういった視点からも新たな研究ができるのだということに感動した。
また、これほど儀式や日常の執務に欠席する人がいても様々な大規模事業が行われていたのはなぜなのかも改めて考えると面白い。
どうやって中国由来の律令をローカライズしたのか、従来の日本列島で築かれてきた大王と豪族の関係や支配の構造とどのような齟齬があり、どうやって解決していったのかという点を改めて考えるきっかけとなった。
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帯にひかれて思わず手に取った。日本史関連の本を読むのは久しぶりだったが、いやぁ面白かった。軽い筆致で、「昔の官僚は真面目だったのか?」というユニークな問に答えていく。飛鳥時代から平安時代にかけての新生・官僚たちが実はそんなに真面目ではなかった…ということが見えてくるのがただただ愉快であるとともに、自分が今生きている価値観というのが、あくまで「最近」作られたものだったのだなぁと気づかされる。新書の醍醐味を味わわせてくれる、素敵な題材。
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仕事をしない、覚えもしない、そもそも出勤してこない。
忠良にして勤勉でなくてはならない、律令官人達の姿。
飛鳥から平安まで、政府と天皇を支えた役人たち。上級官僚から下級役人に至る、目眩を起こしそうな勤務実態を抜き出すことで、官僚としての姿と豪族としての姿をしたたかに使い分けた律令官人達の姿を描き出す。
古代ものを見聞きしたときのイメージがそれはもう大きく変わるインパクトと、そんなひどいのに国家はきちんと動いてた、と言う事実に瞠目する一冊。面白いです。
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古代日本は天皇を頂点とする専制君主国家だったのか。下級官僚たちの「怠惰な」勤務実態を検証し、興味深い実例を挙げて紹介する。
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◯平安時代の前くらいに宮仕した官僚たちが、いかに怠慢であったかを解説。ただ、この本、それだけである。
◯様々な角度で怠慢であったかを説明している。儀式に出ない、仕事に来ない、などなど。しかし、それだけでは困る。なぜ来ないのか、こないだ何をしていたのかが気になるのだが、全く説明がない。
◯この点、記録がまだ発見できていないのか、仕方ない感もあるが、しかし推察でも知りたいと思ってしまう。
◯各省庁が怠慢を擁護していることなども説明されているが、これは現代でもある権限争いと考えられるため、やはり特別な感はない。
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主に9世紀までを対象に、律令国家の担い手であった官僚達の怠惰な勤務実態を具体的に検証する内容。事例そのものも興味深いが、取り入れた律令の運用がローカライズされ、日本独特の国家運営となっていく様子が面白い。
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古代の専制的と思われる天皇の元
優秀な官僚たちは、その智慧をサボる事に費やした
規則は規則が官僚的だと思うのだが、どうにも怠惰
な出来事ばかり記録に残り、遅刻したらダメみたい
な、つまらない事が法律で何度も出される
出席しなければ〇〇を失う、という条件でも平気で
欠席して〇〇だけはチャッカリ受け取ろうと詭弁を
弄するし、天皇や官僚機構もなし崩しに許そうとす
る、歯がゆい時代なのが面白い
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律令制と聞くだけで何やら、スーパー官僚などがいて、一糸乱れず行政を遂行するイメージを持っていたが、古代の官僚(貴族)は、まったくの反対であった。
今までの常識を覆えされただけで本書を読み価値がある。
決してワクワクしたり、為になったり、読みやすいわけではないのだが、知らないことを知れただけで★5としました。
儀式には無断欠席するわ、仕事はさぼるわ、目が届かなければ私腹を肥やすわで、もう「ザ・未開国」という状況。
それも天皇が出席する儀式に、6位以下の下級官僚が集まらず儀式が始められず、偉い人達が、昼夜問わず出席者が来るまで待ち続けるとか、サボタージュしても、1年に1回の昇進が遅れるくらいで、罰則が緩すぎるなど、驚きの連続でした。
無断欠席者が多い場合、主催者側(偉い人たち)が「代返」して、出席したものとして扱って議事を進行するとか、本当にどうなっていたのでしょう。
日本人は勤勉だというのは、昭和にはいってからですね。きっと。
無断欠席、職務放棄の目を覆いたくなるような怠慢に対しても驚くべき寛容で、厳しく統制することはなく、現実的な対処法で運営していくという、とてもしたたかさというか、変な意味での根性を見習いたいものです。はい。
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官僚というと、今時だと忖度、改竄、隠蔽とかネガティブなイメージが浮かんでくる。高級官僚ではない一般の公務員というと、真面目に働いているというイメージが今でもあるだろう。
古代の日本が大陸の唐などに倣って、天皇を頂点とした律令国家となり、それに仕える官僚たちもさぞかし真面目に働いていたとばかり考えていた。、しかし、そうではなかったという話である。その怠慢ぶりもすごい。重要な儀式には出てこない、勤務時間がルーズ、転勤先には行かない、行ったら行ったで、その地で私腹を肥やす。
そんなではさすがに、今でいうところの懲戒処分や刑事罰をくらう。しかしそれが本来の規定とか通達より、かなり緩々の運用となっていたのだ。出世しなくてもそれなりに食っていける貴族(元は豪族)のなれ合い社会だなのだ。
儒教思想が国内に定着したのは、江戸時代以降だから、中国のマネをし始めた古代の日本は、のんびりした緩い社会だったのだろう。
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目次からもう面白い。儀式に出ない、無断欠勤、遅刻…などなど古代の官人たちはこんなに怠慢な態度であり、それを国家として許容していたことが現代とはあまりに違い、笑いながら読んだ。だが後半で不正を働く官人の様子が語られるようになると、この怠慢の陰で当時国民とも見なされていない市井の人々がいかに苦しんだのかに思いをよせてしまい、もう笑えなくなった。特権を許されると、職務を果たさずに特権だけを享受しようとする、現代にもいる人間や組織の姿と重なった