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テレキャットスターさんのレビュー一覧

投稿者:テレキャットスター

36 件中 16 件~ 30 件を表示

紙の本

外貨投資の「まっとう」な入門書

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

タイトルに偽りなし。本当に「やさしく教えてくれる本」だ。恥ずかしいくらいに経済知識を持たない私でも、スラスラ、フムフムと読み進めることができた。

本書は、外貨投資の基礎知識から情報収集のコツ、外貨商品の解説、そして実際のトレーディングのやり方まで網羅している。さらに、チャートの分析手法や、プロが使うテクニックについても触れている。その上、用語集と「相場ノート」のテンプレートまで付いているのだから、本当に親切すぎるくらいだ。

文章も平易で読みやすい。私のような、まったくの初心者を対象としているらしく、解説も丁寧。「為替とは、『引き換える』『交換する』という意味で、外国為替とは、『外国の通貨同士を交換すること』をいいます」というレベルから話を始めてくれる。

そして、外貨投資が分散投資の選択肢に向いていることや、株式投資よりも細かい情報や知識が必要なく、リスクも低いことを教えてくれる。さらに、初心者には主要通貨か準主要通貨への投資が向いていて、エマージング通貨には手を出さない方がいいこと。アメリカの為替政策や金融政策が、為替市場に大きな影響を与えること。各国市場の一日の動きや、季節変動についても言及がある。

実は、最近の円高傾向を見て、「よく分からないけど、儲かりそうな匂いがする!」とヨコシマな気持ちで、本書を手に取ったのだが、一冊目のチョイスとしては大成功。外貨投資の基礎知識を身に付けるだけではなく、変な山気をクールダウンすることもできた。それは、すなわち本書が「まっとう」である証拠だと思う。

私が外貨投資に挑戦するのは、もっと経済知識と余裕資金を手に入れてからの方が良さそうだ。当分は、本書で習ったキーワードや概念、それぞれの関係などについて、もっと理解を深めたいと思う。さらに、各指標やチャートを継続的にウォッチして、著者が指南するように、「どのようなお金の流れが生まれるのだろうと想像」してみるつもりだ。

著者が「トレーディングの心構え」として挙げている8か条がある。

1. 余裕資金でトレードする
2. 損切りは小さく、利食いは大きく
3. 負ける勇気を持つ
4. 金勘定はしない
5. トレンドに乗る
6. 売りと買いを対等に考える
7. 負けている時は金額を小さくしていく
8. 勝って兜の緒を締める

これを見ても、本書がいかに「まっとう」であるかが分かるだろう。私と違い、経済知識も余裕資金も持っていて、外貨投資をやってみたいと思っている人にはぴったりの一冊だと思う。

私も外貨投資を始めるときに、本書をもう一度開きたい。何年後のことやら。

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紙の本

「てんぎゃん」の次に読む一冊

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「南方熊楠」という名前を知ったのは、かつて週刊少年ジャンプで連載されていた「てんぎゃん」という漫画が、きっかけだったと思う。ネットで調べたところ、打ち切られたようだが、無理もないだろう。ジャンプらしからぬ、すご〜く地味な漫画だったので。
 
その後、南方熊楠については、19ヵ国語が話せたとか、猫語も話せたとか、「ネイチャー」誌に論文が掲載されたとか、自由にゲロを吐くことができた、などという断片的な情報を知って、うっすらと興味を持っていた。
 
そんな熊楠初心者の自分に、本書はピッタリだった。熊楠の歩んできた道のりが、豊富な資料とともに、分かりやすく解説されている。「とんぼの本」らしく、図版がとても多いので、パラパラと眺めるだけでも楽しい。特に、熊楠の手によるキノコの彩色図が、すごい迫力。ポスターにして、壁に貼りたいくらい。
 
また、民俗学者としての一面や、南方マンダラ、神社合祠反対運動については、恥ずかしながら、ほとんど知らなかったので、とても勉強になった。町田康が熊楠を演じる映画、なんていうものがあったのも驚きだった。残念ながら、こちらは、打ち切りならぬ、お蔵入りになったようだが。

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紙の本

自己啓発本が“効かない”理由

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

刺激的な内容だった。これまで自己啓発本を読み漁ってきたのに、なぜ効果が現れないのか。その理由が分かったような気がする。

本書のタイトルにある「親」は「他人」の代表格という位置付けだ。私たちの行動や考え方は、自分の経験だけではなく、他人の言動から大きな影響を受けている。過去の記憶に縛られているとも言える。実は、その縛られている場所こそが私たちにとっての「コンフォート・ゾーン(快適な領域)」であり、なるべくそこから外れないように無意識が働く。なぜか? それは、脳がそのようにできているからだ。

だから、日記も、英会話も、ダイエットも、○○メソッドも、すべて長続きしない。これらのことをやっていない、続けていない状態こそが私たちにとってのコンフォート・ゾーンなのだ。無理にやろうとしても、「創造的無意識が逆向きに働き」、「取り組まないですむもっともな理由」が脳内で生成されることになる。

では、どうすればいいのか。答えはひとつで、コンフォート・ゾーンを高めるしかない。それを可能にするのが、著者とルー・タイス氏が共同開発した自己実現プログラム「TPIE(タイス・プリンシプル・イン・エクセレンス)」だ。本書は、世界初となる「TPIE」の公式ガイドブックである。

「TPIE」の中心となるテクニックは、アファメーションやセルフ・トーク、ビジュアライゼーションなどだ。これらは、すでにゴールが達成された状態を「未来の記憶」として作り出し、そこに圧倒的なリアリティーを付与することで脳をだますというもの。脳は「だまされやすい」という特徴を持っているのだそうだ。

本書に書かれている手法やテクニックそれ自体は、さほど目新しいものではない。例えば、アファメーションの書き方は、フランクリン・プランナーの開発者による著作「TQ」に登場する「価値観(個人の憲法)」のそれとよく似ている。余談だが、「TQ」には「安心領域(コンフォート・ゾーン)」という言葉も登場する。

しかし、本書がユニークなのは脳科学と認知心理学をベースとしている点だろう。それによって、説得力が大きく増しているように感じた。その裏返しとして、専門用語が頻出するのは少々残念なところだ。例えば、ゲシュタルト、ホメオスタシス、ステータスクオ、ブリーフ・システムなど。もちろん、それぞれについて解説はされているのだが、似たような意味を持つものもあるので、やや混乱した。それが星をひとつ減らした理由だ。

とは言え、本書が刺激的であることに変わりはない。これまで自己啓発本を読み漁ってきたのに、なかなか効果が現れないという「お仲間」には、一読をおすすめしたい。

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紙の本

人類の至宝によるガチンコ回答

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

子どもの素朴な疑問に答える大人たち。本書の図式は「こども電話相談室」と同じだ。ただ、答えている面々がすごい。ノーベル賞受賞者18名、そして「もうひとつのノーベル賞」と呼ばれるライト・ライブリフッド賞と、「数学のノーベル賞」ことフィールズ賞の受賞者が1名ずつ、計20名の豪華メンバーだ。

子ども向けに書かれているため語り口こそやさしいものの、回答者の誰もが素朴な疑問から逃げていない。ごまかしたり、はぐらかすことなく、極めて真面目に、真正面から答えている。

例えば「どうしてプリンは柔らかいのに、石は硬いの?」という問い。答えるのはノーベル物理学賞受賞者のクラウス・フォン・クリッツィングだ。彼は「原子核と電子」「原子の結合」「結晶」などの概念から丁寧に説明している。「きみはスプーンを口に入れるたびに、原子とそのまわりを回っている小さな電子をたくさん食べているのです」という表現も面白い。

他にも「どうして貧しい人とお金持ちの人がいるの?」「空はどうして青いの?」「忘れちゃうことと忘れないことがあるのはどうして?」「地球はいつまで回っているの?」といった魅力的な問いと、「人類の至宝」とも呼べる面々によるガチンコ回答が並ぶ。

個人的に面白いと感じたのは、何人かの回答者が「まだほとんど分かっていないこともある」と強調している点。この世界には(私たちの身体にも!)未知の不思議なモノやコトがたくさんあるのだ。その事実に子どもがワクワクすることは、疑問に対する明確な解を与えられる以上に、価値のあることかもしれない。

ノーベル化学賞受賞者のジョン・C・ポラニーは、こう投げかける。「人間や動植物の細胞の核のなかや原子のなか、そして宇宙の果てには、発見されることを待っている新しい世界がたくさんあるのです。きみも発見者になってみませんか?」

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紙の本

紙の本イチローの流儀

2009/09/22 18:47

努力の天才、イチロー

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

共同通信の記者として、オリックス時代からイチローを取材してきた著者による一冊。著者自身が認める通り、時系列がバラバラで、まとまりに欠け、読みにくい部分もあるが、イチローのすごさを思い知るには充分な内容だ。

ブログ「モチベーションは楽しさ創造から」のエントリー「イチローに学んだルーチンへのこだわり」にも書かれているように、イチローの「同じリズムで繰り返すこと」に対するこだわりはすさまじい。打席に立つまでの一連の動作から、試合前練習のキャッチボールの相手、さらには遠征先の食事でオーダーするメニューまで決めているという。

その上、わざと自分自身をイレギュラーな状態に追いこみ、適応力を高める努力も怠らない。一睡もしないでオープン戦の試合に出たり、打撃練習をしないままバッターボックスに立ったり、故意に2ストライクのカウントにするなどの実験をしたことがあるそうだ。徹夜で試合出場という異常事態は、2004年のシーズン中、実際に発生した。経験済みであったせいか、ダブルヘッダーという過酷な状況にも関わらず、6打数6安打という結果を残した。

そんなイチローでも失敗することがある。例えば、95年から98年までの間、激しい練習やトレーニングに明け暮れたことがあった。それは、彼の持ち味である柔らかい体の動きを損ないかねない、危険な行為だった。また、2000年には、普段であればやらない自宅近くでの坂道ジョギングをして、それが原因となり、翌日の試合で故障している。

しかし、そのような失敗の原因を分析、学習し、自分なりのメソッドや哲学にまで昇華できるのも、イチローのすごいところだと思う。

その分析、学習は、好調時であっても行われる。2002年のシーズン中、結果が出ているにもかかわらず、自身のバッティングに違和感を持っていた。普通の人であれば結果オーライということになりそうなものだが、イチローは原因の究明を怠らなかった。そして、自身の上半身の固さに気づき、ひざの力を抜くことによってそれを回避できるという解にまでたどりつく。

本書を読んで、イチローは天才というより、努力の人なのではないか、という感想を持った。ただ、その努力レベルの高さが半端ではない。「努力の天才」と言えるかもしれない。

イチローのプロフェッショナルとしての姿勢は、少しでも真似したいと思った。

例えば、モチベーション維持の仕方。イチローはオリックス時代に、チームの絶頂期と凋落期の両方を経験している。そのとき、チームの勝敗や、周囲からの注目度にモチベーションの源泉を求めていたら、今の彼はないだろう。「モチベーションが自分の中から生まれていればある程度保てるのではないか」というのがイチローの持論だ。

また、道具にこだわり、それを大事に扱うところ。さらには、遅刻しないところも見習いたい。「絶対に遅刻をしないことが彼(イチロー)の野球に対する誠意の表れ」というのは、イチローの元同僚である長谷川滋利のコメント。猛省したい。

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紙の本

紙の本日記をつける

2009/04/13 12:59

人の日記を覗くと、自分でもつけたくなる

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

日記のつけ方やテクニックを解説している本、ではない。ただ、日記の面白さ、自由度の高さを教えてくれる一冊だ。

サンプルとして、さまざまな日記が登場する。これが面白い。その多くが著名人によるものだが、内容もスタイルもいろいろ。

例えば、内田百間の日記には天気と就寝時刻しか書かれていない。それと、食事のメモ。「鳴門のわかめ」のことを「泣キタクナル程ウマイ」などと評価していて、ちょっとかわいい。

山田美妙は、性行為の回数を「宝」という記号で日記に残している。「宝一但不(昼宅にて自宝)」といった具合。死後、衆目にさらされるとは思わなかっただろう。

他にも、武田百合子、李舜臣、徳富蘆花、チェ・ゲバラ、岸田劉生などの日記を覗くことができる。なかなか貴重な体験だ。

人の日記を覗くと、自分でもつけたくなる。著者の朴訥とした文体も、自由で気楽な日記ライフを勧めているように感じた。

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紙の本

まずは「自分にできる仕事」から

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「下流社会」のヒットで知られる著者と、様々な分野で活躍する4名との対談をまとめた一冊。ところどころで、著者へのインタビューが挟みこまれる構成になっている。
 
対談部分は「PRESIDENT」などの雑誌に掲載されたものばかりなので、既読の人もいるだろう。「下流社会」はもとより、著者の本を一冊も読んだことのない、いわば「三浦展童貞」の俺には、なかなか刺激的な内容でした。
 
これは、就職活動中の学生さんや、悩める若手社会人に、ぜひ読んでほしい一冊かもしれない。
 
本書のタイトル「夢がなくても人は死なない」に、拒絶反応を示す人もいるだろう。しかし、著者は「夢を持つな」と言っているわけではない。ただ、職業選択の場面において、よく耳にする「大きな夢を持とう」などという、ある種、脅迫観念を押しつけるようなアドバイスを批判しているのだ。
 
「自分らしく働こう」「好きなことを仕事にしよう」といった助言に対しても、著者は否定的だ。自分らしさや、好きなことは、年齢や経験とともに変わっていくものだから、「今の自分」に、こだわり過ぎてはいけない。「そんなに今の自分がエラいのか?」という著者の言葉を、肝に銘じたい。「自分らしさは定年後にとっておけ」というのは、ちょっと極端だと思うが。
 
結局のところ、「迷ったときは、とりあえず働け!」というのが、著者からのメッセージだ。これには一理あって、働いているうちに、何が好きなのか、何が向いているのか、何ができるのか、が分かってくるものなのだ。曲がりなりにも、社会人を10年以上続けてきた俺も、これには賛成です。
 
個人的に印象に残ったのは、東京都初の民間人中学校長である、藤原和博氏との対談。まず、中学校の英・国・数・理・社の年間総授業時間が400時間しかない、という事実に驚いた。それに対して、テレビを見る時間は、1日3時間だとして、年間1000時間オーバー。なかなか考えさせられる数字だ。
 
もう一点、興味深かったのが、「ナナメの関係」という言葉だ。親や教師との縦の関係、友だち同士という水平の関係ではなく、地域社会に属する、お兄さん、お姉さん、おじさん、おばさんたちとの「ナナメの関係」。これが豊富だと、コミュニケーション能力も、学力も高い子供が育つそうだ。
 
最後に、「ドラゴン桜」の作者である、三田紀房氏との対談も面白かった。新入りのアシスタントには、教室の机とイスの絵をひたすら描かせるそうだ。ひとつでも「自分にできる仕事」が生まれると、急激に成長するという。新人教育の参考にしたいと思った。「ドラゴン桜」の絵がイケているかどうかは、さておき。

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紙の本

紙の本まんがパレスチナ問題 正

2011/04/20 02:54

複雑なパレスチナ問題の入り口

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

パレスチナ問題は、とにかく複雑。多くの人がそう思っているだろう。本書を二度読んだ私も、実は、いまだにそう感じている。それでも、この問題の大まかな歴史、そして、なぜこれほど複雑なのか、多少は理解することができた。

さて、タイトルに「まんが」とあるが、どちらかと言うと、絵本に近いと感じた。各ページは、コマ割りされておらず、一点から数点のイラストと、それなりの長さの文章によって構成されている。

語り部が設定されている点は、漫画的かもしれない。ユダヤ人のニッシム君と、パレスチナ人のアリ君。彼らのおかげで、ユダヤ人とパレスチナ人双方の言い分を聞くことができる。そして、絵がかわいいので、感情移入しやすい。

基本的には、時系列に沿ったパレスチナの歴史が解説される。最初に登場するのは、なんと「神」だ。パレスチナ問題がいかに長い歴史を持っているか、痛感させられる。本書でカバーされているのは、2004年にアラファト議長が死去するまで。

個人的に面白かったのは、三宗教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)の比較。意外と類似点が多い。特に、各宗教の「神」が同じ「神」を指していることに驚いた。

また、「民族」という概念への批評も鋭く、読みごたえがあった。ユダヤ人、アラブ人、パレスチナ人を定義した上で、「ユダヤ人で、アラブ人で、かつパレスチナ人」という人が存在し得ると指摘している。

最後の最後で、急にニッシム君とアリ君のストーリーが展開する。やや強引だが、希望あふれる結末にホッとさせられるのも事実だ。実際のパレスチナ問題が、ほぼ解決不可能と思えるほどに悪化しているので、なおさらそう感じるのかもしれない。

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紙の本

紙の本サバイバル時代の海外旅行術

2010/03/25 13:33

海外旅行のノウハウやリソースがぎっしり

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

高城剛氏が何をやっている人なのか、正直よく知らないのだが「Life is a Journey」という動画を見て以来「世界中を飛び回っている人」という印象を持っていた。本書は、そんな氏が記した海外旅行の手引書だ。

タイトルにある「サバイバル時代」とは、国家や組織に頼らず「個人が自力で生き残る術を見つけなければならない現代」を指している。この時代を生き抜くには「グローバルな眼差し」が不可欠であり、それを獲得するには「海外へ出て、自分の目で世界を見る」経験が求められる。海外旅行は、そのための営為というわけだ。

本書には、著者自身の実体験から編み出された海外旅行のノウハウやリソースがぎっしり詰まっている。例えば、渡航前にチェックすべきWebサイトたち。ホテルや航空チケットに関するものはもちろん、CIAのサイト「The World Factbook」や、日没時間をチェックできる「timeanddate.com」など、一見意外なものも紹介されている。

旅行ガイドブックについても、多くのページが費やされている。日本で発行されているものに対しては「少々乱暴に言えば行ったかどうかも分からない人の文章とアンケートと広告で成り立って」いる、と手厳しい。確かに、比較対象として紹介されている欧米の旅行ガイドブックや旅行雑誌を見ると、日本のものとはかなり異なるようだ。

ただ、著者が究極的におすすめしているのは旅行ガイドを自作することだ。本書には、そのサンプルとしてドミニカ国のガイドブックが収録されている。これが面白い! 見ているだけで旅行前の高揚感を味わうことができた。

他にも、LCC(ローコストキャリア、格安航空会社)の情報、海外旅行へ持っていくべきアイテムたちとそのパッキング方法、プリペイドSIMカードの活用法、毎年開催型フェスティバルの一覧、エルブリやファットダックといった分子料理レストランの話など、刺激的な内容がてんこ盛りだ。

あくまで著者の個人的見解に依っていたり、英語堪能であることが前提であったりする部分も見受けられるが、海外旅行を検討しているのならば、読んでおいて損のない一冊だと思う。

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紙の本

売れっ子のプロ意識

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

よくぞ、ここまで。と感心してしまうほど、豪華なラインナップ。本書は、人気マンガ家のインタビューを集めたものだ。登場するのは、安野モヨコ、山本直樹、江口寿史、古屋兎丸、小池田マヤ、山田芳裕、吉田戦車、矢沢あい、しりあがり寿、内田春菊、ハロルド作石の計11名。

それぞれの作家が、生い立ちやマンガとの出会い、デビューまでの道のりなどを語る。文体が各作家のモノローグ調になっているせいか、一気読みすると、ちょっと疲れる。だが、人気作家のナマの声に触れられる、貴重な一冊だ。

個人的に超名作だと思っている、山田芳裕の「度胸星」。その打ち切りの顛末が、作者本人の口から語られているところに、興奮した。そして泣いた。

あと、江口寿史の「生活の100%がマンガだった。そういうふうでないと描けない体にそこでなっちゃったんだね(笑)」という発言に戦慄した! 俺の仕事のやり方と一緒です…。このままでは「原稿落とし」への道まっしぐらだ。気を付けねば。

インタビューに答えているのが売れっ子ばかりのせいか、マンガ家という「職業」に対する意識の高さを感じさせる発言が目立つ。立場としては、広告のデザイナーやコピーライターに近いものを感じた。作ったものを届ける先にユーザー(読者)がいて、成果に対して報酬を払ってくれるクライアント(出版社)がいる図式なんて、まるで同じだ。ユーザーとクライアント、両方からの満足を求められているところも一緒だ。

そういった視点で、印象に残った発言をいくつか抜粋したい。

安野モヨコ「フリーになって初めて描いたのが『ハッピー・マニア』の1回目なんです。そん時はもう必死ですよね。『この一作がつまんなかったら、次の仕事は来ないんだ』って、はっきり自覚したのは、その時が初めてで。」

小池田マヤ「自分がどんなに大作を考えてて、最後に、例えば1年後にこんな感動的なラストがあるのよって言ってても、今の状態がよくなかったら、その1年後が明日になるかもしれないし、描けないかもしれない。そうなるのが一番怖いですね。」

矢沢あい「作品は作品で、届いた時点で作者のものじゃなくて、受け手のものだっていうのはあります。うん、完全にそれはもう、読み手重視ですね。自分の仕事はサービス業や思てますからね(笑)。それは、はっきりしてますね。」

しりあがり寿「マンガって、結局、ほんとに賞なんか関係ないとこが健全でいいよね。どれだけ、どう読まれてるかっていうのが基本になるっていう。さっきも言ったけど、多くの人に売れたり受け入れられたりするものが、必ずしもいいものだとは思わないんだけど、でも、やっぱりそれは重要だし、健全なことだと思うところはありますよね。」

ハロルド作石「『BECK』がロックなマンガかって言われたら、僕は単純にエンターテインメントなマンガだって思いますね。基本的にはそれがまずないと商業誌でやってく分には失格というか。面白くないマンガを描いたら、要は業界からいなくならなくちゃいけないんで、それは絶対に踏み外せない。」

マンガ家を目指している人はもちろん、マンガが好きな人、それと、モノ作りで食べていくつもりの人は、一読しても損のない一冊だと思う。

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紙の本

ヒューリスティクスに気をつけろ!

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

本書のタイトルにもなっている「インテリジェンス」とは何か。著者はそれを、生の情報(インフォメーション)から生み出された「判断・行動のために必要となる知識」と定義する。また、インテリジェンスは「たんなる知識ではなく、利益を実現する知識」とも述べている。
 
著者は、外交官として情報分析に携わってきた、インテリジェンスのプロフェッショナルである。本書にも豊富な事例が登場し、インテリジェンスの現場を垣間見ることができる。
 
個人的には、分析を誤らせる原因となる「ヒューリスティクス」の解説が面白かった。ヒューリスティクスとは「判断や評価にいたる思考のショートカット(近道)」のこと。ヒューリスティクスがうまく作用すれば、すばやい判断や円滑なコミュニケーションが可能となる。しかし場合によっては、無意識的なバイアスの原因となってしまう。
 
本書では、5種類のヒューリスティクスについて解説している。まず、「ベースレートの誤信」や「ギャンブラーの誤信」を生み出す「典型のヒューリスティクス」。次に、直接見聞きしたインフォメーションを過信してしまう「利用可能性のヒューリスティクス」。そして、因果関係があると思い込んでしまう「因果関係のヒューリスティクス」。さらに、とりあえずの仮説や結論に囚われてしまう「修正/アンカリングのヒューリスティクス」。最後に、自分の過去の予測を過大評価してしまう「後知恵のヒューリスティクス」がある。
 
「ベースレートの誤信」とは、そもそもの事前確率(ベースレート)を無視したり、軽視したりすることによって起こる問題だ。本書には、医学の専門家がベースレートの誤信に陥った例として、乳ガン検査のケースが紹介されている。
 
マンモグラフィー検査で、乳ガンにかかっている人の80%が陽性、乳ガンにかかっていない人の9.6%が陽性(偽陽性)という結果が出る場合。検査結果が陽性だったAさん(40代女性)が実際に乳がんを患っている確率は何%か。
 
この問いに対し、大半の医者は「70〜80%」と答えたそうだ。これは、そもそも40代女性のうち、乳ガンにかかっている人がどれくらいいるのか、というベースレートを無視していることになる。事前にその数字が「1%」であることを、知らされていたにも関わらずだ。
 
ベースレートを含めて計算すると、Aさんが乳がんを患っている確率は「7.8%」にしかならない。本書では、ベースレートの誤信を避けるための手法として「ベイズの定理的思考」が紹介されている。
 
一方、「ギャンブラーの誤信」は、より日常的に経験するものだ。本書にはカジノのルーレットが、例として登場する。赤と黒が出る確率は五分五分のはずだが、赤が5回たて続けに出ると、そろそろ黒が出そうな気がしてくる。しかしそこに根拠はなく、黒が出る確率はあくまで50%に過ぎないのだ。
 
本書では他に、「競合仮説分析」の手法、前提と仮説を区別する「リンチピン分析」、「グループ分析」のメリットとデメリットなどについても解説されている。とにかく情報が盛りだくさんで、新しい発見も多く、お買い得感のある一冊だ。
 
一点だけ残念だったのは、事例やケーススタディが外交や軍事に偏っているところ。そもそもインテリジェンスがそれらの分野で発展したこと、そして著者のバックグラウンドを考えれば、仕方のないことかもしれない。しかし、タイトルに「仕事に役立つ」と謳うのならば、もう少し「普通の」仕事を取り上げたケーススタディなどが欲しかった。それが、星をひとつ減らした理由だ。

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紙の本

タイトルに偽りアリだが面白い

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

これまで柳沢きみお、さそうあきら、六田登らが筆を執ってきた「マンガの方法論」シリーズの第4弾。ひさうちみちおの登場だ。

タイトルで「経済学」を謳っていたり、サブタイトルが「お金とマンガの不思議な関係」だったりする割に、お金の話があまり出てこない。著者の「ビンボー」への愛着が語られている程度だ。漫画業界におけるお金の流れや、漫画家の収入に関するネタなどを期待していたので、その点は正直ガッカリした。しかし、本書がつまらないかと言うと、そんなことはなくて、むしろ面白く読むことができた。

まず目を見張るのは、本書に収録されている短編漫画の多さだ。その数、26本! もともと携帯電話向けに配信されていた「クールだ貧乏!」を中心に、著者のデビュー作「パースペクティブキッド」や「やさしい出会い方教室2」も収められている。

漫画以外の大部分は、自伝的な内容で占められている。漫画との出会いから、フラフラとした生活を経て、「ガロ」でデビューを果たし、プロとして稼働するまでのことが、飾らない文体で記されている。

また、京都精華大学のマンガ学部で教鞭を執っているだけあって、漫画に関する持論も読みごたえがあった。特に、漫画に求められる要素を「おもしろい」「リアリティ」「オリジナリティ」とまとめている点は、説得力を感じた。

その中でも著者は「リアリティ」へのこだわりが強いようで、その幅広さも独特だ。それは単に「ディテールのリアリティ」だけでなく、「時代のリアリティ」や「その作家が感じたリアリティ」、さらには「妄想リアリティ」まで含まれる。リアリティ溢れる妄想はある種の普遍性を持ち、読者の共感を呼んだり、共同幻想を生むこともできる、ということだろうか。

ひさうちみちおのファンなら文句なしに「買い」の一冊。漫画家を目指している人にも一読をおすすめしたい。ただ、繰り返しになるが、タイトルには偽りアリだ。これは著者ではなく、編集者の責任かもしれないが。内容が面白かっただけに、その一点が残念だった。

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紙の本

紙の本為替相場・巨額の頭脳戦

2010/06/07 22:01

FX入門書には載っていないタフな現場

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為替相場の最前線で、何が起こっているのか。それを垣間みることができた一冊。非常にためになるばかりか、臨場感あふれる読みものとしても楽しめた。

本書のベースになっているのは、NHKで放映された「同時3点ドキュメント」というテレビ番組だ。タイトル通り「世界3つの場所に同時にカメラを据え」て、取材を行っている。本書には、ニューヨークと香港のヘッジファンド、そして日本のメガバンクの三者が登場する。外国為替市場におけるビッグプレイヤーたちは、どのような意図を持って、どのように行動しているのか。それが生々しく記録されている。

例えば、ドル急落の場面。まず、ニューヨークの地下鉄で火災があった、という噂が聞こえてくる。もしテロであれば、ドルはこのまま下げ止まらないかもしれない。続報が入り、火災は単なるボヤだったことが判明する。しかし、なぜかドルの下落は止まらない…。ドルの買い時を誤ったと嘆く、ヘッジファンドのマネージャー。そして、必死に原因を探すメガバンクのディーラーたち。ハラハラする場面だ。

どんなビッグプレイヤーであっても、すべての情報へアクセスできるわけではない。本書を読むと、彼らはさまざまなイベントや要人発言、さらには天災にまで神経を尖らせ、ビビッドに反応していることが分かる。ニュース配信会社からのオープンな情報であっても、これまでに培ってきた知識や経験と組み合わせることによって「新たな価値が生まれることがある」という。

本書によれば、為替相場を動かしているのは投機マネー、そして市場参加者たちの思惑ということになる。為替市場で一日に取引される金額は約220兆円。そのうちの約9割が投機マネーだという。また、市場参加者たちの思惑や思い込みは、時として実体経済やファンダメンタルズを無視して、レートに大きな影響を与えることがある。本書の言葉を借りると「市場参加者が、『この状況はドル安だ』と一斉に思い込めば、その方向に相場が動くことになる」というわけだ。

為替相場で勝ち続けることがいかにタフな仕事か、痛感できる一冊。平易に書かれているので、為替相場の知識が薄くても、スラスラと読み進めることができた。

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紙の本

言語学への興味喚起装置

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爆笑問題の二人と言語学者・田中克彦氏の対談を収録した一冊。NHKの番組「爆笑問題のニッポンの教養」の20回目(2007年12月4日放送)を書籍化したものだ。140ページたらずのライトなボリュームだが、言語学の知識を持たない私には新鮮な発見があった。

特に「母語」について。自分の意思で母語を選ぶことはできない。生まれ育った場所や環境によって、全世界に約7000ある言語のうちのどれかを習得してしまう。

母語は単なるコミュニケーションの道具ではなく、再インストール不能なOSと呼べるほど強力なものだ。私たちは物事をどのように認識するか、分類するか、思考するかを母語によってコントロールされている。

例えば、ヘボン式のローマ字では「ハ行」を「ha、hi、fu、he、ho」と表す。「フ」だけが「f」で始まることに違和感を覚えないだろうか。それは「ハ」も「フ」も同じ「ハ行」として分類する、日本語を母語にしているからかもしれない。欧米の多くの言語において、唇をすぼませて発音する「フ」は「f」で表す方が自然なのだそうだ。

「ハ行」と言えば、奈良時代頃の日本語には「ハ行」の音がなかった、という話も登場する。「ハ行」を「パ行」で発音していたそうだ。つまり、「富士」は「プジ」、「骨」は「ポネ」、そして「母」は「パパ」! これは飲み会で披露できそうなトリビアだ。

言語学者である田中氏の発言は、好奇心を刺激するものが多い。例えば「現実を言語が支配している」「言語と文化は一体になってしまう」「嘘がつけるから、人間は進歩した」などなど。言語学のことをもっと知りたくなる。

薄い本ではあるが、言語学への興味喚起装置としては十分に機能している一冊だと思う。

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紙の本

三十路が九路盤から再入門

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最近、囲碁に興味がある。

小学生のころ、父に囲碁を勧められたことがあって、ひと通りのルールを覚え、コウやシチョウなども何となく理解した。それなりに面白いとは思ったが、身近に同好の士がいなかったこともあり、すぐ打たなくなってしまった。

きっかけは忘れたが、いま自分の中で囲碁ブームが再燃している。

よくよく考えると、すごいゲームではないか。グリッドが敷かれた無機的な盤面に、黒石と白石を交互に、パチリパチリと並べていくのだ。ミニマルな美しさと、無限の奥深さを感じさせる。そんな感慨を抱けるようになったとは、俺も立派なおっさんになった証拠です。

そんな、おっさん囲碁ビギナーにピッタリの一冊が、この「定年囲碁」だ。タイトルからして、定年世代をターゲットとしているようだが、三十路が読んでも楽しめた。

まずは、ルールの解説から始まる。サブタイトルにもあるように、基本ルールは3つしかない、と言い切る。

1. 囲んだ石は取れる
2. 打ってはいけないところがある
3. コウというルールがある

これさえ覚えれば、実際に囲碁が打てる、というのが著者の弁。それぞれのルールの解説は、とても分かりやすい。

そして、いきなり古代中国へと話は飛ぶ。囲碁にまつわる漢詩が紹介される。さらに、著者が囲碁観戦記者だった頃の思い出話。温泉旅行に出かけて、風呂にも入らず、ひたすら碁を打ち続けたエピソードなどが披露される。

本書の大きな特徴として、このような読みもの部分の多さが挙げられる。トリビアやウンチクがたっぷりだ。基本的に、おっさんは、この手の話が好きなのだろう。もちろん、俺も大好きです! プロになるまでの厳しい道のりや、現在活躍中のプロの逸話、囲碁の歴史なども楽しく読むことができた。

後半では、基本的なテクニックの紹介や、9路盤を使った実戦の解説なども登場する。

囲碁を覚えたい、再入門したい、なおかつウンチクが好きだ!という人には、かなりおすすめできる一冊。

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