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  3. 月乃春水さんのレビュー一覧

月乃春水さんのレビュー一覧

投稿者:月乃春水

234 件中 16 件~ 30 件を表示

紙の本もぐてんさん

2008/07/18 11:12

もぐてんさんはふしぎなもぐら。がんちゃん一家の小さなお庭が大きな遊び場に変身!ていねいに描かれた夏の情景も含めて堪能したい絵本。

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「もぐてんさん」。奇想天外ってほどじゃありませんが、変わっています。そしてなぜかとても印象に残ります。これはがんちゃんのうちの庭にやってきた、ふしぎなもぐらの名前。
わが家の子どもたちはすぐにおぼえて唱え?はじめ、階段を昇り降りするときに「もぐてんさん、もぐてんさん」なんて言っています。


がんちゃんとおとうさんがお庭に池をつくろうと、スコップで土を掘っています。

「うんと ほったら もぐらさん いるかな」

すると突然大きなもぐらが顔を出し、「ぼくを よびましたか?」

庭であさがおを観察していたおねえさん、家の中を掃除していたおかあさんもびっくり。
このときの表情や姿が見ものです。
ほんとうに驚いたときって、目はまんまる、腰はぬけて座り込み、ことばも出ないんですね。

ふつうのもぐらじゃないもぐてんさんは、人間とおはなしできるだけじゃありません。
得意技は、小さくなったり、大きくなったり、からだの大きさを自由自在にできること。
しかも、自分だけじゃなく、みんなのことも小さくできるんですって!

こんな、ふしぎてすごいお客さまと遊ぶことにしたがんちゃんの家族。
みんなでしたくをはじめます。
がんちゃんとおとうさんは池を完成させて。

小さくなるための準備体操。これがおもしろくって、わが家では独特の節をつけて歌ってみると、大笑い。

ああ、これなら小さくなるよな、と、人が小さくなるという摩訶不思議なことにも納得してしまう、絶妙な体操なんです。

がんちゃんのおとうさん、おかあさん、おねえさんと、もぐてんさんで遊んでいる様子は、とてもほのぼのとして、たのしそうで、おもわず仲間に入れて~と言いたくなってしまいます。
おとうさんとおかあさんが、なにげに仲がよくって、素敵な雰囲気を醸し出している様子も見逃せませんよ!

みんなでのお昼ごはんは…そうか、おかあさんは、お弁当のしたくをしていたんですね。
ちょっとしたハプニングもあり、夜になって、おとうさんからのサプライズもあり…

がんちゃん一家ともぐてんさんのたのしい一日が終わります。
もぐてんさんは土の中に帰りますが、しっかりおみやげも背負っていますよ。

それを見て、「あっ、もぐてんさんの『てん』はてんぷらの『てん』なんじゃない?」と言ったのは、子ども、ではなく母であるわたし…
背負っているのがえび天だと思ったのですが、う~ん、これはエビフライかな?


がんちゃんの家の小さな庭の夏の情景が、とてもていねいに描かれていて好感が持てます。

『異能の新人作家・やぎたみこによるユーモア&ハートウォーミングな家族のお話』とは帯に書かれていたことばですが、「大人もいっしょに楽しめる、子どものための絵本」の制作をつづけているというやぎたみこさん、これから注目していきたい絵本作家です。

もぐてんさんのおはなし、ぜひまた見てみたい。シリーズ化を望みます!

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バランスボールエクササイズの決定版!ココロとカラダが弾む楽しい有酸素運動でキレイになる

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

バランスボールが存分に使えるDVD付ムックです。これぞ求めていたもの!と拍手するのはわたしだけではないでしょう。バランスボールエクササイズの決定版です。
今や健康グッズとして定着しているバランスボール。ホームセンターやディスカウントショップでも手に入れられます。我が家にもひとつあり、抱っこして弾むと子どもは大喜び。「ピンコパンコピン」とネーミングしたこの遊びに使う以外は部屋に転がったまま、オブジェと化していました。
もっと活用方法がないものかと本を探してみたところ、ストレッチ系のものはあれど、どうももの足りない。このムックを手にし、DVDを見ながら実際にやってみたところ、これこれ、これよ!とすっかり嬉しくなってしまいました。
マドレボニータプロジェクト主宰、ヘルス&ビューティートレーナーの吉岡マコさん監修のオリジナルプログラムによるバランスボールエクササイズは、リズムにのって弾む有酸素運動。DVDを見ながら弾めば脂肪燃焼、基礎代謝がUP!それになにより楽しいんです。
60分のDVDには、バランスボールでの基本姿勢からはじまって(ボールに座るとき骨盤が前後に倒れないよう床に対して垂直にキープする、これが意外とむずかしい)3つのエクササイズが収録されています。マイナートラブル(肩こり・便秘・生理痛など)のセルフケア、脂肪燃焼ボディメーキングベーシックとアドバンス、どれも15分でからだがあたたまり、気持のいい汗をかきます。
ただ単に楽しく弾むだけではなく、意識の持ちようをリードしてくれるナレーション(吉岡マコさんによるもの)も特筆すべきところ。
筋肉の動きや変化を感じとり、力を入れるところ、抜くところ、姿勢や動き方を常に意識しながら弾むことで、効果もずいぶん違ってくるでしょう。
テキストもとても丁寧な作りで、動きのひとつひとつが写真で、気をつけるべきPOINTも
よくわかります。「始める前に知っておきたい体のしくみ」はキレイ効果を高めるためには必見です。ボールに乗らない普段の姿勢にも活かせそうです。
家族が起き出す前、早朝に弾むのが日課になりました。わずが15分で清々しい気分になるうえに、弁当作りに洗濯に…とあわただしく動き回るのにもからだが軽くてラクなんです。動きにキレが出るというのは本当!
「アドバンス」コースでの腹筋は最初は全然ダメだったのが、徐々にできるように。
そんな効果や変化が嬉しくて、これはもうやめられません!

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むかしむかし、新潟でほんとうにあったおはなし。くまの描き方が素晴らしい。ぜひ復刊を願いたい絵本

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

むかしむかし、新潟県でほんとうにあったおはなし。
北越雪譜から採られています。

小学校3年生に、毎年読み聞かせをしている絵本。
わたしも地元の親子読書会が選書していて、はじめて出会ったものです。

やはり「ほんとうにあった話」というのは、印象も、こころに残るのも強い、と実感しました。
まずはわたし自身がそう感じたので、「おはなしタイム」でこの本を持って行った時も

「これは、新潟県でほんとうにあったおはなしなんだって。新潟って知ってる?」
と読む前に話してみました。

「知ってる!」「行ったことあるよ」「雪がたくさん降るんだよね」
と、次々と大きな声があがりました。

「わしは わかいころ、くまにたすけられたことが あるんじゃ」

男が静かにはなしはじめます。

雪の深い山奥で薪を集め、そりいっぱいに積んで歩いていた男が、ひとたば落ちた薪を拾い上げようとして、雪の中をすべり落ちてしまいます。

深い谷底に落ちた男が見つけたほら穴。穴の中で体を休めようと入ってみると、手に何かが触れた。
ごわごわした毛が生えていて、柔らかく温かい…

男の語りは、静かで、それこそ雪が含む水分のようにしっとりとしていて、どんどん引き込まれてしまいます。そういえば、新潟ことばもこんなふうに、ゆったり、しっとりしているな、とふと思います(わたしは両親が新潟出身なので、長い休みのときは新潟で過ごしました。祖父母や親戚の話す新潟ことばには聞き覚えがあります)。

男とくまのやりとり。男の祈るような気持ち。ずっしりと響きます。

表紙からしてそうなのですが、くまの表情は、これといって特徴なく描かれています。感情を表すことなく、キャラクターとして際立つことのない描かれ方です。これは、きわめて正解!と感じ入りました。
野生動物だからこそ、この描き方、そして野生動物だからこそ、このおはなしが驚くべきものとして語り継がれたというわけなのです。


別の日、昼休みの図書室でこの絵本を読みました。夜から朝にかけて、めずらしく雪が降ったのでちょうどいい、と持って行ったのです(保護者による図書ボランティアの活動です)。

1年生の男の子が、表紙の文字を読んで、ちょっとふざけつつ「くまにたべられたおとこのはなしー?」なんて言っていました。
くまに遭遇してけがをした、というようなニュースを耳にすることがあります。そう思って当然かもしれません。

「そう思うよね、でもね、たすけられたんだって」
と、むかしむかしほんとうにあった話だよ、ということを強調しつつ、話し始めました。

真剣なまなざしで、息をつめて、聞きいって、ほーっとひと息つく。
そんな子どもたちの姿を見ると、おはなし、本の持つパワーってすごいと思います。
そして、そんな子どもたちってほんとうに素敵、とわたしまで力が湧いてくるのです。

この絵本、残念ながら現在は手に入らないとのこと。このようなおはなしほど、語り継いでいきたい。復刊をつよく望みます。


個人ブログ□□本のこと あれこれ□□

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紙の本かたあしだちょうのエルフ

2009/12/13 16:49

どっしりとした美しさ。読み継いでいきたい傑作絵本です。

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

どっしりとした、表面的ではない美しさが光る絵本です。
版画で描かれていますが、想像力をかきたてる構図が見事です。

1970年発行。誰もが知っているものではないかもしれませんが、とても質の高い、隠れた名作です。全国学校図書館協議会の「よい絵本」に選定されています。

エルフは若くて強くてすばらしく大きなおすのだちょう。
なぜエルフというかといえば、ひといきで千メートルも走ったことがあったくらい。
それで、仲間たちは、アフリカのことばで「千」を意味する「エルフ」と呼ぶようになったとか。

エルフは子どもが大好き。子どもたちにも、エルフは人気者。おかあさんたちにも、絶大な信頼を得ています。

エルフは得意のライオンの鳴き声を真似してジャッカルを追い払ってしまいます。
ところが、ほんもののライオンが襲ってきて、エルフは勇敢に戦います。

けれど、大切なエルフの足の一本が食いちぎられてしまうのです。
エルフは、かたあしになり、一日にいくらも歩けなくなってしまいます。
そんなある日、くろひょうがやってきて…

くろひょうが飛びかかってきた様子は、
表紙にもなっていますが、迫力満点。

最後の力を振り絞って、みんなを守り、戦ったエルフは…

とても余韻の残るおはなしです。


これは、小学校3年生に読んだ絵本。
地域の20年の歴史がある親子読書会で、長年読み継がれているものです。

わたしは、この読み聞かせの活動を通じてはじめて知りました。

ベストセラーとか、誰もが知っているものではないけれど、素晴らしいこのような絵本ほど、後世に残ってほしいと願わずにはいられません。

大型絵本もあるようです。ぜひ見てみたい!


個人ブログ□□本のこと あれこれ□□

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こぼしたぎゅうにゅうはどうなるの…?よしおくんが語る、ある朝の出来事。愉快なナンセンス絵本。

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

愉快でへんてこなおはなし。第13回日本絵本賞大賞受賞作品です。

発売してすぐに、保育園の年長組に置かれていました。わたしが購入するなり、二男は「これ、保育園にある!」
どこかで見た本を、またうちで見られるというのは、ちょっとした喜びがあるようです。

本のつくりからしてちょっと変わっています。
見返しからおはなし(よしおくんのモノローグ)ははじまっているのです。

それは ぼくが あさごはんの チョコレートパンを たべて
ぎゅうにゅうを のんでいたときの ことです。

ぎゅうにゅうをこぼしてしまったよしおくん。ぎゅうにゅうはビンからこぼれ、なくなるどころか勢いはますます増していき…

そこではじめてタイトルが出てきます。ぎゅうにゅうでまっ白な部分に青色の文字。印象的です。

ぎゅうにゅうびんはあちこちを飛び回り、よしおくんはあっといまに家の外へ…そして大きな看板に書かれた「ぎゅうにゅうこぼすな!」の文字に、よしおくんはドキッとするのです。 
「ぼくは ドキッとしました。」と繰り返し書かれています。

以前、三男(当時4歳)にふたりの兄の様子を話したことがあります。
始業式で先生が変わるので「ドキドキしながら学校に行ったよ」と言ったところ、
三男は「よしおくんみたい」
ん?よしおくん?

この本の主人公、よしおくんのことでした。

読んでからしばらく経っているのに、おぼえている…!
お話の中でよしおくんが感じたドキッ。それと兄たちのドキドキ…
本人の体感とはちがうようですが、結びついている…!

本と現実の体験が結びつく。その瞬間がとても好きです。
特に子どもがその結びつきを話してくれると、自分の読書経験以上にうれしく、それこそドキドキと胸が高鳴ってしまいます。

ちなみにわが家でも瓶で牛乳を飲んでいますが、いまのところ、こぼしてしまって、その牛乳が…というよしおくんのような恐怖!?(それともおもしろ!?)体験はありません…


うちの外にいる牛、ふしぎな魚ミルクフィッシュ、「こぼすな」号でやってきたふなのりのおじさん(つりたかったのはなんでしょう?)、最後にたくさん咲きみだれるミルクフラワー。
これらの無駄のない登場人物も含めて、ナンセンスさがたのしい絵本です。


個人ブログ□□本のこと あれこれ□□


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紙の本あけるな

2009/08/12 15:15

超豪華なコラボレーション。シュールで不気味、そして美しさ。あけてはいけない扉の先は…?復刊された名作絵本。

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

谷川俊太郎&安野光雄という超豪華なコラボレーション!
1976年に銀河社から発行されたものを底本に、2006年に復刊された絵本です。

とってもシュールで不思議。そしてこの美しさ。たまりません。
そして、いくら読んでもぞわっとする感覚は変わりません。

レンガの壁(これが絵だなんて!安野光雅さんならではの緻密さです。)、そこにある扉。
「あけるな」と書かれた板。
打ちつけられたこの板がタイトル、作者の表示にもなっています。

見返しはすべてレンガ。
またページを開くと、扉に打ちつけられた板は「あけるなったら」。
そうです。表紙では「あけるな」と書かれていた板を一枚はがしているのです。

次のページは「あけるとたいへん」
そして、「谷川俊太郎・作」「安野光雅・絵」と書かれいた細い板ははずされ、扉の前の草の上に置かれています。

左のグレーのページ、下部には語り手のつぶやき。

へんな とびらだなあ
これが あけずに いられるかい

この語り手は、扉をあける人でもあります。
姿が見えないので、読者はこの語り手、つまり扉をあける人と同化してしまいます。

「あけてはいけない」

とびらってのはね
あけるために あるんだよ

この主人公の理屈っぽさというか、反抗心というか…
だめといわれても、いや、だめといわれればいわれるほどやりたくなる。
恐怖心よりも好奇心がまさる。やるからにはやる!みたいな心持ち。
程度の差こそあれ、だれにでもあるものですよね。

「あけるなといってるのに」

おどかしたって だめさ
さあ あけるぞ!

扉の先には…?

ここから先を語るのは野暮というもの。
どうぞ、ご自身の目で見てみてください。

5歳になった三男と、もう何十回も読んでいる本です。
最近、文字数の少ない絵本では飽き足らず「みじかい!」と怒るようになり、長めのお話を読むことが多くなりました。

そんな三男にとって、この本は「短い本」ではないようです。
ことばはとても少ないのですが、どこまでも広がっていくような感じがあるからでしょうか。

その広がりが底なし!で、怖さを感じるくらいなのですが…

この摩訶不思議な絵本がどのように誕生したのか。そのあたりも大変興味があります。

とにもかくにも、あけてはいけない扉の中への旅。ぜひご体験を。


個人ブログ□□本のこと あれこれ□□

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紙の本ぼくのおにいちゃん

2008/11/01 14:54

弟の目線で語ったおにいちゃん。ひとそれぞれの持ち味、家族について考えさせられる、素敵な写真絵本

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

おとうとの目線で見た、おにいちゃんが写真で表現されています。
みんなのおにいちゃんと少しちがっているおにいちゃん。
ママとアルバムをみながら、おにいちゃんが赤ちゃんのころから今までを振り返っています。
おにいちゃんは、いつまでも体がくにゃくにゃしていて、ひとりで座れなかった。
それは、生まれる前から、頭の中にきずがあったから。
そんなことも、母と子(弟)の対話の中で、わかっていきます。


のんびりだけど、少しずつ 大きくなった ぼくのおにいちゃん。

お兄ちゃんの時計は、ゆっくり うごいているのかなぁ。(本文より)


弟がうまれたときのおにいちゃん(そのとき6才)の反応「ぼく」。

ブランコが大好きで、公園でブランコにのっているとずっと笑いっぱなしのおにいちゃんに女の子が、「この子、わらいぐすりのんだの?」と聞きにきた「わらいぐすり」。

ほとんどことばを話さないけれど、「ブ、ブ」「ネンネ」など家族に通じるまで何回も何回も言う、うちでいちばんおしゃべりなおにいちゃん「おしゃべり」。

ほかにも兄弟のエピソードや、おにいちゃんが迷子になったときのこと、夢に登場したおにいちゃん、パパやお医者さんのことばも出てきます。
ちょっと笑っちゃうエピソード、じぃんとくるエピソードが項目ごとに、とてもあたたかいことばで描かれています。

最後に、家族みんなでお揃いのセーターを着て、ジャンプしている記念写真。
これが、ものすご~~く素敵なんです!


あとがきで、この本の作者、星川ひろこさんの文を読んでいてはじめて、「おにいちゃん」が星川さんの長男と知りました。写真は、お父さんであり、カメラマンである星川治雄さんのものもあります。おふたりは、日本写真学園で出会ったとか。

この本を製作する過程、エピソードにもじ~んとしてしまいました。

文中で、パパがおとうとに語ることばが、とても素晴らしいのでご紹介します。

「人には それぞれ もち味っていうのが あってね、
 みんな ちがう味がするんだよ」

それぞれの「もち味」を認めて、生かせることができれば、そこは誰にとっても居心地のいい場所となることでしょう。

この写真絵本は、小学1年生のおはなしタイムで読み聞かせをしました。
おもしろいエピソードにくすくすと笑いながらも、最後にある男の子が「おにいちゃんは、病気なのかなぁ」とつぶやきました。

考えさらせれる、とても素敵な絵本です。

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紙の本日本のコピーベスト500

2012/01/26 08:31

選者のコメントで「生きたもの」として立ちあがる日本のベストコピー500点。泣けた!

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ま・さ・かこの本を読んで泣くとは…まったくの想定外でした。
戦後六〇余年の「日本のコピーベスト」500点。
選者は日本を代表するコピーライター、CMプランナー、クリエイティブディレクター10名。
コピーには、誰がどの会社の何の広告に対して拵えたものか、というデータはもちろん、ベスト10には選者全員、ベスト100には一人のコメントがついています。
ベスト10に関しては、実物の広告写真やイラスト、テレビコマーシャルの場合は3つの画面が掲載されています。

わたしは昭和の終わりの二〇年が生まれてからの二〇年に重なるのですが、ここに掲載されたコピーにはほとんどリアルタイムで接したか、少し前の時代のものとして見覚え、聞き覚えがあります。

読み進めていくうちに、あぁ!知ってる、なつかしい、そうだ、あったね…などと思いつつ、気づいたら泣いていました。
…なんだろう、これは。ノスタルジーとはちょっとちがう。ことばの力?
なにかに揺り動かされたのはたしかなのだけれど…
いろいろと理由を考えてみましたが、よくわからない。泣くことに理由なんてなくていい、と結論したのでした。

選者のコメントがとてもいいのですが、講評というより、コピーのできた時代や背景なども含めた感想・解説となっています。
これがあることで、ひとつのコピーがより「生きたもの」として、読者の前に立ちあがってくるのです。

巻末にはコピーライター、キーワード別の索引と、コラムニストで元「広告批評」編集長の天野祐吉氏による解説があります。コピーの歴史がわかる名文です。

天野氏によれば
 『いいコピーというのは、その中に主人公としてであれ、点景としてであれ、「自分がいる」と感じられるものなのかもしれない。』

…たしかに、このコピー集は、幼い頃からのアルバムを見るよりもずっと「自分」を感じさせるものがある。(だから泣けたのか…?)


読者は、ここに収録された500本のコピーに再会または初めて出会い、それぞれに感じることがあるでしょう。
きっとストーリーを読むのとは、ちがう感触を得るのではないでしょうか。
それこそが「コピー」の持つ特性・魅力なのかもしれません。

ちなみにベスト10を紹介すると

 おいしい生活。
 想像力と数百円
 おしりだって、洗ってほしい。
 男は黙ってサッポロビール
 モーレツからビューティフルへ
 触ってごらん、ウールだよ。
 好きだから、あげる。
 なにも足さない。なにも引かない。
 恋は、遠い日の花火ではない
 すこし愛して、なが~く愛して

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紙の本おふとんかけたら

2011/01/09 21:10

ぬくぬくあったか~い。おやすみまえに読むとしあわせな絵本。そうきたか!と、うなりつつ納得しちゃう展開が最高!

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

おふとんかけてもぐりこむのがしあわせな季節です。
いろんな登場人物(人ではないけれど)がおふとんかけたらどうなる…?
かがくいひろしさんのとってもあったか~い絵本。寝る前に読むのに最適です。

見開きには敷布団とまくら。
「たこさん たこさん おふとん かけたら」
ページをめくると
「くーるくる」

ソフトさん、ありさん、トイレットペーパーさん、まめさんと続きます。
うわぁ~そうきたか!
奇想天外というわけではなく、納得しちゃうんだけど、やられたーというかんじ。
目のつけどころがいいんです。よすぎてうなります。

文字のフォント、そしてそれぞれちがうおふとんの柄もよーく見ないとね。
特にトイレットペーパーさんは最高です。一見わかりませんよ。三男もあとから「あぁ!」と気づいておおいに納得していました。

最後はおふとんさんとまくらさんがぬーくぬく。
ほんわかあったまって、おやすみなさい。裏表紙のきりんさんもすごいなぁ。

おやすみ前にページをめくるのがたのしい絵本です。
しあわせ気分が増して眠りにつけますよ。


<ブログ> 産後の読書案内

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名作文学×人気声優できわだつ作品の素晴らしさ。解説の齋藤節もおもしろいCDブック

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

日本のいわゆる名作と呼ばれる文学作品。タイトルと作者は知っていても、読んだことがない。あるいは読もうと思っても最後まで読みきれない。そんな作品も音として耳から入ってきたときにはイメージが湧き、通して読んでみたいと思うかもしれない、と制作されたCDブックです。

『名作文学は、声に出して読んでもらった時、くり返し聞いても飽きない、理解が深まる、イメージがより鮮明になるものだ。(略)名作とはまさに聞くものなのだ』(監修の齋藤孝氏による「はじめに」より)

名作文学とアニメの人気声優さんのカップリング。
声の持つパワーと魅力に圧倒されます。

収録作品は
吾輩は猫である(夏目漱石)
それから
こころ
夢十夜
駆込み訴え(太宰 治)
ヴィヨンの妻
人間失格
斜陽
金色夜叉(尾崎紅葉)
蟹工船(小林多喜二)
雪国(川端康成)
桜の森の満開の下(坂口安吾)
羅生門(芥川龍之介)
春琴抄(谷崎潤一郎)
たけくらべ(樋口一葉)
山月記(中島 敦)
金閣寺(三島由紀夫)
銀河鉄道の夜(宮沢賢治)

声優別の収録作品は
 石田 彰
  こころ
  駆込み訴え
  蟹工船
  桜の森の満開の下
  金閣寺

 田中理恵
  それから
  斜陽
  春琴抄
  銀河鉄道の夜

 杉田智和
  吾輩は猫である
  人間失格
  金色夜叉
  羅生門
  山月記

 平野綾
  夢十夜
  ヴィヨンの妻
  雪国
  たけくらべ

各作品ごとにあらすじと解説があります。特に解説がおもしろい!
『漱石は思想を語る作家だといわれるが、映像的センスを持つ作家であることも証明した作品』(夢十夜)

『女性の強さを描いた作品だが、主人公のさっちゃんは、太宰を彷彿とさせる、しょうもない夫に耐えてがんばる妻、というわけではない』(ヴィヨンの妻)

『とにかく貫一の粘着度がすごい。「今月今夜~」は超有名なセリフだが、こんないい方で女に恨みをぶちまける男がいるのか!?』(金色夜叉)

『作品の肝となる「臆病な自尊心」「尊大な羞恥心」は仰々しい言葉だが、じつは今を生きる人たちの中にもある。たとえば、自分の力を出し切らずにあきらめてしまう、といったことがそれだ。』(山月記)

『ずれた現実に金閣寺がのしかかってきて、愛してしまうがゆえに燃やしてしまう。この、わけわからなさ!しかしそれに説得力を与える筆力が三島由紀夫にはあった』(金閣寺)

わたしはアニメや声優には不案内で、どなたもよく知らないのですが、「声で演じる人」の声は、俳優とは全然ちがう、別の魅力があることに気づき、堪能しました。

友人の娘さん(小6)がアニメが好きで、将来の夢のひとつ(現在まだ検討中)は声優になること、というのでこの本をプレゼントすることにしました。
どんなふうにこのCDを聴いてどんな感想を抱くのか、また会って聞いてみるのがたのしみです。


<ブログ> 産後の読書案内

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紙の本ほしのひかったそのばんに

2010/11/27 16:02

ディスプレイしたくなるクリスマスの由来を描いた絵本

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

クリスマス絵本は数多くありますが、これはクリスマスの由来についての絵本。
14cm×31cmの細長いサイズ、赤地に金色の大きな羽を持つ天使が絵が描かれた美しい装丁です。

「ほしのひかったそのばん」とは、マリアのあかちゃん、イエス・キリストがうまれたときのこと。
大工のヨセフと妻のマリアがナザレの街から皇帝の言いつけでベツレヘムの街へ出かけて行きます。
それまでのユダヤの人々が不幸せを嘆く様子も、さりげなく描かれています。
そんな時代背景のあったこの日。不思議な星が空に光り、救い主キリストが誕生。3人の博士や羊や小鳥たちがお祝いに駆けつける。
美しい版画で表現されています。


長男が保育園児だった頃、聞いてみたことがあります。
「クリスマスって何の日か知ってる?」返答は「サンタクロースの日!」うーん、残念…。
けれど街でもTVや雑誌でも、季節が近づくと必ずみかけるサンタクロースの姿。混乱するのもいたしかたないことかも。
キリスト教徒ではなくても、いや、そうではないからこそ、クリスマスの由来は知っておいた方がいいかもしれません。

そもそもどんな年中行事にも、必ず古の人のおもいや願い、由来があります。
絵本で知ることができれば、それを子どもに読むおとなにとってもとてもいいことだと思うのです。
家族や友人たちと過ごすひとときがよりいっそうたのしくなるような気がします。

この美しい絵本は、普段はその他のクリスマス絵本とともに仕舞ってありますが、11月も中旬を過ぎると出してきて、見えるところに飾っておきます。
わが家流のクリスマスディスプレイです。


<ブログ> 産後の読書案内(本のことあれこれ)

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紙の本そうか、もう君はいないのか

2010/11/02 06:23

しっとりと、ずっしりと胸に残る「何か」。没後に発見、まとめられた妻との出会いから別れまでの回想録。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

経済小説の先駆者として知られる作家・城山三郎氏の死後に見つかった、妻・容子さんとの出会いから別れまでを綴った回想録。
没後、主なき仕事場には、ロシア語で「ヨウ」と発音する記号が付けられたメモや原稿の断片が点在していたそうです。その未完かつ、欠落、順不動のままの原稿がまとめられたのが本書とのこと。
次女の井上紀子さんによる『父が遺してくれたもの─最後の「黄金の日日」』と、俳優・児玉清さんの解説。すべてをあわせてひとつの作品になっているように感じました。

終戦から間もない頃の出会いから、病いによる別れまでが描かれていますが、いちばんはじめにあるのは、ある日の講演会でのエピソード。
話しはじめる直前に二回席最前列の端にいる妻の容子に気づき、目と目が合った瞬間、容子は両手を頭の上と下に持ってきて、ふざけた仕草で「シェー!」
怒りたいし、笑いたい。「参った、参った」と口走りたい。そこをこらえて話だし、なんとか講演を終えた、と。そのシーンが目に浮かぶようです。
そして、講演後はふたりでタクシーで銀座へ。
さらに、夕食の席で一緒にテレビを見ているときのエピソードにつながります。
人工衛星の利用法として、遺骨を積んで飛行し、ぐるぐる地球を廻る、文字通り、天国で永眠させるプランができた、というアメリカのニュースが流れる。
「お願い。あなた、決してあんな風になさらないでね」
「どうして、そんなことまで心配するんだ」
「だって、あなた、飛行機とか、空を跳ぶことが好きだから。きっと、亡くなった後も、空から私を見ていて、『あっ、また銀座か』なんて……」
「よし、よし、しないよ。第一、あんなの目が廻りそうで、かなわないな」
「ああ、よかった」「大丈夫。監視されなくとも、決して無駄な買物はしませんから」

容子さんのちゃめっけのある魅力的な気質、普段の良妻賢母ぶりがあらわれています。
そして、4歳違いの夫を先に見送るであろう、というごく普通の予測、とはいわないまでも年の順、と思っていることもわかります。
「夫より先に」と願う妻は、あまりいないのではないかと思いますが(ひとり残すのは心配で)、容子さんもそのように思っていたのではないでしょうか。
後に残された夫の姿は、想像するに堪えません。

その他、ふたりのエピソードはこころ温まるものが続いています。
名古屋の図書館前での出会い。再会を約束するも「もう会えません」という一方的な別れ、その後、劇的ともいえる時をおいての再会、そして結婚。
大学講師から、本格的に小説に取り組むようになり、『輸出』により『文學界』新人賞を受賞。
ペンネームを伝えていなかったので、受賞を知らせる電報に「シロヤマ?うちにはそんな人いませんけど」と応えたというエピソード。
名古屋から、茅ヶ崎への引っ越し。
容子は私のパイロット・フィッシュ役、と、道場見学や講義に放つ。
取材などの旅に「来るか」と問われればいつでも「行きます」。理由は「だって、家事しなくていいんですもの」という名言。
オーロラを見るために出かけたときは見られなかったけれど、別の旅で飛行機から見ることができた、その時の様子。

短い文章ひとつひとつのの中に、このような印象的なエピソードが詰まっています。

結婚して三十年ほどが経ち、子供たちは独立。夫婦二人だけの初めての暮らし。

『人生の一区切りがあって、夫婦二人になるという気分は、良くも悪くも、独特なもの。しかし、いつか二人きりでいることにも慣れてしまえるが、やがて永遠の別れがやってくる。』

月二回の検診を受けていたので、まさか重い病気が進行しているとは思いもせずにいたけれど、あまりに疲れている様子。別の町医に行くと、一刻も早く精密検診を受けるように、と警告される。
ほぼ一日たっぷりかけての検査から帰って来たときの、癌が呆れるような容子さんの明るい唄声。「大丈夫だ、大丈夫。おれがついてる」と抱きしめる姿。胸に迫ります。

癌と分かってから四ヶ月、入院してから二ヶ月と少し。
亡くなる直前、ニューヨークに戻る息子と別れのシーン。容子さんのフィナーレに笑い泣きしてしまいます。

亡くなってから、ふと話しかけようとして「そうか、もう君はもういないのか」と、なおも容子さんに話しかけようとする。
このことばがタイトルとなっているこの本。
パートナーとの関係を考える人、永遠の別れが想像もつかない(ほとんどすべての)夫婦やカップル、これから生涯のパートナー、伴侶と出会う、という人に、しっとりと、ずっしりと胸に残る「何か」を示してくれる一冊です。


<ブログ> 産後の読書案内(本のことあれこれ)

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読むのみならず、編む愉しさを伝授する特別講義。そこで編んでみました『マイ・アンソロジー』。選ぶおもしろさを実感!

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

直木賞受賞の人気作家にしてアンソロジーの名手、高校の国語教師の経験もある北村薫さんが2009年に新宿の朝日カルチャーセンターで行った『アンソロジーの楽しみ』講座を完全再録したものです。

アンソロジーとは、ある意図のもとに集められた作品集。
この講座の中でも、北村さんは「アンソロジーはも選者の個性を読むもの」(P164)、≪なるほど、こんに作品があるのか≫あるいは、≪こんな配列があるのか≫と膝を打つのが、アンソロジーの喜び(P170)と語っています。

3回の講座の内容は
第一回 アンソロジーは選者そのもの(2009年1月20日)
第二回 アンソロジーは別の本への呼び水(2009年2月3日)
第三回 アンソロジーは≪今という時≫の記念(2009年2月17日)

高校三年生の12月からつけた日記や、読んだ短編の記録、評価、分析までしたノート、そして小学生の時にノートに作ったという、アンソロジー『スペイン民話集』にはびっくりします。実物の写真も掲載されているのがうれしい。
第一回では、参加者にアンソロジーを作っていただきたい、次回までに≪わたし、これが好きだな≫というものを選んで来て、教えて下さい、と宿題が出ました。

北村さんが関係したアンソロジーについての具体的な話もあります。
編集者も会場にいらしていて、その時のエピソードや、≪わたしの好きなアンソロジー≫を発表しています。

この場にいた人は、おもしろすぎて、ひとつひとつのことばも聞き逃さないようにしていたのではいでしょうか。ライブの醍醐味。経験した人はうらやましい。
けれど、こうして本になり、活字で読めるのはたいへんありがたいことです。聞き逃しもなく、じっくり繰り返し読むことができます。

わたしたち読者は、北村さんが語るご自身のエピソードと、会場でその話を聞いている人とのやりとりを、二重で、その場に居合わせたかのように感じることができます。
北村さんの語りのうまさ、多岐にわたる話題のつなげ方のうまさはほんとうに素晴らしい。
いつか実際に拝聴してみたいものです。

最後には、参加者の皆さんが編んだ『マイ・アンソロジー』が発表されています。解説や、テーマ、題がつけられたものも。


この本を読み終えたとき、わたし自身がアンソロジーを作るのは、むずかしいな…と思いました。すぐにはまったく浮かんでこなかったのです。
読んできた本はそれほど多いわけじゃないし…と、気になりつつもしばらくそのままにしていましたが、ふと、とても印象が強かった短編を思い出しました。
そうだ、あれが好きだった。そういえば、これも好きだった。読んだ直後の感じ、今でも覚えている…と、記憶の底から浮かび上がってきたのです。
それらをどのように配列しようかと考えるのも、これまた本当にたのしい時間でした。

集めてみたものは、ブログで紹介してみました。こちらです。
全部で7編、うち詩と漫画がそれぞれ2編あります。
共通点、テーマをあげるとしたら「忘れ得ぬ出来事」となるでしょうか。
ひとつ思いつくと、その作品が呼び水になる、というのが実感できました。

北村さんはこのように結んでいます。
「≪今という時≫の記念として作り、自分のために残してもいい。気のあった友達と交換してもいい。そういう試みを何年かに一回やったとしたらどうか。(略)
二十年、三十年経った時に、そのページをめくると、≪時≫が蘇って来るのではないでしょうか。」(「終わりに」P189)

選ぶ、というのは、どういう自分であるか─という表現。
(これはアンソロジーの作品選びに限りませんよね)

ちょっと試しに、選んで、表現してみませんか?


本についてのよもやま話。 <ブログ> 本のことあれこれ

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紙の本きみがいま

2010/09/11 05:59

ちいさな男の子に注がれた、静かであたたかく、強い肯定の視線。息子の世界とそれを見守る父親の絵本。

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父親の目線で息子を見守っている絵本。あたたかく、そして力強い「肯定」を感じます。
原題「Little Boy」のとおり、登場するのは、小さな男の子。4、5歳くらいでしょうか。学校に行き、勉強するようになる前の時期かと思います。

 きみが いま むちゅうなのは…
ページをめくると
 きいろい カップ
 おはようの うた
 きらきら まぶしい あさの ひかり

…というふうに、「きみが いま 夢中な」物事を、他者の視線でみつけ、羅列していきます。

他者とは、ほかでもない、父親でしょう。
朝、シャワーを浴びる姿(ほとんど見逃しそうなところにいます。これはおまけみたいなものでしょうか)、男の子の背丈をはかり、壁にえんぴつで印をつけ、一緒にクッキングし、靴ひもを結んでやる姿などが描かれています。

子どもの頃に夢中になるものや遊び。たいていは、大きくなるにつれて卒業し、忘れてしまうかもしれません。
たとえば遊んだものが残されていたり、人(親や祖父母、親戚)から話を聞いたりして、なつかしく思い出すことはあるかもしれない。
けれど、具体的には覚えていなかったりするのではないでしょうか。

男の子は特に、気持がまっすぐで、すぐに夢中になって、傍から見るとなにやってんだか、というようなことを淡々と、もくもくとやるんです。
というのは、男の子の母親となった女性(=わたし)としての視線です。
これがまたけっこうおもしろいので、段ボールに入っているところや、おもちゃなどをテープでとめたり、重ねたりしているところを写真に撮って残したりしていますが…

この絵本にあるのは、たっぷりの愛情を持って、けれども適切な距離を置いて、息子をながめ、息子のやることすべてを肯定する視線。
それは、とても静かで、かつて自分も子どもだった、というようなノスタルジーとはちがい、息子が生きている「いま」をそのまま受けとめている、強さのある視線のように感じました。


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紙の本性悪猫 やまだ紫選集

2010/09/01 15:59

猫の姿態と表情は雄弁、ことばは散文詩。母の心情を描いた2作品は大傑作!やまだ紫 代表作の復刻版。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

Twitter初?Twitter発!猫本フェアで大きく取り上げられていた漫画です。
■猫本フェアin往来堂書店 ウェブ本棚ブクログ

やまだ紫さんは2009年に急逝された漫画家で、80年代、新しいマンガ表現を切り開いた女性。小学館クリエイティブから復刊されたこの本は、重版の予定はないそうです。(「往来っ子新聞」第猫号 通算33号 往来堂書店発行より)

やまだ紫さんのことは存じませんでしたが、このフェアで見かけて気になったので、読んでみました。
収録作品は
「性悪猫」
  野良
  夢
  日向
  天空
  ときどき日溜まりで
  柳の下
  さくらに嵐
  山吹
  腹
  梅雨
  残暑
  八月
  おーい
  山の水
  窓の外
  ひかげ
「長ぐつ はかない ねこ」
「時間の兵隊」
「出口」
猫ギャラリー
マンガで描かれた詩─中野晴行(編集者・マンガ研究者)

猫のモノローグ、猫と猫、猫と人、猫と犬と人との会話などが、猫の姿態や表情は雄弁に、ことばは少なく、散文詩のように描かれています。

「さまざまな猫たちの姿が日常スケッチ的に描かれ、その姿には人間の日常の中の哀しみや愚痴や葛藤が見事に重ねあわされている。そして、猫たちに仮託しながら、人間という存在の不思議を少し離れた場所から冷静に見ているやまだ紫という作家の姿がある。」

と、中野晴行氏が解説に書いていますが、まさにその通り。こんな作品にははじめて出会いました。

なかでも、びっくりするほどの傑作は、母の心情を描いたもの。「山吹」と「おーい」。
こ、れ、は…!と絶句しました。
このような「母」の描き方は見たことがなく、読後の爽快感といったら!
まさに、隠れた名作です。

わたしはそれほど猫好きではないので、猫の本だからといって特にピックアップする、ということはないのですが、フェアになった経緯が興味深く、とにかく見に行ってみよう、と往来堂書店に出向いてみたのです。偶然の出会いに感謝します。

同じく復刊された「しんきらり」  「ゆらりうす色」 も、深くこころに残る作品です。


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