紙の本
循環型社会がよくわからないうちに循環経済が出てきた
2023/10/23 19:48
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投稿者:雑多な本読み - この投稿者のレビュー一覧を見る
リサイクル社会と言われて久しい。循環型社会とも言われ、リデュース、リユース、リサイクルという3Rの言葉も広がってきた。SDGsというように、環境保全も組み込んだ国連の提唱する取り組みもある。そこに循環経済(サーキュラーエコノミー)という動きが出てきた。経済産業省は、2020年に「循環経済ビジョン」を公表している。高度経済成長で廃棄物が増加したことに対応してきたところから、1990年から2020年にかけて、廃棄物の最終処分量は10分の1まで減少しているが、3Rからさらに進化した取り組みという。特にEUの循環経済圏の構築、アメリカでは製造系大企業の取り組みが注目されている。環境制約だけでなく、資源制約や成長機会の喪失が重大な問題になっているという。ここで、環境経済学の専門家から新書で入門書が出された。本書の目次を見ると、
はじめに
第1章 「循環型社会」から「循環経済」へ
第2章 廃棄物処理・資源循環はタダではないー便益と費用の視点
第3章 廃棄物処理・資源循環は他人事ではないー効率性と公平性
第4章 経済的インセンティブが生み出す循環
第5章 拡大生産者責任という考え方ー動脈産業と静脈産業の連携
第6章 食品廃棄物・食品ロス問題ー循環経済の重点分野1
第7章 プラスチック問題ー循環経済の重点分野2
第8章 持続可能な循環経済に向けて
あとがき
引用文献・参考文献 となっている。
以上のように、公害や環境問題の専門家でなく、廃棄物をどうするかだけでなく、天然資源の活用や生産そのものに踏み込み、一貫した思想で形成させていこうという。「循環型社会」では何が不足なのだろうか。リユース・リサイクル産業の育成、モノのサービス化・製品の長寿命化等につながる産業の創出といったことは、公害対策では対応できないだろう。廃棄物処理部門だけでもしかりである。国は環境省でなく経済産業省がビジョンを出したことは、静脈産業云々ではなく、動脈産業からの対応が必要になってきたことは間違いない。動脈、静脈産業という分け方も問題だろう。持続可能な社会の実現に必須の政策であり、生産や消費のあり方が問われている。ライフサイクルを通した便益と費用(ここが経済学らしい)から環境への影響、産業間の連携、啓発だけでなく行動変容が求められている。世界の自然資源に頼るのではなく、すでに都市鉱山と言われる資源を循環させるなら、企業や家庭から引き出す仕組み等やるべきことは多い。原子力発電による使用済み核燃料等の放射性廃棄物の扱いも出てくる。究極のNIMBY(近隣迷惑施設)であるという限り、処理方法は見えてこない。大きな問題を抱えていることもわかる。一読してほしい本である。
紙の本
廃棄物から経済循環の仕組みがわかる
2024/01/17 18:12
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投稿者:ME - この投稿者のレビュー一覧を見る
当初読みにくい本かと思ったが、便益がないとリサイクルやリユースしないという仕組みや、ごみの問題やプラスチック削減は日常生活との関連も多いためとても参考になった。
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これまで廃棄物について、なんとなく知っている程度で暮らしてきたため、そうした部分について考える上で非常に刺激になる一冊でした。
経済的な観点から考えると、単に廃棄物をゼロにすればよいという話でもない、という部分が特に面白く印象深かったです。
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持続可能な社会の実現に向け、「循環型社会」にとどまらない「循環経済」への移行が不可欠という認識の下、持続可能な生産・消費、そして廃棄物処理・資源循環の在り方を経済学から考え、新しい経済の形を展望。
経済学の観点を踏まえた廃棄物処理・資源循環政策について理解が深まった。
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廃棄物に関する法律って沢山あるんですね、、
それすら知らんかった。
今まで「ゴミの分別メンドクセ」と思ってたが、この本で資源の再利用をそれなりに理解し、積極的に行えるよう意識が変わりました(低レベルですみません)。
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日本と世界の廃棄物処理事情とその未来がざっとわかる。
経済からみた最適リサイクル率というものがあり、日本の場合ある調査によると20%前後というのにはビックリ。
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まず廃棄物処理に関する法律の多さに驚いた。
製品毎にルールも違うんだね。
経済学の観点からすれば、個人の意識に頼るのではなく、仕組みとして廃棄物を処理する方法を提案していく。
難しいよね。特に技術的に答えの出ていない放射性廃棄物はどうしようもない。何より「NIMBY」問題は、経済学の守備範囲外だよね。
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限界便益が、社会的限界費用と個人の限界費用を足したところまでゴミを減らすことが最適。
不法投棄がなくならないのは、逆選択がおきるため。事業者は廃棄物の行き先に興味がなく、処理の費用だけが興味の対象。処理業者は、できるだけ費用を抑えるため不法投棄の誘惑がある。適正な処理をする業者が生き残れない市場になる。
プラスチック製品は1から生産した方がリサイクルよりも安い。
最適なリサイクル率は100%にはならない。リサイクルによる便益が上回る率は自ずと100%ではない。一般廃棄物の最適リサイクル率は、10%程度。リサイクルの費用が高いため。実際のリサイクル率は、20%程度あって、社会的いは過剰なリサイクルが行われている。
リサイクル費用を考えると水平リサイクルが望ましい。
NIMBY(not in my backyard)核廃棄物処理施設などが典型。
PIMBY(prease in my bakyard)にするには、温水プールなどで利便性を高める必要がある。
経済的インセンティブで行動を変える=有料ゴミ袋など。有料化しても実際の費用は4~5倍かかる。ゴミ袋が安い場合、指定袋制で、有料制ではない。
有料化は、料金が上がるとゴミの量が減るが、リバウンドや、市外流出など問題点もある。
産業廃棄物税=27道府県と1政令市で実施。税率が低いと排出事業者にとって負担にならない。
デポジット制=海外ではガラス瓶だけでなくPETボトルも課している。あまり広がっていないのは、事業者の協力が必要で負担が大きいこと、製品価格がデポジット分上昇することを嫌う、すでにリサイクルができている品目もある、などの理由。
拡大生産者主義=EPR=生産者が処理やリサイクルに関係する。PETボトルは85%程度のリサイクル率がある。
家電のリサイクルなど。後払い式。エアコンとテレビの回収率が50%程度、冷蔵庫などは90%以上。
課題は不法投棄、海外に輸出された場合に追い切れないこと。
食品リサイクル法で、発生抑制、再生利用特に飼料、熱回収、減量の順に優先順位が決められている。
食品小売りと外食産業が再生利用が低い。焼却処理のほうが安いので再生利用が進まない、再生利用を偽装した不適正処理などが問題。
食品ロスのために、1/3ルールの見直し。フードバンク活動、フードシェアリングなどの方法がある。
マイクロプラスチックは、微粒子化することと、もともと歯磨きや研磨剤にはいっているマイクロビーズがある。特に後者は、排水の中に混じって流出する。
レジ袋の有料化は、ナッジの役割がある。デフォルトが変わったことで買い物袋を持参するようになった。
欧米ではレジ袋を禁止しているところもある。
プラスチック税が課されているが現在は新型コロナからの復興予算の財源になっている。
レジ袋はプラスチックごみの問題の一部分にすぎない。
モノのサービス化によってゴミが減らせる。product as a service PAAS 。ミシュランはタイヤを売るのではなく、タイヤの機能をサービスとして売り出した。摩耗したゴムを取り替えて次に貸し出す。
シェアリングでモノを減らすと結果的に廃棄物も減らせ���。車は動いていない時間がほとんど。
製品の長寿化。
消費者や企業が過度な手間や負担をかけるようでは循環経済は成り立たない。自然な行動が持続可能な社会になる必要がある。