紙の本
力強く慈悲深い圧倒的な生
2023/06/09 23:22
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投稿者:kochimi - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み終わって、深く息を吐いた。
ウメの力強く慈悲深い圧倒的な生に、
目が離さず息を詰めて読み終わった。
彼女に深く関わる男たちは
それぞれタイプは違うがみな魅力的で、
それだけウメの中に光る何かがあったということだ。
お互いがお互いの生きる理であったということだ。
紙の本
女の一生
2023/03/02 23:22
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投稿者:テラちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦国末期の石見銀山が舞台。夜目が効くことからシロガネの知識を叩き込まれたウメは坑内で働き始めるが、やがて叶わなくなる。このため何人かと愛し合い、しかし銀山に潜る男たちは肺を患って他界。ウメは、子をなすも一人で生きていくことになる。重厚な文章で綴られた女の一生といったところだが、文章がややゴツゴツして読みづらかった。
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今までの千早さん作品とはガラッと変わったとのだったので正直購入を躊躇ったけど、やはり気になって購入。
なんかすごい世界だった。
男たちと同じように銀堀になるとことを望んでいたウメが体つきが変わって、生理がきて、どれだけ失望したかと思うと心が痛い。
とはいえ、あまりウメには共感てぎず、どっちかというと隼人の方が興味が湧いてしまった。
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戦国末期の石見銀山では、銀の採掘が盛んに行われていた。
貧しい暮らしをしていたウメは、村の米を盗み逃げた家族とはぐれてしまい、石見銀山へ辿り着いた。そこで天才山師の喜兵衛に拾われ、銀山の知識と秘められた鉱脈の在処を授けられ、女だてらに抗道で働き出す。だが、徳川の支配強化により喜兵衛はやる気を失っていき、ウメは取り残されてしまう…
抗道で働く事に誇りを持っていたけど、子供から大人へと身体が変化して行く事に焦るウメ。それにより、男の力には敵わない事を思い知らされる。
庇護者の喜兵衛が居なくなった事で、ウメ自身とても辛い目にあったのが目を背けたくなりました。
そして、幼馴染の隼人の一途にウメを想う気持ちにとても魅力を感じました。ただ、ウメの中に喜兵衛の想いが消えずに残っていたのも確かで、そこに夕鶴や龍が絡み、複雑な思いでした。
結局、全ての男は消えてしまいウメの強い想いだけが残ったのも切なかったです。
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どんなに辛い境遇にあっても、なぜ生を選ぶのか
なぜそこまで強くいられるのか
頑張ればその先に幸せがあるというわけでもないのに
地獄を見てもなお、這ってでも生きるということって
同じ命なのに
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直木賞受賞作品
石見銀山へ二、三年前に行ってきたので
ウメの言う間歩が、鮮明に想像できる。
今は銀堀もおらず人もまばらで
街も空き家が目立つ。
興味深く見学できたが、この本を読んでからは
全く違った印象となる。
人の業の深さを見せつけられる場所、だったなと
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直木賞受賞おめでとうございます!!!!
ずっとずっとこの日を待ち焦がれていました
千早茜さんの美しい言葉や世界観が大好きで
ファンになってからは新刊が出るたびに追いかけてきました
だから直木賞を受賞され 嬉しくて涙がでた!
繊細さの中に 凄みがあり...
燃えるように熱く “生きる” 強さを感じた
千早茜さんの熱い想いが
より純化し 様々なものを削ぎ落し 磨かれていく...
まるで黒い刃物のごとく 鋭い文体に変わってきている!!
終盤を迎えるにつれ 徐々に光が増していく!!
石見銀山の全てをのみ込むような暗闇から一転...
混じりけのない銀の光を観たような気にさせられ...
最後はあまりの眩しさに瞼を閉じ...
強烈な光を瞼を透かして感じたほどだった!!
めちゃくちゃ抽象的な表現だけど...笑
初めて手掛けた時代小説だとは思えないほど
生と性がタペストリーのように織り交ざりあい
匂い立つところが素晴らしかったです!!!!
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銀山に生きるウメの生涯。ウメの愛した男たちが皆魅力的で最後まで飽きることなく惹き込まれた。消えた喜兵衛の深い愛情を後になって知ったときは漸く報われたような気がして涙が溢れた。
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石見銀山での人々の生き様が詳細に描かれていて、なかなか読み応えがある。
山師に教わった知識をフルに活かして、銀山で大活躍する女性を期待していたけど、、、。やっぱり事実に沿ったお話にすると、女性の位置ってそうなのね。
そこだけが切なくて個人的には残念。
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銀堀としての才能を持ちながら女性「性」から逃げ切ることができなかった主人公の物語。
今以上に辛いだけではなく苦しい時代だったんだろうなと思わせる話でした。
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愛した男を何人も見送って、果ては自らの子まで見送って。
石見銀山の女達は男達が死んでも肥えて生き続けると揶揄されつつ、それでもウメが銀山から離れなかったのは、何よりもウメが銀に魅力を感じていたからなのだろうか。
それとも、自分が愛した男達を連れ去った山の最期を見届けたかったからか。
ウメは山が好きだったと思う。しかし、山は容赦なく山に入る男達の肺を蝕んでいく。
山を敬いながらも疎ましく思うその感情は誰にも分かるまい。
女は山には入らず、男と子を作ってその子が男子ならば成長して山に入る。男は短命で、女はまた子を作る。その繰り返し。
吐血して死にゆく身内を見てもなお、山に入るのをやめない男達の感情も私には分からない。逃げ出したくならないのか。
個の命より全体の繁栄なのか、隼人や龍は本当にその選択で良かったのかなどと色々思ったが、一貫して変わらないウメの芯の強さに救われた気がした。
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大好きな千早さんの新刊。
はじめは歴史系?と読みづらそうと思いきや、読みやすく没頭出来る文体。
後半からは涙の連続。仕方ないと思いつつ逃れられない別れに泣かずには読み進められない。
「生きることを選ぶ、それがどれほど強靭な選択か」と島本さんの帯文言に大きく納得。
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ウメ(主人公)の女性としての力強さに強く心を打たれ、鮮烈なインパクトを受けました。
銀の山で山師の喜兵衞に拾われ間歩を知り、銀掘として行きたいと強い気持ちを抱きながらも、容赦なく女であることを知らされ、間歩に入れなくなる日が訪れる。幾多の禍事にさらされながらも、女として銀の山で生きていく事を選び、受け入れるウメの生涯にひきこまれ、物語であれ、他人の人生にこんなに感動をおぼえたのは、しばらく思い出せません。
昨日読み終えましたが、まだ余韻が残っています。
石見が銀であふれていた時代、ウメや隼人のように、銀の人達は生きていたのどろうか?
島根を石見を訪れ、銀の山にゆっくり想いを馳せたいです。
素晴らしい一冊に出会えました!
文句のつけようがない直木賞作品です。
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「人は人無しでは生きていけない」ということを感じた物語。ウメの成長の中で繰り返される出会いと別れ。儚さや悲しさの中に、救いのある温かみも感じられた。
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この作品の魅力はもっと私より言語化のうまい人にお任せして、私はただ一読者が思ったことを書きたい。
読みたいと思ってもらえたら、あるいは共感してもらえたら嬉しい。
久しぶりにぞくぞくした。死んだ男たちや女たちの生き方を思うと胸が詰まって、読後に切なさで泣いてしまった。人間の業の深さに改めて触れたから苦しかったのかもしれない。でも仄暗くてやっぱり最高だった。
千早茜さんの文章は個人的にすごく好きだ。物の本質のすぐ隣にいるような気がする、もし文字に温度があるのならひんやりした文だと思う。本作もそうだった。他の人が同じように書くと淡々として見えるだろうに、激情が潜んでいるのが不思議だと常々思う。比喩が、情景描写が卓越しているからかもしれない。
たった二時間の読書が何年にも思えるほど長い時間に感じた。確かな手触りがあった。一人の長い人生をしっかりを味わわせてくれた最高の時だった。
以下本文の内容を含みますのでご注意を。
私が一番好きな部分は、ウメが男を殺したのは喜兵衛だったと知る場面だ。この人の文が官能だと称される意味が、自分には今まで分からなかったが、ここで凄くぴたりと嵌った。これは官能以外の何者でもない。あまりに気持ちが良く美しく、背徳を秘めていた。どうしてこんなに人の隙間に入る言葉を手にすることが出来るんだろう。
「あの小僧なら、知ったら殴り込みに行ったでしょうな。けど、殺すほどじゃない。殺すほどにあんたを慈しんだ男は一人ですよ」
「あんた言ったじゃないですか。父親は喜兵衛さんだって」
目の前がひらけていく気がした。
殺してくれたのか。うちの躰を傷つけた男を憎んでくれたのか。あんなに烈しい想いを抱いてくれたのか。うちのために。
ささくれた床に膝が触れた。いつも喜兵衛が寝転んでいた場所に蹲る。陽気な銅鑼声を、分厚い胸板を、肌の暑さや手の重みを思い出す。そして、自分には見せなかった顔を想像する。ぞくぞくと悦びが込みあげた。
(略)
「嬉しいですかい」
感情のない声でヨキが聞く。
「嬉しいのう」と呻く。
「うちは業の深い女じゃ。隼人がおるのに、隼人を失いたくはないのに、喜兵衛がうちのために手を汚してくれたかと思うと、震えるほど嬉しい」
ぽつぽつと床に涙が落ちる。ここで全て流していこう、とウメは思った。隼人の許へ帰る前に。
ああ好きだ、と思う。この人間の性としての仄暗さがたまらない。控えめに言ってもやばいでしょ。この文章。
頭の奥が焼ききれそうなほど読者も気持ちよくなる文が書けることを本当に尊敬する。この上なく好きだ……………
他の作品のひたり、と迫ってくる闇だったり幻想だったりというより今作は気付かぬうちに持っていかれる。ただウメの身にさせられる。まだ読んでない方はぜひ読んでほしい。
こんなに良い文を読むと日本人で良かったと思えるから。