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Michiyukiさんのレビュー一覧

投稿者:Michiyuki

19 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

冗長、かつ成功への分析が不足した内容

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

仕事で、あるプロジェクトのリーダーを拝命した。元々自分はリーダーや統括役に長けているわけでないため、その力不足を補うため何冊か参考になりそうな本を読み漁った。
数冊ためになる本に出合えて更に知識を拡げようと思っていた折にサイトでお薦めされたのが本書だ。
自分が感心した著作と関係性がありそうな本だったため、あまり内容を吟味しないまま購入して読んでみた。

だが感想を一言でいうと、大外れ、である。
あまりにも失望させられた一作だった。

何が良くなかったかと指摘する箇所は多数ある。
どれから言及していくか悩むところだが、とにかく内容が薄く陳腐だということ。

リーダーに必要な事柄として挙げていることがどれも精神論に近いものであり、具体性を欠いている。掲げられた「約束」の実践のためいくつか事例や補足的な説明がなされているが、どれも論拠として不十分だったり客観性のない話題ばかりで説得力がない。

読んでいて一番頭が痛くなったのが、著者と誰かの会話を延々と記述している箇所だ。それも一か所どころではなく本文中にいくつもあったのには辟易とさせられた。
ご丁寧にそれぞれの話者の発言を括弧書きで一つずつ記載しているものだから冗長なのを通り越して鬱陶しい。
大体が著者とかつての上司、あるいは部下との会話なのだが、口調一つ一つまで再現して読者に読ませる意味はあるのか?
要点だけをまとめればわずか3行ほどで済む内容だ。ただでさえ文字の大きさと行間や余白の広さが気になる体裁なのに、この調子でますます密度の薄い書籍となっている。
価格は1400円程であったが、それだけの価値がないと確信する。

著者は以前ある外資系会社 (ブリタニカらしい) の営業職で、その世界グループ全体で2位の売上数を達成したそうだ。単純にそれはすごい実績だと思うし誇りとなる事だ。
だが驚異的な成果を上げた本人が教えるノウハウがこれでは期待が大きく裏切られた気分だ。
おそらく著者自身、何故自分が成功したのか客観的な分析ができていないのではないか?できていればおそらくこの程度の著書にはならないだろう。

もしかするとこの本の内容や体験談は講演会では好評なのかもしれない。誰かと誰かのやり取りを口調まで真似て再現するような語り口だと、講演という場では聴衆に対して印象に残りやすく受けやすいのではとも思った。
講演会の聴講料ならば1400円は安いと思う。

著者は本書以外にも多数の著書があるようだ。ネットでは大絶賛ともいえる批評も見受けられて、割と高評価を得ている。
しかし本書を読む限り、他の著書がビジネス指南書、自己啓発書として優れているとは思えてこない。
高評価の理由は気になるが、自分はこの著者の本はもう買うことはないだろう。

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紙の本

ビジネスをするにも歴史を学べ

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ひょんな事から古代西洋史に興味を持ち、いくらか関連書籍を読んできた。単純に思う事は、人類は2000年程の時間を費やしても本質は変わらない。政治は元より経済も似た様な事を繰り返している事例に気付く。

同じ様な意見に基づいて書かれた本書は、自分がいだいた漠然とした思いを補強してくれるものだった。著者は歴史家ではなく会社経営者だ。だが相当の読書量をお持ちの方の様だ。幅広い知識を背景にビジネスマン視点で世界史を解説した一冊だ。
専門家ではない分、独自視点で歴史の断片が紹介される。語り口も平易で読みやすい。
自分が馴染みの薄かった地域や時代も取り扱われており、勉強になった。
本書をきっかけに興味を持った時代に関する書籍を更に探してみるのも良いだろう。

歴史に学ぶ事で自信や組織が直面する課題や問題を解決するヒントが得られるかもしれない。いやむしろ人類の歴史を考えると、過去の事例を大いに参考にして判断するべきなのだろう。

一つ気になったのは冒頭の章での「韓半島」という表現。日本では馴染みの薄い表記でとういう意図があるのか図りかねていたが、後の章で現地表記に倣った名称を用いる事が述べられていた。そういう事はまず一番最初に断り書きを入れて欲しかった。

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紙の本

自分の仕事へプラスするために

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

正直に言うとあまり印象に残らなかった本だ。「エリートが学んだ」と言われてもこの程度ではないだろうと思う。

だが会議に臨む態度には6通りあり、全ての役割が揃えば効果的な議論が行えるという説明は興味深かった。会議の場でいずれかの立場の参加者がいなければ、自らがその役を買って出れば積極的な役割を果たせるとの事だ。
だがそれとて実は他の著書からの引用で、本書の著者の独自意見ではない。
しかしながら、すぐにでも役立てそうな方法を教えてもらえた事に感謝はしたい。

本書を読んだだけでは「エリート」の域に達するに至らなそうだか、その一歩にはなるのかもしれない。

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紙の本

国民的欠陥を克服できていない

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太平洋戦争等で旧日本軍が陥った失敗をつぶさに解説した「失敗の本質」。本書はこの本を解説した文字通りの入門書。近年刊行されたことから、昨今の日本企業の失敗とも絡めて解りやすく説明がなされている。

戦争の善悪は別として、何故旧日本軍が敗れたのか?コミュニケーション不全や過去の成功への執着、自ら大局作りができない点等が原因として挙げられる。残念ながら現在でも日本人、日本の組織、そして日本社会そのものがこれらの失敗要因を克服できずにいる。
戦後70年を経て、本当に反省すべき、歴史に学ぶべき点はそこではなかろうかと思う。

本書と「失敗の本質」原書を読み比べると、断然本書のほうが解りやすい。読むのに自信がない人、戦術的な話が苦手な人は、せめて本書だけでも読んでみて欲しい。

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紙の本

紙の本伝え方が9割 1

2015/09/29 23:18

もっと深い内容を期待していた

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一時期どこの書店でも目立つ場所に平積みされていたり大量に並べられていた。ベストセラーにもなったらしい。そんな話題作という事もあり読んでみた。

自分としては文章表現やプレゼンテーションの仕方等、仕事で重視すべき事柄をまとめ上げた内容だと思っていた。しかし実際にはビジネス関係の本質的な事とは距離を置いたコミュニケーション方法論が専らだった。
もう少し深い内容を期待していたのだが・・・。

ある雑誌の書評でやはり内容が軽薄との批判がされていた。今後の著書に期待したい。

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紙の本

働き方は色々ある

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ちきりん氏の著書は毎回読みやすい文体で、尚且つ読者に新たな視点を気付かせてくれる。本書も同様であった。

平均寿命も伸び、皆がこれまで通りの働き方、生き方で良いのかという問題提起がなされ、それに対し著者自らが調べたり考えた意見が述べられている。
難関資格が必ず役立つとは限らないこと、定年延長を見据えた生き方を考えること、人生を全うするまで必要なお金のこと等々、示唆に富む内容だ。

自分も生き方や働き方を見つめ直す必要がありそうだ。

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紙の本

紙の本ローマから日本が見える

2015/09/29 00:07

古代ローマ史から我々が学ぶこと

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塩野七生氏の著書は「ローマ人の物語」文庫本全43巻+スペシャル・ガイドブックに加えて、その時間軸上の続編となる「ローマ亡き後の地中海世界」全4巻を読み通しているのですっかりおなじみの作者だ。

「ローマ人の物語」は新潮社からの出版だが、本作はなぜか集英社からの出版だ。編集方針の違いがあるのか、本作は常体ではなく「ですます調」で書かれている。そのため読んでいて柔らかな印象を持った。

本書はローマ建国から初代皇帝アウグストゥスまでの時代をたどり、ローマの歴史上重要な局面を触れながら教訓足りえる事柄を様々紹介している。そして様々なエピソードを通して現代日本社会への提言と問題解決への糸口を述べている。

地中海を中心にヨーロッパ、北アフリカ、そしてオリエントと空前の領土と繁栄を誇り、現代ヨーロッパの礎を作ったローマ帝国。その成り立ちや推移を知るにつけ、驚きと感心でいっぱいとなる。このローマの長大な歴史は同著者の「ローマ人の物語」を通してまざまざと見せつけられた思いだ。

「ローマ人の物語」は長大で、読後は王政期や共和政期は記憶が薄れていたことも多かった。特にポエニ戦役以後の混迷時代は状況がやや地味で複雑で、自分の中で理解が低かった。いずれ読み直そうと思っていたところで本作と出会い、ちょうど良い復習となった。

グラックス兄弟の改革の動機と目指そうとした事、そしてその悲劇的な結末を改めて知ることができた。特に本作はこのエピソードに限らずそれぞれの局面でその出来事に対する著者の解説や論評が述べられている。このグラックス兄弟の改革の動機は正しかったが政治への理解がやや足りず元老院を真向に敵に回した手法が良くなかった、との評は興味深い。

長いローマの歴史の中でもこのような正面切っての改革はスッラの例などいくつかあるが、著者は決してその手法を是と評価しない。むしろ妥協でも強硬でもない第三の手法とも言えるアウグストゥスの手段を大きく評価する。カエサルが進めようとした共和政から寡頭制への移行をいかにして行うか。その過程はまさに目から鱗だ。いやそれどころか自分からすると奇跡か神業とすら思える。

「インペラトール」の称号授与、「第一人者」の称号、「国家の父」という称号の元老院からの付与、「護民官職権」の保持、「最高神祇官」の兼務、それらすべてが共和政では合法であったのに併せ持つと1人の皇帝への権力集中を実現できるということは、凡人には思いもつかないことだ。考え付いたアウグストゥス、そしてその礎を築いたカエサルの天才的発想に敬服せざるを得ない。

そして「ローマ人の物語」、および本作でも再三述べられているが、ローマの大きな特徴は ”敗者の同化” だ。戦争や武力平定で敗れた他国民や他民族に対して、ローマは決して残虐な扱いはしなかった。むしろ被征服民の権利を最大限認めて、ローマと同化を進めることを推し進めた。医師や教師などの公共性の高い職に就くものや、補助兵として働いた兵士、解放奴隷にはローマ市民権を与えるどころか、部族の権力者には元老院の議席を与えるなど、その進め方は目を見張るものがあった。

ローマ以前、ローマ以後、もちろん現代でさえ、ここまで自国の門戸を開いている国家はないだろう。
混迷する現代社会、日本だけでなく世界各国が古代ローマを手本とすべき点は多い。

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紙の本

失敗の本質は普遍的

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ちょうどこの本を読んでいた辺りで、東芝の不正会計処理問題やVWの排ガス不正操作問題が起こったり、日本マクドナルドの不振が長引くなど、様々な企業の問題が報じられていた。非常にこのテーマと合致した事態が現代も引き起こされていると感じた。

著者は既に他界しており、本書が書かれたのも1960年代と今から半世紀も前となる。だがウォーレン・バフェット氏やビル・ゲイツ氏も読んでいたなど、時代を経ても人を惹きつける要素がある。
取り上げられた個々の題材は確かに古いものばかりだが、背景にある人や企業の行動原理、心情、態度などは今の時代でも何ら変わらず目にすることがある。
更に著者は取り上げた事例に対して自身の見解を述べず淡々と事実を追っている。むしろそれが読み手に深く考えさせる役割を果たしている。

印象深いエピソードは、フォードのエドセルをめぐる話だ。社運を掛けて時間と資金、労力を掛けて華々しくデビューした車種が市場で惨敗してしまった。何がいけなかったか?複合的な要因があろうが、自分は消費者ニーズの読み誤り、技術偏重、生産体制の不備が大きかったと感じた。最近の国内電機メーカーは出す商品がいずれも世界で振るわない。原因究明の一助にフォードの失敗から学んでみるのはどうだろうか?

ゼロックスのエピソードは全然失敗ではなく大成功の部類だと思う。本書のサブタイトルに「成功」も入っているので、こちらに含まれる内容だったのだろう。
だが、21世紀に生きる我々はゼロックス社の莫大な機会損失を知っている。パロアルト研究所で世界に先駆けて開発された技術を自社で活かせず、アップル、マイクロソフト、IBM等に先行を許してしまった。もし研究所の成果を存分に活用できれば、ゼロックス社は更に飛躍的な進展を遂げていただろう。
一見成功していた会社が時を経てむしろ失敗と評価されるという事も、今現在この本を読むと見えてくる部分である。

自身の所属する組織を見直す上で何らかのヒント与えてくれる一冊だ。

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紙の本

紙の本一九八四年 新訳版

2015/09/28 23:17

「ディストピア小説」の金字塔

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

村上春樹氏の小説「IQ84」の題名の元ネタとなったもので、それと関係なしに元から大変有名な作品だ。こちらの方が断然解りやすく現実感があるように思えた。

発表されたのは1949年。舞台とされた1984年はとうの昔に過ぎている。だが、描かれた世界はむしろこれから起きうる未来を思わせる。いや、むしろ既に現代社会はその一端をなぞりつつあるのかもしれない。
作中に登場するテレスクリーンは最近駅や繁華街で見かけるデジタルサイネージを彷彿とさせるし、いたる所に設置された監視用マイクは現在各所に設置された監視カメラを思い起こさせる。

絶対的に「正しい」党の支配、複雑な官僚機構、自己都合的に改ざんされる歴史、そして「ビックブラザー」の存在、等々作中の世界はディストピアそのものだ。読んでいて本当に息が詰まる思いがした。
だがこれらの事項がほぼ全て揃っている国家が現代の世界にある。筆頭は中国だ。民主主義が存在せず国民の自由な活動が制限され、インターネット上でも常に当局が目を光らせている。ジョージ・オーウェルの想像した悪夢のような社会は確かに彼の未来に存在していた。その先見の明に驚かされる。
北朝鮮もそうだが、専制的で国民を抑圧する国家が出来てしまうのは人類の必然なのだろうか。考えさせられた。

オーウェルの母国イギリスはもちろんの事、日本を始めこの小説を自由に読める国は十分民主主義が機能している。彼の懸念したこと、警鐘を鳴らしたことが人々に少しでも届いているからだろうか。
世界中の国でこの「1984年」の世界が遠い過去のこと、起こりえない世界と思えるような社会が実現すればと願う。

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紙の本

自分にとっての価値を考える

1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

これまでのちきりん氏による物事の独自の切り口、考え方に毎回新鮮さを感じており、新刊が出るたび期待している。今回の著書も十分読み手を刺激してくれる内容だった。

特に印象に残っているのは、商品、サービスが自分にとっていくらになるか考えること、という部分。原価や市場価格で判断せず、あくまで自分の価値判断を基準に価格を決めてみようという事だ。世の中の消費者がもっと考えて消費行動を取れば売り手も多種多様な売り方、商品作りが必要となる。結果として消費者は自分に満足いく商品を手に入れられたり、細かな市場の中で新たな売り手の活躍の場が増える可能性がある。そんな豊かな市場が形成されれば良いと感じた。
自分の場合、最近 Apple Watch 等ウェアラブル端末に多少興味を持ったが、自身の価値判断ではせいぜい 5000円ぐらいが出せるお金の限度かなと思った。Apple Watch の原価以下であるので自分が入手できるのは相当先となりそうだ。

ふるさと納税で地域ごとの競争が生まれつつあり、公務員といえども市場を睨んだ戦略が必要との指摘は興味深い意見だと感じた。

本の内容で気になった点がただ一点ある。
事業者でも個人でもニッチな市場や消費者向けにサービスを提供すべしと前半で述べられている。一方、中程で旅行代理店の企画したサービスは人気が落ち、個人プランナーが発案した旅行プランに人気が集まると述べてある。
それぞれは特に矛盾がない内容だが、本書を巻頭から読み進めていくと、何故人気が落ちる旅行代理店もニッチな市場向けにサービスを提供すべしという意見を出さないのだろうと感じた。
前半の内容を理解した読者にとって、旅行代理店も生き残りを掛けて対抗策を用意すべしという内容が含まれるのが当然のような気もする。

それ以外の点は毎度のちきりん氏の新鮮な意見が多数で、読み手は大いに学ぶ点があると思う。

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紙の本

世界を歩いてわかった事、感じた事

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「自分のアタマで考えよう」以来ちきりん氏の著書に注目している。今回は自身が様々な国を訪れた体験を元にした内容。アジア各国から崩壊前の共産圏、中東など本当に世界各国様々な場所へ足を運んだのだと感心する。
自分自身も外国を訪れた際、その国の文化や風習、社会制度など様々な事柄を目の当たりにするし、日本と比較することがある。そこから日本の良い所を再認識することもあれば見習うべきことを思ったりする。自身の中の常識がかき乱される感覚だ。
著者は数多くの国を訪れそのような体験をたくさんしている。実体験から得られた知見や意見は大変貴重だと思う。一つ一つのエピソードと著者ならではの切り口で迫った分析に新鮮な驚きや共感を覚えながら読んだ。

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紙の本

紙の本動物農場

2015/09/27 23:18

痛快な革命批判

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たまたまテレビでオリンピック招致委員会コンサルタントのニック・バーリー氏が推薦している内容をみて興味を持って読んでみた。「1984年」に引き続いてのジョージ・オーウェル作品だった。
寓話仕立てになっていることもあり、長さも程々で気軽に読み進められる。

内容は、歴史を学んだものなら一目瞭然だがロシア革命とその後の流れを動物たちに置き換えて描いている。「資本家」=「人間」を追い出した動物たちが理想の農園を築こうとするが、多少頭のよい豚たちが運営を進めるやいなや当初の目的とはどんどんかけ離れた社会となっていく。言うまでもなく「豚」=「共産党員」である。
腐敗し堕落していく様は正に現実に起こった事そのものであるし、抑圧され一向に生活が上向かない他の動物たちは一般国民の悲しい姿である。
懸命に働き、しかし遂には努力が報われず退場してしまう馬には心を大きく揺り動かされた。
最後に豚たちが敵と憎んでいた人間たちと密約を結ぶ辺りは、豚たちの狡猾さとそれまでの動物たちの行動に対する皮肉を大いに感じた。

動物たちが主人公であるが、結局は人間社会への痛烈な批判が込められている。現状を打破しようと理想に燃えて革命を起こした所で、結局は権力を握ったものが以前の支配層と同等、もしくは更に酷いことをしてしまう。
歴史の皮肉、過去の失敗に学びつつ、人類は自らを顧みながら未来の社会を創り上げる必要があるのだろう。

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紙の本

せっかくのテーマだが内容不足

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これまで自分の周囲にいたリベラル、左派の政治主張を持っている人は、何故か自然食品や有機栽培農法等健康的な食への関心が高いと漠然と感じていた。ある人は、健康食品にやかましいのは左翼だ、とまで言い切っていたが、保守主義だが自然食品を好み合成保存料や着色料を含んだ大量生産品を毛嫌いする人もいる。
果たして政治主張と自然食への関心度には何らかの相関があるのか?ずっと抱いていた疑問にこの本は答えてくれそうたと心が揺さぶられたものだった。

だが読み終えて感想を一言で言うと、期待はずれだった。これだけ真正面にテーマを据えた題名だっただけに、非常に惜しいと思う。いや、むしろこれだけ明確な題材だったにもかかわらず、内容が空虚でもったいないばかりだ。今後類似の題材を扱い、尚且つ緻密で論理的な著書が現れれば、そちらにこの題名を譲ってあげるべきとすら思う。


本書における「フード左翼」というのは自然志向、健康志向の食を選択する人々を、対する「フード右翼」はファーストフード、大量生産の加工食品等を選択する人々の事と定義している。この着眼点は非常に納得いくものだ。

だが著者はせっかくこの対立構造を見出したものの、その後の掘り下げや二極化構造の取り上げ方が不足している。

一番まずいと思ったのは、著者が「フード左翼」に完全に取り込まれてしまっている点である。取材しているうちに「フード左翼」の人々の言動に心を奪われてしまったのだろうか?ある対立構造を説明する際、著者はどちらの立場にも属さず客観的な態度に終始することが鉄則だ。それなのにこの著者はいともたやすく一方へ寄り添ってしまった。どうりで「フード左翼」側の記述ばかりで好意的な説明が多かったわけだ。

このような背景もあり、対する「フード右翼」側の記述は簡略で分析が不足している。

そして一番知りたかった政治志向と食の志向との相関関係だが、結局有耶無耶のままで終始してしまう。何故著者自身で調査しなかったのか甚だ疑問である。是非とも一般的な人を対象とした無作為抽出アンケート調査を行ってほしかった。

また、かつて「買ってはいけない」という本のシリーズが話題になったことがあった。記述内容に誤解や恣意的な理由付けが散見され、アンチ本というべき本も出たり、再反論も出されたりと相当もめた展開となった記憶がある。この「買ってはいけない」の編集元は左翼論壇の「週刊金曜日」というのが肝である。
槍玉に挙げられた側は本書の定義で言う「フード右翼」が選択する食品群である。

残念なことに、既に過去にこれほどまでに明確な「フード左翼」「フード右翼」の衝突があったにもかかわらず、本書でこの騒動を詳しく解説し分析されることはなかった。何故無視したのか?ここも大きな疑問が残った。

全体を通して、著者が読んだ文献からの引用や自身の実体験、当事者への取材内容、そして類推的なまとめで終始している。様々な方面を調べて明らかになっていく日本の食の傾向は伝わってくるが、著者の論説を裏付ける客観的なデータが圧倒的に不足している。読み終えた後、せっかくのテーマが消化不要となっている印象を抱く。

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紙の本

紙の本機械との競争

2015/09/23 15:27

来るべき機械化された社会に備える

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今年に入り、人工頭脳や自動化を巡る話題へ注目が俄然集まっている。30年後の 2045年にでもやってくるという技術的特異点 (Technological Singularity) もかなり大真面目な議論対象となってきた。
一体どういう事態になるのか理解を深めたいと思っていた中で読んだ本だ。

この本を手に取ると一目瞭然だが、装丁が独特だ。更に黄土色の厚手の紙質に紺色の印字という大胆な製本が読む者の気持ちを引き付ける。そしてページ数が少なめだ。僅か 200 ページあまりしかない。しかし内容は十分だ。様々な経済統計や資料、調査結果を列挙して「機械」によって多くの雇用が失われ実感の乏しい経済成長が進んでいる実態を浮き彫りにしている。


何度もキーワードとして現れるのが「チェス盤の残り半分」である。指数関数的な影響力の増大を表す表現で、今まさに機械化の影響が一気に加速する場面だと警鐘を鳴らす。
半導体の性能向上指標である「ムーアの法則」を例に出すまでもなく、コンピューターは高度化していき、我々は年々依存度を増している。単に依存するだけではなく、様々な業務分野で労働者が駆逐されているというのがこの本の中での大きなテーマになっている。
しかも駆逐されるのは比較的単純な業務とは限らずむしろ高度な専門知識が要る分野も含まれるというのだから無関心ではいられない。

機械を「持つ者」と「持たざる者」との対立が明確になるとの記述は背筋が寒くなる思いがした。

しかし著者らは将来に楽観的な見通しも立てている。人間と機械の最良の組み合わせを模索すれば優れた結果をもたらせるだろうということだ。具体的な方法は各方面で様々な取り組みの中から見出すしかなさそうだが、この先に現在は想像だにしなかった新たな職種、労働市場が生まれることを願う。

著者らがまとめた政策提言も興味深い。教育分野重点化はまったくその通りだと思うが、労働流動性促進のため住宅補助を打ち切れとの内容はドラスティックだと思う。現状のアメリカですら労働流動性が足りないとの認識であるが、著者らは日本の労働市場をどのように見るだろうか?

全体を通して、現在の世界的な景気減速や恩恵の行き渡らない経済成長は、根底に機械化や自動化が起因していると思うようになった。著者らの主張が正しければ、各国政府が実施している経済政策は根本に誤りがあるかもしれない。
機械に労働が奪われている現実を直視し、知恵を絞って次世代の雇用を考える必要性を痛感する。

しかし、日本版の解説を寄せた元経済企画庁のエコノミストは、ご自身が官僚時代労働派遣の規制緩和を実現させて日本の企業や労働者が90年代を乗り切ったという趣旨の事をあっさり書かれているが、派遣労働者の大多数が賃金、待遇、そして生活でずっと辛酸を舐め続けていることはご承知されているのであろうか?

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紙の本

人間はランダム化が不得手、そこに勝機あり (但しわずかに)

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感想を一言で言うなら思ったよりも地味だった。更に副題のテニスに関する章は僅かに5ページ。拍子抜けしてしまったが、自分もテニスのプレーですぐに実践できそうな内容だったのでよしとしたい

人間は物事のランダム化や偶然の事象の認識が不得手で、本来ならば期待値が同じになる事柄でいくらか差が生じることがあり、そこを狙えば長期的に利益が他人を上回る事になるとのことだ。確実な必勝法はないし、自分一人だけが大勝することもない。あくまで統計的な勝率の差に応じての「勝ち」を扱っているのだ。

人によっては他者を出し抜ける必勝法を期待してこの本を手に取ったかもしれない。一応スポーツトーナメントや掛けの予想で他人の出方を踏まえた有効手段を紹介している章もあるが、それにはあまり期待しないほうがよい。著者は数学者で、確固とした数学的、統計学的裏付けを元にこの本を書いている。巷にあふれる株やギャンブルの安直な必勝法指南本とは訳が違うのだ。

この本で一貫して指摘されている人間のランダム事象取扱の不得手さだが、当たり前の事だと思っていたものの、改めて様々な事例から事実を突きつけられると愕然としてしまう。

コイントスの例は単純で気が付く人はすぐに見抜けるが、世の中様々なところで無意識のうちに人間の特徴的な列挙方法が顕在化してしまう。

興味深かったのは数字の偽造、操作の痕跡発見方法だ。
様々な数字の並びは「ベンフォードの法則」、若しくは「上一桁現象 (The first digit phenomenon)」と呼ばれる分布に従うそうだ。この法則は帳簿上でも同様で、人為的に手を加えた数字の分布はベンフォードの法則から乖離が出てくる。これを利用して、会計検査のスクリーニングにしているとのこと。

また他にも興味を引かれたのはスポーツにおける「ホットハンド」を巡る話だ。バスケットボールで選手がシュートを連続して入れられるような勢いのある状態を言う。いわゆる絶好調の状態だ。このホットハンドに入ると、そうではない状態と比べてシュート成功確率が上がると信じられている。
だが相当な数の試合を解析したところ、「ホットハンド」状態とそうではない状態とで成功率は変わらなかったという結果になった。どうも数本連続してシュートが入ると今日は調子がいい、と選手も周囲も思い込んでしまうようだ。
これはバスケットボールに限らず他の競技でも似たような事例があるだろう。

全体を通して、人が関わることに癖や確率分布の偏りが現れる事が狙い目であることが十分理解できたが、その勝率の違いも結局はわずかで、期待値に差はあるが大勝ちすることは少ないと実感した。しかも癖や偏りを見出すのも地道な集計や分析、確率計算によってやっと見えるものである。だいぶ労力が要るという印象だ。

ところで大いに勉強になった本書であるが、全体を通して文章自体に違和感を覚えることが多かった。翻訳のせいかもしれない。
説明が回りくどかったり、文章の流れが前後でうまくつながっていない箇所があった。こんな文章のせいでよりこの本の内容を地味かつ感想気味に感じたのかもしれない。やや難解な部分もあったのかもしれないが、もう少し読者が読みやすい翻訳を期待したい。

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