ロボット工学はロボットをつくる技術のみでない
2022/03/26 20:09
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投稿者:雑多な本読み - この投稿者のレビュー一覧を見る
ロボット工学というとロボットをつくる、使う技術と思うのが普通だろう。筆者は大阪大学の工学系教授というからなお更か。本書を読むとごく一部しか見ていないことがわかってくる。
表紙を見ると「ロボットと人間」という表題であるが、副題に「人とは何か」と哲学的な呼びかけがある。まず、ロボットを研究することは、人間を深く知ることであるとする。
プロローグで人間への興味と取り上げる。人間への興味が先なのか、ロボットへの興味が先なのかと思ってしまう。
1章でロボット研究から学ぶ人間の本質
2章で対話ロボットとロボット社会
3章はアンドロイドの役割
4章 自律性とは何か
5章 心とは何か
6章 存在感とは何か
7章 対話とは何か
8章 体とは何か
9章 進化とは何か
10章 人間と共生するロボット からエピローグに至る。
この章立てを見ると、ロボット工学の解説ではなく、表題を人間とロボットと順番を変えたくなるほど。
ここで紹介されるロボットは産業ロボットではなく、人間に近づいていくアンドロイドだからか。絶えず、心理学のテキストのようにロボットにアプローチする。あるいは、人間にアプローチする。
ロボットとの付き合い方なのか、ロボットが人間とどう付き合うのか。人間がロボットにどう反応するのか。例えば、高齢者の認知症の進むことを遅らせるロボットとの対話や人間同士だと余計に進んでしまうとか考えさせられることが多い。
人間の思い込みをロボット工学で明らかにするのではと思ってしまう。
勉強させられることの多い新書である。
最新のロボット技術と、ロボット哲学について言及した1冊です
2021/12/21 07:09
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投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者はロボット工学の最先端の研究家です。
著書では著者が関わった最新のロボット技術が惜しみなく紹介されています。それでいて、ロボットはどうあるべきものか、という「ロボット哲学」にも言及しており、奥の深い1冊となっています。
ロボット開発の第一人者による、ロボットと人間の違いに迫る1冊
2023/12/06 17:43
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投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
ロボットの研究で有名な石黒浩氏による、ロボット研究者の視点で「人間とは何か」という疑問に答えることに挑んだ1冊。
著者が究めたいのはロボットではなく、あくまでも”人間”そのものであって、そのための手段としてのロボット研究だ、との印象を受けます。
人間の”心”とか”意識”のメカニズムをまず解明し、それをロボットに実装するという進め方ではなく、出来るだけリアルな人間の動きや外観をまねて(本書によれば文楽人形の動きも参考にされたとの事)、結果としてそのロボットを見た人がそのロボットに”心”や”人間らしさ”を感じたならば、その段階でロボットに実装された機能を再検証して”心”や”人間らしさ”を再定義しようという方針で進められていることが説明されています。
より人間らしいアンドロイドを目指して、顔や表情をよりリアルに作りこもうとすると、完全に人間のコピーと言ってよい水準に達しないと、却って不自然に見える”不気味の谷”という現象に陥るというのは興味深いトピックスでした。リアルさよりも、表情は抽象的にして、人間の想像力に委ねるほうが、より好感度を持たれて受け入れられるという結果が出ているそうです(アイボなんかがその例かもしれません)。誰をモデルにしたところで、人間の好き嫌いはありますから、その方が広く受け入れられるという事ですね。
本書後半では心、存在感、対話、体、進化に細分化して述べられています。特に興味深いのは”体”についての記述で、将来的には人間は自分の体以外のロボットの手や足も自らの手足のように感じて操れるようになるだろうとのこと。ここまでくれば、もはや障害を持っておられる方も普通の生活が実現できる世の中だと言えます。
非常に興味深いテーマについて、その研究の第一人者による著書ということで面白かったです。ただ、多くの人が手に取りやすいように著者としてはかなり大胆に簡略化されたのではないかと言う気がします。それぞれのトピックスについて、もう少し深堀してもらっても良かったように感じました。
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<目次>
プロローグ
第1章 ロボット研究から学ぶ人間の本質
第2章 対話ロボットとロボット社会
第3章 アンドロイドの役割
第4章 自律性とは何か
第5章 心とは何か
第6章 存在感とは何か
第7章 対話とは何か
第8章 体とは何か
第9章 進化とは何か
第10章 人間と共生するロボット
エピローグ
<内容>
ロボット工学者の研究の大成的な本。著者はロボットを研究しているが、そこに目的があるというより、「人間を知りたい」のでロボットを作っている感じ。この本でも、4章から9章まではそんな様子を描いている。エピローグではそれがさらに明らかになる。そして著者の研究はユニークな結論を導き出している。常識的には意外である。
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プロローグ
人間への興味
ロボット学
ロボット研究と社会の期待
人と関わるロボットの普及
コロナ禍とロボット
リモート会議システムの問題点
遠隔操作ロボットへの期待
遠隔操作ロボットと自律ロボットの違い
1章 ロボット研究から学ぶ人間の本質
ジェミノイドの研究開発
アイデンティティとは何か
ロボット社会
なぜ人間型ロボットが必要なのか
知的システム実現のための構成的方法
ロボットを用いた人間理解の研究
知能
身体性
マルチモーダル統合
意図や欲求
意識
社会関係
ロボット開発のロードマップ
マルチモーダルチューリングテスト
2章 対話ロボットとロボット社会
対話サービスロボット
家庭内対話ロボット
ホテル対話サービスロボット
語学教師ロボット
高齢者用の対話サービスロボット
自閉症対話サービスロボット
レストラン対話サービスロボット
ロボット社会の実現
3章 アンドロイドの役割
アンドロイドとヒューマノイド
アンドロイドの構造
偉人アンドロイドの例
アンドロイドの製作方法
声と語り
アンドロイド製作における重要な問題
アンドロイドの基本原則
社会的人格とプライバシー
アンドロイドになることによる人間の進化
4章 自律性とは何か
人間の意図や欲求
サブサンプションアーキテクチャ
ロボットの意図や欲求
音声に伴う人間らしい動作
対話を続ける傾聴機能
間違いを正す機能
自律対話アンドロイド「エリカ」
マルチモーダルチューリングテストへの挑戦
選好モデルと人間関係
自律性の本質
5章 心とは何か
ロボットに感じる心
ロボット演劇「働く私」
アンドロイド演劇「さようなら」
アンドロイド演劇「変身」
心とは?
6章 存在感とは何か
アンドロイドに感じる存在感
不気味の谷
遠隔操作ロボット「テレノイド」に感じる存在感
対話ロボットのミニマルデザイン「ハグビー」
想像を引き出す二つのモダリティ
7章 対話とは何か
二体で対話するロボット「コミュー」
音声認識なし対話
意図認識なし対話
洋服を販売するアンドロイドアンドロイドとのタッチパネル対話
人間どうしのタッチパネル対話
対話の本質
8章 体とは何か
遠隔操作アンドロイドへの操作者の適応
脳波による遠隔操作
脳とアンドロイドの体の繫がり
侵襲型ブレインマシンインターフェース
スマートフォンと脳
第三の腕
体の本質
9章 進化とは何か
進化における二つの方法
人間と技術の関係
人間は無機物から生まれて無機物に戻る
新たな人類の誕生
無機物の体によるカンブリア爆発
10章 人間と共生するロボット
スマートスピーカーの発展
命令する関係から共生する関係
自動運転の電気自動車と対話ロボット
対話ロボットが変える未来
アバターの研究���発
新たな社会問題
人間アバター・ロボット共生社会
エピローグ
未来を考える力
未来は自分で創るもの
ロボットを通して人間を考える
未来は可能性に満ちている
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すこぶるおもしろい!石黒浩先生は良く見かけるのだけど、ロボットに取り組む意味を理解していなかった。
この本でその意味がよくわかりました。
特に最後の二章は大いに目を開かされました。
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ロボットの研究で有名な石黒浩氏による、ロボット研究者の視点で「人間とは何か」という疑問に答えることに挑んだ1冊。
著者が究めたいのはロボットではなく、あくまでも”人間”そのものであって、そのための手段としてのロボット研究だ、との印象を受けます。
人間の”心”とか”意識”のメカニズムをまず解明し、それをロボットに実装するという進め方ではなく、出来るだけリアルな人間の動きや外観をまねて(本書によれば文楽人形の動きも参考にされたとの事)、結果としてそのロボットを見た人がそのロボットに”心”や”人間らしさ”を感じたならば、その段階でロボットに実装された機能を再検証して”心”や”人間らしさ”を再定義しようという方針で進められていることが説明されています。
より人間らしいアンドロイドを目指して、顔や表情をよりリアルに作りこもうとすると、完全に人間のコピーと言ってよい水準に達しないと、却って不自然に見える”不気味の谷”という現象に陥るというのは興味深いトピックスでした。リアルさよりも、表情は抽象的にして、人間の想像力に委ねるほうが、より好感度を持たれて受け入れられるという結果が出ているそうです(アイボなんかがその例かもしれません)。誰をモデルにしたところで、人間の好き嫌いはありますから、その方が広く受け入れられるという事ですね。
本書後半では心、存在感、対話、体、進化に細分化して述べられています。特に興味深いのは”体”についての記述で、将来的には人間は自分の体以外のロボットの手や足も自らの手足のように感じて操れるようになるだろうとのこと。ここまでくれば、もはや障害を持っておられる方も普通の生活が実現できる世の中だと言えます。
非常に興味深いテーマについて、その研究の第一人者による著書ということで面白かったです。ただ、多くの人が手に取りやすいように著者としてはかなり大胆に簡略化されたのではないかと言う気がします。それぞれのトピックスについて、もう少し深堀してもらっても良かったように感じました。
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新書なので箇条書き感は否めないけど面白いトピックばかり。
脳と身体の繋がりはかなり曖昧で、ロボットアームや羽を生やしても脳波で制御できるらしい。ピーター2.0もいるし可能なのか。
ロボットの演劇や詩の朗読はかなり感動的ということでいつか見てみたい。人間性は外面に表れている情報を受け取った人の中で処理して感じるもの、ロボットにも感じうる。
人はロボットに視覚、聴覚、触覚、嗅覚など様々な要素で人間らしさを感じるが、全てを人に似せなくても視覚と触覚など2つ程度の要素を感じられれば人のほうで補完して人気らしさを感じることができる。あまり似せすぎると却って機会らしさが目立つし、不気味の谷という現象もある。
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久しぶりにスゴイ本に出会ってしまった。
ロボットの研究を通じて人間の本質が浮き彫りになる。
なかでも8章の「体とは何か」におけるアンドロイドと人間の間におこる脳波のシンクロはとても興味深い。
非常に興味深い内容で夢中で読んでしまいました。
おすすめです。
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アンドロイドと言うと、実物を見たのは
桂米朝のみ。
ロボットと人間
といえば、鉄腕アトム の苦悩を連想してしまう。
あるいは、スピルバーグのAIの主人公の苦悩を連想してしまう。
あの個性的な風貌の石黒浩博士/栄誉教授の著書が岩波新書赤版におさまっている。
体調の良い時にサブノートつけながら読まなければ、
十分に理解できないだろう。
工学書、それもロボット工学というよりは、
心理学の本/人間研究の本ではないかという気がしている。
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ロボットの制作を通して人間を探求する。構成的方法って言うのだそうな。確かに。すごく納得できる。
驚いたのは、命令伝達システムの研究成果として、脳波で機械に命令を伝えることは既に実現できているらしい。これってガンダム世界のサイコミュシステムだよね。さらに脳の機能を機械を使ってパワーアップすることも可能なんだそうだ。つまり電脳化の技術も夢物語ではないってこと。いよいよ人間を再定義することが求められる時代になってきたんだね。
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幸せとは相対的な価値観であって過去にも未来にも幸せも不幸もある。大切なことは未来は幸せにならないかもしれないけれど、それでも未来に向かって人間は生きていくということである。未来を考える力を持ったがゆえに、未来について期待が持てなくなったとき、人間は動物よりももろく生きる力を失ってしまう。そこに人間の悲しい差ががあるように思う。
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石黒教授は最高に面白い。アンドロイドを
通して、ずーーっと
人間とは何かという謎を考えすぎて、
この本を読むと
ちょっと狂った領域に
到達しちまった発言もあるように
感じました。
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読みやすい
著者はロボット工学者だとばかり思っていたけれど、サブタイトル「人間とは何か」にあるとおり、人間を理解したいという思いで非常に学際的に(認知心理学、演劇etc.)活動されている方だとわかった。
ロボットを用いた構成的方法による人間理解(開発したロボットから人間らしさを感じるとすれば、そのロボットには人間らしさの何かが実装されており、そのロボットを分析することで人間らしさとはなにか理解することができる)、おもしろい
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構成的方法というロボットを用いた人間理解について解説。著者の研究は単なる工学的領域に留まらず学際的で興味深いものがあるが、その応用範囲は現時点では自然科学系に留まっているように思える。今後、本格的なロボット社会がくるようになると、社会科学系や人文科学系の領域も無視できなくなると思われるが、これらの領域の研究者が「ロボット学」にどれぐらい興味をもって横断的に取り組むのかが未知数であり、課題であるように思える。個人的には科学哲学や倫理との関係に興味があるが、ロボットには意識や心がないのは明らかなので、どこまで近づけるのかがチャレンジだとは思うが、そこから「人(の意識や心)とは何か」についてどのような発見が生まれるのかに期待したい。