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【石綿による健康被害の現場を歩く】「静かな時限爆弾」と呼ばれ肺がんなどを発症させるアスベスト(石綿)。自らも患者である作家が、現場を歩いて綴った連作小説集。
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自身が被害者であることで、症状や痛みの表現など、大変痛々しく読みました。
奇跡の鉱物に対する評価をやり過ごし、人間の都合を優先した結果のしっぺ返し。誰が命を守るのか。水俣や福島となんにも構図は変わらない。
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「あまもり」が現実味があった。1970年代の中古マンションに住んでいる夫婦が、天井をいじったことでアスベストの人体に対する悪影響に目覚めていく・・・
我々の社会にはアスベスト被害が存在するという「現実」を思い出させてくれた。
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佐伯一麦という作家の作品と出会ったのは、新潮文庫の新刊「ア・ルース・ボーイ」でした。1994年の出版ですから、今から30年前です。「あっ、こんな作家がいるんだ!」と思いました。「ショート・サーキット」(福武文庫)、「雛の棲家」(福武書店)と読み継いでファンになりました。
作品の底には、どの作品にもイガイガとした現実との接触感に対するいら立ちがながれていて、それは苦悩とか自己嫌悪とか言う、主観的な判断ではない直接的な痛みでした。勝手な言い草ですが、このイガイガ感に惹かれて読み続けてきました。
作家の肉体を苦しめ続けるイガイガがこの作家の文学を支えているというのがぼくの思い込みです。
その佐伯一麦がイガイガを直接作品化したのが本書でした。読み終えて感無量ですね。ここの作品のよしあし以前に、30年、書き続けてきた作家の今を思い浮かべました。
「やあ、アスベスト君」
作家の、そんな呼びかけが木霊している作品集でした。
ブログにも、ウダウダと、案内しました。
https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202205090000/
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アスベストの被害に苦しむ人、不安を抱える人の生活の一コマを描くことで、アスベストの問題が普段の生活の中にあったことが浮かび上がってくる。誰もが建築の現場や電気工事などその利点を享受してきて、苦しみは現場の人たちだけに負わせてしまっていることは原発の問題にも通じている。
「うなぎ」は数十ページの話ながら、鰻屋の大将になれずに逝ってしまった男性、クボタの隣の団地を選んでしまったその母親、彼らを取材した語り手それぞれの人生が立ち上がってきて圧倒的。
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静かな時限爆弾のアスベスト。身近な建材に健康被害が認知されたにも関わらず30年以上使用された。今後それが使用された家やマンションが解体された時の管理が不安。また、震災や水害で被害を受けた家やマンションからもアスベスト飛散が考えられる。過去の問題がまだまだ未来へも。
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小説なのかノンフィクションなのかちょっとわかりにくいが、中古マンションのリフォームの話は、築40年近くの軽量鉄骨に住む身としては他人事でなく読んだ。
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アスベストによる健康被害を主題にした4篇からなる連作短篇集。佐伯さんの作品を読むのは初めてだが、ご自身も過去にアスベストを吸い込み後遺症を抱えているらしい。その経験を踏まえてなのか、私小説なのかはわからないが、どのような状況でアスベスト被害に遭ったのかがとてもリアルに描かれている。
問題を先送りし後手に回った挙げ句、なんの救済もないまま放置された方々を思うと胸が痛む。コロナの後遺症に苦しんでいる方々には支援の手が届くのだろうか?
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コロナもそうであるが、この種健康被害に対し適切に規制権限を発動しない国の責任は重い(平成26年の最高裁判決も参照)。本書は、これをテーマにした短編小説集である。日常生活の何の前触れもなく忍び入り、被害者の人生を奪う様は戦慄する。小説仕様だから伝わるのであり、また、著者の力量に負うところも大きいだろう。140頁の小さな本だが、内容は重い。
著者の作品ははじめて読むが、本テーマを扱う『石の肺』というノンフィクションも著しておられるらしい。機会があれば読んでみたい。
未だ現実に苦しんでおられる方々が存在しており、終わった問題ではないことを改めて自覚させられる。
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アスベストを題材にした四つの物語からなる短編集。『せき』、『らしゃかきぐさ』、『あまもり』、『うなぎや』の四篇のうち最後の『うなぎや』が読んでいて分かりやすかった。アスベストによる健康被害は、発病するまでの期間が長いため、本当に大変なことだと感じた。