紙の本
「門のある家」が好きな人は信用できる
2022/01/09 22:53
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
星新一氏の生涯については作者も言っているとおり、最相 葉月氏の「星新一ー一〇〇一話を作った人」という決定版が出版されている(私も既読だ)、しかし作品論というのはこの評論を読むまではおめにかかったことがない、それは作者のいうとおり、評論家にとって星氏の作品は小説ではなかったのかもしれない。作者はかなり星氏の作品を読み込んでいる、私が完全に忘れてしまっていた作品も登場すると思っていたら星新一読書会を主宰されている方だった、納得、納得。この人の評論が信用できると思ったのは、ベスト作品のひとつに「門のある家」を選んでいること、私がこれまで読んだすべての小説家の作品の中でベストの一つと思っているあの作品を褒める人は信頼できるという勝手な思い込みからだ
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投稿者:6EQUJ5 - この投稿者のレビュー一覧を見る
発行は2021年10月。死後も星新一の人気は続いていると、嬉しくなりました。貴重な一冊ですが、本書は読んでみて期待したのとは違う感じでした。ひたすらネタバレが続く。もっと別な切り口があったのでは?と思います。
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封建主義者で支那の思想を研究する著者が、星新一大先生の書評をする。
万物をシニカルに見、演劇を理解できなかった星新一大先生はいかなる本を書いたか、をやる。
先生はヒトコマ漫画が倉に十杯くらゐあるのに、どっかで日本のマンガ関係を「沸騰する水」と称してゐたのに、ご本人はあんまり読んでないってあの読んだ作品て大友克洋大先生のアレである可能性があるんすかマジっすかえぇっ
大先生のしたたかなアレと作風に支那のアレを見る。
オーラルって、星新一大先生の影響受けまくった新井素子先生が口承といふ演習をしてゐたと言ふのも引き、オーラルなものとしての星新一関係を唱へる。へー。
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実に読み応えがあった。日本SFを立ち上げた最功労者というべき星新一に関する評伝ときたら最相葉月の著書しか見当たらない。本書は先駆の『一〇〇一話をつくった人』にダメ出しをしていて、そこも面白かった。
1000話を超えるショートショートは全て読んだつもりでいるのだが、タイトルだけでは内容と結びつかない話が多くて、そこは困った。
星新一がアスペルガー症候群、言われてみればご指摘いちいちごもっとも。優秀な人には大なり小なり、そういう部分があるのではないか。
『城のなかの人』は、以前から自伝的だと考えていた。著者と見解が一致して我が意を得たり。
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中ニ男子の必須アイテム、星新一さん。
僕も、知的青春の入り口で大好きになった作家です。
ちょっとませた友達からショートショートを借りて夢中になって読んだものだ。
星さんの作品は登場人物の感情や人物像をほとんど描いてないものが多い。ストーリーの枠組みだけ提示される。だから短い。
その理由を、著者は、星さんがアスペルガーだったからだと解釈する。
なるほど、そうかもしれない。
そして、空気を読むために丹念に人間関係を観察したこそ、常人じゃ気づかないような本質的で普遍的な真理を描けたというところなのだろう。
そりゃ、中二にウケるわけですよ。
人物像とかかったるいものすっ飛ばして、社会の仕組みみたいなものが提示されるわけですから。
妙に腑に落ちた。
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マジで情報量エグい。
星新一がいかに作品を生み出したかが評論を通じて肌感覚で伝わってきた。それでも、扱えたのは全作品の4分の1という。ひえー。
アスペルガー。寓話。筒井康隆。など、星新一という謎に満ちた実態を浮かび上がらせるために数多くの切り口で解説を試みている。どれも納得のいくものばかりで、なるほどと思うものが多かった。
特に、エピローグで語られたケプラーとガリレオの関係を星新一と筒井康隆の関係に置き換える試みがよかった。
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星新一と言えば、ショートショートですね。
ここから読書遍歴を始めた人は多いと思い
ます。
その星新一氏の人物像に迫ったノンフィク
ションと言えば、最相葉月氏の「星新一」
が有名ですので、この本では作家自身より
も、主に作品の中身に触れています。
ジャンル別、発表年代別など、様々なアプ
ローチで星作品を考察します。
ラストの意外な結末、エヌ氏エス氏という
名前が主人公であるがゆえの「人物」が見
えない作風などは、実は割と初期の頃だけ
とされているそうです。
むしろ中期以降はそれが変容していくなど
は初期しか知らない読者ないは意外に思え
るかもしれないです。
もう一度星作品を読み返して「あの頃の未
来」に思いを馳せたくなる一冊です。
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星新一の作品・作家論。
中学生の読むものという世評はおかしいと思うが、未来を見通していたというのは過大評価では。
極めてシニカルなところが作品の特徴であるが、そこにとどまるところに飽きたらなかったので次の作者を求めたのではないか。
サブタイトルの予見・冷笑・賢慮の人は当たっていると思うが、その限界も指摘しても良かった。
いくら賢人でも星新一には世の中を皮肉に見ているだけで、世の中を変えることはしない以上、世慣れた大人から広く共感を得ることは難しいと思う。
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星新一はSF作家でもなく、文学者てない。哲学者であると言う方がピタリとはまる。未来を予言しようとしていたわけでなく普遍性や人間の本質的な欲求を書いていた。それでいて現実主義者であったといえる。ジャンルという社会インフラを生み出した。新規事業家でもある。
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「星新一とは何か。シニカルにきらめく千余のショートショート。高度に知的なエッセイの数々。戦後日本をはるか遠方から問い直し、近代の人間観を解体しつくしたSF小説群。圧倒的な知名度にもかかわらず、あんなものは小説ではないとされ、批評の対象とされてこなかった。日本最初のSF作家にして懐疑的思索者たる星新一の全仕事を読み抜き、ポストコロナを生きるための哲学を浮かび上がらせた、壮大なる企て。
目次
プロローグ
―「流行の病気」『声の網』「おーいでてこーい」ほか
第1章 これはディストピアではない
―「生活維持省」「白い服の男」「コビト」ほか
第2章 “秘密”でときめく人生
―「眼鏡について」「雄大な計画」「おみそれ社会」ほか
第3章 アスペルガーにはアバターを
―「地球から来た男」「肩の上の秘書」「火星航路」ほか
第4章 退嬰ユートピアと幸せな終末―「妖精配給会社」「最後の地球人」「古風な愛」ほか
第5章 「小説ではない」といわれる理由
―「霧の星で」『人民は弱し 官吏は強し』「城のなかの人」ほか
第6章 SFから民話、そして神話へ―「マイ国家」「門のある家」「風の神話」ほか
第7章 商人としての小説家
―「SFの短編の書き方」「とんでもないやつ」「第一回奇想天外SF新人賞選好座談会」ほか
第8章 寓話の哲学をもう一度
―「老荘の思想」「SFと寓話」「いわんとすること」ほか
エピローグ
―「錬金術師とSF作家」「小松左京論」「科学の僻地にて」ほか
〈浅羽通明〉
1959年神奈川県生まれ。早稲田大学法学部卒業。星読ゼミナール主宰。著書に「ニセ学生マニュアル」「右翼と左翼」「君たちはどう生きるか」など。