紙の本
地中の星
2024/02/14 01:47
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投稿者:イシカミハサミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
門井さんは東京の街が出来上がっていく様子を
全て小説で再現するつもりだろうか。
それはそれとして。
今回も物語として面白かった。
ただやっぱり異常とも思えるほどの個人の情熱。
それを支える、支えてしまう職人の神業。
そういう理屈で出来上がった近代の資本を、
現代の欧米産の契約理論で保護することの
何とも言えない不公平感は感じてしまう。
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【地中の星】
中島みゆきさんのヒット曲に『地上の星』というのがありましたが、この著書は『地中の星』です。
日本で初めて地下に鉄道を走らせようとした男たちが数々の難局を乗り越えてみせる壮絶な冒険記です。
主役となる早川徳次、名前を見たときに最初はSHARP創業者かと思いましたが、生年月日、名前の呼び方が違いました。
その早川徳次、大学卒業後、南満州鉄道に就職、その後も地上の鉄道会社でそれなりに力を発揮していた人物ですが、ある時、地下鉄道を作ることを命じられます。
もちろん日本にはそのようなノウハウもスキルもなく、またどれくらいの費用がかかるのかも見当がつかない中でのスタート。まずは資金集めから物語は始まります。
来年お札にも登場する渋沢栄一はもちろん、大隈重信氏などに懇願、資金集めに東奔西走します。
そして事業は幕を開けます。
物語の前半のハイライトでもある、悪戦苦闘しながらの工事、手さぐり状態、とにかく少しでも前に前に掘り進める工夫たちの姿に胸を打たれます。
ここから先は読んでからのお楽しみに。
銀座線、この時代にすでに自動改札機、ATSを採用しています。もちろん仕組みは単純で原始的なものですが、世間をアッと言わせる技術が詰められた地下鉄誕生であったことは間違いないです。また、徳次氏、乗客の顔がきれいに見えると言う理由で、車内に間接照明を採用したそうです。
1941年、半官半民と言う名ばかりの営団が誕生以来、2004年に営団地下鉄は民営化、60余年ぶりに民営化しましたが、この物語を読んでから地下鉄に乗ると、今までは見なかった壁や線路、階段などを吟味してしまいます。
私が、この著書で最も心に響いたことば、それは『先入観は過去の空想』
これこそが地下鉄誕生に欠かせないことばであったことは間違いありません。
物語後半の感動的な場面ですが、二つの新橋駅が統一されます。そんなドラマがあったんだなぁ。
駅は狭苦しいので、今は都営浅草線を利用していますが
そして、それでも地下鉄の車両たちは、乗客を乗せ、ささやかな希望を乗せて、みじかい線路を往復しつづける。
男たちのロマン、またそれを支える妻たちの思いもあって、今日私たちが利用する地下鉄網が発展してきたことを感じさせる物語です。
ちなみに著者である門井慶喜さん、私と同じ年、これまでの作品は2018年に直木賞作品となる『銀河鉄道の父』などがあります。また一人お気に入りが増えました。
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日本に初めて地下鉄を通した人の物語。
色々な登場人物の感情が描かれていて面白い。
もっと長く描いて欲しかった。
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日本で初めて地下鉄を通した経営者の生涯。演出はあれどほとんど史実なのかなと思われ、男の名誉欲や不器用さがリアルで面白かった。
結構若い人が仕事の中心となって動かしてるのが意外であり(20代で親方とは…)、人手不足もあったのだろうが熱意ややる気で立場を得て地下鉄開通のような大仕事をやっているのが羨ましくもあった。
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日本で最初の地下鉄工事の物語。
時代は第二次世界大戦の前、関東大震災のすぐ後に着工したことに驚いた。
しかも東京のど真ん中に地下鉄を作るというチャレンジングな発想。
早川徳次だけでなく、危険と隣り合わせの工事現場の人たちの苦労も描かれ、銀座線の歴史を十分に知ることができ楽しめた。