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テレキャットスターさんのレビュー一覧

投稿者:テレキャットスター

36 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

まさに入門にピッタリの一冊

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

北朝鮮の新しい指導者、金正恩(キム・ジョンウン)。彼のことをほとんど知らなかったので、本書を手に取ってみた。「金正日(キム・ジョンイル)とその三男の金正恩は“悪”で、長男の金正男(キム・ジョンナム)は“善”」というバイアスを多少感じさせるものの、読みどころの多い一冊だった。

例えば、金正恩が後継者に選出されるまでのプロセス。なぜ長男の金正男や次男の金正哲(キム・ジョンチョル)ではなく、三男の彼が選ばれたのか。その理由を本書は、さまざまなエピソードを交えながら教えてくれる。

ちなみに、後継者レースに敗れた長男の金正男は現在、国外に滞在しているそうだ。本書によると、中国のエリート集団「太子党」が保護している、という噂もあるらしい。

他にも、金正恩が関わったとされるサイバーテロ、天安号事件や延坪島砲撃事件、デノミネーションなどの国内政策、さらには彼の資金源についても触れられている。

また、金正恩がなぜ父の金正日よりも祖父の金日成(キム・イルソン)に似ているのか、より正確に言うと「似せている」のか、についての考察も興味深い。

ところで、漫画として気になった点がある。それは、市井の人々に語らせる演出を多用しているところだ。好意的に解釈すると、著者は北朝鮮の人々と接触し、生の声を集めているそうなので、それを表現しているのかもしれない。だが、誰だか分からない人たちが突然コマに登場して、あれこれ語り出すので、漫画として少し不自然に感じた。

とは言え、漫画化されているおかげでスラスラ読めるのは、まぎれもない事実だ。金正恩のことをほとんど知らない私には、まさにピッタリの一冊だった。

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紙の本

それはさておき、鋭い批判にシビレた

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

文章は人に読んでもらうもの。広告の仕事に携わってきたせいか、それが当たり前だと思っている。このレビューも一応は、人様の目を意識しながら書いているつもりだ。しかし本書が推奨しているのは、その真逆。「自分のために書く文章」なのだ。

自己完結型、自己満足型の文章を、タイトルにもあるとおり「写経のように」一定のペースでサラサラと書く。その行為によって心は癒され、気持ちも整理されるという。著者はそれを「文章セラピー」と呼び、その効果は「カウンセリングや薬以上」にもなり得るとか。

それでは何を、どのように書けばいいのか。本書はそれを丁寧に解説している。

書くネタが思いつかなければ「自由連想方式」や「『100の質問』方式」で探す。なるべくストレスなく書くために、ひな型の活用も勧められている。文庫本の解説文やPOS方式カルテを使った練習法もユニークだ。特に文庫本の解説文は、実際の作例が豊富に用意されていて分かりやすかった。

と、なかなか面白い一冊なのだが、個人的には、本筋からややそれたところで発露する、著者の鋭い批判にシビレた。

特に「ウケるコンテンツ」を書くのはそれほど難しくない、と少し皮肉っぽく指摘するところ。「4つのカテゴリー」×「3つの手段」という枠組みは目からウロコだった。「自分のために書く」というテーマからは外れるが、もしかしたら本書から得た一番の収穫かもしれない。

とは言え、繰り返しになるが、ユニークで面白い内容なので、文章を書くことに少なからず興味を覚えている人は、読んで損のない一冊だと思う。

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紙の本

紙の本旧約聖書 創世記編

2011/11/11 10:57

聖書がこんなに面白いとは

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

神のお導きかどうか分からないが、一冊目の聖書としてこのコミック版を選んだことは、幸運だった。

なぜなら、本書は「聖書の言葉を一字一句、できる限り忠実に再現」する方針が貫かれており、それと同時に「聖書が“神の言葉”であるなどとは、全く考えていない」著者によって描かれているからだ。つまり、かなりフラットに解釈、表現された聖書と言えるだろう。

本書はアンダーグラウンド・コミックス運動の中心人物、ロバート・クラムによってコミック化された旧約聖書だ。コミックとはいえ相当な文字量で、クラムのこってりとした画風と相まって、すらすらとは読めない。しかし、聖書の内容をほとんど知らなかった自分にとっては、面白い、驚くべきエピソードの連続だった。

酔っぱらって全裸で寝ているところを見られて怒り、なぜか子孫に呪いをかけるノア。父親をベロベロに酔わせて犯し、身ごもるロトの娘たち。あまりの空腹に、長子権をあっさり弟に譲ってしまうエサウ。割礼されて弱っている男たちを、容赦なく虐殺するヤコブの息子たち。そして、圧倒的に理不尽な「神」の言動!

巻末の「制作ノート」も面白かった。アブラムの妻サライが権力者から求められた理由に「ヒエロス・ガモス(聖なる結婚)」があったのではないかという仮説や、古代社会における家父長制と家母長制の考察など、読みごたえがあった。

本書は「創世記編」ということで「ヤコブの死」までしか収められていない。恐ろしいほどの時間と労力を要するプロジェクトだと思うが、ロバート・クラムが「出エジプト記」以降も描いてくれることを切望してやまない。

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紙の本

正論だが、実行するのは難しい

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

残業ゼロ、早朝会議、「がんばるタイム」の導入など、大胆な取り組みで知られる元トリンプ社長、吉越浩一郎氏による著作。

出社時間はコントロールできるのに、退社時間は日によってまちまち。定時に帰れることは稀で、ほぼ毎日残業している。「とにかく時間が足りない♪」と「すばらしい日々」の歌詞を口ずさむ日々。それを打開するために、本書を読んでみた。

著者自身が認めているように、本書の基本的なポイントは2つしかない。
1. 毎日、「お尻の時間」を決めて仕事をする(ダラダラ残業禁止)
2. すべての仕事に「締切日」を入れる

どちらも「どう見ても正論です。本当にありがとうございました」と言うほかないが、実行するのは難しい。自分でも挑戦してみたが、お尻の時間を決めることはできても、それを死守することがなかなかできない。著者はそれを「もう試験時間の終了を告げるチャイムが鳴っているのに、机にしがみついて答案を書き続けているようなもの」とバッサリ。

しかし、自分で決めたお尻の時間に「試験時間の終了を告げるチャイム」ほどの重みを感じることこそが、実はかなり難しい。本人の意識の変化に任せていたら、いつまで経っても状況は変わらないだろう。毎晩のように遊びや飲み会、習い事などの予定を入れて、よほどの強制力を発動させないと無理かもしれない。お金がかかりそうだ。

さて、本書には「デッドライン系」以外の話題も登場する。個人的に興味深かったのは、リーダーシップに関する内容。著者がリーダーに求める要件のうち、印象に残ったものが二点あった。まず、メンバーに情報共有を行っていること。そして、メンバーに仕事を任せていること。

情報共有はメンバーの「常識」レベルを高めるために行う。それによって、会議でのやりとりも高度化し、各自の判断スピードの向上も期待できる。逆にこのレベルが低いと「サッカーチームが作戦会議を開いているところに、オフサイドのルールも知らない人間が何人も混じっているような状況」を生んでしまうという。

また、メンバーへ仕事を任せるといっても、完全放置ではない。方向性のズレやデッドラインは「チェック」すること。ただし、あくまで「チェック」にとどめ、「コントロール」しようとしてはいけない。メンバーの主体性やモチベーションを損ねることになってしまう。「自分の仕事に手応えを感じている部下にとって、一番の褒美は『上司が何も言わないこと』」というのが著者の意見だ。

ワークライフバランスについても論じられている。「ライフ」が「人生すべて」ではなく「私生活」を表している、という著者の指摘にハッとさせられた。つまり、いくら「ワーク」が充実していても、豊かな「ライフ」に直結するわけではない。「ライフ」は「ワーク」とは別に充実させるべきなのだ。そして、それは「休み」ではなく「遊び」であることが望ましい。

全体を通して、得るものが多かった一冊。だが、実行に移せるかどうかは別問題。なかなか難しいと思う。まずは、毎週一日は「ノー残業デー」にすることから始めたい。

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紙の本

タイトルに偽りアリだが面白い

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

これまで柳沢きみお、さそうあきら、六田登らが筆を執ってきた「マンガの方法論」シリーズの第4弾。ひさうちみちおの登場だ。

タイトルで「経済学」を謳っていたり、サブタイトルが「お金とマンガの不思議な関係」だったりする割に、お金の話があまり出てこない。著者の「ビンボー」への愛着が語られている程度だ。漫画業界におけるお金の流れや、漫画家の収入に関するネタなどを期待していたので、その点は正直ガッカリした。しかし、本書がつまらないかと言うと、そんなことはなくて、むしろ面白く読むことができた。

まず目を見張るのは、本書に収録されている短編漫画の多さだ。その数、26本! もともと携帯電話向けに配信されていた「クールだ貧乏!」を中心に、著者のデビュー作「パースペクティブキッド」や「やさしい出会い方教室2」も収められている。

漫画以外の大部分は、自伝的な内容で占められている。漫画との出会いから、フラフラとした生活を経て、「ガロ」でデビューを果たし、プロとして稼働するまでのことが、飾らない文体で記されている。

また、京都精華大学のマンガ学部で教鞭を執っているだけあって、漫画に関する持論も読みごたえがあった。特に、漫画に求められる要素を「おもしろい」「リアリティ」「オリジナリティ」とまとめている点は、説得力を感じた。

その中でも著者は「リアリティ」へのこだわりが強いようで、その幅広さも独特だ。それは単に「ディテールのリアリティ」だけでなく、「時代のリアリティ」や「その作家が感じたリアリティ」、さらには「妄想リアリティ」まで含まれる。リアリティ溢れる妄想はある種の普遍性を持ち、読者の共感を呼んだり、共同幻想を生むこともできる、ということだろうか。

ひさうちみちおのファンなら文句なしに「買い」の一冊。漫画家を目指している人にも一読をおすすめしたい。ただ、繰り返しになるが、タイトルには偽りアリだ。これは著者ではなく、編集者の責任かもしれないが。内容が面白かっただけに、その一点が残念だった。

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紙の本

紙の本安土往還記 改版

2011/06/06 23:22

寡黙のなかの友情

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

戦国時代、宣教師とともに来日したジェノバ出身の航海士。本書は、彼による書簡という体裁をとった小説だ。

航海士は、日本で「尾張の大殿(シニョーレ)」こと織田信長と出会う。そして、信長の「事が成る」ことを追求する姿勢に共感を覚える。「事が成る」とは「自分の選んだ仕事において、完璧さの極限」への到達であり、それを目指すことが信長の行動原則だったという。

そのようにストイックな姿勢は家臣から理解されず、信長は日々孤独感を強めていく。そんな折、命を賭して危険な航海に乗り出し、日本へやって来た宣教師たちと出会う。「事が成る」ために命をも賭ける。その姿勢に、信長は共感を覚える。

本書では、それを「寡黙のなかの友情」と評する。いわく「孤独になるにしたがって——各人が虚無の闇のなかに立ちはだかるにしたがって——より一層深く結ばれてゆくといった種類の共感」だそうだ。ヴァリニャーノ巡察使が帰国する際に、信長が催すセレモニーはそれを体現しており、感動的だった。

この「寡黙のなかの友情」という概念こそが、本書で得た一番の収穫かもしれない。身近な友だちが少なくても、「事が成る」ために日々努力していれば、どこかに共感してくれる人、友情を感じてくれる人がいるかもしれない。もしかしたら、ジェノバあたりに。遠いなぁ……!

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紙の本

モノを減らし、自由を感じる

13人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

自分に必要なモノ、大好きなモノだけに囲まれて生活することを勧めている一冊。著者は以前、All Aboutで「シンプルライフ」のガイドも勤めていた。読むとすぐにでも整理整頓がしたくなる、起爆装置のような本だ。

本書では、モノが多いことのデメリットをこのようにまとめている。
・部屋が狭くなる
・掃除するのが大変
・モノがよくなくなる
・神経が休まらない

自分の部屋を見回し、フムフムと力強くうなずく。対して、「持たない暮らし」にはこのようなメリットがあるという。
・部屋が広々して見える
・整理整頓、掃除洗濯がラクになる
・人を呼べるようになる
・居心地が良くなる

「それでは早速モノを捨てまーす!」と、ゴミ袋を片手に走りだしたくなるが、著者はそれに「待った」をかける。ただ捨てるだけでは一時的なダイエットと一緒で、必ずリバウンドすると忠告している。

「持たない暮らし」とは単にモノを減らしたり、捨てたりするだけではなく、「ライフスタイルを変える」ことなのだ。それはすなわち「自分自身を変える」ことにほかならない。一朝一夕に達成できることではないのだ。

まずは「持たないモノ」を心に決め、ゆっくりとモノを減らしていくことを著者は勧めている。「持たないモノ」とは以下の4つだ。
・自分の管理能力を超えるモノ
・愛着を持てないモノ
・自然に還らない、あるいは、次の人に譲れないモノ
・自分と、自分の暮らしに似合わないモノ

さらに、「持たない暮らし」を実現するための具体的な手法についても書かれている。また、チェックリストによるタイプ別診断などもある。

個人的には、6ページにおよぶリスト集がお気に入り。コピーして持ち歩いているほどだ。「身につけたい習慣」「実行したいプロジェクト」「選びたい選択肢」「有効な行動」がまとめられている。眺めているだけでワクワクしてくるし、やる気も湧いてくる。もちろん、実行しないと意味がないのだが。

「持たない暮らし」を続けていると、それまでモノに埋もれてぼやけていた「自分のスタイル」や「自分という人間」が見えてくる、と著者は主張する。これを読んで、映画「ビフォア・サンセット」に登場するセリフを思い出した。ジュリー・デルピー演じるセリーヌが、共産主義時代のワルシャワへ行ったときのことを語るシーンだ(一部省略あり)。

「街は暗くて灰色。でも頭の中は、研ぎ澄まされて、新しい考えが次々と浮かんできた。言葉は分からないし、買う物もないし、広告もない。することと言えば、散歩と日記を書くだけ。頭が休まり、物質欲が消えて、気分が高揚した。最初は退屈に思えたけど、じき自由を感じた。面白いでしょ?」

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紙の本

紙の本激流中国

2011/05/19 00:15

もがき、闘う中国人たちの実像

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

中国には多くの中国人が住んでいて、一人ひとりがそれぞれの人生を営んでいる。実に当たり前のことだが、中国を語るときに得てして見落とされがちな前提だ。本書による「中国人を個人として見るのではなく、常に共産党と一体として見るという見方が日本人の間に少なからずある」という指摘にドキッとさせられたのは、私だけではないだろう。

本書は全13回にわたって放映されたNHKスペシャル「激流中国」を書籍化したものだ。あとがきによると、この番組はあえてテーマを事前に設定せずに「動いている現場にカメラを入れ、できるだけその一部始終を記録しようという愚直な方法論」によって作られたそうだ。その結果、テーマの網羅性には欠けるが、リアルな中国人像に迫った内容となっている。

例えば、貧しい農村でボランティアの教師として活動する若者。世の不条理と己の無力感に、悔し涙を流す。また、地方当局の横暴と闘い、市民の権利を守ろうと奔走する弁護士も登場する。逆に、市民と中央政府の板ばさみに悩まされる共産党の地方幹部もいる。他にも、熾烈な受験戦争に疲弊する子ども、企業による環境汚染を取り締まる役人、大金持ち、信じられないほど貧しい人たちなど「今の中国」を構成する人々が取り上げられている。

その多くが必死に「何か」と闘っているように見えた。その「何か」とは中国が抱えている「矛盾」なのかもしれない。貧富の差、都会と地方の格差、経済成長と環境保護の両立など。それらを単に「いびつ」と切り捨てるのは簡単だろう。しかし、本書の「矛盾を克服しようともがき、闘っている中国人がいることを、隣人である日本人は忘れてはならない」という一文を、私は無視することができない。

先に「今の中国」と書いたが、この番組が放映されたのは07年4月から08年7月にかけて。それから今日まで「激流」は勢いを弱めておらず、中国を取り巻く環境もさらに変化していることだろう。その渦中では、本書に登場するような中国人たちが必死に生きているはずだ。そのことを忘れないようにしたい。

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紙の本

紙の本まんがパレスチナ問題 正

2011/04/20 02:54

複雑なパレスチナ問題の入り口

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

パレスチナ問題は、とにかく複雑。多くの人がそう思っているだろう。本書を二度読んだ私も、実は、いまだにそう感じている。それでも、この問題の大まかな歴史、そして、なぜこれほど複雑なのか、多少は理解することができた。

さて、タイトルに「まんが」とあるが、どちらかと言うと、絵本に近いと感じた。各ページは、コマ割りされておらず、一点から数点のイラストと、それなりの長さの文章によって構成されている。

語り部が設定されている点は、漫画的かもしれない。ユダヤ人のニッシム君と、パレスチナ人のアリ君。彼らのおかげで、ユダヤ人とパレスチナ人双方の言い分を聞くことができる。そして、絵がかわいいので、感情移入しやすい。

基本的には、時系列に沿ったパレスチナの歴史が解説される。最初に登場するのは、なんと「神」だ。パレスチナ問題がいかに長い歴史を持っているか、痛感させられる。本書でカバーされているのは、2004年にアラファト議長が死去するまで。

個人的に面白かったのは、三宗教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)の比較。意外と類似点が多い。特に、各宗教の「神」が同じ「神」を指していることに驚いた。

また、「民族」という概念への批評も鋭く、読みごたえがあった。ユダヤ人、アラブ人、パレスチナ人を定義した上で、「ユダヤ人で、アラブ人で、かつパレスチナ人」という人が存在し得ると指摘している。

最後の最後で、急にニッシム君とアリ君のストーリーが展開する。やや強引だが、希望あふれる結末にホッとさせられるのも事実だ。実際のパレスチナ問題が、ほぼ解決不可能と思えるほどに悪化しているので、なおさらそう感じるのかもしれない。

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紙の本

紙の本為替相場・巨額の頭脳戦

2010/06/07 22:01

FX入門書には載っていないタフな現場

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

為替相場の最前線で、何が起こっているのか。それを垣間みることができた一冊。非常にためになるばかりか、臨場感あふれる読みものとしても楽しめた。

本書のベースになっているのは、NHKで放映された「同時3点ドキュメント」というテレビ番組だ。タイトル通り「世界3つの場所に同時にカメラを据え」て、取材を行っている。本書には、ニューヨークと香港のヘッジファンド、そして日本のメガバンクの三者が登場する。外国為替市場におけるビッグプレイヤーたちは、どのような意図を持って、どのように行動しているのか。それが生々しく記録されている。

例えば、ドル急落の場面。まず、ニューヨークの地下鉄で火災があった、という噂が聞こえてくる。もしテロであれば、ドルはこのまま下げ止まらないかもしれない。続報が入り、火災は単なるボヤだったことが判明する。しかし、なぜかドルの下落は止まらない…。ドルの買い時を誤ったと嘆く、ヘッジファンドのマネージャー。そして、必死に原因を探すメガバンクのディーラーたち。ハラハラする場面だ。

どんなビッグプレイヤーであっても、すべての情報へアクセスできるわけではない。本書を読むと、彼らはさまざまなイベントや要人発言、さらには天災にまで神経を尖らせ、ビビッドに反応していることが分かる。ニュース配信会社からのオープンな情報であっても、これまでに培ってきた知識や経験と組み合わせることによって「新たな価値が生まれることがある」という。

本書によれば、為替相場を動かしているのは投機マネー、そして市場参加者たちの思惑ということになる。為替市場で一日に取引される金額は約220兆円。そのうちの約9割が投機マネーだという。また、市場参加者たちの思惑や思い込みは、時として実体経済やファンダメンタルズを無視して、レートに大きな影響を与えることがある。本書の言葉を借りると「市場参加者が、『この状況はドル安だ』と一斉に思い込めば、その方向に相場が動くことになる」というわけだ。

為替相場で勝ち続けることがいかにタフな仕事か、痛感できる一冊。平易に書かれているので、為替相場の知識が薄くても、スラスラと読み進めることができた。

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紙の本

紙の本サバイバル時代の海外旅行術

2010/03/25 13:33

海外旅行のノウハウやリソースがぎっしり

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

高城剛氏が何をやっている人なのか、正直よく知らないのだが「Life is a Journey」という動画を見て以来「世界中を飛び回っている人」という印象を持っていた。本書は、そんな氏が記した海外旅行の手引書だ。

タイトルにある「サバイバル時代」とは、国家や組織に頼らず「個人が自力で生き残る術を見つけなければならない現代」を指している。この時代を生き抜くには「グローバルな眼差し」が不可欠であり、それを獲得するには「海外へ出て、自分の目で世界を見る」経験が求められる。海外旅行は、そのための営為というわけだ。

本書には、著者自身の実体験から編み出された海外旅行のノウハウやリソースがぎっしり詰まっている。例えば、渡航前にチェックすべきWebサイトたち。ホテルや航空チケットに関するものはもちろん、CIAのサイト「The World Factbook」や、日没時間をチェックできる「timeanddate.com」など、一見意外なものも紹介されている。

旅行ガイドブックについても、多くのページが費やされている。日本で発行されているものに対しては「少々乱暴に言えば行ったかどうかも分からない人の文章とアンケートと広告で成り立って」いる、と手厳しい。確かに、比較対象として紹介されている欧米の旅行ガイドブックや旅行雑誌を見ると、日本のものとはかなり異なるようだ。

ただ、著者が究極的におすすめしているのは旅行ガイドを自作することだ。本書には、そのサンプルとしてドミニカ国のガイドブックが収録されている。これが面白い! 見ているだけで旅行前の高揚感を味わうことができた。

他にも、LCC(ローコストキャリア、格安航空会社)の情報、海外旅行へ持っていくべきアイテムたちとそのパッキング方法、プリペイドSIMカードの活用法、毎年開催型フェスティバルの一覧、エルブリやファットダックといった分子料理レストランの話など、刺激的な内容がてんこ盛りだ。

あくまで著者の個人的見解に依っていたり、英語堪能であることが前提であったりする部分も見受けられるが、海外旅行を検討しているのならば、読んでおいて損のない一冊だと思う。

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紙の本

自己啓発本が“効かない”理由

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

刺激的な内容だった。これまで自己啓発本を読み漁ってきたのに、なぜ効果が現れないのか。その理由が分かったような気がする。

本書のタイトルにある「親」は「他人」の代表格という位置付けだ。私たちの行動や考え方は、自分の経験だけではなく、他人の言動から大きな影響を受けている。過去の記憶に縛られているとも言える。実は、その縛られている場所こそが私たちにとっての「コンフォート・ゾーン(快適な領域)」であり、なるべくそこから外れないように無意識が働く。なぜか? それは、脳がそのようにできているからだ。

だから、日記も、英会話も、ダイエットも、○○メソッドも、すべて長続きしない。これらのことをやっていない、続けていない状態こそが私たちにとってのコンフォート・ゾーンなのだ。無理にやろうとしても、「創造的無意識が逆向きに働き」、「取り組まないですむもっともな理由」が脳内で生成されることになる。

では、どうすればいいのか。答えはひとつで、コンフォート・ゾーンを高めるしかない。それを可能にするのが、著者とルー・タイス氏が共同開発した自己実現プログラム「TPIE(タイス・プリンシプル・イン・エクセレンス)」だ。本書は、世界初となる「TPIE」の公式ガイドブックである。

「TPIE」の中心となるテクニックは、アファメーションやセルフ・トーク、ビジュアライゼーションなどだ。これらは、すでにゴールが達成された状態を「未来の記憶」として作り出し、そこに圧倒的なリアリティーを付与することで脳をだますというもの。脳は「だまされやすい」という特徴を持っているのだそうだ。

本書に書かれている手法やテクニックそれ自体は、さほど目新しいものではない。例えば、アファメーションの書き方は、フランクリン・プランナーの開発者による著作「TQ」に登場する「価値観(個人の憲法)」のそれとよく似ている。余談だが、「TQ」には「安心領域(コンフォート・ゾーン)」という言葉も登場する。

しかし、本書がユニークなのは脳科学と認知心理学をベースとしている点だろう。それによって、説得力が大きく増しているように感じた。その裏返しとして、専門用語が頻出するのは少々残念なところだ。例えば、ゲシュタルト、ホメオスタシス、ステータスクオ、ブリーフ・システムなど。もちろん、それぞれについて解説はされているのだが、似たような意味を持つものもあるので、やや混乱した。それが星をひとつ減らした理由だ。

とは言え、本書が刺激的であることに変わりはない。これまで自己啓発本を読み漁ってきたのに、なかなか効果が現れないという「お仲間」には、一読をおすすめしたい。

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紙の本

紙の本いつか僕もアリの巣に

2009/12/04 14:38

アリがスゴい

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

子どもの頃、地面にしゃがんでアリの巣をジーッと見ているのが好きだった。大人になって、アリの巣を凝視することもなくなったが、この本を読んで久しぶりにやりたくなった。三十路のおっさんが一人で地面にしゃがみこんでアリの巣を見ていたら、通報されるだろうか。

この本の著者もアリ好き少年だったそうだ。それが今ではアリの研究者。「神秘と謎に満ちあふれたアリの世界」に魅了されてしまったという。本書は、そんな著者によるアリのエッセイ集。研究者としての豊富な経験と知識が、ユーモアあふれる飄々とした文体で綴られている。

この本を読むと、確かに著者の言う「神秘」や「謎」といった言葉が決して大げさではないことが分かる。アリがいかに面白くて、よくできた生き物なのかが分かる。

例えば、働きアリの「齢分業制(れいぶんぎょうせい)」。働きアリの仕事は、その年齢によって決まるという。若いアリたちは、巣内の内勤に従事する。年をとったアリほど、危険な外勤に就く。これは、コロニーの高齢化を防ぎ、若い命をできるだけ保護するための戦略と考えられている。

働きアリにはメスしかいないので、著者が指摘するように「実は私たちが外で目にしている働きアリは老人たち。しかもメスだからおばあさんたちだったのだ」ということになる。それに対して、オスアリたちは交尾しかしない存在。しかも、交尾を終えると死ぬ。完全に女性中心の社会なのだ。

アリの外分泌腺の話も面白い。「アリの体の表面には実は多くの外分泌腺があり、さまざまな機能を持つ化学物質を分泌する。たとえるなら体中に化学兵器を備えているようなもの」だそうだ。

化学物質の中には、外敵を攻撃するための毒や、仲間と交信するためのもの、雑菌を消毒するものなどがある。「アリが果肉を食べた種子にはカビが生えず、腐りもしない」のは、抗菌性物質を分泌しているからではないか、と著者は推測する。それにしても、アリの分泌腺が多すぎて、すべての機能が判明していないというのも驚きだ。

ハミルトンの「四分の三理論」も勉強になった。詳細までは理解できなかったが、簡単に言ってしまうと、働きアリの利他行動は結果的に自己の遺伝子を多く残すことになる、というもの。

自分の子どもとの血縁度(遺伝子を共有する確率)は0.5にしかならないが、他の働きアリ(姉妹)との血縁度は、それよりも高く0.75になる。これは、オスアリの染色体数が半数しかないために起こる現象だ。ものすごく興味深いのだが、純粋文系の俺がより深く理解するためには、もっと勉強が必要なようです。

本書を手に取ったのは、たまたまの偶然。表紙や裏表紙を縦横無尽に歩き回るアリたちの装丁に惹かれた。中のイラストもかわいい。内容の面白さと相まって、本書をより魅力的に仕上げている。奥付によると、寄藤文平さんと鈴木千佳子さんのお仕事だそうだ。

本書を読んで、地面にしゃがんでアリの巣をジーッと見たくなったわけだが、社会的、世間的に困難そうなので、ひとまずは、著者が監修したアリ育成ゲーム「アンツ・ライフ・スタジオ」で我慢しようかな、と思っている。

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紙の本

投資対象を探す旅

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投資家ジム・ロジャーズによる旅行記。1998年から3年かけて、116ヵ国を黄色い改造ベンツで走り回った。移動距離24万キロという、スケールの大きな旅について書かれている。

彼にとって、これは二度目の世界一周旅行だ。前回は、1990年から2年かけて、バイクで世界中を走り回った。こんなことができるのも、ジム・ロジャーズがお金持ちだからだ。

ジョージ・ソロスとクォンタム・ファンドを設立して、10年間で3000%を超えるリターンをもたらし、37歳であっさり引退。そして、二度の世界一周旅行。うらやましい。というレベルをとうに超えてしまった、別世界のような話だ。

本書は、旅行記としても楽しめるが、投資家ジム・ロジャーズらしい視点が貫かれているところが面白い。彼にとっての世界一周旅行は、単なる観光ではなく、投資対象を探す旅なのかもしれない。

彼がおすすめする投資方法には、このようなものがある。「大儲けをするためには、絶望が支配している間に足を踏み入れなければ駄目」「お金持ちになる最善の方法の一つは、ひどい戦争が終わった国へ行くこと」えげつない表現だが、彼が言うと、ひとつの真理のように聞こえてしまう。賛否はさておき。

ジム・ロジャーズが投資対象としての国を評価するポイントは、他にもいくつかある。

まず、市場を開放していること。当然、海外からの投資を受け入れていない国への評価は厳しい。また、過保護な経済政策を行っている国もお嫌いなようだ。鎖国政策なんてもっての他。ミャンマーもガーナもエチオピアもそれで失敗した、というのが彼の意見だ。

次に、通貨が健全であること。「世界のほとんどの場所で、通貨は体温計の働きをする。何が起きているのかはわからなくても、何かが起きていると教えてくれるのだ」政府の人間が自国通貨の受け取りを拒否したり、ブラックマーケットで外貨に大きなプレミアムが付いていたら要注意。通貨ペッグ制についても「ペッグした対象が何であろうと、長くは続かない」と否定的だ。

そして、インフラが整備されていること。「高速道路か鉄道か運河を造れば、何かが起きる」と述べている。もちろん、きちんと維持されていることが条件だ。この点での評価が高いのは中国やチリなど。逆に低いのはインド。日本の公共事業については「地元有権者と地方の政治家のご機嫌をとる以外、何ら経済的意味もない」と手厳しい。

ジム・ロジャーズが本書で絶賛している国がある。中国だ。「十九世紀は英国、二十世紀は米国の世紀だった。二十一世紀は中国の世紀になる」と評価する。「クーリエ・ジャポン(2008年6月号)」の記事によると、ロジャーズ一家はニューヨークから上海へ引っ越したそうだ。しかも、その理由が「娘たちが中国語をしゃべれるようにするため」というのだから、相当な熱の入れようだ。

1998年からの旅行ということで、現在の情勢と異なる部分もあると思う。それでも、実際に現地へ足を運び、体験してきた話には魅力がある。刺激的で面白く、世界の広さを実感できる一冊だった。

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紙の本

人類の至宝によるガチンコ回答

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子どもの素朴な疑問に答える大人たち。本書の図式は「こども電話相談室」と同じだ。ただ、答えている面々がすごい。ノーベル賞受賞者18名、そして「もうひとつのノーベル賞」と呼ばれるライト・ライブリフッド賞と、「数学のノーベル賞」ことフィールズ賞の受賞者が1名ずつ、計20名の豪華メンバーだ。

子ども向けに書かれているため語り口こそやさしいものの、回答者の誰もが素朴な疑問から逃げていない。ごまかしたり、はぐらかすことなく、極めて真面目に、真正面から答えている。

例えば「どうしてプリンは柔らかいのに、石は硬いの?」という問い。答えるのはノーベル物理学賞受賞者のクラウス・フォン・クリッツィングだ。彼は「原子核と電子」「原子の結合」「結晶」などの概念から丁寧に説明している。「きみはスプーンを口に入れるたびに、原子とそのまわりを回っている小さな電子をたくさん食べているのです」という表現も面白い。

他にも「どうして貧しい人とお金持ちの人がいるの?」「空はどうして青いの?」「忘れちゃうことと忘れないことがあるのはどうして?」「地球はいつまで回っているの?」といった魅力的な問いと、「人類の至宝」とも呼べる面々によるガチンコ回答が並ぶ。

個人的に面白いと感じたのは、何人かの回答者が「まだほとんど分かっていないこともある」と強調している点。この世界には(私たちの身体にも!)未知の不思議なモノやコトがたくさんあるのだ。その事実に子どもがワクワクすることは、疑問に対する明確な解を与えられる以上に、価値のあることかもしれない。

ノーベル化学賞受賞者のジョン・C・ポラニーは、こう投げかける。「人間や動植物の細胞の核のなかや原子のなか、そして宇宙の果てには、発見されることを待っている新しい世界がたくさんあるのです。きみも発見者になってみませんか?」

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