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  3. 渡辺順子さんのレビュー一覧

渡辺順子さんのレビュー一覧

投稿者:渡辺順子

29 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

紙の本おたんじょうび 改訂版

2002/04/26 15:56

赤ちゃんが初めてめくって楽しめる絵本

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満1歳のたんじょうびをお祝いするために、車がご馳走をつぎつぎと運ぶ絵本です。

文字なし絵本ですから、読み手が自由に言葉をつける楽しさもあります。たとえば月齢が3〜4ヶ月でしたらすべてのページを「ぶうぶうとまんま、これもぶうぶうとまんまだね」とめくって読んであげると良いでしょう。やがて、離乳食が始り、ヨーグルト、いちご、ビスケット、ぶどう・・・・と食べたことのあるものが登場している場面では、具体的に食べ物の名前で読んであげると良いでしょう。

どれも本文が表紙と同じハードなつくりになっているため、赤ちゃん自身が手にとってめくっても、破れる心配もありません。また、この時期はなんでも口にもっていきますが、噛んでもなめてもだいじょうぶなように、安全な素材で作られているとのことです。保健所文庫では赤ちゃんに人気の絵本はこの三冊もそうですが、四つ角が歯型だらけです。

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紙の本

紙の本アンジュール ある犬の物語

2001/11/22 17:21

「あなたには“アンジュール”してませんか?」

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 子ども以上に、大人に見てもらいと作者バンサンは思っているのではないだろうか。
 
 車の窓から放り出され、走り去る車をもうぜんと追いかける犬。犬が追いかけてきていることを知りつつも、飼い主は決してスピードをゆるめることはせず、車は小さく小さくなり、やがて犬の視界からはまったく見えなくなってしまう。

 冒頭からラストまで、一切文字はない。なくても、作者の力強くスピード感のあるデッサンだけで、十分作者の意図する気持ちが伝わってくる。犬が懸命に飼い主の車を追いかけるとき、“車を止めてあげて!”と思わず叫びたくなる。人間はこれほどひどいことをしないと信じたいが、動物の飼い捨ては現実におこなわれている問題である。

 それでも犬は車をさがして歩き、においをかぎ、あちらこちらをさすらい歩く。信頼を裏切るというのは、ほかの動物たちには無い、人間特有の行為なのかもしれない。野良犬となったその犬は、やがてひとりぼっちの子どもと出会う。お互いに、心の居場所となる出会いにめぐりあえたことで、冒頭の怒りもかすかな希望へと変わる。

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紙の本

紙の本つきのぼうや

2001/09/27 20:41

またおいで、月のぼうや!

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 たて35センチ、横13センチというかなり縦長の絵本。その本の形が空の高さを表現し、月のぼうやが空から地上までやってくる、ゆったりとした浮遊感を感じさせてくれる。

 おつきさまは、ある日ふと、地上を見ると池のなかにもうひとりのおつきさまを見つけます。それが気になったおつきさまは、つきのぼうやをおつかいにだすのでした。ふんわり空から地上におりてゆくつきのぼうや。うっかり星をけとばすと、その星は流れ星となり飛んでゆきます。そして、もう一人のおつきさまがいるかもしれない池の中へとびこむと、たくさんの魚たちがよってきました。さて、つきのぼうやは池の中で何を見つけ、おつきさまにどんな報告をすることになるのでしょう。

 毎晩私たちの地上を照らすお月さま。そんなお月さまにも、広い空でひとりぼっちなのではなく、こうしていたずらっぽい顔をした、ぼうやがいるのだと思うとなんだかうれしくなってきます。空から地上へ、そして海へもぐるまでの間に、さまざまな自然現象や動物たちとの出会いを北欧出身の作者が独特なやわらかい線で表現。思わずつきのぼうやに会いに月へ行ってみたくなります。

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紙の本

紙の本おかあさんどーこ

2001/08/31 17:05

「母の日」の5月には、この絵本を。

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 「きょうは、とくべつな ひ」だから のねずみのヘーゼルは、おかあさんの家へすみれの花束を持っていったのです。「でも おかあさんは、いません。」 おかあさんはおばあさんの家に、どんぐりを持っていったのです。「だって きょうは、とってもとくべつな ひ」だから。このパターンで、おばあさんはひいおばさんにいちごを、ひいおばあさんはひい ひいおばあさんにとうもろこしを、ひい ひいおばあさんはひい ひい ひいおばあさんにベットにいれるはねを持っていったのです。「でも ひい ひい ひいおばあさんは、いません」いたのは大きな猫。ひい ひいおばあさんと同じに、読者もどっきり!さあ たいへん、それぞれもときた道を必死になって走ります。ページ右上には猫の片手が追ってきてます。でも、大丈夫でした。全員無事、ヘーゼルの家にたどり着くことができました。そして「ははのひ おめでとう! ちゅっと!」。 窓には猫の片目が光っていますが。ねずみの視点で描かれた、野の草花が心に残ります。

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紙の本

紙の本しまふくろうのみずうみ

2001/08/02 20:35

絶滅の危機にある今、しまふくろうの生活のドラマをとおして、人間の生き方をも問いかけているようです。

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えぞ松の樹林におおわれた北の湖に、静かに夜のとばりが降りる頃、しまふくろうの親子が、エサを求めて飛んできました。父親は湖面に浮かぶ流木にとまって、じっと魚が現れるのを待っています。「ピッ!」 お腹をすかせたヒナの声が響きわたります。「そのとき、つきのかげが かすかにゆれて、さかなのはねるおとがしました。」(本文) 

しまふくろうのおとうさんは舞い上がり,狙いをつけ、音もなく近づくと、鋭いつめでしっかりと魚を捕らえて、母子の待つ枝に戻ります。湖面では三日月に照らされた波紋が、大きく大きくひろがっていきます。やがて、しらじらと夜が明ける頃、小鳥たちが鳴き始め、また湖の1日が始ります。

作者はあとがきで「深夜くりひろげられる、しまふくろうの生活のドラマは、太古から変わることのない、いきものの真剣な姿です。」と、少年時代の体験と郷愁の念をこめて述べています。さらに「しまふくろうは、仲間でもあり、生き方を教えてくれる、先生なのかもしれません」と記しています。アイヌの人たちにとっては、コタンを守る神様として崇められてきました。しかし、いま無謀な森林伐採で、絶滅の危機にある巨鳥でもあります。

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紙の本

みんなで生活している地球。けっして人間だけのものではない

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 長崎県諫早湾の最後の水門が閉められたのは1997年4月。あれから3年。干潟で暮らしていたムツゴロウたちの生活は大きく変わりました。変わったというより、人間によって変えられてしまったのです。太古の昔から多様な生命を育んできた諫早干潟。「海をかえして!」という生きものたちの叫びは叶えられず、むなしく空にすいこまれてゆきます。

 頭の中にはかつてのいきいきとした干潟の姿を思いうかべながら、瀕死のムツゴロウは最後につぶやきます。「きっと、くる。しおは、みちてくる・・・・。きっと、きっと・・・」最後の最後まで、人間たちが海の水を止めるようなことをするわけがない、と信じているのです。なのに、干潟ができるまでにかかった六,七千年もの長い年月を、人間は一瞬にして奪いさりました。

 この地球は、人間だけのものではありません。そこに住む生きものたちが互いに支えあいながら生きているのです。けして無意味な存在の生きものなどいないのです。人間たちが、人間だけのことを考えている暮らしを見直し、共存する道を選ばなければ、いつの日が自然界から大きなしっぺ返しをくらうことになるでしょう。子どもだ
けではなく、多くの大人たちに読んでもらいたい絵本。

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紙の本

紙の本もうおきるかな?

2001/06/01 20:11

おねんね時代の赤ちゃんに、読むだけでなく“言葉がけ”として試してください。

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「ねこ ねこ よくねているね」「もう おきるかな?」最初の見開き場面ではお母さんねこと子ねこが幸せそうにねています。次の場面では「あー、おきた!」。気持よさそうに伸びをしている親子のねこ。次をめくると「いぬ いぬ よくねているね」「もう おきるかな?」「あー、おきた!」と、次々りす、くま、ぞうの親子がそれぞれの本来の生態にそって、寝る起きるの姿を描ききっています。どの動物たちも、それぞれの毛並の感触も感じるくらい、みごとです。

表紙は眠っているうさぎ、裏表紙は「あー、おきた!」とつい読んでしまいそうな、うさぎの親子のおきがけの、あくびをしているポーズが描かれています。絵本は本文だけでなく、表紙から始まって裏表紙まで語り、描かれています。とくに大人は見落としがちな裏表紙こそ、子どもはしっかりと読んでいます。画家の心をキャッチするのは、子どもたちの方が数段上手だ、といつも感心してしまいます。

「もおうおきるかな?」「あー、おきた!」。このことば、実は“おねんね時代”といわれる0才の赤ちゃんにとっては、日に何度も日本語のひびきとして、ここちよく聞いています。子守唄のように、日常の実際場面では、お母さん方も自然体で声にしてみてください。

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紙の本

いままでありがとう!心のともだち

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 「セールスマンの死」など、劇作家として有名なアーサー・ミラー。この作品は彼がはじめて子どもむけに書いたお話です。

 だれもが子どもだったころ、親以外にいつも自分のそばにおいておきたい心のかよえる「物」があったのではないでしょうか。それは人によってクマのぬいぐるみであったり、うさぎの枕だったりします。さびしいときや悲しいときにそれをぎゅっと抱きしめると、なぜかほっとできる。そんな安心できる存在をみなさんもお持ちではありませんでしたか?

 主人公のジェインにとってはピンクの赤ちゃんもうふ、「もーも」は生まれたときからの友達。はじめはふんわりしてあったかいもうふも、ジェインの成長とともに古くてぼろぼろになってしまいます。それでも大きくなったジェインは、新しいもうふになじむことができません。小さくなって体にかけることもできなくなり、窓辺においておいたもうふから、ある日ことりが糸をひきぬき巣穴にもっていってしまいます。
 その姿にジェインは一瞬かっとなりますが、もうふをことりの赤ちゃんのためにゆずってあげたのだ、と思うと心もはればれしてくるのでした。

 子どもが成長する過程で経験する、大切なものとの別れ。「ジェインが心の中でもうふのことを思い出すと、もうふはまたジェインのものになるんだよ。」というお父さんとの話も心に残ります。子どもが大切に使っていたものは、古くなったからといって「もう、これは汚いから燃えるごみにしましょ!」などとはきっと言えなくなりますよ。

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紙の本

紙の本こんにちはさようなら

2001/04/17 15:48

ちょっと大人になった気分になれる「さようなら」

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ななこちゃんは、ねこさんにであって「こんにちは」そして「さようなら」。つぎつぎとめくるごとに、子どもをつれたあひるのおかさん、川のなかのおさかなたちに、と出会います。そのたびに「こんにちは」「さようなら」。

読んでもらっている子どもも、ななこちゃんと一体感で楽しみます。さいごに、こいぬに出会い「こんにちは」。そのままいっしょに丘へかけのぼり、気持ちのいい風に吹かれながら一休み。ふとふもとに目をやると、「さようなら」をしてきたねこさん、あひるさん、さかなたちのようすも一望できました。

人と人とのコミュニケーションは、あいさつを交わすことから始まります。乳児期なら「バイ バーイ!」と手をふっていますが、言葉がだんだんとしっかり云えるようになってきたら、「さようなら」もいってみたくなるものです。子ども自身もちょっと大人になった気分になれるでしょう。

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紙の本

紙の本川はどこからながれてくるの

2001/04/17 15:38

渓流の音も聞こえてくるような美しく繊細な絵。川の源流を求めて旅をする祖父と孫の信頼と尊敬の心交流も。

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川がゆったりと流れるほとりに一軒の家があった。そこに住む兄弟が、ある夏の夕暮れ時、川を眺めながら「この川は、いったい、どこからながれてくるんだろうね」と語り合った。そのふと湧いた疑問に答えるために、おじいちゃんは二人を連れて、川の源流をたずねるキャンプに出かけます。

めくるごとに、渓流の音が聞こえ、樹木のこずえのそよぎも肌に伝わり、うっそうとした森の空気も感じる、繊細で美しい絵つけに満足感を覚えます。どの場面も、画廊の絵を鑑賞しているような錯覚に陥ります。

孫たちの素朴な疑問と願いに即、答えて実行に移してくれる穏やかな祖父の存在は、この絵本のテーマのもうひとつの源流を見る思いがします。つまり、親から子へ、子から孫へ、孫からひ孫へと、人間の生命も、川のように流れ続けていることを。

親子断絶とか、孤食時代、核家族の時代といわれる現在、子どもたちがふと身のまわりで感じる、自然や文化、歴史などの疑問や質問にたいして、誠実に答えてくれる人生経験豊かな年配者がいてくれたなら、とこの絵本のなかの孫と祖父の、信頼と尊敬の念に裏打ちされた暖かい関わりに、閉じたあとも余韻が残ります。

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紙の本

紙の本14ひきのひっこし

2001/04/17 15:28

14匹それぞれの年齢、個性に応じて助け合って生きる姿から「家族とは?」と考えるきっかけにも。

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おじいちゃん、おばあちゃん、両親、そして10匹の兄弟姉妹という三世代の大家族が大自然を舞台に四季折々、さまざまなテーマでいきいきと展開される“14ひきシリーズ”、その一冊です。引越しがテーマのこの絵本では、天敵であるいたちや、ふくろうから幼い子どもを守り、急流の中、向こう岸へと渡る。家族一丸となって無事引越しを終えるまでは、子どもも、読み手も身が引きしまります。14匹それぞれの年齢や個性に応じて、力を出しあい、助け合っている姿から、ふと「家族とは?」と考えさせられる一冊でもあります。

大家族、一見それは、核家族時代の現代には現実離れと、思われるるかもしれませんが、読んでもらっている子どもたちは、10匹の年齢のどれかに自分を当てはめて、その登場人物のしぐさをじっと追ってみています。

文は紙面の下に1行のみ簡潔に表現されているだけです。でも、それぞれ14匹のその場その場での気持、動作が実に細やかに描かれています。読み手もしばらく、絵を読み込んでから、次をめくってほしいと思います。文をこえて絵が語っている絵本の場合は、ただ文字を読んでつぎつぎめくるのではなく、子どもと語り合うのも楽しいものです。わが子の内面成長が見えてきます。

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紙の本

紙の本さよならピンコー

2001/02/16 14:18

コビトペンギン、ピンコーに会いたい!

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 私が生まれて初めて海外へ行こうと思い、その地をオーストラリアに選んだのは、この本のコビトペンギンにどうしても会いたかったからだ。愛くるしい瞳としぐさ、そして家族や仲間を思うやさしさ。

 世界でいちばん小さな種類のペンギンといわれているコビトペンギン。ある日ペンギンのピンコーは、生物学者パイパー先生にけがをしたひれをなおしてもらいます。数年後、およめさんとともに先生の庭に巣をかまえたピンコー。そんな平和な日々を地震が襲います。ピンコーを先頭にペンギンたちの異常な行動に、町の人たちも、「ペンギンがみな陸に逃げたら危険が迫っている警告」という原住民の言い伝えを思い出します。地震によって大きな津波が町に迫っていたのでした。

 危機一髪のところを町の人たちはピンコーたちに救われます。しかし津波のおさまった海でピンコーたちを待ち受けていたのは、難破したタンカーから流出した原油まみれの海でした。今度は町の人たちがペンギンたちを救おうと、必死の救助活動をはじめますが・・・。

今では、この話の舞台となったシックルベイの町に、命をすくってくれたピンコーへ感謝をこめた記念碑がたっています。人間と動物との言葉をこえた関係にも目を見張りますが、それ以上に作者は「この地球には人間だけが暮らしているのではない」ということを静かに警告しています。

海や大地、空気を汚している私たち人間の暮らしを今一度見直してみませんか。

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紙の本

紙の本もうひとつの『アンネの日記』

2001/02/16 14:01

歴史は繰り返す?ことのないために

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 ハンナ・ホスラーはアンネの一番の仲良し。アムステルダムでは四歳から十三歳まで家も隣同士ですごし、学校でも同じ教室で学んだ二人。そんな大の仲良しアンネが、ある日ハンナの前から忽然と姿を消します。「フランクさん一家はスイスに行ってしまったようだよ。」

 ナチスの占領下、ユダヤ人の迫害が厳しくなる状況で、このことはハンナに大きなショックを与えます。それと同時に“スイスで無事にすごしてくれているのなら・・・”と親友の無事を思うのでした。しかし、それはアンネたちにとってはつらく長い隠れ家生活のはじまりでもあり、アンネが「日記」を親友として過ごすことになる日々のはじまりでもあったのです。

 本書では、著者が現在イスラエルで生活をおくっているハンナに直接会い、その証言から当時の状況をわかりやすく再現しています。アンネが隠れ家で過ごし、「内側」から戦争を経験してゆくのに対し、ハンナは「外の世界」にいてユダヤ人の迫害を目の当たりにしてゆくのです。

のちにハンナも強制収容所に収容されてしまいますが、奇跡的にもそこでアンネと再会します。有刺鉄線越しに暗がりで声をかけあう二人。危険も命もかえりみず、弱りきったアンネに食べ物を分け与えるハンナ。結局、アンネは終戦を目前に亡くなってしまいますが、隠れ家の生活が終わり、「日記」が途絶えてから収容所で亡くなるまでの絶望の最中に、ハンナとの再会という大きな喜びがあったことは、私たちの気持ちをも救ってくれます。

 しかし、アンナやハンネたちが受けたような民族差別からくる虐殺や戦争が、二度とおこらないと私たちは言い切れるでしょうか。今なお世界では内乱や紛争がおき、多くの難民が飢えと病気にみまわれています。アンネたちの受けた悲惨な歴史をくりかえさぬためにも、今読んでおきたい一冊。

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紙の本

紙の本編みものばあさん

2001/02/16 13:57

どうしてみんないっしょに暮らせないの?

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 作者のオルレブ氏は、ポーランドのワルシャワにユダヤ人の子として生まれた。第二次世界大戦がはじまると、父親は軍医としてソ連軍の捕虜となり、母親はドイツ軍に銃殺されている。作者はアンネ・フランクも亡くなったベルゲン・ベルゼン強制収容所に収容され、そこで十四歳のときに終戦をむかえた。

ある町に一人のおばあさんがやってきて、毛糸でスリッパや家、さらにふたりの子どもまで編み、毛糸でできた子どもたちと楽しい生活を送っていた。生き生きと飛び跳ね、いたずらもする子どもたち。しかし、そんな子どもたちを学校や社会はけして受け入れようとはしなかった。「毛糸の子どもだ たいへんだ! 編んだ子どもは おことわり!」と。

そこで、おばあさんは毛糸であんだヘリコプターに乗って、国の都に住む大臣に会いに行く。しかし、ここでも「この国に編んだ子どもはおことわり」と拒絶されてしまうのだった。おばあさんは結局、毛糸で編み出したすべてをほどき、町を去っていく。

一見、毛糸で生活のすべてのものを編みだして暮らすという、その発想の豊かさに気をとられがちであるが、いつの時代にあっても、自分たちとは異なるものを排除しようとする大衆心理や異文化への無理解を、わかりやすい絵と文で表現している絵本。

これは、ユダヤ人として迫害された作者の経験とけっして無関係ではない。

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紙の本

紙の本いもうとのにゅういん

2001/02/09 13:23

幼い子どもの心理を、細やかに暖かく描ききっている絵本

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 あさえが幼稚園から帰ったら、妹が盲腸で入院することになったという。雷雨のなか誰もいない家で、お人形をかかえてパパの帰りを待つという体験。一夜あけて、妹のお見舞いに、自分の一番大事にしているお人形を、あげる決心をしたあさえ。妹の入院という突然のできごとを通して、また一つ大きく成長をしていきます。

 子どもの表情を細やかに暖かく描くことで、定評のある林明子の絵本からは、読み手も聞き手も共に、姉妹の心理や育ち合いを、自然に感じとることができます。表紙の絵からも妹がお人形を欲しがっているのにたいして、姉は自分の分身のように大事なお人形だから、どんなことがあっても手放せない、という強い表情がつたわってきます。ところが、裏表紙をみると、妹がそのお人形とベットで眠っています。

 幼児期も後半にはいると、一見、負の体験と思われる不安、恐怖、悲しさ、寂しさと
いったことも、“心のバネ”として、逞しく自己成長を遂げていきます。

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