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あさのさんのレビュー一覧

投稿者:あさの

34 件中 16 件~ 30 件を表示

紙の本逃走論 スキゾ・キッズの冒険

2002/07/26 21:52

ミーハーカルチャー

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

いや、ごめんなさい。
もちろん、哲学はミーハーするもんじゃございません。
ええ、お固いものですし、頭悪い子は覗いちゃだめですよね。
だけど、この年、この本が出た時、猫も杓子も、『ポストモダン』『ポスト構造主義』でしたのよ。
みんなが『アイデンティティ』について語り、『パラノ』だの『スキゾ』だの、街角で、唾とばしながら叫んでました。
ええ、わたしもかくゆうその一人。
ちゃんとドゥルーズ読んだことあるの?といわれたら、『ノウ』と一言困ったようにほほを歪めて肩をすくめてしまうのですけども。
でも、彼──浅田彰──はいいました。『青少年よ、逃げろ』。
そしてわたしたちは『逃げた』のです。
パラノな世界にさよならです。
わたしたちは逃げ続けました。つみたてるなんて真っ平。ほら、ここに新しい道がある。
だからわたしたちはバブルの崩壊も、終身雇用制のぐらつきも、『なにそれ?』状態。
だってわたしたちは知ってた。
『逃げる』ってことは、永遠に立ち止まらないこと。
立ち止まって嘆いてるおじさんおばさんさようなら、っこと。
わたしはたちは男同志だろうが女同士だろうがちゃんと愛し合って、そしてやっぱり走っているのです。
スキゾキッズバンザイ。
だけど逃げるなら根性もって逃げましょう。途中で疲れたからって、『浅田彰に騙された』なんて泣いちゃだめです。
逃げるに必要なのは強い脚力。そしてあなたの魅力的なセクシャリティ。
この『逃走論』を手に走り始めたおにぃさんやおねぇさんは、今やおじさんおばさんと化してますけれども、でもやっぱり走り続けているのですよ。

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紙の本猫は手がかりを読む

2002/07/20 12:54

贅沢なミステリー

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 これは翻訳が原作の出版より逆行してたりする箇所があるらしく、その第一作は『猫は手がかりをよむ』なんですね。 まだ、ココが、クィルのパートナーではない頃です。 猫は飼い主を渡り歩くのだなあと、感慨深く思ったものです。
 今となってはなぜココが最初の飼い主に愛情を抱けたのか、わからないのですが、そのあたりが、まるでココが、パトロンを変えて生き抜く女優のように思える所以でしょう。猫ってやつは、まあ、と(笑)。
クィル自身、このシリーズの最中、何度となく死にかけてますから、ココとしては、次のパトロンのことも考えなければならないのでしょうが、今のところ、ココはクィルのことを、彼の生涯で知り合った最上のパートナーだと感じている様子が窺えます。まあ、そんなこと、毛ほども見せませんけどね。

 このシリーズが、ほんとに面白くなるのは、やはりクィルがクリゲンショーエンの財産を譲り受けてムース群に移り住んでからですけど、それまでの、なんだかくたびれた、始終住む場所に困っている彼もいいのですね。
 彼は結構短気だし、美人に目がないし、客観的な感情より、私的な感情を優先する人。なぜか、毎回代わる代わる登場する女性と、最後にはことごとくハッピーエンドっぽいことになっちゃう。 そのわりには次の話では彼女はどこにもいないことが多くて、『あの彼女はいずこ?』って具合になるんですけど。長いシリーズを通して近況が聞けたりしてたのしいです。ただ、舞台はおもしろいのですけど、肝心のココの超能力は後手後手だったりするし、あげくに犯人が最後まで出て来なかった、ってな事件もあって、ミステリーとしては完成度が高いとは言いがたいのもあるのは確か。

 しかしおそらくは猫好き心を鷲掴みするココのおかげで(?)、回を重ねるにつれ、目が離せないシリーズになってしまいます(きっとなるはず)。

 それはやっぱり気難しいけれども、生半可に流されて自分の『興味』や『好み』を絶対に手放さない主人公の魅力です。
 今ではポリーという、ちょっと吝嗇家で、知的でユーモアを分かち合うベターハーフと巡り合い、林檎貯蔵用納屋という巨大なお家を持って、二匹の秘蔵っ子たちと暮らすクィル。読んでいる間、そこに住みココと話しているのは自分のような錯覚を覚えるでしょう?

 推理小説の悲しさは、なんにしても、死体がなければ事件が始まらないこと。読み続けてすっかりお友達になったキャラクターがその犠牲になってしまうのを見るのはほんとにショッキングですけれども、読むのをやめられないのは、素敵に騙されたいって欲望が、いつのいつでも読む人間にはあるからでしょう。ココは最高におしゃれに、贅沢に、わたしたちを魅了してくれます。

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紙の本快楽の技術 対話

2002/07/13 20:00

性のタブーって?

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

澄ました顔してても誰だってやってることなんだよね、と言いたがる人ほど、実は『右ならえ』じゃないと安心できないんだよね。
性にしても、『みんなしてるよね? ね?』なんて言う奴は『快楽』のあり方を勘違いしてるんじゃないかと思う。
セックスでの快楽は、『誰にでも平等』に与えられるもんじゃ絶対ないのだ。
あれは才能と努力と技術のたまものである。
『みんな感じるよね? ね?』なんて言ってる奴にセックス上手なんていない。みんなほんの少しずつ、培われてきた『性への素質』は違う。けれど誰も、おそらくかなりの確率で、人生の中で、自分自身の性への傾倒方向を見つけている。もちろんなにも問題なく、世間一般で、『正常な性』と認識されている行動で満足し、生きていける人間もいるだろう。
けれどほんの少し、『なにか違う』と思ったら、その『違い度』をじっくりと追求することをオススメする。
この本は、その、自分の性の起源から、培ってきた『快楽の技術』を対談という形で著している。
ひっそりと暗く、『俺って普通』なんて呟くなら、『快楽』の方法は個性と同じだけ違うのだ、ということを認識すべきだ。そこに異端はない。

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紙の本樹の上の草魚

2002/07/13 16:14

進化する身体

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

進化して男から女になった女たちは、独特の清涼感につつまれている。
男の女、両方の性を経験した結果、『元』男たちは、女の身体がジオラマだと感じる。世話をしてやらなければ誰の目にも止まらず、なんの評価もされない物体だと。
そこには女の身体が持つ、もともとの泥臭さも、原始的な穢れもない。
美しさだけを取り込み『男』は『女』に進化する。
鈍感であることは悪だといわんばかりの、主人公の存在感はある意味残酷ですらある。
彼はじぶんのものと決めた桜の木の上で、初めて亘を見、多分最初から彼を恋する。そして彼の身体は進化し始めるのだ。亘を受け入れることができる、『女』へと。──と、考えるのは僣越すぎるだろうか。
とはいえ。
もともとはあるべきものが外部にある性特有の恐怖、『とれちゃう』というのは興味深い。それは、『とれちゃった』あとの、清潔感と美しさが、この世の物を超えた存在になっているせいだ。まさにジオラマ──のように。
その身体を再び地につなぎ止めるのは、『彼』が恋した『彼』の身体。
かちり、かちりと音をたてて、意識は繋がり続ける。

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紙の本喪われた故郷

2002/07/13 19:45

マイノリティという生き方

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ヒスパニックのゲイの弁護士。恋人はエイズキャリア。
ゲイ文学というジャンルのミステリーと片づけるには惜しい。でもゲイであることを抜きにしてもこのミステリーは語れない。
ゲイであることも、ヒスパニックであることも、主人公の個性に深く関わっている。ゲイであることがたまたまのセクシャリティであると言い切っていいんだろうか。ゲイとしての半生が彼に捨てさせたものはあまりに多い。
特に本書に於いて、『謎を解く』ということはすなわち、彼自身の半生を再び降り起こすことだ。シリーズの中でも、本書の位置は特殊である。
あまりにもナイーブな、けれども与えられた生き方をある意味の真摯さをもって生きる主人公。
派手さはないが深く心に残る。
ゆっくりとでもいいから長く続けて欲しいシリーズの一つだ。またこの作者の作品が少しでも多く、早く翻訳されることを心から望みたい。

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紙の本ミシン

2002/07/13 17:40

『少女』は別の星で

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

お洋服にはメッセージがあるのです。そのメッセージは、全ての盟友へと放たれてます。そのメッセージを受け取った少女は、もうのお洋服以外を着ることはできません。みえざる意志。それを受け取った少女は、高潔に、生き続けます。この世界のルールではなく、受け止めたメッセージの示すルールに従うのです。
『このお洋服を着ることは、矜持なのだ』と言い切る少女の言葉に頷く少女たちは、『世界の果て』を目指して進み続けます。そのためにどれだけ身体を、心を強打され、頭の半分から血を流しても、進み続けるのです。

この小説の主人公は、『乙女』ではありません。彼は乙女の声を聞き、姿を認め、手をさしのべ身体を抱くことはできますけれども、決してその魂と重なることはできないのです。だから主人公は取り残されます。『乙女=真の少女』だけが、頭をまっすぐにあげ、自分の目指す地を目指す事ができます。少女は責めません。ただ柔らかく、憐憫のまなざしで主人公を振り返り、そして一人逝くのです。

『ミシン』の中で、主人公の憧れの少女、ミシンは、主人公に向かって言います。『あなたのお洋服、みんなわたしとおそろいね、素敵』。その瞬間に、二人は魂の盟友となったのです。

『少女』が幸せになれる場所は、この星の上にはないのかもしれません。

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紙の本青の時間

2002/07/13 17:03

『答え』はない

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 さまざまなトリックはあるが、観客(読者)は肝心のショーを見ることができない。
 設計図だけを見せられて、決して観客として舞台を見られないような、そんな気がするファンタジー。
 結局のところ、『答え』を小説に探してはならないのだ。自分で歩くこと、自分で、自分が閉じ込めた『自分』を見つけること。
 ブルーは結局、どこにもいなかったんじゃないか。最初から最後まで、すべてが、主人公がブルーという、『少年の日』に閉じ込めた自分を探し続けていたような、『青』という、ミシガン湖から始まり、やがて富士の裾野に続く色の中に、閉じ込めた自分と向き合っていた記録のような、そんな気がする。

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紙の本半パン・デイズ

2002/07/13 17:00

みんな一度は子供だった

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ノスタルジーだ。
ひさびさに電車を乗り過ごしてしまった。
怖い→キライ
いばってる→キライ
キライだけど『一人』がいやだから友だちのふりをする。馬鹿にする、からかう。自分を守るために嘘をつく。ほんとは仲間外れが怖い。仲間外れになったことを女子に知られるのが辛い。

誰でも子供だった時に一度はこんなことで悩んだはず。
この著者はほんとうに、『自分がこだわってる自分』を守るために徒労ともいうべき、見栄や形ある自分に拘る心理を上手に書く人だ。上手すぎて、読んでて、その化けの皮がはがれるところに、一緒になって身をすくませてしまう。本を放り出してしまいたいような心境になる。だけど。ほとんに無様で、ほんとに残酷なことはしない。
それは多分、『見てる』側が、『ほんとは知ってたよ』って、いうところを、うまぁく書いてくれてるからなんだろう。
『お前のついた嘘なんて、ほんとは大したことじゃないんだよ』って。
『お前が嘘ついて飾ってるとこなんて、ほんとは俺はどうでもいいんだ。俺が見てたのは、別のとこなんだ。ああ、飾ってんなぁ、と思ったけど、まあいいや、ってほってたんだ』みたいな。
『僕』がどんなヤツか、なんて、『吉野くん』はちゃんと知ってて、それで、『ライバル』だ、って言う。『男にはライバルが必要なんだ』って。

小学生の時の友だち(というよりクラスメイト)で、消息がわかる人間なんて、ほとんどいない。たとえいても、それは自分が知っている○○ちゃんとは別の人間だ。
好きとキライをないまぜにしながら、それでも手をつないで帰った。あの時の、自分より綺麗なスカートを履いている彼女をキライだと思う気持ちと、それでも手をつなぎたいと思う気持ちが、正しいのか間違っているのかわからなくて、なんとなく、生きるのは苦しいことなんじゃないかと考えていた。それでも夏草のむっとする草いきれに、わけもなく心臓をどきどきさせていた、かけだしていた。
不安と好奇心に人の形をさせて空気を入れたものがあの時の自分だった。もっと楽に息をしたいと、水面目指して必死で水をかくような、苦しくて苦しくてたまらないけど、そこで水をかくのをやめてしまったら、永遠にここから出られないと、そう思いながら走っていた。
その時の気持を鮮やかに思い出した。

いやほんと、面白いです。
そういえば小学生の時って、授業中、よくメモが回ってた。
時々不意打ちで没収されて、凄く恥ずかしかった。あのメモが自分のところに回ってこない時はどうしようかと思ってた。子供の世界は、実はとても厳しい。

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紙の本ハリー・ポッターと賢者の石

2002/07/13 16:50

『選ばれた少年』の世界

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今さらなにも言うことはないほどブレイクしたファンタジーであります。

『選ばれた少年』の話なんだけど、『ここまで徹底したらもうコメディかも』な生い立ちにまず脱帽。ここまでコケにされても負けずにきちんと育てて(現在なおも扶養義務を遂行している)伯父家族にも感心してしまったり(クリスマスに五十ペンス硬貨を送ってくる根性に脱帽)。
憎まれ役がここまで徹底していると、読んでて裏切られることがないです。親に溺愛されて、ハリーを目の敵にしているでぶっちょ従兄弟とか、死んでもなおらなそうな厭味な同級生(にしては律儀にハリーを陥れようとしてよく墓穴を掘ってたが)たちの活躍なくしてハリーは語れない。
嫌ってる奴に命を助けられたことがなによりもの屈辱で、そのお返し(?)に、ぶつぶつとハリーを助けるために呪文を唱え、その隙に優等生でこまっしゃくれた主人公の親友の優等生の女の子にズボンを火をつけられたり、怪物に足を噛まれて大怪我したり、とおちゃめなスネイプ先生がこんなに魅力的なのはなぜなんでしょう。

そしてなにより。
イベントのたびに涎が出そうな料理のオンパレードに(朝御飯も美味しそうである)、貧乏人はただぐうぐうとお腹をならしていたのだった。
ああああ。食べたい。
そしてあのゲーム、クィディッチが見たい。
少年の成長物語、に留まらないこの物語の魅力は、実は読んでいる人間が望んでいる生活がそこにあるからなのかもしれない。

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紙の本パイナップルの彼方

2002/07/17 01:39

生きてる人間が天国にいちゃいけない

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『わたしはこんな女はキライだ』
誰にも心を開かず、自分が演出した『自分』を押し出して、相手を見下げて生きてる。
深文の生き方はサユリさんとよく似ている。ただほんの少し、深文の方が外から自分のことが見えるだけだ。だから、深文はサユリさんのことはわかっても、日比野のことはわからない。日比野の、必死に、深文をわかろうとする気持がわからない。
どれだけいためつけても、きっと日比野には深文の心から流れる血が見えない。
そりゃ見せないんだから。
親友にさえ言われる。
いいよね、あんたは。絵の才能もあるしさ、会社でもうまくやってるし。
苦しい時ほど、みんな深文を頼らず、『天国』へと、逃げていってしまった。
深文は、わかっている。『天国』なんてどこにもない。あるとすれば、その世界は『自分』なんてこれっぽっちも愛してないんだ、ってこと。
深文は愛されることにとまどっている。愛されて、その中で同じように相手を愛して、泣いたり笑ったりすることを恐れている。
深文の持っている透明感、どこにも所属しない、『ロック少女』や、『専門学校生』のような彼女は、必死で自分をこの世界に愛させようとする人みんなに憎まれる。
甘いおやつのようにちょっとつまむ男たち。決して無様な姿をみせない彼女に、男たちは群がり、そして女は彼女を憎む。
最終的に、ものすごい『しっぺがえし』を食らうわけだけども、そうなって初めて、彼女は『無様にならなければ』見えて来ない世界を掴む。そしてそこに住み続けることを選択する。
彼女をキライだと思う心は、きっと、『自分もずっとそう生きてきた』から。
斜に構えて、まわりの人間を心のどこかで見下して、『わたしはうまくやってる』。
そう、ほくそえんできたから。

『天国には生きてるうちには行っちゃイケナイ』
愚かに生きてるように見える月子の最後の言葉が、深く胸に刺さる。
批判するのも解読するのも簡単。でも、生きるのは、ムズカシイ。

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紙の本リビング

2002/07/13 17:19

リビングの数だけ生活がある

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 年頃になる。
 結婚する子供を産む。育てる。仕事なんてとんでもない。
 そんな、有無を言わせない『正しい生き方』が幅をきかせていた時代が、少しずつ、変わってきた。『こういうのもあるんだよ』って、いろんな雑誌が創刊された。
 結婚、しなきゃいけないこと、ないんだよ?
 子供、うまなきゃいけないこと、ないんだよ?
 ほら、リビングに花を飾りましょう。ね? あなたはどんな音楽が好き? 恋人とは、週末に、おもいっきりおしゃれをして会って、そしてセックスもちょっと演出して。月曜日になったら、あなたはまた、あなたのお城で、あなたの仕事を、することができるのですよ。

 きらびやかなリビングのグラビアをちらつかせて、雑誌たちはささやく。

 自分で演出したお城にすんでると、人間はほんの少し、さみしがりやになる。だって、観客がいないから。
 誰も見てない舞台で、演じ続けられる役者は、そうそういない。
 そんな、ちょっとさみしい、いろんな人の話。
 それでもみんな、一生懸命、幸せ目指して生きてるんです。

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外から見たウェストゲートパーク

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主人公は少年ではない。
大人である。
その大人が、自分が落ち込んだ窮地から抜け出すために、この少年たちの王国、池袋ウエェストパークに関わっていく(ほんの少しかすって再び離れていくわけだが)。
少年たちが見据えているのは、大人のずるさと、弱点。どこをつつけば大人が泣き、口を噤むか熟知している。
主人公は、その少年の一人で、実は大人の社会と少年の社会の両方にかかわりを持つ、斉藤富士男の助けを借りながら『生』への僅かな光をたどっていこうとする。

『池袋ウエストゲートパーク』での少年(マコト)の目線から見た『王国』は、大人(小峰渉)の目線で見ると、こんなにも美しく厳しい世界なのかと感銘を受ける。少年たちは確かに愚かだったり拙かったりするけれども、世界のルールは非常にすっきりとしたものだ。あちらからもこちらからも腕をひっぱられ、奇妙なダンスを踊らされているような大人の世界から見ると、豹のような目のキングの元で鮮やかに裁かれていく『罪』たちのなんと軽やかなことか。

ストーリーのスピード感、鮮やかさもさることながら、『ノワール』の中で軽やかに舞っているように見える少年たちの世界がまぶしかった。

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紙の本神保町の怪人

2002/07/10 19:29

欲が一番怖い

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 内臓がぐちゃぐちゃはみ出した死体が二個三個転がってるより怖い。
一話目はともかく、二話の『憂鬱な愛人』事件は、ほんとに怖かった。出てくる人みーんないやなやつ。人間の笑い顔がこんなに怖い話ははじめてだ。それだけに中島くんの存在に救われる。人間てさもしい。でも三歳児かてめーは、というような欲が実は一番やっかいなのかもしれない。本の収集に対する人間の狂気の方が、金銭や人間への愛憎なんかよりよっぽど鬼気せまっている。
 古本屋業界の裏話も覗けて愉しい。

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紙の本夜の蟬

2002/07/13 18:26

『姉』の持つなまめかしさ

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円紫さんと女子大生の『私』シリーズ二作目。
シリーズ中、この『夜の蝉』には奇妙な色気がある。それは色気、というよりもなまめかしさ。
ホームズというよりは車椅子探偵に近い円紫さんが、不思議なくらいに『性』と隔離されているのに比べ、ここに出てくる少女──江美ちゃんや正ちゃん──とわたし、の関係がきわどく感じるのは何故だろう。そして極めつけが『姉』である。主人公と姉の関係は、恋愛関係に近い。それは幼い時にぶつけられた激しいまでの姉の感情を、どちらかというとオクテな『私』は受け止めることができず、それ以来二人の間にある、愛する者と愛される者との疎通のない思いが、かもしだす『きわどさ』だ。
『兄弟』というのは元々、一つのものを奪い合う関係として始まりを迎える。それは親の愛から始まり、やがては存在する場所や権利にまで及ぶ。『私』はつねに『姉』から侵略者として扱われた記憶から抜けられない。本の世界にのめり込むのも、姉の美貌への羨望や気後れ、とともに、『姉』と同じ世界を見ることができない、家の中の一番身近なところに『触れられない』ものがある、という緊張感からの逃避ではなかったか。それを実にさりげなく、今までのシリーズに散りばめながら、その緊張感はこの『夜の蝉』に結論を見せる。
実は姉はずっと昔に、その緊縛から放たれていたことが、最後に披露される。その瞬間に、主人公の心は、やっと怖い夢から覚めるように解放される。
夜の静寂を破る蝉の羽音。その恐怖。
主人公の眸の先の『姉』はいつも奇妙になまめかしい。それはまだクーラーで殺されていない夏の夜の空気に似ている。

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紙の本愛人の掟 2

2002/07/20 13:04

高い窓から

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 この本を読んでると、恋愛と部屋をコーディネイトすることは同じことなんだなぁ、と認識してしまう。でも、この本の言葉が福音となる人は、すごくたくさんいる。きっと。
 誰にも同情して貰えない恋。
 未来に幸せが見えない恋。
 『だめ』と言われるのではなく、『ルール』をまもろうね、とこんな風に言われたら、それだけでふっと肩の力が抜けてしまう。
 ほんとうは自分の心の中できっぱりと背を向けられたら一番いいんだろうけどね。

 しかし、男の存在ってなんなんだろうね。高いビルについた窓。そこを覗いたら、世界が見える。できるだけ高い窓を目指せ、ということかな。

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