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  3. 13オミさんのレビュー一覧

13オミさんのレビュー一覧

投稿者:13オミ

80 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本人を動かす 新装版

2004/05/09 07:43

理想の上司

9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。


 事例が外国人なので、日本人にとってはぴんとこないところがある。日本人は、日本人の話でないと感情移入が出来にくい。どこか他の国の話よなぁと他人事に思ってしまうところは否めない。

 人間関係論はほんとに沢山出版されているが、この本一冊で人間関係論の基盤は勉強できる。37個の小さい章立ての一つひとつに必ず事例が組み込まれているだけではなく、それらに対する著者の指摘が詳細である。

 題名の「人を動かす」は優しい表現だがインパクトがある。他者をコントロールしたいという欲求は誰にも存在する。しかし、自己をコントロールすることが他者コントロールの原点なのだと気づかせてくれる本書はお腹に染み渡る。

 一時期チャート型参考書のはやったことがあったが、その草案みたいな感じの構成で読みやすい。ニュー社会人に贈る本としては一番のものだろうと思う。

 著者はもう死んじゃったので無理だが、一緒に仕事してみたかったな。なんか顔つきや表現が優しそうだしね。こんな上司が理想です。

 

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スランプには意味がある

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 認知心理学の観点から上達のメカニズムを説明しているが、アイコニックメモリだとかワーキングメモリだとかスキーマだとか横文字専門用語が頻繁に使われているため、上達の仕組みが頭に入っていきにくい。具体例が将棋や茶道に偏っているのも受け入れにくい要因となっている。読み手がおじさんじゃないと頭にスムーズインしないなあ。

 学習塾で講師をしていた頃、ある中3の生徒が「先生、おれ都立のトップ高に行きたい」と言った。業者テストの偏差値は40前後。通知表はオール3。合格はほとんど無理だった。まあ、夏過ぎれば自分の成績を客観視して志望校を下げるだろうとたかを括っていた。ところが、10月になっても志望校変更を譲らない。成績は上がってないのに絶対に受験すると言う。母親も子どもを説得できない。どうすっか? 「お前、俺の言う通りのことできるか?」 「やります」 指示したのは、1.国語を捨て一切勉強しないこと 2.数学と英語のテキストを渡して、塾に来て1ヶ月以内に全ページをやりきり、そのスタイルを受験前日まで続けること 3.理科と社会は薄い問題集を買って、塾ではなく家でやること 4.1ページ終わったら必ずすぐに採点して、解説を見てもわからないところだけ私に聞くこと の4つ。これをやらなければ合格しないぞと脅した。それから彼は2月の入試まで毎日学校が終わると午後4時くらいに塾に来ては問題集に取り掛かった。7時頃にいったんご飯を食べに自宅に帰ってまた塾に戻って来る。ある時、私が仕事していてはっと顔を上げると夜中の1時だった。「ふー疲れた」と言って体をひねって軽く体操していると彼がいた。絶句した。「お前…12時回ってるよ…」彼はひたすら私に言われたとおりのことをいちいちこちらが言わなくてもやり続けていた。彼の業者テストの成績はみるみる上昇。さらに授業では指名しても全く答えられなかった彼がことごとく正答を言った。まるで別人かと思った。これほどまでに能力はあがるのかと驚嘆した。彼自身も自分が出来るようになっていくのを肌で感じているということだった。

 ものの見え方が変わる=認知構造の変容。これが上達のメカニズムだそうだ。上達には法則があり、なにかをかなり深く身につける経験を通じて、上達の一般則を体得した人は新しいものを身につけるときにそれが自然に生かされるのだ。上級者と初心者・中級者の対比から上級者の認知構造を説明している。

 スランプの意味や構造に関しての言及では、いくらやっても伸びない人にとっては心安らぐものとなる。

 上達を極める10のステップの章には、反復練習をする・感情移入をするといった当たり前のことが書いてあるが、その理由を読むと納得せざるを得ない。目から鱗がおちた気になった。効率の良い努力を続けることができるかどうかにかかっているらしい。我々は自分が上達しないとやっていることに疑いを持つ。しかし、ここに書かれている上達の法則理論を実践で展開していけばスランプすら楽しく過ごせることになるのではないか?

 さて、前述の彼はトップ高に合格した。たまたま私の指示が彼の認知構造を変容させるのに効率の良いものだったのだろう。それを信じて彼が続けたことが勝因だ。しかし、必ずしもうまくいくとは限らない。上達の法則をもっと深く学びたいと思った。

 本書では上達の具現化ストーリーといったものはなかった。断片的な事例しか載っていない。茶道の初心者がどういう過程で上級者まで登り詰めたのかという実例をあげてもらえたらいいのにと思う。岡本氏にそれを書いてもらいたい。

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男殺し少女漫画

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 少女漫画です。とりあえず、出てくる男がルックス・生き方ともにカッコ良すぎる。基本的に悪党がいないし全員いい人。内部の人間との葛藤に終始して外部との接触を極端に少なくすることで悪人を排除しすぎてます。ありえねえよ、こんな幸せ。

 主人公は、奈々とナナ。この奈々と高校からの腐れ友達淳ちゃんとの絶妙なボケつっこみ。これだけでも読む価値あり。腹を抱えて笑えます。

 登場人物一人ひとりのキャラが漫画であるにも関わらず、非常によく描かれている。主人公の二人はさることながら、奈々ファミリー主役級の淳ちゃん・章介・京介。ナナファミリー主役級のノブ・ヤス・シン。トラネスファミリー主役級のレン・タクミ・ナオキ・レイラ。この12人がコアとなって話が進んでいく。

 しかし、最大の売りは恋多き奈々の葛藤。それぞれタイムラグはあるが、章介・ノブ・タクミ・ナナに対する奈々の思いが泣かせてくれます。

 おそらく、男は奈々に惚れる。天然ボケの彼女は思ったことをすぐ口にするか表情に出してしまう。それが男心を絶妙にくすぐるのだ。本気で普通に彼女は人を褒めちゃう。褒めることになんの躊躇もない。こんな女がいたらなあと多くの屈折男性は思うだろう。しかし、もっと恐ろしいのは奈々が妊娠してお母さんになってしまうこと。お母さんになった奈々は確実に成長し、相手を静かに受け入れるというバランス感覚をもつだろう。そうなったとき…あぁ…もう男はメロメロになるよぅ。

 ということで少女漫画でありながら、男殺し漫画でもある。これからどう展開するのか作者に任せる。なにもいうことはありません。わくわく。
 

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紙の本少年A矯正2500日全記録

2004/07/06 07:43

性中枢は正常化したようです

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 見てきたようにモノをいいという講談のセリフを借りたくなるような矯正の全記録。まあ、本人への取材がなかったとすればここに書かれていることが本当のことなのかどうか疑わしい。でも本人と会えるわけないし、本人が語るはずもないから矯正したかどうかは闇ですね。

 神戸児童連続殺傷事件の犯人Aが仮退院しました。彼は本当に矯正したのかという世間の疑いの目を晴らす物語。この更生プロジェクトが成功したという観点から描かれている。説得力があるのは、少年Aと矯正官たちの医療少年院での言葉の掛け合いや動きが詳細に載っている点である。また、矯正手法が論理的で納得のいくようなものであるという点。ここまで細かい矯正ルポはないと思う。

 彼が犯した罪の根源にあるのは「性的サディズム」だ。人を殺すという妄想で自慰行為をした。それが昂じて本当に人を殺すという行為に走ってしまったらしい。だから、彼は女性の身体には全く欲情を感じたことはなかった。それが、矯正施設内において遅ればせながら女性に欲情を感じて自慰行為に走ることになった。この部分は矯正の一段階を経たという説得力がある。性中枢の未発達が存在していたのだ。

 脳の部分に関しては「直観像素質者」であるという鑑定結果が出ている。これは見たものを写真のように記憶できる。本書では論じられていないが、直観像は短期記憶の異常の疑いがあると推測できる。

 また、少年Aの生い立ちについても触れているが、精神鑑定にあたった医師の言及の中で「母子一体関係の時期の短さが、Aに最低限の満足を与えなかった」とある。ここで著者は次男が年子で生まれたことを理由に挙げているが、年子なんてのはよくあることでそれは愛情不足の原因としては弱い。また、随所に母親の躾の問題を挙げているが、子どものSOSのシグナルなどはそうそう簡単に発見できるものではない。2面性についても触れているが、そんなものは誰でも持つ。

 精神鑑定医らは親の虐待を指摘しているが、本書ではあまり触れていない。私見だが、かなりの虐待があったように思う。その部分の解明が待たれる。が、誰ももう解明しないだろうなあ。

 矯正プロジェクトの一環の中で内観法やロールレタリングといった手法を取り入れたことが書かれているが、所内における少年Aと矯正官たちとの葛藤がよく描かれていると思う。

 重大殺人を引き起こす者に共通して見えるのではないかということを研究した人がいる。3つの条件がそこにはあると言う。脳の器質的障害・精神疾患・幼少期の被虐待だ。今回のケースも強引かもしれないが当てはめることが出来る。直観像は左脳への問題に疑いがある。離人症状や解離傾性の存在。親の虐待。この仮説に基づいて矯正をしていくという考え方を国はもっと真摯にやっていくことが必要だと思う。そうしないと重大殺人者出現の予防につなげることはできない。予防は大切。それについて論じている本はほとんどない。

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紙の本恋愛中毒

2004/07/12 10:16

加害意識とプライドの欠如

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ラストの主人公たちの動きがよくわからない。彼女は中毒から脱出したのか? それともまだ中毒なのか? 創路は何を考えているのか? 謎である。

 だいたいストーカーする女性はわかる。見つめる目が違う。別に狂気が宿っている目をしているわけではない。こちらの動向を伺う澄んだ目をもっている。この目は危険である。創路は見抜いたが自分は対応できると思ったから近づいたんだろう。しかし、自分の娘に危害が及ぶことは想定していなかったに違いない。肉親をやられるのはかなり痛い。

 水無月の最初の男、萩原は済んでのところでストーカー水無月から逃げることができた。それは水無月の夫である藤谷に水無月の心が移ったからだ。ところが、この藤谷は水無月のねっとりとからまるような生活にどうやら息抜きをしたくなり浮気に走る。が、ここでとんでもない暴挙に水無月はでる。これも予想できないストーカー行為。彼女は当人に対して尋常じゃないことをするのではなく、当人の周囲を徹底的に静かに糾弾する。それだけにたちが悪い。正攻法のストーカー行為ができない。なぜだろうか?

 誰もが好きな人に受け入れられなくなっていると感じれば、心になぜ?と浮かべ、少しずつ周辺を探りたい衝動に駆られる。しかし、それを実行しないのはプライドと加害意識があるからではないかと思う。ストーカー行為をしている自分を想像すると耐えられないというプライド。そして、受け入れられなくなっていったのは自分にも責任があるのではないか。ストーカーはそんなことは全く考えない。強大な被害者意識だけが存在する。

 澄んだ目とは、出てきた相手の言葉や態度を自分専用のフィルターにかけ、これは嘘、これは本当とはっきり区別してしまう。混濁させて清濁併せ呑むことができない。こういう手合いとは、つかず離れずで付き合うに限るのである。水無月に子どもができたらどうなんだろう? それちょっと書いてもらいたいです。

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紙の本O・ヘンリ短編集 改版 1

2004/05/16 13:29

片思いの失恋

6人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 あんまり盛り上がらないし面白くない短編がいっぱい詰まっている。O・ヘンリは自分のために作品を書いた感じがする。読み手を意識して書いたんじゃあないな。自分で書いてほくそえむんじゃあ、マスターべーションと同じだ。

 NHKでO・ヘンリの短編を紹介していた。それぞれの短編に挿絵をつけて物語を語るという手法だったと思う。いくつか聞いた中で感動したのは「善女のパン」だ。あまりに悲しすぎる結末。人の命に関わるような大それたことではない分、情景が目に浮かぶし感情移入しやすい。

 雑誌のこの連載が読みたいから毎週買う。短編集のこの一篇だけは読みたいから文庫本を買った。というのはありがちではないか。私は、まさに短編集1は「善女のパン」のためだけに買った。

 ミス・マーサに訪れた幸せのきっかけが、これからどう展開していくのだろうかと暖かい気持ちで読み進めていくと、読者はとんでもない羽目に会う。そして、我々は「どうするんだマーサ」と悲しい声をあげてしまうだろう。マーサは今どうしているだろうか? 幸せになっただろうか?などと考えてしまう私は馬鹿だろうか? これほど架空の人物の行く末を心配したことはない。

 こんな話は、そこいら中に転がっているのかもしれない。片思いの失恋。世に出ることはあまりない。そういう話を集めたものをどこかで出版しないかな。

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紙の本生きながら火に焼かれて

2004/05/06 01:28

家族のメンツが娘を殺す因習

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。


 世界に対する告発の書であるならば、物語風に記述するだけにとどまらず、地図やその地方の写真・風景を入れるべきである。そうしなければ絵空事と思ってしまうくらい衝撃が強い。

 ここまで本を読んで落ち込んだことはなかった。日本という国に自分が生まれたこと。そして自分を生んでくれた両親に心から感謝したいと思った。それほどショックである。

 世界の殺人は様々な理由から起こる。貧困からくる強盗殺人や民族間の対立。気に入らないからと言って傷害致死に至らしめることや虐待など。しかし「名誉の殺人」なるものの存在は初めて知った。題名にもあるように「生きながら火に焼かれて」とはいったいどういう理由によるものなのか?

 このアラブの国シスヨルダンの村では、女性は奴隷である。学校にも行かせてもらえない。朝から晩まで働くだけである。外出することもできない。もし、姦淫をしたならば、殺されても構わないと言う因習がある。しかも、裁判はなく身内によって密かに殺害されるのだ。殺害するのは親や兄弟や親戚である。自分の娘を手にかけるとき情けというものが存在するのが我々の社会では当然である。そんなものはこの村にはない。ただ、家族の名誉を汚した娘を憎む心だけが存在する。法律上、この「名誉の殺人」が認められているため罰されることはない。さらに、息子ではなく娘が生まれすぎると間引くのである。

 話は姦淫が原因で焼かれた本人スアドの告白で進み、途中で彼女を救い出したジャックリーヌの告白を挿入させる。救助者と被救助者の両面からの展開は話の信憑性を増す。ジャックリーヌがどうやって彼女を救出したかが非常にわかりやすく描写されている。

 後半は西欧に渡ったスアドの第二の人生が語られるが、そこで幸せなことにスアドは結婚し子どもももうける。その子どもたちに自分の生い立ちを語るシーンは泣ける。上の子がそれを聞いて「今から、お母さんを焼いたやつらを殺しにいく」と激昂するのも当然である。

 この「名誉の殺人」はシスヨルダンの村だけではないらしい。ヨルダン・イラン・トルコ・イラク・イエメン・インド・パキスタン・イスラエル・ヨーロッパにも存在するそうだ。年に6000人の娘たちがこれで死んでいる。読み進むにつれ、アラブの内部因習の理解なくしてイラクでの戦争を軽々しく論ずることは我々には出来ないのではないだろうか?と思った。あまりにもアラブというものに対して無知であることを感じる。

 こうした因習が過去の日本にもあったのではないかと思うとぞっとする。彼らがどうしてこうした因習を作り、それに囚われなければいけなかったかを文化・風土に原因を求めて言及してもらいたい。

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不必要経費を抑える方法

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 クレジットカードのからくりとか不動産物件のからくりとかをぼーっと読んでいると全然わからない。どうして損なのか得なのか理解できないんだよねー。結局、細かいところにこだわって物事を行う人でないと得しないんだろう。古本屋で買ったほうが安いのに、思わず大書店で本を買ってしまうような人には無理な話です。

 あたしは、カードやポイント制でお得だからしているのって、ドコモのポイントとビックカメラのポイントカードくらいです。これもまた、客には得していると思わせながらちゃんと業者は甘い汁を吸っているんだろうなと思う。けど、気持ち的に得している気分だからそのからくりを研究しようとは思わない。だめだめだなあとは思うけど…。

非常に感心したのは高利貸しに追われて自殺する人の理由である。たかが金のために命を失うのか? それとも高利貸しの暴力に屈するのか? 著者の見識はこうだ。内なる道徳が彼を殺す。世間並みの人生を歩んできた人が、社会のクズだと思われている高利貸しやヤクザから「貸した金を約束通り返してくれ」という道徳的な言葉を浴びせ掛けられる。返済の出来ない債務者の人格を傷つけて、終いには自分には生きる価値がないのだと思わせる。それが自殺を呼ぶ。

 得する生活の要所は、市場の歪みを利用することだと言う。人間は完全ではないのだから市場は少しだけ歪んでいる。その歪みは利益を求める人々の行動によっていずれ修正される。だから、他人よりも早くその歪みを発見し賢く利用することだとまとめている。

 得する生活は、文化的な生活を送る上でいかに出て行くお金を押さえていくかを説いた書である。必要経費ならぬ不必要経費を押さえる方法です。では、経費を抑えるのが面倒な人はどうするか? 売上を上げるしかない。入ってくるお金を増やすこと。ここに今度は触れてもらいたい。

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誰にもわからない彼の世界

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。


 仕方ないが、インタビューが書簡で行われたために編集部の質問に対する宮崎氏の回答が深くない。宮崎氏の回答に対する連続質問が出来ないからねえ。あと、第4章の解説で4人の評論家がでてくるけど、予防という観点から宮崎氏のような人物の出現を未来において抑えるという話がない。

 数々の質問から宮崎氏の考えが断片的ではあるが、明らかになっている。特に注目したいのは、彼には反省といった考えは全くないということ。それがわかる。「自分の親は本当の親だと思っていない」「女性に恋愛感情を抱いたことがない」「得体の知れない人知を超えたネズミ男が襲ってくる。襲われるので、その外部の声に従う」「裁判の結果には全く関心がない」「おじいさんがほんとに死んだのか今だわからない」「骨を全部食べておかないとおじいさんが甦ったときおじいさんが二人いたら困るから」など。

 引用された公判における供述の中で、彼の異常な行動の理由が明らかになっている。殺害の方法は覚えていないというか自分がやったという意識がない。もう一人の自分がネズミ男からの指令によってやらされたという。子どもの遺骨を焼いて届けた理由はおじいさんの葬式を見たかったというのとおじいさんを甦らせるためという。他にも数々の供述がある。

 彼の言葉を聞くと、怖いからやった。やりたいからやった。で終わっている。その後そのことについては喜怒哀楽の感情は見てとれない。第4章の解説で大塚英志氏が言うように「宮崎勤は誰にもわからない」のがここまでで導かれる結論だと思った。彼は他者に対して自分をきちんと説明するということが出来ない。見たことや聞いたことをそのまま説明するだけである。どうして自分はそうなのかという深い思考を持つことはない。こんな人に何を聞いても無駄だということがわかってしまった。彼はこれからも死ぬまで刑務所の中で静かに自分の世界の中だけで暮らしていくのだろう。殺害原因は特定出来ずに風化し、永遠に闇に葬られていくだろう。

 宮崎氏だけではなく、もっと多くの重大殺人者とのインタビューを出版してもらいたい。そこから何かがわかるかもしれない。

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紙の本秘密の花園

2004/06/17 06:59

TEENS小説はリアリズムを志向できない

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 なんて言うのかなあ、いつも青春小説読んで思うんだけど、17歳以下ってほんとにこんなこと考えてんのかなあって。こんなに理知的であったはずがなかろうって。表現力も人間観察力も全くないんじゃなかったかって。作家は青春小説に関しては、もっとリアリズムを志向すべきだろうって。30代の思考で10代のころを描くのは邪道なんだなあ。だって、恋も死も「あの子とえっちしたい」「ぜったい死にたくない」という思考しかなかった気がするのはあたしが馬鹿だから。

 「洪水のあとに」の那由多の章で、ちょっと付き合った薫から連絡がなくなる。と言っても、那由多の方から着信拒否しているので仕方がない。で、那由多は「安心もしたし、その程度のものかと拍子抜けもした。…薫は私を好きだと言ったし、私も薫を嫌いではなかったが、でもそれだけでは一緒にいるには足りないものがあるのだろう。」と言う考え。そして、もっと食い下がるための何かが、私たちの間には生まれなかったんだなあ、と結論づける。これ身につまされます。

 「地下を照らす光」の淑子の章で、学校の先生と付き合っているが嫌われているんじゃないかと疑い始める。そこから周囲との人間関係に思考は波及し「私は一人だ。土曜日の午後、委員会のあいだじゅう、私はそんなことを思っていた。誰も私を一番にはしない。先生も、なゆちゃんも中谷さんも。」と考える。これも身につまされます。

 「廃園の花守りは唄う」の翠の章で、レズ思考?にどっぷりと浸りながらいわゆるマーフィーの法則を夢想する。「周囲につられるものなのか、人の動きにはなぜか波がある。だれ一人としてレジに本を持ってこないかと思うと、急に多くの人がレジに殺到してくるときもある。潮の満ち引きみたいで不思議だ。でも理解できない。」買うものが決まっていれば空いているときにさっさと会計を済ませればいいのに。レジが混んでいたら少し時間を潰せばいいのに。と批判の目を向ける。

 この中で最もいじめたくて可愛がりたいのはやっぱ翠かなあ。理性だけで物事を判断するタイプだけど、はまったらどこまでも行くって感じだからねえ。かなり美形らしいし。

 この3人が22歳になったときの状態と思考を書いてほしい。知識が増えることで、何が変わって何が変わらないかを描いてほしいです。

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不成功者の告白もほしいところ

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 起業したことのある人にとってだけ、身につまされ共感できる内容。だから、これから起業しようと思ってこの本を手にした起業したことのない人には心に響くものがないでしょう。だいたい、どれでもそうだが警鐘を鳴らす本はほとんどの人にとって役に立たない。失敗して初めて「あーあ、ああしときゃよかったのか」って後悔するんです。だから人生か。
 しかし、物語で話を進める手法は今までになく斬新ですらすらと読める。神田氏の経験がその心情的要素を伴いつつ訴えかける姿勢は飽きさせない。家族と仕事の両立に視点を置いたところも出色である。
 神田氏に期待したい。「不成功者の告白」っていうのも出してほしい。世の中には狂うほどの数の不成功者がいるはず。それは活字で表に出てこないことが多い。でも、もっと共感できる人が多くなる気がすると思うのはあたしだけだろうか?

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紙の本血と骨 下

2004/07/11 07:10

暴力による恐怖は悲惨な末路を生み出す

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 どこをどうとっても最高の小説である。しいて言えば、金俊平の唯一の親友、高信義がいつまでも貧乏であったというところが納得いかない。彼の社会性・思慮深さは作中でも英姫に匹敵するくらいであったはず。ただ、朝鮮人の開放という政治的な匂いが個人の豊かさよりも彼の中で優先されてしまったというところだろうか?

 ものすごい量のページ数だが一気に読ませる。金俊平の考える生きる意味はおのれの欲望に忠実になること。ただ一点だ。そのためには徹底的な暴力に訴えること。自分の感情を害する者に対しては親も子もない冷酷さ。ここまで自己完結した主人公だからこそ周りの人間が浮き上がってくる。

 唯一親友と呼べる高信義。金俊平は彼の言うことには耳を傾けるそぶりを見せる。さすがの金もブレーン的存在が必要だったのであろう。彼がいなければさすがの金俊平もすぐに死んでいただろう。

 本妻である英姫もすごい。ほとんど陵辱の末、いつのまにか金俊平の妻にさせられ、理不尽を通り越した暴力と搾取を金俊平から受けながらも人生を捨てない。子どもたちのために生活していくには現在の運命を甘んじて受け入れるというすさまじい人情がある。

 本書には繊細さのかけらもない。しいて挙げれば、娘の花子が現在の日本人を表しているかもしれない。それにしても金俊平は幸せ者である。孤独だとは言いながらも、その暴力を駆使して自分の欲望をほとんど達成させている。この欲望達成の背景にあったのは周囲に対する彼の暴力的な恐怖だけだったのであろうか?

 おそらく高も英姫も金俊平の暴力に嫌悪は抱いていたが、彼が悪事を自ら働かないという点に一縷の望みを抱いていたような気がする。金俊平は人に陥れられているといつも不安を感じているが、人を陥れようとは思わない。その一本気な性格と行動。何を考えているのかわからないと高も英姫も漏らしながら、その一線を彼は絶対に越えないと言う信頼があったのではないか。読んでいて金俊平に爽快感を私は感じたから。

 暴力で人を抑えた末路は金俊平にとって悲惨であった。妾や子どもにも見捨てられ最後は母国朝鮮で息を引き取る。彼のしてきたことに点としての意味はない。ただ、彼の血と骨だけは永遠に線となって継承されていく。これほどまでに人間を描いた作品は今後生まれないだろうと思った。

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殺しの3要因

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 過去25年間で約150人の殺人犯の面接を行ってきた著者が語る犯人たちの共通点。しかし、著者の調査は主観の域を出ていない。科学的推論は、彼が導きだした共通要因を他者の研究結果と比較検討しなければならない。文献や統計を使った仮説証明が一切ないので面白い読み物としての価値しかないだろう。

 彼の立てた仮説とは「凶悪な暴力的重大殺人は、3つの要因の複合体がなせる技ではないか」というものだ。1、脳の神経学的損傷(特に前頭葉の器質異常)2、精神疾患(特に統合失調症=精神分裂病)3、幼少期の被虐待

 脳の神経学的損傷についてはこう語る。前頭葉は理性を司る。通常、欲望を抑える働きをもつが、ここが未発達状態であるとその歯止めがきかない状態となる。殺してやりたいと思っても、かーっとなっても普通は実行に移さないものだがストッパーがないのでゴーになってしまうのだ。

 精神疾患については、極度の不安や偏執的思考に囚われることで精神の乖離現象を常に引き起こしている状態。

 虐待については、虐待者との同一化を招くという。長い間無防備な親の犠牲者であった子どもは、それがどんな苦痛であっても親を正当化してしまう。よって、自分の親がやったと同様な支配権を他者に対して握ろうとする。

 
 もちろん脳損傷や精神疾患や虐待を単独で犯行の要因と捉えているわけではない。あくまでも程度の差もあるが、3要因が重なった場合に犯行が発現すると言っている。

 第6章では予防の実例を挙げている。すんでのところで自分の息子を犯罪者にしなかったのではないかという例だ。脳損傷や精神疾患を併発している子どもに対して、親がどのように対応したかが述べられている。

 第10章ではいわゆる多重人格障害の例が出ている。医師と犯罪者との会話から多重人格状態を詳細に描写する。

 第12章では暴力犯罪の予防プログラムに言及し、「ハワイ・ヘルシー・スタート・プログラム」や「ペリー就学前プログラム」の例を説明している。

 その他示唆に富んだ研究の成果を述べているが、私たちに出来るのは脳損傷や精神疾患を早期に発見し虐待をしないことだろう。人々は差別を気にする。上記3要因は必ず隠される。それは人の気持ちとして当然のことだろう。そこにどうメスを入れるかがこれからのカギになると思った。国全体のプログラムとして日本も関わってほしい問題である。

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紙の本新選組血風録 改版

2004/06/27 09:50

上質新選組史伝

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 新選組隊士たちやその敵を主人公とした短編集だが、一人ひとりを描ききってはいない。透徹すぎる目で追うといった表現が妥当であろう。人間のもたもたしたところがないなあ。

 立会いの描写がいい。斬り込んで斬られるまでの短い時間の中を冷静に描く。しかも、そこに本人たちの気持ちを差し入れていく。うますぎます。

 分厚い本だけれども、会話がふんだんなので読んでいて飽きない。

 背景の説明もきっちりされているので、筋がすらすらと頭に入っていくし読んでいて安心できる。新選組系の本の中では最も上質だと思う。歴史を紐解く本とはこうでなくてはいけない。

 天誅組・水戸天狗党・赤報隊・白虎隊・彰義隊といった幕末志士の史伝風物語をこのように書いたものがもっとでないかなあ。

 

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紙の本エパミナンダス

2004/06/26 09:18

ストーリーテリング

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 書いてあることはたいしたことないし、大人にとっては馬鹿馬鹿しい話。

 読み聞かせというものは、よくお母さんが子どもに夜ドラマなんかでもやっている。実際の家庭でもあることだろう。たぶん、あたしも母親にしてもらってた気がする。しかし、初めてストーリーテリングを聞いてショックを受けた。こんなに面白いものなんだって。

 読み聞かせは本を読んで子どもにきかせる方法。ストーリーテリングは本を使わずにお話だけを聞かせる方法。まあ、夏の世の怪談話といったらいいだろうか? 昔の講談に似ています。

 この表題にあるエパミナンダスはストーリーテリングの最も有名なもの。あらすじは単純でエパミナンダスという少年がお母さんにいろいろ言いつけられて行動を起こすのだが、ことごとくボケる。このボケがわざとなのか天然なのかは難しいところだが、コミカルで残酷なところが子どもに受けるのだ。

 手振り身振りでお話を大げさに語るときの子どもの真剣な表情は、このストーリーテリングでしか見られない。絵のない話だから聞き手は自分の頭の中で物語をイメージするしかない。想像力の増強には非常に効果が高いのだろう。あたしも小さいときにこれをやってもらいたかったなあ。

 季節ごとのストーリーテリング集みたいのがあったらいいのにと思った。

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