紙の本
自己啓発本を超えた物語
2022/09/07 21:04
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:GORI - この投稿者のレビュー一覧を見る
現代の複雑で孤独な社会を生き抜くために、こんな本があったら救われるだろうと思える。
辛い時には助けてと声を出せたらいい。
でもそんな助けを求めたら他の人に迷惑をかけてしまうと躊躇ってしまう。
人には迷惑をかけないように、自分で完結するために、PDCAサイクルを回し続ける人生。
なんて苦しい時間だろう。
手元に置いて置きたいと思う一冊。
紙の本
読んで正解だった
2023/02/05 21:19
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投稿者:しず - この投稿者のレビュー一覧を見る
言葉に言いあらわせないモヤモヤや、それの解消方法の手助けとなってくれている気がします。
自己啓発本もたまにもやっとすることあったのもスッキリした感じします
紙の本
優しく語り掛けながら、暗闇を併走してくれる。
2022/04/22 00:36
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゲイリーゲイリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
言語化できないモヤモヤや息苦しさは次第に生きづらさへと変貌を遂げる。
この生きづらさとどう向き合えばよいのか。
本作は、そうした生きづらさや孤独感に苛まれてしまった心にそっと寄り添ってくれる。
複雑で掴みどころのない心に補助線を引き、その正体を可視化していくのだ。
各章ごとに紐解かれていく心の正体。
なぜ私たちはポジティブな言葉ばかりを求めてしまうのか、なぜ私たちは働くことに人生を侵食されてしまうのか。
なぜ私たちは孤独感を抱いているにも関わらず、他者と信頼関係を築くことに躊躇うのか。
そして、幸福とは何か。
そうした問いは個人の問題であると同時に、現代社会が抱える人間関係の希薄さや行き過ぎた個人主義にも繋がっていく。
自身の心でさえもここまで複雑なのに、それ以上に複雑で不純な現実を私たちは生きている。
白か黒で二分割できればどれほど楽だろう。
しかしそうはいかない。
暗中模索しながら生きていかねばならないのだ。
ただ本作は、暗中模索しながら生きていくことを否定しない。
むしろ複雑なままでいることを肯定してくれる。
少しでも心が楽になるために必要なことを、そっと優しく語り掛けてくれるのだ。
足元さえも見えない真っ暗闇に迷った時、本作があなたの足元を照らしてくれるだろう。
電子書籍
あとがきから読むと…
2023/09/05 00:38
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本は、あとがきから読むと、作者の言いたいことがよくわかると思います。紀伊國屋じんぶん大賞受賞されていますね。小説かと勘違いしてました。臨床心理士が新感覚の「読むセラピー」として
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二項対立で心を分割し、その複雑さについて考える手助けをしてくれる本。社会学と心理学を組み合わせたような心の捉え方に驚く。
何よりも、二項対立を使いつつ、どちらかによるのではなくそのグレーゾーン(筆者が言うところの「も」の考え方)を見つけていくまでの論理の進め方が面白かった。
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家族、キャリア、自尊心、パートナー、幸福……。
心理士として15年、現代人の心の問題に向き合ってきた著者には、強く感じることがあります。
それは、投げかけられる悩みは多様だけれど、その根っこに「わたしはひとり」という感覚があること――。
夜の海をたよりない小舟で航海する。そんな人生の旅路をいくために、あなたの複雑な人生をスッパーンと分割し、見事に整理する「こころの補助線」を著者は差し出します。
まるで本当に著者が隣にいて、カウンセリングを受けているような感覚で読める本でした。
自分の心に平穏をもたらすために、5つの補助線をひくと、あら不思議。一辺倒に感じていた悩みに、別の側面が見えてきて、違った見方ができる。すると、少し気持ちが軽くなる。
シンプルな方が良いようなイメージがあるけど、心は複雑にすることでより冷静に向き合うことができるという発見があった。
悩みが深い人は、カウンセリングを受けるのが一番いいと思うけれど、まずはこの本を読んで、心を色んな方向から捉えてみるのも良いと思う。
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みつけようと足掻けば足搔くほど,
みつからないものがある。
そして,疲れ果てた私たちは,
みつけることを諦めてしまう。
みることを,手放してしまう。
―――
「心理学」の本,というよりは,
「こころ」の本,というほうがしっくりくる。
固いものに囲まれるようになった私たちの「こころ」に柔らかく触れていく。
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2022/03/16リクエスト 1
今の時代の私達は、夜の荒波に小舟で放り出されたようなもの。
昔は地域や大家族、親戚などみんなが同じ船、大船に乗っていた。
その例えはよくわかり実感する。
筆者はコラムニストではないので、もっと心理学に寄った内容を期待していた。
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本当は4月に読み終えていたけど、自分の中で整理するために読み直そう…と思い早6月。とりあえず現時点での記録。
前作「心はどこへ消えた?」がエッセイなのに対し、本書は読者に寄り添い、読者と共に歩む形が快い。隣で語りかけてくるよう。
各章ごとに、自分のことに置き換えて考えていくと止めどなく思考が広がるのは正にカウンセリングを受けているようで、それを一つ一つ拾い集めようとするから時間がかかるんだな…
でも読むだけなら、すらすら読めて、自分の思考の羅針盤が出来たような感覚を得られる。生活の中でも、あ、これってあそこに書いてあったことかも?と気付く瞬間があって、それも面白いし自己理解が進む。
私は、本書で言う「処方箋」的な自己啓発本は苦手だけど、これならすんなり受け入れられる。
よくある「自己肯定感!」とか「生きやすくなる!」みたいな本が苦手な人にこそ読んで欲しい一冊です。
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読了。
白黒つけられないグレーで複雑な現実を、できるだけ複雑なまま生きていくための補助線(船)が、東畑さんの文体でゆったりと語られています。
グレーな世の中、好きです。
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『居るのはつらいよ』の臨床心理士・東畑氏による書き下ろし作品。
フィクションに再構成したクライアントの体験や彼らとの会話を事例として扱いつつ、生きづらさを感じる心と向き合うための「7つの補助線」を章を追うごとにひとつずつ紹介していく。個々人が「小舟化」して孤立しやすい現代の状況とリンクし、寓話仕立てのストーリーが全体を覆う。専門用語の使用は意図して抑制され、万人向けの「読むカウンセリング」を目指した著作として読める。
各章で順に登場する「補助線」は、「処方箋/補助線」「馬/ジョッキー」「働くこと/愛すること」「シェア/ナイショ」「スッキリ/モヤモヤ」「ポジティブ/ネガティブ」「純粋/不純」の七つ。冒頭とあとがきでも触れられるとおり、現在広く注目を浴びる「生き方本」「セルフヘルプ本」「自己啓発本」といった書籍を意識して作られている。それらが「処方箋」に当たるとすれば、本書は「補助線」の役割を担う。著者は「処方箋」の効能を否定せず認めつつ、他方で人生に悩む人々にとって同様に重要な「補助線」への理解へと導く。
7つの補助線の要素はいずれも、一方の要素がその即効性などで現代社会において高く評価される反面、他方が軽視、または無視されている。そのような、現代において価値が忘れられつつある視点を再評価してリマインドすることも本書の指針となっている。かつ、そのことが、心に悩みを抱える個々人の問題のためにありながらも、広く資本主義が徹底された現代の問題と連動していることを示唆する。
読み物としての本書の重要な性質として挙げられるのは何といっても、わかりやすさへの工夫だろう。具体的にはまず、全体をゆるく包む寓話仕立てのストーリーにあり、夜の荒海に放り出された「小舟」に付き添う著者が、私たちに「7つの補助線」を手渡すことで、無事に心の危機を脱出するまでをサポートする展開が導入を助ける。次に、「7つの補助線」とマッチする形で提示される、著者のカウンセリング経験をもとにしたクライアントの経験が、具体的な問題や「補助線」の利用法へのイメージを促す。もうひとつは、専門用語の抑制や丁寧語による語り口調、改行の多様を選択したことによる読みやすさにある。部分的に「心理学では」「社会学では」といった形で補足することはあっても最低限にとどめ、広い読者と向き合うことを何よりも優先する。
終盤で著者は、本書を貫くのは「も」の思想だと明かす。
「それは現実の複雑さを切り捨てて、シンプルにするためではありません。白と黒に分けるのは、黒を捨て、白にしがみつくためではない。
「も」の一文字を堅持し続けるためです。」
この思想と呼応して、七つの補助線のうちのひとつは、実は紹介される以前の本書の初期から登場している。それは「複雑な現実を複雑に受け止めることを可能」にするものであり、「七つの補助線」は「複雑な現実にケース・バイ・ケースで折り合うためのやり方を見つけ」て実現するために用いられる。
そして、「7つの補助線」を使用することの最終的な目的は「幸福」にある。
本書では、「幸福とは何���」という問いへの回答までもを用意して、読み手に応えようとする。
『居るのはつらいよ』に感銘を受けての本書だった。読みやすさと一般への意識でいえば、フランクでコミカルに書かれていた『居るのはつらいよ』よりもさらにリーダブルである。かつそのうえで、即効性に訴えるわけではなく(むしろその対極にありながら)、できるだけ多くの読者にとって実践的であろうとする徹底した意志がうかがえる。期待を裏切らない内容だった。
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生きづらさに対する、社会学と心理学の考えについて、ふわっとつまみ食いって感じ。
納得できるような、あまりにも簡単でわかりやすく説明されていて(項目ごとにまとめまでしてくれる)、なんだか流されて騙されてるみたいな感じ。複雑なものを複雑なまま見ることの大切さを語りつつ、それにしては単純化されすぎてるような。
タツヤさんとミキさんの話が繋がってるのも謎。偶然、どちらもセラピーに通ってた設定なの??
本当に辛い時にこれを読んで、救われるかな〜と思うと微妙なところ。
あと、わざとらしすぎる語り口が個人的に合わなかったな…
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心が疲れたときの一冊。本全体を貫く絶妙なメタファーで、自分の心の傷を、うまく迂回しながら捉えさせてくれる。
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臨床心理士として働く著者が考える心の守り方・捉え方のを示した本。
読者は著者が提供するカウンセリングルームで目を閉じて、心の持つ大海へ漕ぎ出すところから話は始まる。
その大海において、我々は各々が頼りない小舟に乗っている。
かつての世代は皆と同じ大船に乗って大海を渡っていたが、社会環境の変化や自由を求める気持ちに推されて、我々は個で人生を切り開く小舟にのりこんでいる。
小舟は小回りも効くし、自由だが心許ない。そして孤独だ。しかし今更大船に乗る事も出来ない。
では、どうするか。。?
そのヒントを以下の章立てで語っている。
1.処方箋と補助線
2.馬とジョッキー
3.働くことと愛すること
4.シェアとナイショ
5.シェアとナイショⅡ
6.スッキリとモヤモヤ
7.ポジティブとネガティブ、そして純粋と不純
言葉というのは不思議なもので、物事に名前を与えられたり、適切に区分けされると急に物事がクリアに見えてきてわかるようになる。
この本はそういう事に資する本です。
そして話調も面白いし、著者が経験した体験談もひとつの小説であるかのように興味深い。
大概、わかりやすい本は内容が薄く、内容が本質的で濃密な本は難解であることが多いですが、本書はとてもわかりやすいうえに本質的で生活の役に立つ内容が多いので、とても良い本だなと思います。
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これまでの著作とは違って、本書では、著者はセラピストとしての姿を前面に出している。そこが興味深いところでもあり、少し違和感を感じるところでもあった。
”現在の私たちは、安定しているが不自由な大船から下りて、それぞれが小舟で航海している。それは自由だが孤独で、常に自己責任を問われる厳しい旅だ。”この基本的な考え方のもと、真っ暗な夜の海を(特に嵐の中を)行く人たちに向けて、語りかけるように書かれている。今まさにそうした思いでいる人にとっては、読むセラピーのような効果があるのかもしれない。ただ、そういう切迫感の薄い身にとっては、ちょっと気恥ずかしいというか、問いかけにのれない箇所がところどころにあって(特に終盤)、ムズムズしてしまった。だがしかし、そこまで深刻な状況ではなくても、日々直面する様々な悩みや葛藤について、考え方のヒントとなることがたくさん詰まっていることは確か。これから何回も読み返す本の一つになりそうだ。
問題を抱えているとき、心が苦しいとき、著者は「補助線」を引いて考えることを教えてくれる。補助線は六本で、どれも対照的な二つの事柄からなる。ははーん、どっちも大事ですよ、肝心なのはバランスですよというよくあるパターンなのね、でもさ、そのバランスが難しいんだって、とか思って読み出したのだが、いや、さすがに日々カウンセリングの現場にいる臨床心理士、こういう場合はこっち優先、こういう場合はこう考えてと、アドバイスが具体的。わかりやすくて説得力があった。また、人の心は複雑で、スパッと割りきれるものではないという、著者の実感がずっと文章の底に流れていて、そこがとても良かった。
「馬とジョッキー」
馬は心の衝動に突き動かされる部分、ジョッキーは心の舵取りをになっている部分。「心理学の教科書の一ページ目にある」そうだ。著者は、今の社会がわたしたちに求めているのは「ジョッキーによる精妙な自己コントロール」で、世の中にはジョッキー頑張れという声が(一見そう見えないものにも)満ちあふれているという。
「小舟化する社会ではある程度自分で自分をコントロールできている方が生きやすい」が、「ジョッキー推しの社会に過剰適応した結果、ジョッキーにがんじがらめにされて苦しんでいるクライエントたちもいる」「彼らの馬は悲鳴をあげている」
そう、自分自身も振り返れば「適応しすぎ」の繰り返しだったと思う。怒りや憤り、衝動が生まれるや否や反射的に水をかけ、それが自分を律することだと思ってきた。そのために「生きやすい」面もあっただろうけど、失ったものもまたあっただろう。
「僕らは今、自分をコントロールできる自立した人間であることを『善き生き方』とする社会で生きています。馬のように他者を求める依存的な部分は、悪しきものに見られがちです」「だけど、ここには罠がある。心がジョッキーだけになってしまうと、僕らは孤独になってしまう」
「働くことと愛すること」
この二つは「混ぜるな、危険」だと著者は言う。確かに。
「特に現代では、僕らはついつい『働くこと』のやり方を『愛すること』に持ち込んでし���う。『愛すること』は『働くこと』に飲み込まれてしまうのです」「『愛すること』は飲み込まれやすく、『働くこと』はお金とばかり結びつきやすい」
「シェアとナイショ」
「小舟」は孤独なので、人はつながりを求める。シェアのつながりとは傷つけあわない関係性、ナイショのつながりは傷つけあう関係性。
「小舟化した僕らはそういう複雑さ(複雑な傷つきのからまり)に耐えづらくなっています。小舟同士の関係では傷つけあいは容易に致命傷になってしまう」「他者に踏み込んだり、踏み込まれたりすることにはリスクがある。ここに僕らの時代の根源的な恐れがあります。他者は恐ろしい」
今のメンタルヘルスケアの世界ではシェアのつながりが大いに推奨されているそうだ(世間で言う「ゆるくつながる」っていうのもその路線かも)。著者も「追い詰められているときは、まずはシェア」だが、しかし、それもまた万能ではないはずだとする。
「シェアのつながりばかりになってしまうことで、逆に孤独になってしまうこと『も』あるのではないか」「そういう危険(ナイショのつながり)にあえて飛び込んで、他者に深入りすることが必要なとき『も』あるのではないか」
「ナイショをめぐる傷つけあいは、あなたを相手と一緒にいられる形へと研磨していく」というのは、とても深い知見だ。
「スッキリとモヤモヤ」
心の守り方二つ。傷つきを外側へと排泄することで、自分らしさを回復させるのがスッキリ。傷つきを内側で消化することによって自分を成長させるのがモヤモヤ。モヤモヤは不快なので嫌われていて、世の中にはスッキリの処方箋があふれている。これもまた「小舟化」の影響だという指摘は、本当にそうだと思う。小舟だから余計なものを積んでおく余裕がないのだ。
私も(実際にできるかどうかは別にして)モヤモヤグルグルしたものはスパン!と斬って捨てたいクチ。だから「スッキリし過ぎると、孤独になったり心が貧しくなってしまう」「シンプルすぎる心には余裕がありません」という言葉が胸に響いた。ただ「モヤモヤにもデメリットはあって、人には消化できるものとできないものがある」とするところに、臨床経験の深さを感じる。
「ポジティブとネガティブ、そして純粋と不純」
ここが全体の白眉。そしておそらく著者のオリジナルな考え方がもっとも表れているところだろう。幸福とは何か?あらためて考えるとかなり難しいこの問いに、著者が引く補助線は二つだが、最終的にすべての問いや補助線の上に引かれる「メタ補助線」が「純粋と不純」。「不純」とは、いろいろなものが入り交じっていて複雑であることを示す言い方で、「幸福とは、複雑な現実をできるだけ複雑に生きること」という結論が導かれる。
ここで一番心に残ったのは、「悲しみ」というもののとらえ方だ。悲しみはネガティブな感情ではあるけれど、怒りや憎悪とは違う。そこには「善きもの」が入り混じっていると著者は言う。悲しみによって、世界は複雑さを取り戻し、私たちの心は少しだけ広く深くなる。心にに複雑なものを置いておけるスペースができる。悲しみには豊かさがある。
「そういうものを実感できたとき、僕らはネガティブなことが起こり続ける人生という��のを、それでも生きるに足るものだと思える。それを世間では『大人になる』というのでしょう」
かみしめつつ、さらに考えたい言葉だった。