紙の本
散文詩集
2023/06/26 13:59
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投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
「白い」ということから連想する様々な事象、事物を次々に語っていく散文詩というべきもの。翻訳者の言葉が機縁になってワルシャワに滞在した著者が語っていくところは時系列を曖昧にした小説のように語るところもあり、一筋縄では行かない。ゼーバルトの『アウステルリッツ』に似ている印象も持ったが、ほかにそんな感想はないだろうか。
紙の本
またいつか
2024/04/04 12:21
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投稿者:ダタ - この投稿者のレビュー一覧を見る
奇跡的傑作という言葉に惹かれ
手に取りましたが、
期待値を上げ過ぎたせいか、
少々肩透かし感が否めず、
入り方を間違えたようです。
もっとフラットなテンションで読めば
感じ方は違ったと思います。
他の方の感想にもありますが、
慌ただしい時に読むと、
作品の静謐さと上手くシンクロ出来ず、
勿体無い感じになってしまいます。
静けさに満ちた雰囲気は好きなので、
またいつか読み直したい。
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すごすぎてなにを書けばいいのかわからない。読んでいるあいだ、薄暗い雪景色のような静謐さに絶えず体が満たされていた。それはひとえにあまりにも洗練された文章(訳文がすばらしいしきっと原文もすばらしいに相違ない)のなせるところだろうと思う。白いものには無数のイメージが重ねあわされて、厳粛さや脆さ、寂しさ、残虐さ、清廉さ、様ざまの印象が圧倒的な静けさに飲みこまれながらも同時にそれを形成してゆく。そういうなかに、生まれて二時間で亡くなった姉との(間接的な)交流が立ちあらわれる。白いものたちは、生と死をも包みこむ。それはあたりを覆う霧のように無限のひろがりをもつようでもあれば、蝶や、雪の一片一片のようにものすごく小さな世界の細部に宿るようでもある。そこにはあるものが生じて消滅してゆくことの厳然さがある。そうしてそのなかでひとはひとりの人間が生まれて死にゆくこの事実を、個々人の確たる実感として引きうけねばならないことを悟るのだ。それはこの世に生まれ(得)たすべてのものへの祈りとなる。
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単行本も買ってたが、積んでしまっていたので、改めて文庫を購入。何だか凄いものを読んでいるけど、どう表現していいのか分からない。詩を読んでいるみたいでいながら、ストーリーが紡がれていて、分かるのに分からない。文庫巻末の訳者の斎藤氏の言葉に首肯。手元本、がまた一冊増えて幸せ。
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忘れられない傑作である。儚く美しく、そして抉る作品。散文詩のあつまりのかのようだが、確かに小説である。しかし、そのひとつひとつの詩も美しく、それらを読み進めゆくことで見えてくる世界、そして器としてのわたし、そして決意。読んでいる最中は、さまざまな感情が複雑に絡み合うけれど、この作品は不思議な静謐さに満ちている。読み手という器があり、そしてこの作品は完成する。みなさんは、どのような物語を掬い上げるか。ぜひ、読んで欲しい。
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おくるみ、うぶぎ、しお、ゆき、こおり、つき、こめ……。「白いもの」たちへ捧げる静謐な祈りの言葉。紡がれる美しい文章が織り成す物語は壮大なひとつの詩でもある。哀切で儚い65の物語。ゆっくりと静かな夜に読みたくなる。素晴らしい本でした。
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せかせか、ガチャガチャと生活してる中で読み始めると、静謐でしんとした文面を咀嚼しきれません。
時間をおいて丁寧に読み返したいです。
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産まれてわずか2時間で死んだ女の子。
対峙するのすら辛く息苦しいほどの喪失感を”白いものたち”を通して恢復してゆく。
なんとか救われてほしいと願いながら読んでいましたが、読後感はとても爽やかだったのでどうやら救われたようです。
途中、「わたし」がいったい誰なのかふと分からなくなる。母親なのか亡くなった女の子の妹なのか?それとも・・・。
平野啓一郎氏の解説を読んで、ぼんやりした輪郭がくっきり浮かび上がってきます。
小説というか連作短編か散文に近い。今までにない読書体験でした。
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余韻の残る美しい小説。
詩集のようでいて、そこには恢復の物語がある。静寂がひろがり、言葉は少なだが余白や時折挟まれる写真、全てが訴えてくる。白は特別な色だなと思う。何ものも受け付けない強さと全て包み込む柔らかさがある。
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みぞおちのあたりにずん…と留まりつづける、重くて静かで、あまりにも体の内側に直接に作用するような言葉がたくさんあり、ほんとに苦しかった。苦しかったんだけど、でもこの先いつか読み直し、読みつづけたいなとも思う。
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わからない、という苦痛とどう向き合い、それでも逃げずに読むところに、どのような味が出てくるのか、という本でもあった。白という色が、あらゆるものの根源のように、生命を表象しながら、しかし同時に死を包括するような印象を受けた。それは、生を肯定するでもなく、死を否定するでもなく、生死というものが自然な大きな流れの中に位置づけられているような感覚。
「生き延びた古い柱や壁が、その上に積まれた新しい壁や柱とふしぎな形で抱き合っているーそんな形で生きてきた人」
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韓国語では白を表す言葉に「ハヤン(まっしろ)」と「ヒン(しろい)」があるんだそうです。この本は、その生と死の寂しさをもたたえる「ヒン」についての、詩とかエッセイに近い文章です。
韓国って、産着も喪服も「ヒン(しろい)」なんですね。
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神経質で潔癖なまでの真っ白さや繊細さがあると同時に、どこかエッジがきいたスタイリッシュさや退廃的な雰囲気もある、自分が思う最近の韓国文化のイメージそのものでした。
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冷たくて寒くて静かで、突き刺すように鋭い。静謐さのなかに佇む「白いもの」。散文的な文章がゆえに心に沁みやすく穏やかにすすむ恢復の物語。
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生後すぐに亡くなった姉をめぐり、ホロコースト後に再建されたワルシャワの街と、朝鮮半島の記憶が交差する。おくるみ、産着、雪、骨、灰、白く笑う、米と飯…。白いものを通して見えるものは、生きている者に漂う死の影と死んでしまった彼女から溢れる生きる喜び。静謐で深く染み入ってくる文章だった。とてもよい。