紙の本
本を語りながら自身を語る
2023/11/07 16:24
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
恒例の芥川賞受賞作の全文掲載があった「文藝春秋」の2023年9月特別号。
話題となった市川沙央さんの受賞作「ハンチバック」よりも先に読んだのが
沢木耕太郎さんの特別エッセイ「夢ノ町本通り」だった。
長くはないそのエッセイで、
自身の夢の商店街があるなら、新刊の書店と古書店があって欲しいと綴っていた。
そんな素敵なエッセイを巻頭において、
これまでのブック・エッセイを集めた本が出た。
タイトルも『夢ノ町本通り』そのまま。
そして、ここには沢木さんの本への思いが並んでいる。
ブック・エッセイといっても、
それこそ本や書店のことを綴ったエッセイもあれば、
作家論のもの、書評のもの、文庫解説と形はさまざまだ。
沢木さんのように長い間文筆稼業に携わってきた人でも
「自分の非力を感じながら苦しい思いで書かなければならない本」もあるようで、
やはりそんな時の文章は熱量がさがっているように感じる。
沢木耕太郎というノンフィクション作家の魅力は
彼の持つ熱量と強く結びついていて、
沢木さん自身が光源となっている作品ほど熱量が高く、読者に強く届く。
このブック・エッセイでいえば、
山本周五郎さんの短編アンソロジー集に書いたエッセイの数々はいい。
これこそ沢木さんの文章だといえる。
文庫解説に近いエッセイだから、もちろんそこには山本周五郎を描いて過不足ないし、
何よりもその文章には沢木さん自身が存在する。
「夢ノ町本通り」を歩いている沢木さんは、やはり颯爽として、書店の扉を開いている。
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私も古本屋と新刊の書店のふたつが近くに欲しい…!
本好きの人が住める住宅街を作り、近くに本屋専門のデパートがあるといいのになと思わず夢想した。
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三島由紀夫、モハメッド・アリ、向田邦子、山本周五郎……。未知の人物との遭遇が、心躍らせる物語への熱中が、いつだって私を豊かにしてくれた。幼少期から現在に至るまで、無数の本との出会いを綴る豊潤な36編。『深夜特急』の直前、26歳の時に書いた単行本未収録のエッセイ「書店という街よ、どこへ?」も初収録!
巻頭で著者が言及していた書店は、以前の勤務先に近く、私もしばしば訪れていた。業種が変わってしまった時はがっかりした。街から書店がなくなるのは、悲しい。一方で40年前の梅田の大型書店のルポには驚かされた。ここまで混雑していたとは。
山本周五郎を今度、読んでみたい。
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沢木耕太郎さんの30年にわたる数々のエッセイの中から、本にまつわるものをまとめた本。30年とはいえ、本のエッセイだけでもこの厚さ。作家でもあり読書家でもあるベースがあるからこそのボリュームだろう。
「本を買う」の章では、大阪の天神橋筋商店街を巡った話が中心になっている。この商店街は、書店が減少している時代であっても、古書店や新刊書店が何軒も見られるという。
商店街を行きつ戻りつしながら書店巡りをして、店内の棚を見、また次の店に行き、本を決めて購入し、近くの喫茶店(カフェではなく)で読み始める。こうした行動が淡々と書かれている。なんだかこちらも一緒に書店巡りをしている気分になってくるのが不思議だ。
沢木耕太郎の旅エッセイは、いつも淡々と書かれていて、自分も同じように歩いているような気がしてくるのだ。この「本を買う」の章が、旅人沢木耕太郎を表現していて、一番気に入っている。
他の章では、今までに書いた書評や、読んだ本のなかからおすすめを紹介をしてくれている。多くの本を読んでいる人だからこそ、様々な本が挙げられ、知らなかった本も多い。いくつかは読んでみたいと思うものもあり、また逆に合わないと思うものもあり、その意味でも読書案内になるだろう。
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読み応えあり。著者のすごい読書量。
残念ながらこの中で出てくる作家の中で読んだことがあるのは向田邦子、村上春樹、カズオ・イシグロ、群ようこくらい。
山本周五郎に沢山頁を割いてたけど、読んでないのでとばしてしまった。
色川武大とは懇意にしてたみたいだけど、最近亡くなった
伊集院静とは同年代だし面識なかったのかな。
なんか真逆のタイプかも。
女性にモテて、旅好きというとこは同じだけどね。
(ウィキペディアで調べたら沢木耕太郎の方が3歳上だった)長生きして欲しい〜。
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タイトルがいいね。
映画評の『銀の街から』の雰囲気もある。いずれにせよ、オシャレ。
冒頭、町の本屋が消えていくことを嘆き、理想的な書店のある夢の町に思いを馳せる。
とはいえ、内容は、過去さまざまな媒体に記した書評、読書、書籍にまつわるエッセイだ。書評に割かれる割合が多い。とりわけ、山本周五郎はページ数も相当ある。
読みたいと思った本も、いくつかあったので、それはそれで良かった。
「半歩遅れの~」という章は、これは日経新聞の夕刊紙の連載だな。2002年2月のとある1週間(5回)だが、目にした覚えがなかったので良かった。このシリーズ、他の人の連載は時々目にしていたけど、「まえがき」「あとがき」にコダワって毎回ひとつのエッセイに仕立て上げる著者の力量、そして読書量に感服する。
意外と、1973年に、著者がまだ若い頃、紀伊國屋書店梅田店でバイト(というか、書店員体験)をしたときの記載が面白かった。梅田のお店を実際に知っているだけに、なるほどと関心することも多い。
(10.1)の記述も面白い。
「あらためて思い起こしてみると、少年時代から読み続けてきた小説には、いかにその「右か、左か」を描いたものが多いかということに気づく。」
物語の真髄を語っており、この気づきも著者らしい。
冒頭記した映画評伝集『銀の街から』でも、作品をふたつの概念、時代、場面で理解しようとしていたと感じたが、二者択一が、著者のキーワードだ。
というか、人生と言うものは、その選択の連続だということだろう。
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沢木耕太郎は裏切らないな、と読み終えて唸らされる。「読書」、つまり沢木が十八番とする「旅」や「観戦」といった外向的/アクティブなテーマとはある意味真逆と言っていい内向的なテーマを扱ったエッセイが並んでいるのだけれど、沢木らしいストイシズムはここでも貫徹されていて読者を安心させる。本の読み方に正解などないのだろうが、沢木はその己に正直で無理のない(がゆえに偏りもある)読書を通して自己を形成させ、成長させ鍛えてきた人物なのだろうとぼくは受け取る。この本を読むとその軌跡が感じ取れ、こちらの背筋も自ずと伸びてくる
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本書は著者が30年余りの文筆活動の中で各紙(誌)
に掲載された〈本を巡るエッセイ〉を一冊に集めたもの。
これまでも著者の本に関するエッセイは何冊か読んできた。書店でたまたま見つけた際、はたして今回は…と目次に目をやれば〈秋に買う〉とタイトルに惹かれ、 しばし立ち読み。
話の舞台は2019年晩秋の大阪。これまでの来阪目的は仕事であったが、今回は旅は司馬遼太郎記念館での講演はあるものの、メインは天神橋商店街にある古書店巡り。
即、大阪滞在記に入るかと思ったら肩透かしを食らう。先ずなぜこの旅に至ったのか7,8年前のエピソードを開陳。冒頭より鶴瓶さん登場。続いて、南光さん・文珍さんと来て天満天神繁盛亭に至り、関西人にとっては馴染み深い固有名詞が次々登場、極め付きは、おはようパーソナリティ道上洋三です…。
前説を経て、ようやく天神橋商店街に繰り出す沢木さん。古書店で見つけた本の話しは脇役。執拗かつ克明に記載するのは、美味いものにありつけなかったトホホな飯事情、投宿先ホテルの所感。
沢木耕太郎って、こんなに飯にこだわる人なのねと新発見。まぁ気ままなひとり旅となれば、楽しみと言えば地の美味いものにありつくことだしな…と、ひとり納得。この大阪滞在記、まだまだ続きそうなのでレジへ。そして喫茶店へと向かう。
このエッセイ、二枚腰よろしく大阪の旅の後日談に再び南光さんが登場。南光さんたっての頼みに応じて、再度大阪に足を運ぶことに。それも『こちらからそちらに向かいます!』という快諾とともに。
この〈秋に買う〉は約40ページ費され、本書の中では一番の長編であり、シンプルなタイトルとは真逆の巨編の体を成し、書評集に無理矢理収めた感のある異彩を放つ旅エッセイ。
書評については、今回も山本周五郎について多くのページを割く。今回は秀作の短編。歴史小説ではなく時代小説という舞台で、市井に生きる庶民や流れ者に含蓄のある言葉を吐かせたり、庶民の哀歓描写に本領を発揮した山本周五郎。
僕は山本周五郎の小説は10冊程度しか読んでおらず浅学を承知で言えば、落語と山本周五郎の世界は相通ずるものがある。南光さんとの長い付き合いも、南光さんが長年沢木作品の愛読書であり、無類の読書家ということもあるにせよ、その仲立ちをしているのは山本周五郎ではないのかな。
今回の感想は、ひとつのエッセイに絞り書いた。たまたま立ち読みした本の一編に誘われ、そのまま喫茶店にまで導かれるという展開になり、愉しくも豊かな読書タイムとなった。
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沢木耕太郎さんの読書量
真似ができるレベルではない
ノンフィクション作家
私自身ノンフィクションが苦手なせいか、いつも読むのに時間がかかってしまう
本書から学んだ多くの本
山本周五郎を含めメモをした
沢木さんのフィクション読んでみたい
一冊ぐらいは書いて欲しい
もし、既に書かれているなら紹介して欲しい