紙の本
後味が、悪ッ
2022/04/08 05:32
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
本当に読んで嫌な後味の残る作品ばかり……でした。出てくる女性が、だれも好感度ゼロ。自分のことばかり考えている人間ばかりでした。
紙の本
全体的にもう一つでした
2021/07/01 21:08
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まなしお - この投稿者のレビュー一覧を見る
杉村三郎シリーズの最新刊です。中編が三作品収録されている。「絶対零度」には救いがない。本当にキツい話だ。宮部みゆきらしくないと思う。「華燭」は、まぁよく出来た話だ。ちょっと状況に無理があると思うところもあったが。表題作は、途中で希望のある終わり方を期待したのだが。全体的にもうひとつでした。
投稿元:
レビューを見る
かなり迷惑な女の人にまつわる3編の中編.どれも読んでスッキリとはならないのだけれども,それが杉村三郎シリーズの味.今回も苦みと渋みの効いたおいしい作品でした.
投稿元:
レビューを見る
【私立探偵杉村vs.“ちょっと困った”女たち】自殺未遂のあと消息を絶った主婦、訳ありの家庭の訳ありの新婦、自己中なシングルマザー。ちょっと困った女たちを相手に杉村が奮闘!
投稿元:
レビューを見る
第一話
某有名私立大学のサークルの飲み会で睡眠誘発剤を使い女の子たちに悪戯をしたニュースを思い出してしまいます。
第二話
ここまでしてくれる娘は現実には居ませんよね。小説、ドラマにしてはいけないツッコミ
第三話
読者の皆さんは加害者が可哀想と思う気持ちが強いのでしょうか?それとも被害者が可哀想と思うのでしょうか?
何度もトライしてるのだけど
竹中家の家の間取りが頭の中で描けない。次回ぜひ間取り図おまけで付けてくれないかしら?ドラマ化もぜひ
投稿元:
レビューを見る
このシリーズは好きだけど 今回のはかなり後味の悪い話だった。
特に「絶対零度」は・・・
しみじみ哀しいものは辛いな
投稿元:
レビューを見る
待望の杉村シリーズの中篇。
派手な謎解きはないが流石宮部みゆき先生、グイグイストーリーに引き込まれて行く。
投稿元:
レビューを見る
<杉村三郎シリーズ>の中編集。今作は『探偵vs困った女たち』という謳い文句の通り、一癖も二癖もある女性陣に翻弄される杉村氏の奮闘ぶりが描かれている。冒頭の「絶対零度」から随分とヘビーな展開だが、続く「華燭」は比較的ライトタッチ。この作品とラストの表題作が【負の連鎖】を断ち切った者と断ち切れなかった者の対比の様になっている。同じ【選べなかった昨日】ではあれど、後者の背負う十字架を思うと、居た堪れない気持ちになってしまう。私立探偵は【持たざる者】であるべきだと考える私は、シリーズ第二期のこの路線が大好物です。
投稿元:
レビューを見る
文庫が出ている、と手に取りました。
なんとも…後味の悪いお話が最後でモンニョリしました。
このシリーズ以外あまりきちんと宮部作品を読んでいないのですが、悪人というか自己中心的な人物が良く出てくるなぁと思いました。前の話の困った部下の時も思いましたが、こんな社会人居るのかなぁ…と言うような露悪的というか、困ったちゃんがたくさんで大変そう。
そして悪人はずっと悪人なのもつらい。どこかで誰かがきちんと向き合わなくてはいけないんでしょうが、まぁそれは杉村さんの役目では無いのでしょうけれども…
最後の話は特にやるせない感じで読んでいて辛かったです。
投稿元:
レビューを見る
(あらすじ)
「絶対零度」
依頼人は年配のご婦人、娘が自殺未遂を起こし入院していると娘婿から連絡があった。ただ、自殺の原因が母親の過干渉だから来るなと言われた。病院に行っても門前払い、詳しい情報を何も知らされていないので、調べてほしい。
調べてみると娘婿は大学の先輩の言う事には逆らえない、それを娘が不満に思っていた事が判明し…
「華燭」
杉村は大家さんの竹中夫人と一緒に知人の娘、加奈の付添として加奈の従姉の結婚式に参列する事になった。加奈の母親・佐貴子と新婦・静香の母親・佐江子は姉妹だが佐江子が佐貴子の婚約者を奪った事で絶縁していた。挙式当日、同じフロアで挙式する花嫁が逃げ出し騒動なった。また静香の婚約者の元カノが乱入して、こちらも大騒ぎに…
「昨日がなければ明日もない」
大家の長男の嫁・順子とその娘・有沙が杉村を訪ねてきた。朽田さんという親子が依頼に来るかもしれないけど、関わらないほうがいいと忠告に来た。件の親子、特に母親の美姫は身勝手で理屈の通らないとんでもない女だった。
親権を放棄している前夫との子どもが交通事故に遭った。事故ではなく元姑が子どもを殺そうとしたと言い張る…
ーーーーーーーーーーーーーーーー
私立探偵、杉村三郎シリーズは本格推理とは言い難い。このシリーズは犯罪者ではなく普通の人達の心に潜む毒に焦点を当てていて、後味の悪いすっきりしない話が多い。
今回もどれもいやな話だ。だけど…面白い。読んでいると続きが気になって止まらなくなる。
『誰かSomebody』でも姉妹の確執が出てきたが、今回も3編中2編にクローズアップされている。姉妹は上手くいけば親友にもなりうるけど、ある意味ライバルでもある。そして拗れると宿敵のようになってしまう。厄介だ。
投稿元:
レビューを見る
単行本は以前図書館で借りて読んでいるが、文庫化されたので購入して再読。
中編3遍、安定の面白さ。
杉村シリーズの第5弾。前作で私立探偵になって少し仕事が入りだしてきたところ。
嫌な人物を描くとほんとうに嫌で読みたくなくなるが、最後につかまるのはそうでない人だった。
第6弾はまだだろうか。
投稿元:
レビューを見る
杉村三郎シリーズ5作目。彼が探偵となってからは2作目となる作品ですが、宮部みゆきさんらしい探偵シリーズものの形が、見えてきたような気がします。
収録作品は3編。最初に収録されている「絶対零度」の肌触りというか、真相が明らかになったときの冷え冷えとした感覚は、忘れがたい。
娘の夫が、自殺未遂をしたという娘に会わせてくれない。そんな依頼から始まる物語は、地道な調査と徐々に明らかになっていく人間関係が見もの。娘夫妻のどこかいびつな夫婦関係や人間関係が、明らかになってくるとともに、一方で見えそうで見えてこない騒動の真相が、話を引っ張っていく。
男性への依存、グループ内の力関係、傲慢……
どこにでもありそうな状況や、集団。そして誰もが心のどこかに持っていそうな、人間心理の醜悪な部分。それらが絡まりあい、暴走し起こった悲劇の正体。宮部さんらしい秀逸な作品ながらも、苦さが残る作品でもあります。
2編目は「華燭」
成り行きから披露宴の出席者の付き人をすることになった杉村三郎。しかし何が起こったのか、会場に着いたもののこの日行われる二つの披露宴が相次いで開催中止となり……
杉村三郎付き添いのもと披露宴に出席したがっているのは、小崎加奈という中学生。彼女がなぜ回りくどい方法で式に出席したがっているのか。
二つの家族を巻き込んだなんとも業の深い理由があり、さらにそれが回りまわって、彼女自身にもある傷を与えます。大人の世界の面倒さと、自分の関係のないところで、それが爆発する理不尽。彼女がそれをどう受け取って、今後どう成長していくのかもちょっと気になる。
宮部さんの描く子供は魅力的なキャラが多く、この加奈もいいキャラだったので、できればシリーズで再登場してほしい。
そして本筋である二つの披露宴の中止。その裏にある仕掛けと物語も面白かった。罪悪感の業以上に、女性たちの強かさも印象に残る作品。
そして表題作「昨日がなければ明日もない」
身勝手なシングルマザーが杉村三郎に持ち込んだ依頼は、「子供が殺されそう」というもので……
解説にも書かれていたけどシリーズの二作目である『名もなき毒』を思わせる展開。
身勝手でどこまでも自己中心的な女性に振り回される人たちの悲哀が、杉村三郎の調査が進むにつれ徐々に明らかになっていく。
ある人は人生を狂わされながらも、申し訳なさを覚え彼女との関係を断ち切れず、ある人は彼女の尻をぬぐいつつ、疲労と不満をためていく。
依頼主の身勝手さというものが警察のような公権力が入りにくい、というのがなんとももどかしい。
それは1編目の「絶対零度」のきっかけになった出来事でもいえることなのだけれど、周りは迷惑に感じていることでも、本人はそれを悪とすら思っておらず、自分勝手に行動する人はどこかにいるもの。
それだけなら「ただの困った人」で終わる可能性もあったのに、一線を越えると「困った人」との関係はもう戻れないところまでいってしまう。そしてそれを避けるために何ができたのか、と考えるとこれが一向にわか���ない。その理不尽さとやるせなさに打ちのめされそうにもなります。
この『昨日がなければ明日もない』から立科五郎という今後、シリーズに出てきそうな気配のする刑事が登場します。彼はある事件の真相が明らかになったあと杉村三郎に声をかけます。
「あなたもしっかり頑張りなさい、探偵」と。
これは読者への呼びかけでもあるように自分は思いました。
杉村三郎の探偵譚に出てくる人は、いずれも今の社会を生きる普通の人たち。その人たちが、ある人間、ある瞬間、ある感情に囚われ戻れない道を往った結果が、杉村三郎が立ち会う真実だと感じます。
普通の人がたどった道だからこそ、自分も状況が変わればここまで追い込まれるかもしれない、とも思うし、自分を悪とも思っていない人たちがいつ目の前に現れるのか、そんな思いも抱いてしまう。
杉村三郎は今の社会に潜む理不尽な悪や闇というものに常に立ち合い、必然それは読者にも突きつけられる。だからこの立科刑事の呼びかけは、作者である宮部さんが、杉村三郎を、ひいては読者をこの現実につなぎとめるための言葉のようにも思います。
闇はどこまでも深く果てはないように思えるけど、それでも闇を照らそうとする気持ちは必要なはず。杉村三郎の探偵譚は、今の社会や人間心理をリアルに描きつつ、闇を明らかにする挑戦でもあるように感じました。
2020年版このミステリーがすごい! 8位
投稿元:
レビューを見る
杉村三郎シリーズ第5弾。
宮部みゆきさんは、普通の生活圏のなかのどかにはいそうな、ちょっとイヤな人を描くのが本当にうまい。自分自身や身内の人がこういう人に関わったらどうしよう。とイヤな感情移入をしてしまうほど真に迫った小説でした。
投稿元:
レビューを見る
「希望荘」に続く杉村三郎シリーズ。
とは言え、新潮文庫「ソロモンの偽証」6巻収録の「負の方程式」にも私立探偵として独立後の杉村三郎が登場しています。自分は今年の初めに「ソロモンの偽証」を通読した感想が鮮明(というか鮮烈、くらい)だったので、杉村三郎との再会もあまり「久しぶり」という感じはしません。
私立探偵として事務所を開くまでに長編3本を使った杉村三郎でしたが、就任後は中編数本が文庫1冊に収録された連作短編(連作「中編」って聞いたことないので、一応連作「短編」ですが、それぞれは中編程度のボリュームがあります)のスタイルが続いています。
人としての存在を丸々使って事件と向き合っていた(そうしなければならない事件だった)就任前と違い、今は来所した依頼者と探偵の関係なので、これくらいの枚数がちょうどいいのかもしれません。
ところで、杉村三郎が登場するこのシリーズは、宮部みゆき作品としてはいろいろと異色だと思います。どのあたりをそう感じるのか、思いつくままに挙げてみます。
まずは、シリーズとして長続きしていること。
著者の作品は、1作品が長大になりがちな一方で、同じ登場人物、同じシチュエーションでの続編やシリーズが長く続いたことがあまりありません。だいたいが文庫2冊程度で放棄されています。
そんななか、このシリーズは文庫5冊目、私立探偵就任後はほぼ同じ長さの中編で杉村三郎の活躍を読むことができ、ようやく定着した「シリーズ」らしきものを消滅の心配なく読むことができるようになったと思います。
加えて、ストーリーの年月が特定されていること。
前「希望荘」の解説でも言及されていましたが、2011年3月の東日本大震災は著者の心に大きな痕を付けていったようです。
本作内では3編ともいずれも日付が最初に明示されています。
そして、そこから派生して、道具立てが急に現代に追いついたこと。
初期作と最近作を行ったり来たりしながら読み継いできましたが、途中時代ものばかり書いていた時期があったからか、近作の時代物でない「ソロモンの偽証」では主要な登場人物が中学生、時代背景はバブル期とせいぜいポケベルくらいを登場させておけばよかったなか、2011年11月3日と日付まで特定された舞台を使うことになった関係上、道具立てや言葉、価値観も「現在の読者」が「現在の物語」として違和感なく読めるものになりました。
フェイスブックやスマホ、ホームページや「ディスる」「キョドる」と言ったまあ若者用語に至るまで織り込まれていて、直前に読んだのが「龍は眠る」だった自分としては今昔の感を強くしました。
こういった言葉や小道具を使うのは主人公を取り巻く人々で、「中年に差し掛かった」主人公自身はそれを見聞きしているものの、積極的に自分で使っているわけではない状況なのも不自然さを感じない大きな理由になっていると思います。
ただ、2011年と特定されると、スマホは今ほど普及していなかったし、faceboookも今ほど一般的ではなかったような…。あと、他人のスマホの位置情報を手掛かりに持ち主の居場所を追跡する記述がありますが、どんなウ��ザードのようなハッカーでも当該端末を手にすることなくその位置情報を入手するのは無理があります。この辺りは誰かにもう少しちゃんと考証してもらったほうがよかったのではありますまいか。
さらに挙げると、「ハードボイルド」風が貫かれていること。
饒舌な文章を書くのがおそらく好きなのであろう著者が、固めで一つひとつが短い文体で心情より事実を中心に記述していくというハードボイルド風の文体を貫いています。
でも、事務所は東京の下町、三世代4家族同居の家の一角に間借りした事務所、最初の依頼の報酬は「ゴミ置き場の掃除を半年代わってもらう権利」のお話ですから、どうしてもハードボイルドにはなりきれませんw。
作者が範を取ったマイクル・Z・リューインの「アルバート・サムスン・シリーズ」は「ソフトボイルド」と呼ばれているそうです。杉村三郎シリーズもハードボイルドから「風」が取れないのはやむを得ないところでしょう。
さて、異色とは言ったものの、作品はしっかり宮部みゆきの現代ものです。すんなり没頭して、あっという間にラストまで引っ張っていかれました。
一読した後、前作「希望荘」のことがちょっと気になって思い返してみました。手掛かりは自分のレビュー、読了はほぼ3年前です。
で、「希望荘」収録の4話とも、いずれもどんなシチュエーションのどんなお話だったのかはよく覚えています。「聖域」でのサンクチュアリを訪問したシーン、「希望荘」の田中帽子店、「砂男」の喫茶店(じゃなくてうどん屋だったっけ?)での面談シーン、「二重身」の依頼人の事務所来訪に関してのごたごたなど…かなり細かいことまで覚えているのに、扱われていたのがどんな事件だったのか、があやふやです。宮部的舞台の上で宮部的語りに魅了されて終わる、自分の宮部作品のいつもの読み方だなあと呆れてしまいました。…まあ、扱われていた事件自体が目の前で殺人が行われていたような生々しい物がなかったからかもしれませんが。
ところで、作者はちょくちょくインタビューがネットに掲載されていて大変楽しめます。
この本についても、これ
https://books.bunshun.jp/articles/-/4537
が大変楽しめました。あと、シリーズのポータルになっているここ
https://books.bunshun.jp/articles/-/4513
も便利です。
対談ならまだしも、インタビューとか書評って本になって読めるのが少ないんですよねえ…。インタビューだけまとめるのが難しいなら、文庫が改版されるときに収録してくれたりしないものでしょうか。
この「昨日がなければ明日もない」では、杉村三郎は重たい事件に向き合わざるを得なくなってしまいました。
以下、各話ごとに一言ずつ。
「絶対零度」
悪しき体育会系的上下関係が招いた悲劇。
作者は筥崎毅の言葉を借りて単に年齢や経験年数が少し上であると言うだけで後輩や義弟を見下す鼻持ちならない態度を、「俺様」と語らせています。一言で表しにくいそんな態度も、カギカッコつきで「俺様」と定義するといかにもふさわしい感じになります。
ちなみに、「負の方程式」の日野岳志も似たようなタイプでした。
ただ、高根沢輝征に関し��は、「古いタイプの体育会系」ではなく、「間違っている」「インチキな体育会系ですよ。インチキ体育会系を口実にした、単に俺様な人だった」と現役のホッケー愛好会所属の城島翔君(道具立てに止まらず、登場人物の名前もアップデートされています)に語らせています。
人間の悪意が個別に具体化したタイプについては、「ペテロの葬列」で自己啓発セミナーやらマルチ(まがい)商法を取り上げていたのが記憶に新しいのですが、日野といい高根沢といい、立て続けに学校に関係する具体的な悪意が登場しました。「ソロモンの偽証」で学校と向き合ったことで、その周辺に渦巻く具体的な悪意に改めて怒りを覚えたのでしょうか。
加えて、「希望荘」の「聖域」以来、悪意と向き合い続けている杉村さんですが、今回の事件では主犯はともかくとして、佐々優美の浅はかな振舞に何ともやりきれない気持ちになったのではありますまいか。俺様ジュニアの知貴はもちろんですが、自分のちっぽけなプライドを守るために他人を踏みにじることができる優美は生涯田巻の影に怯え続けるべし、と強く思います。
ラストで立科警部補が登場して、これまでパイプがなかった警察とつながりができました。ごっこ遊びみたいだった探偵事務所にも魂が入ってきました。
シリーズの今後に期待です。
「華燭」
結婚式に猟銃を持って乗り込もうとした「スナーク狩り」をちょっと思い出しました。
杉村三郎が赤の他人の披露宴に出席する経緯から、ウェディングドレスの花嫁が逃亡するところ、そしてそんなことになった動機や真相まで、突拍子もないシチュエーションの連続です。それなのに、「絵空事感」を全く感じさせずに読者をつかんでラストまで放さない作者の筆力に相変わらず感嘆するばかりです。
あと、事務所の大家、竹中松子の肝っ玉の太さが好感度高い感じです。今後もシリーズの主要人物として絡んできて欲しいと思います。人物評もアップデートされています。ワンピースのビッグ・マム、だそうです。これはなかなか便利な例えですが、イメージ固定されちゃったかもw。
「昨日がなければ明日もない」
クレーマー、モンスターペアレント、ストーカー。
シリアルキラーやサイコパスにはもちろん近寄りたくありませんが、そんな極端な人はなかなか身近にはいません。
でも、そこまで過激でなくとも近寄りたくない人たちは残念なことに世の中にたくさんいます。
クレーマーやモンスターペアレント、ストーカーの類です。
人生の限られた時間を有益に使いたい、つまらないことにかかずらいたくない(とまで思考化しているかどうかはともかく)普通の人たちにとって、他人はすべて自分のために存在している、他人を煩わせることが楽しい(とまで考えているかどうかはともかく)こういった輩が身近にいるだけで不幸です。
杉村三郎は「名もなき毒」で原田いずみと対峙した経験があるので、竹中家、そして読者の心配を他所に、やめておいたほうがいいと言われた依頼をあっさり受けてしまいました。
この時点で、事態を間違いなくなめていたのでしょう。
「クラスの備品を盗む。クラスメイトの持ち物も盗む。嘘つき。いじめをでっちあげて泣く。そういうことで先生に注意されると、お母さんが学校に押しかけてきてぎゃんぎゃん喚く。好きな男子につきまとう。嫌いな女子の悪口をツイッターに書き込む。それも万引きしてるとか、嘘ばっかりなんだけど」
「あと、給食費をずうっと払ってなかった。本人が自慢してたから間違いないです」
「式が始まる前、教室で待機してるあいだじゅう、アリーだけ私立の中学に行くのはずるい、制服が可愛いから貸せとか言ってからんできて、ホントうっとうしかった」
これ聞いただけで自分だったら絶対関わり合いになりたくない親子ですが、娘の父親である杉村三郎さんは、不遇な環境に生まれた十二歳が、杉村さんの事務所にやってくる直前にどうやら泣いていたらしいことにほだされてしまいます。
それにしても朽田美姫(三紀)、漣親子の描写のうまいこと。いろいろなタイプの悪人を書いてきた作者ですが、こういう身近で本当に鬱陶しいタイプ(それも母娘揃って!)がレパートリーに加わりました。杉村三郎探偵事務所としては、シリアルキラーよりこういう人たちとの付き合いが増えてくるのかもしれません。
ラストはそのリアルな「手に負えなさ」があってこそのカタストロフィでした。
犯罪加害者家族を描いた作品はありましたが、こういうモンスタータイプの家族の悩みが描写されていた作品は初めてで、新鮮味があります。書名にも取られているタイトルの意味がわかると、やりきれなくなります。
「絶対零度」で顔見世した立科警部補が再登場。杉村三郎にとって厳しい一言をかけてくれました。シリーズの続きが楽しみです。
投稿元:
レビューを見る
中編3篇から成るシリーズ最新作。前作を単行本で読んだこともあり、だいぶ久しぶりな感じ。そして、個人的には宮部作品も結構ぶり。圧倒的なストーリーテリングに改めて恐れ入りました。最初の物語が個人的にはベストだったけど、物凄い斬新だったり、アクロバティックだったりする訳じゃないのに、読ませ方でここまで惹き込まれるとは…。ホント、絶句って感じの凄さでした。