たあまるさんのレビュー一覧
投稿者:たあまる
2019/06/16 21:14
上と下とで、「睡眠」
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『三ノ池植物園標本室』は『活版印刷三日月堂』のほしおさなえの初期作品らしいです。
「上 眠る草原」と「下 睡蓮の椅子」の2分冊。
あ、上と下とで、「睡眠」になるんだ。
過去と現代、現実と意識下の世界の交錯する話だけど、そのファンタジックな要素よりも、手仕事を行う人々の営みが魅力的に見えます。
出てくる手仕事は、刺繍、建築、陶芸、標本作り、木工など、さまざま。
書道もそこに含められるかもしれません。
もう一つの魅力は、主人公・風里の住む家。
目の前に草原が広がる家って、いいなあ。
2019/06/16 21:09
手仕事を行う人々の営みが魅力的
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『三ノ池植物園標本室』は『活版印刷三日月堂』のほしおさなえの初期作品らしいです。
「上 眠る草原」と「下 睡蓮の椅子」の2分冊。
過去と現代、現実と意識下の世界の交錯する話だけど、そのファンタジックな要素よりも、手仕事を行う人々の営みが魅力的に見えます。
出てくる手仕事は、刺繍、建築、陶芸、標本作り、木工など、さまざま。
書道もそこに含められるかもしれません。
もう一つの魅力は、主人公・風里の住む家。
目の前に草原が広がる家って、いいなあ。
2019/05/26 10:20
筋が通って爽やか
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『白洲次郎 占領を背負った男』上・下を読みました。
夏休みに武相荘(ぶあいそう)という、この人の旧宅を訪れ、興味を持ったからです。
痛快な人物の痛快な一生、といえば単純すぎるかもしれませんが、政治的な思惑が交錯する中で、白洲次郎の振る舞いは、筋が通って爽やかです。
憲法や沖縄への思いも共感できるものがあります。
「押しつけられようが、そうでなかろうが、いいものはいいと率直に受け入れるべきではないだろうか」という言葉は、現場にいた人の言葉として貴重なものです。
せっかく気持ち良く読み終えたのに、櫻井某の解説が最悪。
自分の偏った持論ばかり書かないで、白洲本人、あるいは作品そのものについて書くのが解説でしょ。
紙の本保守と大東亜戦争
2019/05/26 09:19
「現代の保守」のあやうさ
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中島岳志『保守と大東亜戦争』を読むと、保守という概念を誤解していたことに気づきます。
保守は、思っていたより幅広い。
戦前・戦中の保守派の考えをたどることで、戦争への歩みのあやまちを再確認しましたが、戦後の保守派がそのあやまちを認めない方向であり、本来の保守とは異なる姿の「現代の保守」のあやうさがわかりました。
そういう意味で役に立つ本でした。
「大東亜戦争」という表現を使うことに何のエクスキューズもないのはどうかと思いますが。
紙の本平和憲法の深層
2018/05/27 20:25
強く同意しました
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『平和憲法の深層』(古関彰一)という新書本を読みました。
「これからの平和は人権擁護という自由権とともに生存権の確立が求められている」というくだりに、強く同意しました。
また、「軍事力を基本とする国家安全保障は、脅威をその瞬間では除去できても、平和を構築することはできない」という部分も、なのに国会では何を論じてるんだろうと思いました。
紙の本学校へ行けない僕と9人の先生 (ACTION COMICS)
2018/05/25 21:02
これはこの人の場合
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『学校へ行けない僕と9人の先生』は、作者の実体験に基づいたマンガです。
ラストは、よかったねで終われるのですが、とてもしんどい経過が描かれます。
学校に行きにくい子のしんどさが少しは理解できるかもしれません。
ただ、これはこの人の場合、という限定条件で理解しなければいけないでしょうね。
しんどさは人によってちがうし、解決法も人さまざま、という、当たり前の結論しかないのかもしれません。
2018/05/21 22:59
ファンがみんな読んでくれたらいいのになあ
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西村京太郎といえば、トラベルミステリーの大家ですが、読んだことはありませんでした。2時間ドラマではよく見ましたけど。
その西村京太郎が戦争体験を語ったのが『十五歳の戦争 陸軍幼年学校「最後の生徒」』 。
貴重な体験を語ったあと、戦争に対する考えを書いているところがよかったです。
中立国スイスや沖縄について書いた部分を、西村京太郎ミステリーのファンがみんな読んでくれたらいいのになあ、と思いました。
紙の本幻坂
2018/05/21 21:11
こわくない怪談集
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大阪の、天王寺七坂を舞台にした短篇集。
アリス・火村シリーズではありません。
本格ミステリでもありません。
こわくない怪談集とでもいいましょうか。
さいごの二つの歴史物はぴんとこなかったし、後味の悪い作品もありましたが、全体としては、土地勘がない割には楽しめた。
ちょっとあのへんに歩きに行ってみようかな。
中では、真言坂の話がいちばんいいなあ。
紙の本日本の歴史を旅する
2018/05/20 23:31
旅心をそそられます
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著者は日本中世史の歴史学者です。
観光案内ではなく、史実の説明がほとんどなのだけど、各地の産業・経済や文化の歴史を見ていくと、やはり旅心をそそられます。
遠くへ行きたい。
紙の本満願
2018/05/20 10:07
次は、明るいのを
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米澤穂信は、若者が出てくる学園ものが好きなんだけど、このたび読んだ『満願』は、それを大きく裏切る短篇集。
じわじわといやな感じで話が進み、後味の悪い結末。
そんな本、読まんでもええやろ、てなところですが、話の先が気になって、ついつい読んでしまう。
で、最後まで読み切っても、むむむ、という感じです。
次は、明るいのを頼むよ。
紙の本あんちゃん 改版
2018/05/19 09:02
山本周五郎を読むなら、ほかの本からどうぞ
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山本周五郎の短篇集『あんちゃん』は、町人物あり、武家物ありの作品集。
救われない話あり、無私の愛あり、極悪非道の男あり、 どたばたユーモア物あり、家族内いじめあり、LGBT的な話までありと、バラエティに富んだ作品集でした。
山本周五郎は、やっぱり人間は素晴らしい、と思わせる名作がいくつもあるのだけど、この作品集は、生きるのはなかなかしんどいなあと思わせる作品が多かったように思います。
これから山本周五郎を読んでみようか、と思う人にはおすすめできませんね。
紙の本被害者は誰?
2018/05/09 22:05
振り込め詐欺にだまされないために
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貫井徳郎にしては軽いタッチの連作短篇。
犯人を当てるミステリーではなく、被害者や目撃者、あるいは探偵役を当てる、といった変わった趣向をこらした話ばかりでした。
面白かったけど、最後まではぐらかされ、だまされてた感じ。
だまされたのはちょっとくやしいけど、振り込め詐欺にだまされないための練習だと思えば、ま、いいか
2018/05/05 23:07
「沢村賞」の沢村
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プロ野球のすぐれた投手に与えられる「沢村賞」というのがあります。昨年の受賞は広島カープの左腕ジョンソン投手でした。かつては、右腕の本格派で、セ・リーグの先発投手という条件があったように思います。それは、この賞が沢村栄治という戦死した名投手にちなんだものだからです。
3度も徴兵されたその沢村の人生を描きながら、プロ野球と戦争との関わりを描き出したノンフィクションが『兵隊になった沢村栄治』です。
沢村投手の本は以前にも読んで、なんとか教材にできないかなと思っているのですが、とても参考になりました。
ただ、沢村も川西航空機で働いたという記述があるのですが、「日本野球連盟関西勤労報国隊として尼崎にある川西航空機の工場で」と書いてある。これは、「尼崎」ではなく、「鳴尾」のまちがいではないのか。もっと調べてみたいと思います。
それにしても、沢村栄治といえば、大リーガーをきりきり舞いさせて勇名をはせたのに、外国人投手が選ばれるっていったい……と思ったら、50年も前に阪神のバッキーという投手が受賞してました。
紙の本シャイロックの子供たち
2018/05/05 22:26
途中でやめられないパターン
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「ベニスの商人」の登場人物の名前を冠していることからも想像できるように銀行が舞台の小説です。
銀行員はつらいよ、みたいな連作短篇かな、と思って読んでいくと、ずっと話はつながっていて、しかも犯罪のからんだ謎解きになっていくという、途中でやめられないパターンでした。
紙の本昭和史の10大事件
2018/05/05 08:20
息の合った先輩後輩
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文春文庫の『昭和史の10大事件』は、半藤一利と宮部みゆきの対談集です。
この二人は、東京下町の同じ高校のトシの離れた先輩後輩。
世代の違いを出しながらも息の合った対談です。
2・26事件などのまさに歴史的事件だけでなく、「ゴジラ」や宮崎勤事件までとりあげた面白い対談です。
憲法9条の話題で、「押しつけ」と言わない方がいい、「戦後日本人のほんとうの思いというものが、願いというものが、そこにこもっているんですよ。」と半藤が発言しています。
もし今の日本人がこの9条を変えるのなら、「戦後日本人のほんとうの思い」というものがもう変わってしまって、「戦後日本人」じゃなく、「戦前日本人」になった、ということなんでしょうね。