hoyoyoさんのレビュー一覧
投稿者:hoyoyo
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2020/07/12 22:54
香りの表現が豊か
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知人の感想文がキッカケで興味を持って読んだのだけど、今読むべき本だった。アロマやハーブが好きな事もあり、世界観からテーマからキーワードまで、私の状況とリンクしていて驚いた。文字で書かれているのに、朔さんの屋敷の香りが読書中の私の部屋にまで漂って来て結界を張るような気がした。ハーブを多用した料理や日用品など、繊細な言葉が五感に訴える。香りと記憶は深い所で結びついている。芳香も心も形が無いが、心を小説で描けるのなら、香りと小説も相性が良いのかも知れない。懐かしい香りを嗅いだようなカタルシスを感じた。続編希望。
2017/11/02 23:57
やはり名著
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世阿弥が父・観阿弥の言葉を記し編集した能の理論書である。
通釈のみ読了。哲学的でありかつ具体的な芸の道の奥義が記されている。
現代では高尚過ぎる能だが、観客に面白さを感じさせてこそ芸であり、
場所や観客層に合わせて演技をすべきというのが意外だった。
月並みだが「秘すれば花」の件は圧巻。花は咲くべき時節に咲いて散る、
散るからこそ人の心に珍しいと感じさせ、面白いと思わせる。
これが能の「花」であり、公開せずに隠しておくからこそ珍しさを生むのであり、
種明かしすれば意外性が失われ感動は生まれない、「秘すればこそ花」
という訳だ。なるほど、と唸らされた。
2020/07/12 22:49
テッド・チャンすごいです
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1998年発行、テッド・チャンの短編集。内容が濃すぎ、全ての作品が素晴らしい。文明と科学及び信仰が人の心に何をもたらすか、時空を超えた壮大かつ緻密な世界観で描いている。空の天井を掘削し塔を築く「バビロンの塔」。ホルモン療法で知能が飛躍的に成長し、皮膚から出るストレス物質のコントロールまで出来るようになる「理解」。地球外生命体がもたらした未知の文字文化を探究する過程で見えた、未来を記した表題作。ロボットを動かす核となる"名辞"なるものを使った禁断の研究を描いた「七十二文字」等。これが20年以上前の作品とは!
2020/02/25 23:37
珠玉の一冊
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現代SF界を代表するテッド・チャンの中短編集。寡作で知られる著者だが、1作ごとのクオリティの高さに唸らされる。表題作と「偽りのない事実、偽りのない気持ち」「不安は自由のめまい」が特に秀逸。SFという装置を用いて人間の本質を描いている。量子物理学の多世界解釈など、科学技術的にあるかもしれないテーマを縦軸に、コミュニケーションにおける心の在り方を横軸に、緻密なメッセージを脳に刻まれた感じ。現在に警鐘を鳴らす所ではない、架空の世界でありながら真実を目の当たりにしたような、得体の知れない恐怖を感じた。
2020/02/25 23:42
怖いけど好き
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やっぱり恩田陸さんの作品が好き。行間に作者の自意識が滲まない客観的な筆致、魅力的な登場人物、土地の持つ磁場のようなもの。場の空気の周波数のようなものが巧みに描かれている。これがノスタルジーの魔術師と呼ばれる所以だと思う。読後感に余韻とか予感がある。ただフィクションを読んだのでなく、自分の人生に小さな変化をもたらすキッカケのようなものが降って来る。今回は過去作品のスピンオフも多くて嬉しい。怖いのが多いけど、恩田陸さんの怖さって品が良い。
2020/07/12 22:51
タイトルに納得
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以前、文楽の仮名手本忠臣蔵を見た事があるが、殿様の切腹場面が印象深い。腹に刀を刺した後、うつ伏せに倒れ動かなくなった殿様の人形から人形遣いが離れ、そこを立ち去った。舞台には魂を持たぬ空の器になった人形の死体のみが残され、その死の表現が生身の役者には出来ないスーパーリアリズムだと戦慄を覚えた。人形芝居の、虚構性と現実味の境界を行き来する魅力を感じた。この本では、こういう人形浄瑠璃の芸の世界を、虚実入り混じった渦として描いている。人を熱狂させる物語の力と、それの虜になった人々の性が鮮やかだ。
2017/11/03 00:08
魅力的な商品・メタブック
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この作品の番外編をアンソロジーで読み、面白かったので本編を読んでみた。
SF要素のあるお仕事小説だ。ディリュージョン社の商品・メタブック
とは、読書世界をVR化したようなもので、近い将来ありそうで面白い。
そんな会社に何故か、本を読まない新入社員が採用される。
彼女の無知さとデリカシーの無さにしばらく好感が持てなかったが、
後半で緊急事態が起きる中、彼女には妙な長所があるのが少しずつ
見えて来る。
ミステリーマニアの先輩と彼女のチグハグな会話から、ミステリー
あるあるが浮かび上がるが、そこは好みが分かれる所かも知れない。
2020/07/12 22:45
著者本人が面白い感じ。
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著者による脚注がビッチリついた小説で、新感覚。インドやアフガニスタンを放浪した経験があり、元プログラマーの著者ならではの、身体で覚えた本能的感覚と理系左脳の知識がないまぜになった世界観。脚注が、飲みながら話しているような緩くてマニアックな内容で、小説の部分と脚注を交互に読んでいると全体の主体が誰なのか分からなくなって来るのだが、それも意図されたもの。本人がすごく面白い人なんだろうなと思う。私自身の住む世界も、おかしな事があった場合、仕様通りなのかバグなのか?という見方が出来るのかも知れないと思った。
2020/02/25 23:34
東家を中心としたスピンオフ
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八咫烏シリーズのスピンオフ。帝がかつて愛していた浮雲という東家の姫と、東家の楽人の物語。たしかにそんな話あったわと、本編でのエピソードを思い出すのだけど。最後が謎。髪の毛の特徴からして、姫の父は誰かはハッキリしてると思うんだけど、本編のあせびの君のサイコパスみは、母譲りだったってことかしら。
2020/07/12 22:57
独特の世界
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題名と表紙に魅せられて、読んでみた。小川洋子さんの短編集で、狭い世界で暮らす人の、「著名な誰かの○○」への執着を描いた作品が多い。ホテルのスイートルーム担当の客室係は映画スターの落とした髪の毛を拾い集め、彼がホテルから持ち去った本の内容と彼の映画をリンクさせて空想する。病院の案内係は、故ダイアナ妃の着ていたドレスを自己流で再現し、孫娘との外出時に着る趣味を持つ。著名人の秘密を知った気分で陶酔している主観性が薄気味悪くもあり、その静謐で美しい文体はとても文学的でもある。違和感と心地良さのバランスが独特だ。
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