紙の本
現代社会をネガティブケイパビリティの中で見つめる
2023/09/22 15:03
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投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
二人の哲学者と一人の公共政策学者がネガティブケイパビリティを念頭に置いて、現代社会を様々な面で対談したもの。問題や謎が大きいほど、立ち止まる力が大切になる。そしてなんでも自分事化してはいけない。自分にとっての私的利害は一体何なのかということがないと、公の議論はできない。社会とは、共同で実施する冒険・挑戦・ベンチャーだという。だからひとつの正解にたどり着けず、失敗することがあり、割り切れない想いにいたることもあるだろう。割り切れないものを語り合うことが、ネガティブケイパビリティで生きること。
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実験的日常の共有、互いに失敗を恐れないような場を持つこと、素敵だなと思いつつどうすればそれが可能なのかはまだあまりピンときてないので、これからも模索していきたい
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ジョン・キーツの「ネガティブ・ケイパビリティ」を書名に冠している通り、安易に結論を出さずに、様々なテーマの多面性に光を当てながら三人の哲学者の鼎談が進んでいく。ポラリゼーションや単純化・効率化の加速に違和感を感じていたためか、とても多くの含蓄や示唆を得られた。
・ファクトフルであることを手放しに称揚する危うさ
個人的には、ファクトや真実への立脚や反証可能性を主張するカール・ポパーやハンナ・アーレントの論につい賛同してしまうが、そうではないものを切り捨てることは「愚かさの批判」であるという著者の警鐘は肝に銘じたい。これは、本書中でも引かれている『社会はなぜ左と右にわかれるのか』を読んだ時にも感じたことだった。議論の妥当性を論理で考えるだけでは見落としているものがある。誰もが弁証法的な西洋的価値観であるわけでもない。当事者の事情や渇望に焦点を当てることが重要だ。そして、誰もが包摂される感覚や言葉が必要となる。熊谷晋一郎が主張する言語の「ユニバーサル化」も大切な論点だ。
・アテンションエコノミーからのデタッチメント
情報量の増大と能力主義の加速はアテンションの必要性をもたらす。インターネット空間、特に SNS では多様性・複雑性やコンテキストが低下するために、これに拍車をかける。本書内では触れられていないが、グローバル化もこの要因の一つなのだろうと外資系企業で働いてきて肌で感じるところだ。
注目を集めなければ大きなうねりや成果は生み出しにくいが、単純化によって複雑性は失われてしまう。
・観察と自己相対化によるナラティブからの解放
「自分のナラティブに振り回されるのではなく、自分のものにした方が良い。」という言葉が最も印象に残った。私たちは原体験や問題意識が言語化されたナラティブには安易に飛びつきがちだ。そしてそれを「正しい」ものだとして信じてしまう。エビデンスや社会倫理など、「正しい」とされている側のナラティブであれば尚更であり、リベラルこそその危うさを孕んでいるとも言えるだろう。安易にこれに飛びつくのではなく、身の回りをこの目で観察して世界の解像度を上げること、そして対話を通じて互いのズレを認識し、どちらかの極へと偏るのではなくバランスをとることが重要だ。(ジョン・ロールズの「正義」の考え方に常に意識的でありたい。)
・何でも自分ごと化しなくていい
既存のナラティブに安易に絡め取られないようにするためには、パブリックとプライベートの間のコミュニティが重要となる。物事を安易に自分に接続せずに、問題を問題としてクールに扱うことも大切だ。SNS やブログサービスが提供する「お題」に過度にフレーミングされないようにしたい。「イベント」ではなく「エピソード」を大切にしながら生活していきたいと思った。
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感情を白黒に分けるのではなく、灰色のまま、複雑なままにすることも、ネガティブ・ケイパビリティと言えるのではないか。
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全然ダメだった…読み終わった時の疲れがネガティヴケイパビリティなんだろうけど…
朱さんにだけ共感できたかな。
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一周目読了。本屋でたまたまネガティヴ・ケイパビリティという文字が目に入り、よく知らないけどなんか気になるなと思いながら買った一冊でした。隣には帚木蓬生さんが書いた“ネガティヴ・ケイパビリティ”関連の図書があって迷ったのだけれど、わかりやすいかもと思い、こちらの本にしました。
SNSが発展した現代では、多くの人々はポジティブ・ケイパビリティを実践している。ポジティブ・ケイパビリティとは、私的な解釈だと「一問一答」。何らかの問いがあり、それに対してなるべく早く答えを出すということ。とにかく早さや実行力が求められる現代では、ポジティブ・ケイパビリティを互いに押し付け合うような状況から抜け出せない。
そこで、この本ではその概念と対立するネガティヴ・ケイパビリティの大切さを問うている。答えを急がずに立ち止まり、自分なりに考えて自分なりに答えを出すことが、これからの時代に押し流されないで生きる方法だという。
難しい話を抜きにして感想を言うと、これからもネガティヴ・ケイパビリティを自分で実践し続けるには、本を読み、他者の物語に触れ、自分の言語をまず育てることが大切だと思った。自分の言語とは、自分の感覚を表現する語彙のこと。日本語の定型文ではなく、拙くても自分の中にある言葉で話すことが、言語を育むことにつながる。
ただそれは、何に対しても感想を言わなくてはいけないと言うことではない。自分が関心のある分野について、自分で語り、思考するための言語を持つことという意味である。ネガティヴ・ケイパビリティを実践し続けるのは難しい。ネガティヴでいるより、ポジティブでいるほうが簡単だからだ。でもその簡単さに巻き込まれない、明快な解答を引っ張られない。そんな心と思考と生活を保っていきたい。
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付箋ぺたぺたして読んで、とっても感化されてしまった本でした……笑
一問一答型への警句があるように、本書を手にとってしっかり読み込んだとしても、
そんなにネガティヴ・ケイパビリティについての安直な回答は一切ないですね。
鼎談テイストの構成が面白くて、
陰謀論からSNS、アテンションエコノミーから倫理、公私とそのあいだの中間集団の意義まで、ほかにも幅広く話されていて、社会に関心がある方にはグイッと掴まれてしまうのではないでしょうか。
面白かったです。
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哲学、公共政策等を専門にする若手3人がネガティブケイパビリティをテーマに語る対談本。概念自体の解説、深掘りよりもこの能力が必要とされる現代社会の課題的状況や背景についてが中心なのでネガティブケイパビリティ自体を知りたい人は箒木さんか枝廣さんの本を先に読んだ方が良い。陰謀論とナラティブ、アテンションとインテンション、SNSなど話題となっていることや話されている内容は個人的には非常に興味深かった。特にワークショップやファシリテーションが広まることで整った場でしか対話できなくなるという話はもう少し掘り下げて考えたい。
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短絡的な理解、紋切り型の言葉遣い、敵味方思考、バカと言う優越。
この時代をめぐる悪弊の流れに棹さす試み。
たくさんの抜き書きをしました。
願わくば、ネガティブ・ケイパビリティそのものをもっと掘り下げて欲しかった。
しかし、それは自分に託された部分かも知れない。
対話の面白さと限界も感じた。
<ネガティブ・ケイパビリティについての思索>
*どんどん決めて物事を進めていく。進まないのはつらい。ゴールが見えないのもつらい。そんなとき、強権的なリーダーが欲しいと思うが、現れたら現れたで、「自己」への抑圧は本当に苦しい。
*ポジティブ・ケイパビリティの特質を列挙してみる。
・スピード感
・集約的、階層的な組織構造
・太陽と月で言うと太陽
・能動と受動の役割の明確化
*みなで場を分かち合って、決めがたいものに耐え、よいものを生み出していく努力を共有する。それがネガティブ・ケイパビリティでは。高度な忍耐力、自己抑制力が求められる。本書で触れていた「観察」というのは大事な視点かも知れない。相手をのぞき見るのではなく、触れずして触れさせてもらう。そこには良心が発揮され、「待てよ」という言葉が発せられる土壌がある。
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ネガティブケイパビリティ
本書によると、物事を宙づりししたまま抱えておく力と定義されています。早期解決が重要視さる現代とは真反対の考え方です。人からの紹介で読んでみたのですが、自分がとても苦手なことが良くわかりました。
言い換えると「待つ力」とも捉えることができます。他人に対してビジョンを指し示すのではなく、自分自身で描いてもらう、あるいは考え続けてもらうということだと考えております。
ある意味では他社に対して「問い続けること」に近いのかもしれません。互いにわからない答えを探すために問いを続けることで少しずつ課題や不安がクリアになっていく
その役割として「思考の共犯者」がとても大切な存在です。
これから自分が担うべきものは一般的なリーダーではなく、中核を成す主体的なフォロワーであり続けることです。
なんとも難しい課題ですが、取り組むと決めた以上、逃げずに取り組んでみたいと思います。