紙の本
懐かしい未知
2023/06/17 23:56
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投稿者:イシカミハサミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「気になった亜沙」
「的になった七未」
「ある夜の思い出」
の3編に加えて
ボーナスエッセイを収録した作品。
どれもいい作品だったけれど、
まとめるような言葉を持たなかったところ、
解説の村田紗耶香さんがすべて言ってくれました。
「懐かしい未知」
やっぱり自分はまだ文学の素養が足りないなあと思うと同時に、
素晴らしい解説文のおかげで
魅力を2倍にも3倍にも感じられた。
もっと読む力も欲しいなあ。
紙の本
唯一無二の作家
2023/06/25 13:18
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投稿者:くまを - この投稿者のレビュー一覧を見る
こちらあみ子以来、魅力されている作家。昔は「不思議ちゃん」とイジメられ、今は「発達障害」と認知されるような人が主人公。「こんな人もいるって理解して!」とか社会的なメッセージではなく、淡々と描かれる出来事。
長靴下のピッピのような、児童文学に近い普遍性で、これから先ずっと読まれる作家だと思う。
短編〜中編が多いけど、いつか大長編も読みたい。
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立ち止まってじっくり見るなんて怖くてできない
うまくもないけどそこそこやり過ごしてる
いろんな置いてきたものを、やり過ごさず立ち止まってじっくり煮詰める
誰にでもあるそれを体現するから、見届けたいという感情が生まれるのかもしれない
でもちょっと今回の煮凝りは怖すぎ
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【奇妙で、不穏で、とびきり純粋な愛の物語】無垢で切実な願いが日常をいびつに変容させる。今村夏子の世界が炸裂する3篇に単行本未収録エッセイと村田沙耶香による解説を付す。
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ほんとうにタイトルのままの作品だった。
つまり、木になった亜沙ちゃんの物語だったのだ。
わたしの作ったものを食べて、と願う女の子、亜沙が主人公の表題作は、わずか42ページの短編。お昼休み中、ごちそうさまでした、をしてから読み始めても、お昼休み中に読み終わってしまった。世界観の独特さが、読んだことをずっと忘れさせない。そんな印象を抱かせる。午後の仕事に集中できない。
その後に続く『的になった七未』も同じスタイルの作品で、わたしに当てて、と願う女の子七未が主人公の短編。こちらは『木になった亜沙』の倍以上ある、88ページにもわたる作品で、こちらは『木になった亜沙』よりも寓話のような要素が強く、浮かんでくる映像はマンガかアニメーションのようだった。わたしには寓話よりも、背景描写がしっかりしたコメディのように感じられる部分が強かったように思うのだけれど。
いずれの作品も女の子が主人公で、この二人の女の子の人生がかなり壮絶というか悲しいというか悲惨で、寓話だったとしたらリアルだし、リアルだったとしたら寓話であってほしいと願うくらい、悲しかった。この子から相談を受けたら、どのように返してあげたらいいんだろう、と、仕事柄そんなことを考えながら読んで、途中からそんなことを考えながら読むことがもったいなくなって、没頭した。傷を描き、抉る。
作品の最後には、作者である今村夏子さんの日記が収録されていて、この今村夏子さんという作家さんが普段何を考えているのか気になりまくっているわたしにはかなり嬉しいものだった。描かれているのはコロナ禍の子育ての様子で、その大変さはもちろんなのだけれど、どちらかというとわたしには今村さんの不器用さ(ごめんなさい)の方が強く伝わってきて、だけどそれがその人自身の等身大のリアルな生活なんだろうな、と思えてわたしは好きだ。
木になったり的になったりする独特な作品、いや、ここはあえてこの言葉を使うと、”クレイジーな世界観の作品”の解説は村田沙耶香さん。もっともっとクレイジーな解説を求めていた自分がいた。
帯にある「食べて、お願い。私の手から。」を見て浮かんでくるのは、マカロニえんぴつの『ブルーベリー・ナイツ』
サビのラスト『誰でもいいよ、私を掬って、食べて』というその歌詞に含まれるもう一つの意味、『私を救って、食べて』。
みんなも是非聴いてくれよな!!!
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単行本を持っていたが、文庫本も購入。
読むのは2度目、いや、3度目だが、
3度目にして気づいた。
今までは今村夏子さんが創り上げる世界観が好きなんだと思っていたが、
この度の文庫本を読み、私は今村夏子さんという人物が好きなんだと、魅了されているんだと。
ご本人に会ったこともないのになぜそう思ったかというと、文庫本に収録されている今村夏子さんの日記を読んだからだ。
やらないといけないことができない。
普通人はそれを隠してしまう。できない自分を認めたくないから。
だが、そんな自分を認め、苦しみをも読者に届けてくれる強さに心底惹かれてしまった。
後書きで村田沙耶香さんが仰っているように、
文庫本として「木になった亜沙」がこの世界に生まれてくれたことに感謝し、私の手、目、心、日常の一部になってくれたことに感謝します。
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『むらさきのスカートの女』も『とんこつQ&A』も不気味で奇妙な話なんだけど、現実から逸脱していなかった。
今作はその点、先に挙げた作品より現実離れした話になっている(その割に妙にリアルな部分もあるが)。
相変わらず奇妙で不気味で、どこか物悲しくなるような短編集だった。
私は先に挙げた作品のような、現実の中に本当に存在しそうな不穏な話の方が好きだった。
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表題作の「木になった亜沙」は、自分が手につけたものを、中々受け取ってくれないジレンマに、悩んでいる亜沙が、木になって、伐採され、割り箸になり、人に触れてもらい幸福を感じる作品な
のですが、孤独感を感じる主人公が、木に転生することによって、触れられる人生を味わうという
幸福感が、文章から感じれて良かったです。
どこか不思議な目線が今村さんの作品の特徴だと
私は感じていて、「奇妙」と「現実」の境界線を
上手く作品に表現しているなと感じました。
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今村夏子さんの発売されている本は全て読んだのですが、本作は特に物語の設定や話の展開・結末が分かりやすく読みやすかった。
『木になった亜沙』と『的になった七未』が特に衝撃を受けた。解説にも書いてあったが、ファンタジーのような設定だけれど、現実や社会に根付いたメッセージ性があって考えさせられる。
『的になった七未』は同じ母親の立場から読むと胸が痛く何度か号泣してしまった。2作とも結末は傍から見るとバッドエンドのように見えるかもしれないが、主人公個人にとっては救済された形だったのではないかと感じている。
これで今村夏子さんの本を全て読了してしまったことが、嬉しくも寂しい。。(;_;)
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「的になった七未」については、得るべきタイミングの痛みや挫折から逃げることを続けた結果を比喩しているのかな?と思ったり。
シュールで笑ってしまうのが今村夏子ワールド全開
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世にも奇妙な物語。現実と地続きの場面からふと急に奇妙な世界へと誘われている。今村夏子ワールド炸裂という感じ。変なファンタジーでもなくホラーでもない、唯一無二だな、と感じた。村田沙耶香さんの解説もかなり良い。学校に行く電車の行き帰りですぐ読めた。だがまあまあ気分はbadになるので家で読んだほうがいい。さくっと現実逃避したいときによい。
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絶対に異質だと思うのに、それを当たり前のように話が進んでいく。
奇妙や不気味といった言葉が1番近いのかもしれない。
ハッピーエンドかバットエンドかも読み手によっては大きく変わってくると思う。
ただなぜか、感動する。
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あらすじだけ聞くと随分変わっている主人公たちだと思うのに、読んでみるとなんとなくなんで彼らがそうしたのか、そう思ったのかわかる気がしてしまう不思議なお話を3つ+ショートエッセイが収録されています。
♡
『木になった亜沙』
主人公は「自分の手から誰かに何かを食べてもらえない」経験がとても多くあります。
例えば飼い犬やクラスで飼っている金魚や、給食当番でよそった皿や、食べたいと言われて差し出したお寿司を死ぬ間際の母親についに食べてもらえません。
食べてもらえない描写の羅列がすごくしんどかったです。なぜなのか自分だけ周りと違う反応をされることってありますよね。私はペットカフェなどで友達の周りには動物が沢山寄ってくるのに自分のところには全然こないとか‥。
そういう一瞬の出来事だから次の日には忘れているけど、またその瞬間に出会う時にはあーあまた自分だけかぁって募っていく寂しさを凝縮されているようでした。
「ゴミ屋敷」になぜなるのか、人の数だけ理由があるのだとは思いますがこんな経緯もあるのかもしれないと切なくなりました。
「逆です、きみの手は、きれいすぎる。」
♡
『的になった七未』
こちらの主人公はドッジボールやどんぐり投げなどことごとく「投げられる」状況によく当たり、けれど周りの子が次々物を当てられていっても最後の最後まで自分だけは当てられない子です。そして当たれば終わることに気づき、当たりたいという願望が強くなります。
ラストの余韻がなかなか抜けきりません。
ハッピーエンドなのかそうでないのか、でも七未は望み続けた「当たる」ことはできたのが救いかもしれません。
♡
『ある夜の思い出』
こちらの主人公はしばらく無気力な時期があり、その頃は家から出ず、かつ立つのすら億劫で匍匐前進をよくしていました。そしてある日、自分と同じく匍匐前進している男の人に出逢います。
本作のみラストで主人公が急激に「普通」になります。現在は子供もいるし〜パートもしているし〜と、匍匐前進の過去なんて聞いてみないと決して想像できなさそうなくらいの暮らしっぷりをしています。
主人公は当時のことを思いつつも「外で働くことは、わたしが思っていたよりもずっと楽しかった。」としています。
私には匍匐前進するほど気怠げ、という経験はありません。けれど、ただ「そういう状況」の時期が誰の人生にもあるのではないかと感じました。
辛いのか、だとすれば何に追い詰められているのか、別に意味はないけど習慣になっているのか、理由なんてあってないのかもしれません。
それでもそうなるしかなかった時期があって、それを経て拍子抜けするほど社会に自然に馴染んでいけることが私のこれからの人生でもきっと起こる気がしました。
ずっと誰にも言ってこなかったとある白昼夢のような体験を、打ち明けられたような読後でした。
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むらさきのスカートの女が変な小説だったのでこちらも読んでみたが期待に違わず。決してホラーではなく不条理という程でもない、親近感と同時に覚える違和感が魅力。
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三編収録されている短編集。どの短編も何気ない日常から始まる。だけど次第に少し不穏な、不思議な場面が出てくる。それが不自然ではなく、日常からそのまま続いてるもので違和感なく語られていく。杉の木に転生し割り箸になった少女、物が飛んできても決して当たらない少女など不思議なんだけど、そこに人を求めたり、何かと繋がりたいと思う感情が描かれていく。巻末に収録されているエッセイも面白い。