紙の本
中篇3作の選択が素敵
2023/02/02 10:42
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
台湾文学ブックカフェ全3巻のうちの2巻目、1巻目の女性作品集「蝶のしるし」は既読。今回の2巻目は中篇作品集、3作品が収められている、まず「バナナの木殺し」のチウ・チャンティンは訳者の池上氏の解説によると、1990年生まれで怪奇小説に力を入れている人だという、品琴という女性について、その得体の知れなさは底が深い、まさに怪奇。次はワン・ティンクオ氏の「載美楽嬢の婚礼」、この売春組織の主人公二人をどう応援しようかなと最初は戸惑ったのだが最後はすんなりと応援することができた、そして最後のチョウ・フェンリン氏の「ろくでなしのハイウン」、この作家の小説は「散文式小説」と呼ばれ、どこまでがエッセイでどこまでが小説か読者は戸惑うらいい、ジェンダーのことも本当のことも虚実のこともあるらしい、でも面白い作品だからどうだっていい
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投稿者:ケロン - この投稿者のレビュー一覧を見る
だれにでも、どこででも起こりうる不幸な出来事も、台湾の南国の日差しを思い浮かべた時、闇の濃さがより深くなるような気がします。
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同僚に台湾人がいた。ふとした世間話で父親がお店をやっていると言っていて「中華料理」だと。(台湾って国は中国との関係は良くないんでは?中華って中人民共和国とは違うんだっけ?下手なことが言えない。。。」と一人どきまぎした。
作品からは、内容というより民族的な個性の方が強く印象に残った。彼らの抱えている闇がくすぶって腐敗した様子が作品から感じ取れた。ニコニコして常に感じが良い佇まいの彼らに我々は甘えているというか、礼儀正しい=友好的ではない。その辺日本人はアジア人に対してナメてる所あると思う
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かなり面白かった。台湾の生ぬるさと湿気と人々の滑稽さと一緒に、どこかヒリつくような不穏な空気感がある。
特に表題作はかなり怖くて、少しの滑稽さを交えつつ寝ても覚めても理不尽な悪夢に生きる感触を伝えてくるさまは秀逸だと感じた。私が新進気鋭の監督だったらラストが観たくて映画にしようとしたと思う。個人的には短編集の『海辺の部屋』よりこちらの方が不気味で怖かったかも…
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語り手の「僕」の車の前に飛び出してきた女の子。表題作「バナナの木殺し」は、その家族をめぐる謎を解明しようとするサスペンスだ。
ただのサスペンスであれば、女の子の家族に関する、衝撃的な真実が明らかとなり、面白かったで終わりになりそうなものだ。が、物語のラスト、自分が育った家を取り囲むバナナ畑で、彼女は、バナナ収穫用の包丁を手に、バッサバッサと「バナナの木殺し」をし、「僕」はその姿を眺めて終わる。
「本当の悲劇には、笑うべき要素がある」というのは、女の子の言葉だ。ここで言う「悲劇」というのは、人はいつか死ななくてはならないという運命を言っている。しかし、「懺悔教」と呼ばれる新興宗教によって、めちゃくちゃにされた彼女の家族の死には、傍目から見て、全く笑うべき要素など見当たらない。
彼女が、「僕」の車の前に飛び出して来たのは、なぜだったのか。自殺を試みたのか、はたまた別の何かのためだったのか。
とにかく、彼女の謎は、明らかになったようで、物語の最後まで、もやついた謎を残し続ける。
「午後3時のアスファルトは、暖かいのねえ」
車にはねられた時の彼女が発した場違いな一言は、かつてその母が言った言葉だった。彼女の言葉、彼女の行動の不可思議さには、多分に彼女自身が語る、「狂ってしまった」家族の影がさしている。
たまたま通りかかった車にはねられること。かつて自分が育ったバナナ園で「木殺し」をすること。それらの一見して理解できない行動は、彼女なりの、家族との折り合いのつけ方だったのかもしれない。
人の家族の歴史と向き合う機会のある人には、読んでみてほしい一冊。
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“存在”ということ。
あやふやでとりとめのない、自分からは決して見ることのできない“自分”
だけど逃れられない、自分だから。
そんな葛藤の声が聞こえてくる、物語たち。
台湾ブックカフェ〈2〉は、三篇の中篇小説からなる。
「バナナの木殺し」
「載美楽嬢の婚礼」
「ろくでなしの駭雲」
どの物語も現代社会の問題が取り込まれているが、根底には台湾という土地に根差した香りがあり、特別で味わい深い。
私はぜひ「載美楽嬢の婚礼」を映像化してみたい。
きっとラストシーンは印象に残るものになると思う……。
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世界観が独特です。
怪奇的、幻想的。
ジェンダーや民族。
多様な個性。
現実か虚構かわからなくなるような感覚から、入り込むのが難しい部分もあったけれど、日本では体感できないこの広く深い人間模様、世界観を味わえることができておもしろかったです
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「バナナの木殺し」は、ビー・ガンとかアピチャッポンが映画化したら面白いだろうな、とか想像を巡らせた。幻想的でぞくぞくする美しい物語だった。
「ろくでなしの駭雲」は、精神疾患を抱えた、様々なジェンダーを持つ人達が登場する。性志向に揺れる、生き方に揺れる主人公。自分の罪、弟の罪、正しいとはなんなのか。などなど、とてもパワフルでスピード感のある文章だった。また読み返したいなと思った。
2話目は全体的になんかクサいし、翻訳に違和感、原文が独特なのかな。(誤字もあった)
後書きで一人称の訳について言及してたけど、確かに「俺」は合ってない気がするし、物語のクサさを強調している。
主人公は初めからメイローに惹かれてる、と言うか性の対象として見ている。それが何故かキモく感じた。指を無くしたことでメイローが惚れたのか。メイローの過去と父親への憎しみは無関係ではないと思う。結局どうして父親に近づいたんだろう。謎の美女感、近寄りがたい存在?悲惨な境遇にも共感できない。たぶん作者が意図してるよりも魅力的に描けていないからかもしれない。