サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

  1. hontoトップ
  2. レビュー
  3. Skywriterさんのレビュー一覧

Skywriterさんのレビュー一覧

投稿者:Skywriter

149 件中 31 件~ 45 件を表示

ここ数年読んだ本の中で最高の一冊。科学書だけど娯楽書とも言えるほど、ためになって面白い名著

7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 この本は凄い。私にとって、ここ数年で読んだ本の中でも群を抜いて、破格に面白かった。とにかくこの辺鄙なところをご覧くださっている方々に言いたいことは、私のつまらない書評なんて読んでいる暇があったらこの本を手に入れて読んでみてください、ということ。それくらい面白いし自信をもって他人に勧められる。

 本書は科学全般の通史をベストセラー作家が書いている。科学の営みの外側から書かれていることと、軽妙な語り口を妙味とする著者の組み合わせが空前の名著を生んだと言って過言ではない。

 科学の営みの外側から書かれている、ということが持つ利点として、特定の分野に偏らずにめぼしい話題を網羅することに役立っていることが挙げられる。

 宇宙論、惑星科学、超新星、ニュートン力学から量子力学や相対性理論への流れ、恐竜発見の歴史、、免疫、周期表の発見、軌道を交差する危険な小惑星、大陸移動説、高熱や高圧の地に潜む生物達、ミトコンドリア、コケ、ダーウィンの進化論、DNA発見の歴史に多地域進化説や人類史などなどを取り上げている、といえばその範囲の広さが伝わるだろう。

 これだけ見て敬遠してしまう人が居そうなものだが、そこに著者が科学者ではないベストセラー作家である強みが生きてくる。門外漢の自分が興味を持ったことを調べに調べたことを軽妙に書いているのだ。この軽妙に、というのがポイントで、科学書なのに読んでいて笑いがこみ上げてくるのである。

 たとえば、ニュートンについて書こうとしたらどのように書き出すだろうか。微分の発明者で(ライプニッツも同時期に、ただし互いの影響を受けることなく考案していたが)科学史に残るプリンピキアを書き上げた偉大な天才、彼の前後で物事の見方は大きく変わるほどの多くの偉業を成し遂げた不世出の人物、なんてところだろうか。しかし、本書ではこうだ。”ニュートンは、文句のつけようのない変人だった。計り知れない才能の持ち主ではあったものの、(中略)へんてこな事をしでかす名人だった。”(P.75)

 ずっこけてしまうような書き出しだが、これで読者の心を掴むとそこからやはり同じような調子で、しかし調べたことは全て書くという勢いで筆を運んでいる。ニュートンが錬金術や怪しげな宗教にはまっていたことを交えながら、偉大な研究の内容は具体的にどうだったのか、何が説明できてどんな成果があったのかがコンパクトにまとめられているのだ。

 それはニュートンだけではなく、他の項目についても同じ。これほどまでに広い話題を丁寧かつ簡単に、しかも笑いながら読めてしまうように書かれているのは本当に感服すべきことだろう。本書が中学生に与えられていたら科学はつまらないとか難しいという印象を持たせることはないだろう。数式や化学式は出てこないため中学生でも十分に理解できる内容でだし、軽い気持ちで読んで楽しめてためになる。手放しに絶賛すべき一冊だ。

 唯一苦言を呈するとすれば、本文だけで635ページという分厚さでは持ち運びには困難なので2〜3巻組みにして欲しかった、ということだろうか。もっとも、読み始めてしまえばその厚さが気にならなくなる名著なのだけれども。とにかく、評価の★が5つまでしか付けられないことを恨みたくなるくらいに面白い本。嘘だと思ったら手にとって見てください。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本反社会学の不埒な研究報告

2006/03/26 18:04

真面目な話を真面目に、じゃつまらない。真面目な話でもいくらでも面白くなる

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 前作の『反社会学講座』と同様に、世にはびこる”いかにももっともらしい話”が実はどれほどいい加減なのかを徹底した調査で描き出しながら、読み物としても面白い作品に仕立て上げるのは見事の一言。
 堅苦しく言ってしまえば、メディアリテラシーを持てなんてことになるんだろうけど、そんなことに付き合える人はそうそう多くはない。なにせ、社会問題は沢山あるのでそのすべてに対して興味を持ち、情報をいちいち取捨選択なんてできない。
 だから、Z新聞社の調査によると景気が回復したと思う人はXX%で、とか言われるとそのXXという数字で景気が回復したのかしてないのかつい判断してしまう。だいたい、そんな記事なんて面白くないのが相場だから数字だけ見て中身は読み飛ばすことも多いし。
 そうやって我々の常識というものが形作られていく訳だ。
 ところが、そうやって出来上がった常識は、実はリアルな世の中を反映していない。だから、きちんとした調査で自分が持っていた常識と世界の現実とが食い違うこともでてくる。その食い違いを面白おかしく書くのは大変な労力だろう。だから、この手の統計だのなんだのといった本はつまらないことが多い。
 ところがこの本は別格である。それは本当なの?という疑問に細かな数字を出して丁寧に反論していながら、丁寧さを感じさせない。その理由はおそらく、バックボーンとなる細かな数字を集めるのにかかった労力や時間と同じかそれ以上を、読者が面白いと思うように書くことに費やしているからではなかろうか。
 とにかく、自分の常識がひっくり返される面白さは抜群。手にとって見ることを強くお勧めします。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

ハッブルが捉えた驚嘆すべき美しい数々の画像から宇宙の姿を探る

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 望遠鏡は、なんといっても宇宙に置くに限る。

 地上に設置したものは、メンテナンスが楽という利点はあるものの、大気によって光が散乱してしまう、波長によっては吸収されてしまい観測できない、などといったデメリットを抱えている。このデメリットは直接観測精度に影響を与えてしまうのである。

 この問題を解決するために作られたのが、ハッブル宇宙望遠鏡。打ち上げ当初にはミスがありぼやけた映像しか得られなかったものの、修復を経てからは知の世界を切り開く最大の武器として活躍し、目を見張るような成果を次々に生み出している。

 本書はそのハッブルの打ち上げから現在に至るまでの歴史を豊富な画像と共に紹介している。

 銀河、星雲、星団、惑星、そして地球。鮮明なカラーで眺めると、つくづく宇宙は美しいと思う。それが例え銀河同士の衝突や超新星爆発といった、過酷なものであっても遠く離れた我々の眼にはえも言えぬ美しさに映る。

 解説が優れていることも、本書の価値を高めている。美しい画像のその奥で何が起こっているのか、最新の知見と最新の情報がバランス良く提示されることで、宇宙論の面白さを感じさせてくれる、魅力に溢れた本。宇宙に興味を持たれているのなら、是非手にとって見て欲しい。きっと、その美しさの虜になると思う。

 尚、ハッブルの捉えた画像については、ハッブル望遠鏡ギャラリー(英語)から見ることができます。興味がある方は是非どうぞ。


評者のブログはこちら

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

カラスの驚くべき生態と、研究者の楽しいながらも大変な苦労を共に楽しめる、優れた概説書

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 カラスは賢いとは良く言われることだ。曰く、人の顔を覚え、悪戯すると復讐される。曰く、罠のようにカラスを害そうとするものにはすぐに気がついてしまう。また、その賢さ以上に生ゴミを漁る害鳥としての印象も強い。

 ところが、一歩引いて考えてみると、我々は余りにもカラスについて知らないことに気づく。

 生ゴミを漁る以外の時間、カラスは何をしているのか。都会に住み着いているカラスはどんな種類なのか。夜はどこで寝ているのか。群れで行動するのか。望んでとは言えないにしても身近な生物だというのに。

 カラスに魅せられた著者が、カラスについて何が分かってきたのかを驚くべき生態を交えながら語っているのが本書。本書を読み進めるにつれ、印象よりもずっと頭が良く、興味の尽きない生き物だと思うようになった。

 人間との付き合い、都会に住むに当たっての適応もそうなのだが、とりわけ興味を引かれたのは、彼らの脳細胞のネットワーク密度は鳥類は愚か、人類をすら越えているというところ。本書でも紹介されている、カラスが遊びをするというのは、この脳の発達と関係があるのかと思いながら読んだ。

 カラスの生きる姿そのものも興味をそそられるのだが、本書の魅力を高めているのには、研究を進めるに当たっての苦労話が面白いことも忘れてはならないだろう。著者はカラスの研究で生活の糧を得ているのではなく、本業の勤めを持ちながら趣味として研究を進めている。それゆえの苦労もあれば、相手がどこへでも飛んでいってしまうが故の苦労もある。

 カラスのねぐらを探る際、顔を覚えられないようにと目深帽を被りながら深夜路上に出れば職質に逢う。とりわけカラスに発信機を付けようとして機動隊に警戒されたとのエピソードは、ついつい研究に一途な研究者を見舞った意外な展開のシーンが脳裏に浮かんでつい笑みが浮かんでしまった。

 カラスの姿にも研究者の姿にも面白さの感じられる、優れた本だと思う。カラスにはまだまだ分からないことが多いようなので、新たな知見が加わるのが楽しみである。生物は奥が深いと改めて思わされた。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本戦争請負会社

2009/10/03 22:21

戦争の外注化が何をもたらしているか

6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 力の中でも最も強力で大規模なものが軍隊であることは議論の余地が無いだろう。ではその軍隊を使役するのは誰か。その問いに国と答える人が多いのではないか。しかし、15年ほど前には正しかっただろうその答えは、今では必ずしも正しいとは言えない。

 なぜか。本書のタイトルにもなっている、戦争を請け負う私企業、民営軍事請負企業、本書ではPMF(Privatized Military Firm)と略称される一群の企業が少なからず誕生し、活躍しているためである。

 まず紹介されるのは、アフリカの小国・シオラレオネの事例。ダイヤモンド鉱山を抱えるこの国は、本来なら国全体が潤っていて良いはずの国である。しかし、鉱山を巡って不安定な政府へ反乱が起こったため、国としてのまとまりすら失われかけていた。そこに現れたのが、謎の軍隊。顔を黒く塗り、人種すら想像できなくした異形の軍隊は、瞬く間に反乱軍をジャングルの奥深くへと追いやったのである。

 後に判明したのは、彼らは南アフリカに拠点を持つPMF、エグゼクティブ・アウトカムズ社に属する人々ということ。

 シエラレオネを皮切りに、読者は中東、ボスニア、アフリカ、南アメリカといった地域で思いもよらないほどに戦争が外注化されている現実を眺めていくことになる。外注されるPMFの性格も千差万別。中には直接戦闘を行う企業も有れば、訓練に特化する企業もある。あるいは、兵舎の建設や地雷除去などの兵站を担う企業もある。

 これらのPMFを丁寧に分類し、PMFが抱える様々な懸念点を丹念に掘り下げている。おかげで、現在の世界が抱える不安定さや軍事的な課題を理解するのが容易になっている。

 また、中世の傭兵から始まる国以外が担ってきた暴力機関の歴史を追っているのも本書の魅力を高めている。従って、本書はまた傭兵の歴史でもあると言える。

 それにしても内容が中々頭に入ってこなかった。訳者の文章と私の好みがズレているのか、私の理解力が悪いのか。折角興味深い内容を扱っているのに、のめりこめなかったのがちょっと残念。


評者のブログはこちら

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本天涯の砦

2009/09/09 22:45

宇宙を舞台にしたパニックものの傑作

6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 地表から800キロ上空を巡る軌道複合体”望天”で大規模な事故が発生した。回転により重力を生み出す、その回転軸で爆発が起こり、宇宙線との連絡部を含む第四セクターが接岸中(?)の月往還船”わかたけ”もろとも吹き飛ばされたのである。

 事故から生き残ったのは、ほんの一握り。しかも、宇宙船の操作が可能だったり、緊急事態に適切な対応を取るべく訓練された人物なりというのが一人も生き残っていない。彼らが生き残ったのは、たまたま爆発の中心から離れた位置に居たことや、たまたま隔壁が壊れなかったおかげで真空に晒されずに済んだことなど幾重の偶然が重なって難を逃れた、という人ばかり。

 しかし、彼らの運命も風全の灯火と思われた。容赦ない地球の重力が、この巨大な複合体を地表に引き摺り下ろそうとしていたのだ・・・・・・。果たして、彼らは生き残ることができるのか。

 宇宙空間を舞台にしたパニックもので、次々に襲いかかる脅威をどう回避するか、ページを繰る手が止まらなくなる。事故の背景や、次々に起こる脅威のについて、不自然さを感じさせないのが凄い。

 加えて、なんといっても科学考証がしっかりしているのが素晴らしい。宇宙空間で人間が生き延びるということは、それだけで膨大な科学技術の蓄積が要求される。そこを舞台にしているのだから、科学考証の深さはそれだけ世界観の堅固さにつながるのだ。

 登場人物についての掘り下げも同様に深みが感じられる。いつしか物語に没頭し、世界に入り込んでいる自分が居た。SFが好きな方は是非手に取ってみて欲しい。


評者のブログはこちら

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

世界の始まりはどこまで解き明かされているのか。始まりを知る科学の旅の面白さを感じさせてくれる一冊

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 技術の進歩は、現在の宇宙がどのような姿をしているのかをかなりのところ明らかにしている。最も身近な太陽系についても、まだまだ分からないことは沢山あるが、それでも現在の姿を知ることはできる。

 では過去のことはどうか。これも、実に多くのことが明らかになっている。宇宙はビッグバンで始まった、ということは多くの人が知っているだろう。人類が類人猿などを経て進化してきたことだって広く知られている。

 だが、究極の過去、物事の始まりはどうだったか、というと、ここにはまだまだ大きな謎が潜んでいる。当然だろう。なにしろ、始まりが遠い過去であるために、過去の実像を知るための手がかりすらほとんど無いのだから。

 困難にも負けず、科学は始まりを探り出そうとしている。その試みのゴールはまだまだ見えないが、それでもゴール候補らしきものの姿は見え始めている。ビッグバン直後の宇宙の姿、生物が生まれる前の化学物質段階での進化、惑星の成り立ち。始原を求める探求が科学者を含む多くの人々を魅了してきたのは、そこに沢山の知があるからではないか。

 本書では、化学進化の段階において粘土化合物が大きな役割を果たした可能性や、種の進化の不思議、人類の辿ってきた道のり、ビッグバン直後の宇宙の姿、太陽系が生まれるまでと、いずれも興味をそそる話題が取り上げられている。最新の学説を読みやすく紹介してくれているので、知の世界を楽しむのにうってつけである。

 また、多くの図版を用いていることで読者の理解を助けてくれているのもありがたい。図版そのものも不思議を感じさせてくれるもので、見ていて楽しい。科学の楽しさを感じさせてくれる優れた本だと思う。


評者のブログはこちら

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

性差は生まれながらにしてあることを冷静でバランスよく明らかにする好著

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ある女性は、ボーヴォワールの「人は女に生まれるのではない。女になるのだ」という言葉を信じていた。たまたま彼女の子供は男の子だった。そこで、彼女は自分の息子に自身がとても大切にしていた人形を与えた。自分が大事にしたように、息子も宝物としてくれるように。

 しかし、結果は無残だった。その息子は、自分のできる限りの分解、つまり人形の服を脱がし終わるとそれっきり興味を失ったのだ。それをみて彼女はボーヴォワールは誤っている、と悟ったそうである。

 この女性とは私の母のことであり、その息子とは私のことだ。こんな経験は、男の子を持った母親にはありふれているのではないだろうか。

 では、そんなありふれた経験はなんらかの理由があるのだろうか。男の子と女の子の差を決定付けている要因が。

 かつてその要因は社会的なものと考えられた。男の子には周りが男の子であることを期待するが故に、本人は期待に応えようとして男の子としての振る舞いをする。たとえば人形よりも車のオモチャを選ぶように。女の子の場合には逆に、車のオモチャより人形を選ぶような圧力がある、と。それこそボーヴォワールに代表されるようなフェミニストの(しばしば政治的影響力を振るう)見解だった。

 しかし、現在では男女の脳には生まれながらの性差があることが明らかになっている。脳の少なからぬ部位で性遺伝子に基づく違いがある。そして、その性差は想像以上に大きいのだ。

 ところが、男女に本質的な違いは無いとする政治的な主張はあまりに力を持ちすぎてしまっている。そのため、男の子にとっても女の子にとっても幸福とは言い難い状況が発生してしまっている、と著者は主張する。

 自分の家庭医としての経験を織り交ぜながら男の子と女の子の違いを明らかにする。男の子と女の子の振る舞いの違いを事例としてみるだけでも面白く、自分自身や周囲の状況を極めて上手く説明していると思う。出てくる名前が欧米風ではなく、日本人の名前だったら日本人が日本の社会について書いたのではないかと思い込んでしまうほどに。

 また、本書がユニークなのは、決して自分の持つ政治的なイメージを性差に押し付けることはしないことにある。著者自身はこう述べている。「(略)ひとつだけ自分に課したことがあった。女の子と男の子はこんなふうにちがうと主張するときには、かならずそれを裏づける証拠がなければならない。だから性差にかんするわたしの主張はすべて、審査を受けた科学雑誌の記事や論文がもとになっている。」

 この冷静さが本書をさらに面白くさせている。得られた違いは明白で、決して小さいものではない。子供の頃から男女は違うもの。その子にあった育て方をするのはもちろん大事なことだが、性差を正しく認識し、違いを踏まえた育て方はもっと根源的な作用をする。

 大切なのは、男女どちらに優劣があるかを面白おかしく書き立てることではない。ただ育ち方が違うというだけの話だ。ナイフとスプーンは全く違う機能を果たす。どちらが優れているかと問うのはナンセンスであろう。

 男女に差があるという主張は直ちに優劣の議論に結びつきがちだが、そこから離れているのも本書を面白くしているポイントだと思う。

 この様な本が多くの子供を教え育てる立場にある人々、つまり親や教師に読まれることを願ってやまない。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本情念戦争

2006/05/27 01:13

フランス革命前後からフランスが安寧を取り戻すまでの激動の日々を3人の傑物から追う

6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

王政への不満から始まったフランス革命は激動の時代の幕開けであった。ロベスピエールによる恐怖政治、ナポレオンの台頭と失脚を経ての王政復古と対外的にも対内的にも極めて大きな変動があったのだ。

 振り子の針が振れるが如く政治体制がコロコロと変わる、複雑な時代を切り取るには一人の人物に注目するのが楽なように思われるからか、この時代を語るにはやはりナポレオンを中心に据えてその動向を追うのが中心かと思う。しかし、筆者はその見事な腕で、3人の傑物を同じくらいの比率で重要視しながら分かりやすく面白くひきつけられる話にまとめ上げた。

 戦争と栄光に情熱を燃やす稀代の軍事的天才ナポレオン。常にフランスとヨーロッパ全体の安定を気にかけながら個人の利殖と娯楽に莫大な時間と金をかけたタレーラン。そして、秘密警察を組織し革命前の時代からナポレオン失脚後の王政復古まで常に権力の傍にあった謀略家フーシェ。

 3人は時に協力し、時には激しく対立しながらそれぞれの情念に従って行動する。誰も彼も一筋縄では行かない、才知に溢れる人々の行動とその結果がとても面白く、ひきつけられる。久々に読み終えるのを惜しいとつくづく思った一冊。おかげでフランス革命についての理解がちょっと深まり、興味は無限に広がった。世界を広げてくれたことに感謝したい。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本ハチはなぜ大量死したのか

2011/11/23 18:03

蜜蜂大量失踪は何故起こったのか。また、その何が問題なのかを丁寧に追った見事なサイエンス・ノンフィクション。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 近年、蜜蜂が大量に失踪している。女王蜂と幼虫と蜂蜜だけが巣に残され、働き蜂が姿を消してしまう。巣に戻らなくなった彼女ら(働き蜂は全てメス)が、命を長らえられるわけはない。何処かで死んでしまっているのだ。

 蜜蜂が居なくなったらと言って、何か困ることがあるのかと思う方もいらっしゃるかも知れない。蜂蜜が高くなっても別に構わない、と思われるかも知れない。しかし、そんな単純な問題ではない。蜂の大量死は、食卓の崩壊に繋がりかねないのである。

 植物の受粉には、花粉がメシベに辿り着く必要がある。その手段は2通りある。一つは花粉を風で飛ばし、運を天に任せる方法。風を媒介とするために風媒とよばれるこの方法は、まさに風まかせのために植物側の戦略は軽い花粉を大量にバラ撒くものになる。花粉症を引き起こすのは、こちらの戦略を取る植物に拠る。杉、檜、イネ科の植物等が代表的なものだ。

 もう一つは、虫に花粉を運んでもらうもの。こちらは虫媒と呼ばれる。お察しの通り、虫媒の中核にいるのが、蜜蜂である。花は虫を引き寄せるための目印として綺麗な花を纏い、蜂へのご褒美として蜜を用意する。その芳香で多くの人を魅了する花は、本来は蜂等の虫に向けられたものだ。

 蜜蜂がいなくなるとどうなるか。それは、花を付ける植物の受粉が上手くいかないことと等しい。梨、林檎、サクランボ、ブルーベリーと言った果物、アーモンドに代表されるナッツ類、茄子やトマトといった食卓に欠かせないものが得られなくなる。現に、アメリカにおいては養蜂業は蜂蜜を売って生計を立てるのではなく、受粉用に蜂を貸し出すことで利益を得ているという。縁の下の力持ちと言うべきであろう。蜜蜂の大量死が注目されるのも頷けるだろう。

 本書は、丁寧に蜜蜂の働きや社会構成を説明してから謎の解明に取り掛かっているので、問題の在り処が読者に非常に良く分かるようになっている。

 ページを繰ると、蜜蜂の置かれている状況には暗澹たる思いが込み上げてくることになる。長距離輸送、過労、単一の食事、等々。農業の集約化・合理化は、それを支える蜂にとっては余りに過酷な労働環境となってしまっている。加えて、ダニ、農薬汚染、抗生物質の投与と言った要因も加わってくる。

 これらの問題を一つ一つ丁寧に追いかけ、妥当性を考慮する。その中で自然と現代社会が抱える問題を抉り出すことに成功しているのだから、本書は大変に優れたノンフィクションと思う。蜜蜂を通して世界を、歴史を見る壮大さに圧倒された。果物や蜂蜜を食べる時、この素晴らしい食品を生み出した、ちっぽけで偉大な存在たる蜜蜂に感謝を忘れないようにしたい。

 後半では、蜂を大量死から救い出すために奮闘する養蜂家たちの取り組みについても紹介されている。蜜蜂たちに、明るい未来が待っていることを予感させてくれるのも、魅力を高めていると思う。


 また、訳が素晴らしい。不自然さが無く、読みやすく分かりやすい名訳だと思う。この点も特記しておきたい。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

地球温暖化防止として二酸化炭素排出抑制が叫ばれているが、それが本当に正しい施策なのか。京都議定書の達成が全く見込めない今、”他のやり方”を冷静に、かつ論理的に語る本書は実に貴重な視点を提供してくれている。

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 地球が温暖化していることは、多くの証拠から間違いのない事実であろう。そして、その傾向は今後も更に続くと見られている。温暖化が進むと何が起こるのか。多くの団体が、末恐ろしい未来像を描いては大々的に発表するため、多くの方々がその情報を得ていることであろう。

 曰く、寒冷地の動物(とりわけシロクマ)が滅亡の危機に立たされている。曰く、マラリア等の疫病が世界中で猛威を振るうようになる。曰く、世界中を熱波や強力なハリケーンが襲い、死者が続出する。曰く、南極やグリーンランドの氷が溶け、水没する地域が増える。

 危機を乗り越えるにはどうすれば良いか。決まっている。温暖化の元凶である二酸化炭素の排出を直ぐに削減しなければならない。

 こういった流れに、論理的に反対を唱えているのが本書である。

 懐疑論の殆どは地球が温暖化しているのは二酸化炭素のせいではないとする立場だが、本書は温暖化の原因は二酸化炭素であるとする点で、これらの本とは一線を画している。では、どこに本書の特徴があるのか。それは、二酸化炭素排出抑制の前に、人類にはするべきことが沢山あるのではないか、とする姿勢である。

 まず、温暖化の影響は過度に過激なものになっている。例えば、温暖化のせいで死者が増えるという主張。確かに、暑くなることによって死者は増えるが、一方で寒さが緩和されるため、トータルとしては死者が減る。マラリアが広まるという主張はどうか。実のところ、欧米、日本といった今ではマラリアを根絶している地域においても過去においてはマラリアの集団感染が見られていた。マラリアが駆除されたのは、DDTのような殺虫剤の利用が大きい。都市化によって蚊が減ったことも無視できない要因であるようだ。

 では、多くの地域が水没するという主張についてはどうか。これも、問題は過激に語られている。グリーンランドと南極の氷が溶け出すという懸念もあるが、南極はあまりにも寒く氷点を上回る地域・季節が極めて限定されており、温暖化すると逆に氷の量は増える。つまり、海面上昇にはならない。

 丁寧に、これらの懸念がどの程度まで当を得ているのか、じっくり追求している。その上で、二酸化炭素排出は、今何がなんでもやらなければならない課題ではない、と著者は主張する。

 では何をするべきのか。

 それは、HIV対策であり、栄養失調対策であり、途上国を豊かにするための貿易自由化であり、マラリア対策であり、水資源へのアクセスの容易化である。これらは比較的少ない投資によって短期的に状況を改善しうるものであり、途上国が豊かになることによって更に問題解決を容易にするものでもある。

 本書で繰り返し指摘されるのは、二酸化炭素排出削減には莫大なコストが掛かる一方で、得られるメリットはあまりにも少なすぎることである。また、ベネフィットを計算せずに、やるべきことは全てやるべきだ、という意見もあるが、何かを行うには費用が必要で、二酸化炭素排出削減に大量の費用をかければ他の、もっと大切なことができなくなる、ということである。

 実に冷静で、なおかつ論理的に問題のありかを指摘しており、今後採るべき方策について考えさせられるのは必至。特に、政治というのはリソースを分配することが仕事なので、京都議定書のように、達成の可能性はゼロで、無駄にコストばかり掛かるが外面は保っておけるような策に何時までも拘泥せず、今苦しんでいる人々を救う方策、真に将来を見据えた方策へ切り替えていくべきと思わされた。

 問題の在り処をはっきりさせるためにも、多くの人に読んでもらいたい本。


評者のブログはこちら

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本ロケットボーイズ 上

2010/07/04 01:31

ロケット作りに夢を追った少年たちの成長物語

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 炭鉱の町、ウエストバージニア州コールウッドに生まれた著者が高校生のとき、とんでもないニュースが飛び込んできた。ソ連が、人類初の人工衛星、スプートニクの打ち上げに成功したのである。そのニュースは、著者と仲間たちの人生を大きく変えることになる。

 スプートニクの軌跡を眺めた著者は、友人たちを集めて「これからロケットを作る!」と宣言する。ところが、現在とは違って、まだ参考文献など存在しない。比推力のように、ロケット開発においては最も基本となるような言葉すら誰も知らないし、調べようも無い時代。そんなわけで、最初に作ったロケットは、空を飛ぶどころか垣根を吹っ飛ばしてしまう。

 そんなスタートを切った彼らだが、次第に町の人々を味方につけて腕を上げていく。失敗から原因を推測し、改良を加え、そして次を飛ばす。楽しんでやっている彼らの行動には目が離せない。

 紆余曲折の末に、少年が夢を叶えようとするその過程が面白いのは勿論だが、ロケット仲間たち、恋焦がれる少女、そして町の人々との交流もまた素敵だ。何度も心が温かくなって、頬が緩んで、涙腺も緩くなる。ここには少年の成長物語に必要な全てが揃っていると思う。

 だから、本書はロケットに興味のある人の範囲を超えて共感を呼ぶのだろう。『遠い空の向こうに』とのタイトルで映画化されたのも当然のことだと思う。ハヤブサブームに沸く今だから、50年ほど前に宇宙を夢見た悪童たちの楽しい日々はより共感を持って受け止められると思う。ちょっとでも興味を感じられたら、是非読んでみて欲しい。


評者のブログはこちら

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

メディアからは決して見えてこないイスラームの、もう一つの面を浮き彫りにすることに成功したノンフィクションの傑作

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 人間は余りに多様だと思う。趣味や信条は人それぞれ異なるし、世界の認識の仕方も違う。おかげで個性豊かな集団が保たれている。

 生が複雑であるように、性もまた複雑である。欲求が多い人も居れば、少ない人も居る。同性に惹かれる人も居れば、大勢の異性を必要とする者も居る。だが、そこに一つのルールを持ち込んで、ルールから外れた者を容赦なく排除しようとしたらどうなるだろうか。それが、本書で描かれている世界である。

 例えば娼婦。例えば、僅かな日銭を稼ぐために体を売る子供たち。あるいは、同性愛者。彼らは望んでそうした生き方をしているわけではない。已むに已まれぬ理由があってそうしている。

 しかし、彼ら・彼女らを待ち受けているのは過酷な現実である。

 性器を破壊された過去がありながら、それでもどうしても男性と一緒に居たくてたまらない女性。早くに親と死に別れ、路上生活をしながら時に体を売る子供たち。この子たちは、セックスの間だけは大人と触れ合うことができるから、それを厭うことをしない。

 どの話も、胸の奥深く、感情の宿るところを鷲掴みにしてくる。抑圧された性の世界の現実は、余りに重い。

 著者がイスラームの世界で何に巡り会ったか。ちょっとでも興味をもたれた方は是非本書を取って欲しい。メディアが報じる画一的な世界ではない、生きたイスラームの社会が目の前に現れてくると思う。

 事実によって読む者を圧倒する、ノンフィクションにおける文句なしの傑作である。見知らぬ世界を垣間見せてくれたことだけではなく、メディアとは違う世界をしっかりと見せてくれたことに深く感謝したい。


評者のブログはこちら

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本曹操注解孫子の兵法

2008/02/24 00:21

孫子の兵法を知るための絶好の本

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 かの有名な孫子の兵法だが、現代に残る孫子は曹操が注を付けたものである。その最も知られた言葉は恐らく”彼を知り己を知れば百戦して危うからず”。日本軍の大敗に重ね合わせて使われることが多いように思う。

 その曹操注の『孫子の兵法』を銀雀山出土資料でクロスチェックした上で全訳し、章ごとに解説と、解釈の根拠を示すことで孫子の兵法の全貌が分かるようになっている。

 孫子の兵法を知らない方のためにちょっとだけ説明する。実のところ、孫子は戦争を勧めていない。戦争を指揮する者として呉王に自分を売り込んだ男としては間違った姿勢のようにも感じられるが、逆にそこが孫子の計算であろう。戦争は国を疲弊させる、ぎりぎりまで使うなと随所で指摘するのが特長だ。

 ところが、一端戦争が始まったと為ると様相が一転し、勝つためには何を為すべきかが語られることになる。この温度差が不思議に感じられるかもしれない。しかし、春秋時代という不安定な時代に生きた孫子からすれば、平和が好ましいのは言うまでも無い事としても、何時起ころうか分からぬ戦争に備えないというのは愚の骨頂である、と言ったところだろう。

 では、戦争行動を前提としていないのかと言えばそうではない。呉にとっては地政学上、倶(とも)に天を戴くことの出来ないライバル、楚を攻めるための手段は詳述されている。どこを攻撃すべきか、逆にどこは攻撃してはいけないか。まず攻めるなといい、攻めるからにはどこを攻めろと指示するのに、孫子の中では矛盾は無いのだろう。

 従って戦端が開かれた後の話ともなれば極めて冷静に個々の事象を説明することになる。攻撃するべき(攻撃を避けるべき)地点、戦うべき(あるいは戦ってはいけない)地形、兵を率いる者の心得、そして兵站。春秋時代の戦争の、全てがそこにあると言って良いかもしれない。兵站については、過去に紹介した『補給戦』よろしく、後方から前線へ補給するともなると、糧食はたったの5%程度しか届かない。だから可能な限り現地調達せよ、という。この割合は少なすぎると思う向きもあるかもしれないが、『補給戦』でも全く同じ比率を挙げていたことは指摘しておこう。

 勿論、現代戦を想定すれば的外れな指摘も多々ある。主に技術の発達によって、戦場の有様は大きく変わった。だから、孫子の兵法がそのまま役に立つわけではなかろう。しかし、戦わずして目的を達成することの重要さ、情報戦がどれほどの影響を及ぼすか、指揮官の覚悟と兵士の士気を上げる重要さ、そして兵站の問題と、組織運営に必要な全てがあるように思う。

 意外だったのは、曹操の注の少なからずが再言及や噛み砕くのに使われていて、本文を読むのを阻害するということだ。曹操ほど戦場にあり続け、戦争の酸いも甘いも知り尽くしたインテリはいない。その知恵が加えられているのかと思ったのだが、そうでもないのが残念だ。まあ、ところどころに自慢としか思えない文章が挿んであるのは曹操の人間らしさを感じさせてくれて楽しいのだけど。

 もう一点意外なのは、春秋時代に書かれたはずの孫子に後の法家の思想と軌を一にする主張が見受けられること。勿論、法家の人々がこの頃からの思想を脈々と受け継いできたというのが筋で、その集大成が荀子であり韓非子であるのだろう。思想史上からも興味深い一冊だった。

 また、解釈において異論がある部分については、なぜ著者がこの読み方をするのか、解説してあるところはとても有難い。安易に現代ビジネスに結び付けない点といい、素晴らしい立場だと思う。孫子の兵法の初心者から詳しく知りたい人まで、幅広く読める好著だと思う。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

夢見る脳の不思議と魅力を余さず紹介している好著

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 夢というのは奇妙なものである。毎夜毎夜我々の元を訪れるのに、夢を見る最中にはそれが夢であることにすら気づかないことが多い。しかも、目覚めた直後は奇妙な夢を覚えていても、掌から砂がこぼれ落ちるかのように記憶から消えうせてしまう。

 一体、夢というのは何なのか。昔から人類は疑問に思ってきた。そのうち、正否はともかくとして最も人口に膾炙したものはジグムント・フロイトの理論であろう。

 ところが、脳の研究が進むに連れ、フロイトの主張はかなりの部分間違っていることが明らかになってきた。

 意外なことに、夢を見ている際には脳が活発に活動している。部位によっては起きている時以上に活動している、という。活動する部位を精査することによって、夢を生み出す脳活動の重要さが明らかになっていく様は大変にエキサイティングで、かつ興味をそそられる事実の連続である。

 詳細は是非本書に当たってみてもらいたいのだが、少なくともここでは夢が何の意味も持たない不要物ではないどころか生存に重要な役割を果たすことだけを紹介しておこう。

 特に面白いと思ったのは、明晰夢のこと。明晰夢とは、夢の中で自分が夢を見ていることに気付き、意図した行動を取ることができる夢のこと。数を数えたり、歌を歌ったりすると、そのとき、脳内では起きている間と同じ部位が活動しているというのだ。

 また、夢の中で思わぬ学習が起こっていることも興味深い。一つのテーマで悩み続けていて夢の中で答えを思いついたというウソのような話を聞いたことがある人もいるだろう。私の修めた化学の分野では(少なからぬ人にとっての悪夢の象徴である)ベンゼン環の構造を発見したケクレのエピソードが知られている。これは偶然ではなく、脳の正常な働きによる可能性があるとはなんと面白い話だろう。

 脳にはまだまだ謎が多く、その分だけ面白い話題が沢山あることを実感させてくれる。語り口も軽妙で、読み物としても実に楽しいので、読みながら夢の世界に誘われることはないだろう。読み終わったら眠りたくなる。本の中で出会った不思議な話を実地で確かめるために。そんなわけでおやすみなさい。


評者のブログへ

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

149 件中 31 件~ 45 件を表示
×

hontoからおトクな情報をお届けします!

割引きクーポンや人気の特集ページ、ほしい本の値下げ情報などをプッシュ通知でいち早くお届けします。