がんりょさんのレビュー一覧
投稿者:がんりょ
紙の本介子推
2002/05/27 16:51
忘れかけていた「義」を見た
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中国古典を描かせたら随一の作者の報われぬヒーローの物語。
村の少年が,現在神へとあがめられている介子推へと成長していく過程を,
少ない記録を想像力で補い鮮やかによみがえらせた作品。
功績を上げても,主張せず,一回の賤臣として主を敬う様は痛々しい。
競争社会で忘れそうになる,義の心をよみがえらせてくれた。
紙の本猿の惑星
2002/01/19 12:18
心理描写が深い
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ティム・バートンの映画にはがっかりだったが 昔感動した旧版の原点を知っておきたくて読んでみた。
一緒に遭難した恩師の変わり果てた姿を動物園で目撃するエピソードなど、主人公の心の動きが細かく描写されていた。より深く、文明ってなんだろうと考えさせられた。
原作、旧版、新版で、旧版のエンディングが一番よかったと感じたのは、一番最初に見たせいか。
紙の本温泉へ行こう
2002/01/19 12:05
この宿行ってみたいけど、まだあるの?
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ご存知山口瞳の温泉紀行である。
こだわりの人であるから、気に入らないとすぐに宿を変えてしまう。その基準というのが料理や風呂というよりもサービスする人の心意気みたいなもので判断しているところが、一般のガイドブックと一線を画すところだろう。
たしかに、うまくない料理や汚く狭い風呂であっても宿の女将の人柄によってまた来たくなる宿というのはある。人を見る達人が選んだ、これらの宿に行きたいと思うが 10年以上前の文章なので、今どれだけ残っているか。
紙の本ある閉ざされた雪の山荘で
2001/11/16 19:37
複雑なプロットをすっきり読ませる力量はさすが
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演出家の指示で山荘に集められるオーデション合格者。ここで、雪の山荘に閉じ込められていた設定でミステリー劇のリハーサルを行うという。そして次々と消えていく役者たち。これは芝居なのか、現実なのか...。支離滅裂になりそうな、複雑なプロットをごちゃごちゃにならずに纏め上げた作者の力量はすばらしい。
紙の本そして粛清の扉を
2001/07/09 19:02
背徳的な爽快感
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気分がすっとした.
普段,駅などで傍若無人な高校生に苦々しく感じている人は是非お勧めする.
とんでもない生徒たちを集めた学級の担任教師が卒業式の前日に武装して教室を占拠する.そして,生徒たちを次々と殺していくのだ.この生徒たちたるや,それぞれ本当に殺されて当然のことばかりしつづけている連中なので,ころされるシーンには一種の爽快感が感じられた(仮面ライダなどで怪人が倒されたときの感覚にちかい).
このあいだ,小学校襲撃事件があったこともあり,この手の話題はタブー視されているかもしれないけど,お勧めの一冊である.
2001/02/19 18:45
うまい酒、うまい肴…これは拷問だ
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この本は決して空腹時には読まないほうがよい。たこのまんま、ひれ酒、たこぶつ… 全編に紹介される居酒屋メニューと地酒の数々は満腹時によんでもよだれが出てくる。
飄々とした文体とは裏腹の作者のバイタリティはユンケルを飲んでまで居酒屋を梯子する。それだけのために旅に出て、それぞれの地方で納得いく店に出会えるまで夜の町をさまよいつづける姿には、脱帽してしまう。
店の住所や電話番号は記載されていないため、ガイドブックとしては使えないが、今すぐ居酒屋へ行きたくなってしまう一冊である。
評者も真似をして、八王子の町を放浪してみたが2軒目で移動するのが面倒になって、その店で酔いつぶれてしまったことを報告しておく。
紙の本球形の季節
2002/07/07 13:50
「場」に宿る虚実の間
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ときどき「場」には不思議な力が宿ることがある.
それは,墓地だったり,人気の無いトンネルだったり,山の上の祠だったりするが,何か目に見えない力を感じて,そこに近づく人を押し返すのである.
本作品は村全体に力が宿っている東北の村を舞台に,そこで生まれ育った少年少女達の経験する不思議な体験を作者特有のやさしいタッチで綴っている.
現実を忘れて,虚と実の微妙な間にある世界にどっぷりつからせてくれる一冊である.
2002/07/07 13:24
日米パテント諜報合戦の勝敗はいかに
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次世代の産業界の主導権を握ることができる特許をめぐって日米企業と両政府が繰り広げる工作合戦が繰り広げられる物語.
アメリカの独善的とも言える特許政策に,日本勢がどう対抗していくかが見物.そして最後に笑うのはどちらの国か.
こんな専門性の高い分野をテーマにして,これほどのサスペンス作品に仕上げることができるとは驚きだ.
紙の本Go
2002/06/22 12:36
障害を超えた恋愛は成就するか
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恋愛小説である.恋愛は障害があるほど盛り上がると良く言われるが,これはちょっと手ごわそう.いわれのない差別意識を植えつけられている女の子に恋をしてしまった韓国籍の男の子の物語.この手の小説に有りがちな恨みがましいところが全くなく,さらりと書かれているところが,逆にスッと心に沁みてくる.
紙の本ドリームバスター
2002/06/08 11:31
宮部節が心にしみる良質ファンタジー
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書店ではじめてみた時には,目を疑った.劇画風の表紙に「ドリームバスター」宮部みゆき? 気がつけば手にとってレジに向かっていた.
読んでみると,やっぱり宮部だと思わせる心をあっためてくれるフレーズがちりばめられて,軽くなりがちな「夢の中での賞金稼ぎ」という設定を引き締めている.「To be continued」 らしいので楽しみだ.
紙の本あかね空
2002/06/02 12:02
職人魂と家族への愛
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やはり職人ってカッコイイ。
そう思わせてくれる作品である。
第1部では,上方から一人で深川にでてきた豆腐職人が,味覚の違い,しきたりの違いなどで苦労しながら妻を娶り,子を授かり,大通りに店を構えるまでのサクセスストーリが語られる。
第2部では,職人亡き後の妻,2人の兄弟と妹の愛憎入り混じった人間模様が綴られている。
どんな困難に陥っても,最後には,仕事・家族への思い入れの強さがすべてに勝ることを教えてくれた。
紙の本縁切り神社
2002/06/02 11:33
愛さなければ,愛されない
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切ない愛の物語が集められた短編集。
切実に愛されたいと願う女性達が,悩み苦しむ様が痛々しく描かれる。愛を求めるが得られないことで,相手を責めるが,最終的には人から愛されるためには,自分がその人を愛さなければならないことを知り,自分の問題として跳ね返ってくることになる。
それに気づいたときには,もう手遅れ。愛したからって,愛されるとは限らないのだ。
紙の本インストール
2002/05/25 16:04
17歳とは思えない17歳ならではの小説
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話題作と聞いて読んでみた。
17歳とは思えない文章力で,17歳でしか書けないテーマを17歳ならではの表現を用いて書いた貴重な作品。
今後の作品が楽しみな作家がまた一人増えた。
最初読点の打ち方の癖に引っ掛かりを感じたが,慣れれば気にならない。
紙の本イエスタデイ
2002/05/25 15:56
小説オタクの青春
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清水義範の自伝風青春小説。
後書きによると,事実半分フィクション半分ということだが,おそらくこの小説の主人公のように,小説を書くことが好きでたまらない少年として過ごしてきたのだろう。
「好き」と「才能」の間で悩む青春時代をほほえましく描いた,あの頃を懐かしむことができるようになった大人におすすめの作品である。