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Genpyonさんのレビュー一覧

投稿者:Genpyon

49 件中 1 件~ 15 件を表示

野球部は「感動を与えるための組織」か

13人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ドラッカーの原著「マネジメント」を引用しつつ高校野球に応用することで、ドラッカーの考え方を紹介しようという構成で、それが本著の最大の売りのようだ。

著者が最も伝えたかったドラッカーの考え方は「顧客という観点から組織を定義する重要性」のようで、このテーマに最もページを割いている。逆に、このテーマの後は、あれよあれよという間に話が進んでいってしまう。

著者は原著からキャデラックの成功例を引き、正しい組織の定義を見出すことが重要、とのドラッカーの考え方を敷衍する。本著の主人公もこの方法論で野球部の定義を見出し、野球部は甲子園出場を果たす。

ドラッカーによれば、組織の定義については、「わかりきった答えが正しいことはほとんどない」が、「顧客と市場の観点から見て、初めて答えることができる」と説く。

だが、答えることができたからといって、その定義が正しいとは限らない。キャデラックの成功例や野球部の甲子園出場というストーリーが暗示するのは、結局、結果が成功であるから、定義は正しかったのだ、という結果論ではないだろうか。

そして、その野球部の「正しい」定義が「感動を与えるための組織」である。残念ながら、ここで私は違和感を感じてしまった。

その違和感は、本著を読み進んでも解消せず、逆に増幅していく感があったが、最終的に、本著の著者が、高校野球を「感動を与えるコンテンツ」と考えられる業界の人であることを知り、その後の牽強付会ぎみな深夜ドラマばりのストーリー展開も含め、もちろん納得はしていないが、そういうことかと理解することはできた。

幸いなことに、同種の違和感を感じられる人は少数派ではないようで、たとえば、本著と直接関係のないこのページでも、決して少なくない人が同じ違和感を感じていることがわかる。

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紙の本ルポ貧困大国アメリカ 2

2011/03/12 09:16

正統派ルポルタージュ

9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

前作と合わせ一気に読めてしまう文量ながら、丹念な取材を元に描き出す内容はしばらく後を引く重さで、本多勝一の「アメリカ合衆国」を髣髴とさせる正統派のルポルタージュである。

アメリカの新自由主義が金融のみならず教育・医療や果ては軍隊・刑務所までいきわたることによって生まれた非人間的な現状を、社会の矛盾はまず一番弱い階層に現れるとの視点から取材し、多くの例を報告している。

特に貧困者を対象としたビジネスに関しては、経済的な波に飲み込まれた人間はこんな非人間的なことまで考えつくのか、という感想を持たされる内容だ。本著では触れられていないが、アメリカでは宗教がこのような非人間性の歯止めになっていない、あるいは、アメリカ的なキリスト教解釈こそが新自由主義を生み出した、との話も聞く。

著者は、もちろんアメリカの現状も伝えたいだろうが、では翻って日本は・・・、というところが最も訴えたいところだろう。その訴えがきちんと届いているがゆえに、本著の後を引く重さがあるのだと思う。

アメリカが新自由主義で行く以上、また、新自由主義に相当程度の経済効果がある以上、日本もその波を被らざるをえない。ある程度その波をあえて被ったうえで、しかし、人間性を失わないような歯止めを設けるという戦略が、新自由主義を完全に拒否するよりも現実的な戦略となるのであろう。

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紙の本これがビートルズだ

2011/04/09 09:50

ジョン派には厳しいが・・・

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ビートルズの全公式曲213曲について、著者が熱く思い入れを語る。著者自身は「制覇本」と呼んでおり、これは、1曲について1ページを使う形式であるため、著者の熱い思いは、ぎゅっと1ページに濃縮されている。

私個人はとても面白く読むことができ、実際、何度も読み返している著書なのだが、残念ながら、万人にお薦めできる著書ではないと思う。

まず、最低条件としてビートルズ全曲を聴いておく必要がある。全曲聴いてみても、ビートルズが単なるワンオブゼムと感じる人には、この著書は向かないと思う。

ビートルズは神話に彩られたグループであるが、全曲を聴いてみれば、名曲駄曲好き嫌いがあることに気づくだろう。どの曲を聴いても素晴らしい、と神格化してしまう人にも、この著書は向かないかもしれない。

ビートルズにおける好き嫌いは、得てして、ポール派とジョン派に別れることになりがちなのだが、熱狂的にどちらかのファンだ、ということになると、この著書が向かない可能性が高まる。特にジョン派には厳しい印象だ。

音楽という趣味の分野に関する評論本なので、当然、内容は著者の趣味と偏見が書き込まれる。特に、本著では、それらを、これでもかと前面に押し出して来ている。読者にとっては名曲であっても、著者は駄曲とこきおろしているかもしれない。

自分と異なる意見を知る、というのは、読書の楽しみの一つのはずなのだが、特にビートルズのような熱狂がついてまわる対象については、残念ながら、そのハードルが高まってしまう。

「同じビートルズが好きな者どうしなんだし、他人の意見も聞いてみようか」と思える人であれば、本著は、著者の独断と偏見を力強く痛快な筆致で書き込んだ読み物として、「えー、それは違うよ!」などと突っ込みを入れながらも、楽しむことができると思う。

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紙の本生命保険の「罠」

2011/02/13 10:00

分かりやすい説明と実名による業界批判

9人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

大手生命保険会社の営業職員を辞して独立系の保険販売代理店を始めた著者が、生命保険の仕組みと生命保険業界の裏側を描き出した本著。

生命保険の仕組みについては簡単な例を使いながら分かりやすく説明しており、全体としては批判的な視点が目立つ著作であるにもかかわらず、生命保険の良い面も悪い面もフェアにとりあげている。

一方で、生命保険業界の裏側については、保険販売のあり方について生命保険会社の実名を挙げて批判している。現在、保険販売代理店を営んでいる著者にとって、生命保険会社を実名で批判するには相当な勇気が必要なはずで、これにより著者が批判したい内容がストレートに伝わってくる。

生命保険の売り方も日々変わっていくと思うので、その本質的な部分は変わらないにしても、業界批判については、ある程度、賞味期限のある批判とならざるを得ないと思うが、生命保険の仕組みについては本質的なところからの説明が分かりやすくなされていると思うので、その意味では、長く手元に置いておける著作だと思う。

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紙の本無限論の教室

2011/06/04 11:11

少数派からの批判と逆転の面白さ

6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

どんな学問分野でも立場・主張の違いがあるものだと思うが、全てが論理的に構成されている数学に関しては、そういった立場・主張の違いは無いものと漫然と思っていた。本著では、数学も、また、例外ではないことを教えてくれる。

本著では、書名のとおり、無限に関して、実無限と可能無限という二つの対立する数学的立場が示される。よく考えてみれば、無限というのは、理解できるようなできないような微妙な概念であり、そこに対立する立場があっても不思議ではないのかもしれない。

とはいっても、主流は実無限の立場であり、可能無限の立場はあくまで傍流のようだ。著者は、ゼノンのパラドクスなどの無限に関するトピックを、少数派である可能無限の立場から、批判的に解説する。

数学にとって、無限というのは、本当に基本的な概念であるようで、本著では、無限に関するこの立場の違いを足場に、さらに、ラッセルのパラドクスやゲーデルの不完全性定理などの、数学史に残る数学的トピックが解説される。

これら数学的トピックについて解説する著作はたくさんあるが、本著の解説は、数学的厳密性を犠牲にしても、対角線論法という実無限を説明するための道具が、そのまま実無限の限界を示す道具に使われていく、という逆転の面白さを伝えるための解説となっており、本著の独自性がここにある。

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紙の本議論のウソ

2011/09/23 08:41

不思議な実感

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「議論のウソ」というタイトルどおり、四つの時事ネタを俎上に乗せ、そのウソを分析していく。しかし、この種の他の著作に比べ、その切れ味は意外なほど鈍い。

実は本著では切れ味の鈍さをこそ売りにしているところがある。前書きの副題として「躊躇するという強靭さを求めて」という句があるのだが、その句こそが著者が本著で述べたいことを端的に示している。

「分かりやすい言説を直ぐに飲み込むことなく、判断を保留し、議論を重ねることが大事」と、言葉で書けばこれだけのことを、著者は、俎上に乗せたネタを躊躇しまくりながら切ってみせることで、実演してみせる。

あまりに躊躇しまくるその実演は、読む者に、分かりやすい言説への渇望を引き起こすほどで、読者はその渇望を内省することにより、この社会が、いかに分かりやすい言説に飛びついてしまいがちであるかを、自分自身の実感として知ることができる…

著者の意図がどうだったかは分からないが、本著は、そんな不思議な実感を読者にもたらす著書となっている。

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紙の本サはサイエンスのサ

2011/06/11 19:34

まさに帯文句どおりの著書

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「確かな科学知識と特異な視点から、これまでの思い込みをあっさりとくつがえす、知的冒険に満ちた科学エッセイ集」という帯文句どおりの著書。エッセイという分野なので、当然、著者・鹿野司氏の個性で読ませる著書となっている。

まず、幅広い分野をカバーする知識。本著は、科学にまつわる幅広いトピックはもちろん、SF(一部ネタばれあり)にまつわるトピック、さらには、宗教論や日本国憲法などという科学とは直接関係ないトピックまでをカバーしており、新しい分野と出会う喜びを楽しむことができる。

これだけ幅広い分野を取り上げながら、興味ないよ、と思わせるトピックが存在していないのが、素晴らしい。また、どんな分野のトピックからでも、最新の文献から新しい知識を取り込んで伝えようとしている姿勢が感じられ、読んでいて安定感が感じられる。

次に、著者独自の視点と切り口が楽しい。それがメディアや世間一般で広まっている見解と異なるものであっても、わかりやすく説得的に著者独自の見解を展開していく。なかには(世間一般から見ると)過激な見解もあるのだが、遠くから全体を俯瞰するような著者の視点が、その過激さを感じさせない。

そして、著者独特の語り口。著者もあとがきで書いているが、上から目線ではなく、しかも著者が伝えたいことを読者が考えついたかのように伝えることを目指した文体で、読者のイメージを喚起しやすい例を駆使しながら、あらゆるトピックを絶妙に噛み砕いて説明していく。

まさに帯文句どおりの著書でした。

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目の眩むようなグルーブ感

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2002~2005年、ニューヨーク在住であった著者が、現地の日本人口高校生を対象とした4日間の脳科学特別講義をまとめた著書。ブルーバックス版では、帰国後、脳科学を研究する側となる大学の研究室で開いた追加講義の内容が追加されている。

高校生を対象とする講義ということで、非常にわかりやすい。が、単純なことを簡単に解説しているわけではなく、大人にとっても難しいと思われる脳の機能や仕組みについて、けっして簡単ではない内容を、生物学的そして化学的にしっかりと説明していく。

たった4日間の講義には、さらに、その時点での最新の研究成果なども織り交ぜられていく。これら最新の研究成果には、常識的な経験からすると驚かされる内容が多く、高校生ならずとも、目から鱗が落ちる体験を楽しむことが出来る。

そして、この講義が素晴らしいのは、著者本人もあとがきで書いているが、その目の眩むようなグルーブ感だ。著者本人ですら、もう、このようなテンポ・潔さ・自身と勢いのある講義はできない、と、書いているように、その時・場所で起こった「たった一度きり感」がひしひしと伝わってくる。

ブルーバックス版で追加された追加講義は、雰囲気的には、研究室のお茶会という感じで、その落ち着いた空気によって、本著はクールダウンしていく。このクールダウンがなかったら、本著のさわやかな読後感は、これほどまでに引き立ってはいなかっただろう。

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紙の本ことばと国家

2011/04/23 11:29

偏見を逃れる端緒としての相対的立場

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

相対的な立場から「ことば」について論じた著書で、特に、相対的立場から絶対的立場を批判する迫力が小気味よい。

絶対的立場として取り上げられるのは、題名にも「国家」とあるとおり、国家語・標準語といった国家による制度的構築物で、それらの成立過程が多くの興味深い例を交えながらわかりやすく語られる。

相対的立場としては、標準語に対する方言はもちろん、国家語に対しては、国家を持たない雑種言語としてのピジン語・クレオール語など、日本のような国にいると思いもつかないような言語もとりあげられる。

たとえば標準語話者が方言話者を差別したり、標準語からの文法の逸脱を嘲笑したりするような事実が、本著では、標準語や方言の言語的差異によって引き起こされるものではなく、たとえば標準語に与えられた国家の威信といった、言語外の理由によって引き起こされるものと説明される。

ことばに限らず、ある事実についての差別は、事実そのものが持つ性質ではなく、事実外の理由、特に権威的なものがもたらす偏見が原因となって引き起こされると考えられるが、本著は、相対的な立場こそがそういった偏見から逃れる端緒となることを教えてくれる。

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権力は腐敗する、絶対的権力は絶対的に腐敗する

6人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「権力は腐敗する、絶対的権力は絶対的に腐敗する」という前提から、だから、国家権力に余計なことをさせないために憲法を定め、憲法で権力を縛る。著者は、そんな立憲主義を軸に、国家権力観や人権観から愛国心や平和主義までの多様な内容について、本格的な憲法論を展開している。

憲法の話は、一般的には「とっつきにくい」と思われているが、著者は、キムタクやサザンの桑田さんからイチローやパタリロまで、憲法とは直接関係のない登場人物をテーマごとに登場させ、まずはとっつきにくさの敷居を下げてみせる。さらに、全体をフランス料理のコースに見立てるという凝った構成である。

こういった凝った構成が企画倒れになってしまう例はたくさんあるが、本著では、たとえば、イチローには立憲主義が要請する個人主義、といった具合に、各登場人物が立憲主義の各テーマにうまく割り当てられ、とっつきにくい憲法論をわかりやすく伝えてくれている。しかも、その内容は本格的であり、各テーマとも文量としてはコンパクトにまとめられているにも関わらず、読みごたえがある。

立憲主義は「国家権力を憲法で縛る」と一言であらわすことも可能だが、すべてのテーマは、きちんとそこに立ち戻り、そこから説き起こされる。あくまで原理原則に忠実に、そして、あえて理想論を現実論に優先させる、そういった爽快さを本著からは感じる。

理想論を語ることは「甘い」「青臭い」と言われがちだが、本著の理想論、特に憲法9条についての理想論は、個人主義的な強さを前提としており、甘さは微塵も感じられない。逆に、はたして自分にその強さがあるのか、そんなことを考えさせられる著書だと思う。

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紙の本環境問題のウソ

2011/07/11 22:58

税金の使い方の正当性という論点

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

本著は、地球温暖化・ダイオキシン・外来種駆除・生態系保護の4つの環境問題を例にあげ、それらの問題に科学的に迫っていく体裁をとりながら、実は、税金の使い方の正当性を問う政治的な著作となっている。

それぞれの環境問題について、科学的には、賛成反対の立場に立つ科学者の間で多くの議論があり、著者の科学的議論には問題が多いとする見解もあるようだが、著者が提示する税金の使い方の正当性という論点は、著者の科学的立場もそれに基づく議論をも超えて成立している。

著者の見解は、税金の投入はコストパフォーマンスを考えて、という至極もっともなものだ。

しかし、残念ながら、例えば、温暖化にCO2がどの程度関与し、温暖化によってどの程度の影響がでるかについての科学的議論とは無関係に、いったんCO2削減に税金が投入されれば、CO2削減は自己目的化され、コストパフォーマンスを無視して税金が投入されていくのが現実だろう。

そのような現実があるかぎり、著者の提示する論点は、意味を持ち続けると思う。

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自分の視点としての自由と平等

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

自由と平等を対立する政治的選択という概念で捉え、この視点から現代の政治状況を冷静に分析してみせてくれる本著。豊富な事例を掲げ、なるほど、と思わせられる点が多い。

『日本とフランス 二つの民主主義』というタイトルだが、著者は、アメリカとフランスを「自由の民主主義」と「平等の民主主義」の典型として提示する。選挙においては、自由と平等の間で政治的選択が行われるべきであるにもかかわらず、日本では、そもそも平等という選択肢がないまま、新自由主義という名のアメリカ化が進んでいく現状を問題視している。

日本では、いずれの政党もが自由と平等の両方の主張を混然と内在させており、政党Aと政党Bを選択することはあっても、自由と平等を選択することにはなっていない、と著者は主張しているようだ。

しかし、各々の政党内では、自由と平等が競っているはずで、たとえば小泉首相の郵政解散のように、選挙とまったく無関係というわけでもない。あの時、国民はアメリカの自由を選択したのだ。

とはいうものの、日本の場合、この対立軸がわかりにくい。マスコミは、意図的にわかりにくくしているのではないかと思えるほど、情緒的な報道に終始してしまう。何を選択したかわからないまま、アメリカの自由を選択させられた人も多いのではないのだろうか。

こういった状況だからこそ、本著が説く「自由と平等の選択」という視点は、自分が何を選択しているのかを理解するための一つの視点として、ますます重要なものとなってくると思う。

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紙の本集団的自衛権とは何か

2011/04/29 15:53

帰納的主張の説得力

6人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

本著では、その書名のとおり、集団的自衛権とよばれる概念と、集団的自衛権をとりまく日本の現状が批判的に解説される。

集団的自衛権は、国連憲章51条に根拠をおくものとされているようであるが、著者は、この51条の成立過程を詳説し、集団的自衛権は個別的自衛権と比較して抑制的に理解されるべきと主張する。

また、現在の日本における集団的自衛権の相手方となるアメリカについて、多くの資料から、アメリカの「自衛」が先制攻撃に他ならないことを明きらかにし、このようなアメリカの世界戦略と一体化する集団的自衛の危険性について警告している。

著者は、「こうあるべき」というイデオロギー的な観点から演繹的にこれらを主張しているというよりは、豊富な調査と冷静な現状認識から帰納的な主張を展開しているように感じられ、このことが、本著の主張に説得力と迫力を持たせているように思う。

最終章では、アメリカを相手とする集団的自衛に替わる方策としての日本外交のオルタナティブが提案される。この章に関しては、提案という性質上「べき」論を展開する必要があったためか、十分検討に値する内容であるとは思うのだが、それまでの説得力や迫力が、少し薄れているようにも感じられる。

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紙の本人体失敗の進化史

2011/12/19 23:31

腑に落ちる遺体解剖学

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

遺体解剖学を提唱する著者が、様々な解剖学の知見をもとに、さまざまな動物とくに人間が、ときに無謀とも思える「設計変更」によって進化してきたことを教えてくれる。

専門用語を交えながらも分かりやすく語られる解剖学の知見は、その多くが我々の人体への進化に結び付けて語られ、著者のウィットを交えた落ち着いた語り口もあって、楽しく読み進めることができる。

解剖学では、宇宙や素粒子などの分野とは違って、実際のモノとして想像可能な題材がほとんどで、さらに、フライドチキンや秋刀魚の塩焼きなど、読者自身が実体験できる食材までをも題材として取り上げる著者の工夫もあって、本著は、読んでいて、本当に「腑に落ちた」感がする。

科学的知見が落ち着いた口調で語られる一方で、著者の提唱する遺体解剖学を取り巻く状況については、語り口がとたんに熱くなる。その熱さからすると、科学的知見の語りのほうは、単なる話の「つかみ」でしかないようにすら思える。

著者の語る遺体解剖学の重要性はなるほど良く解るのだが、著者が熱くなればなるほど、「つまりは予算が少ないという愚痴?」などといった、あらぬ受けとめら方をされかねないような気がしてならない。

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紙の本インド・カレー紀行 カラー版

2011/10/07 22:34

インド料理本の「味付け」のうまさ

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

日本で営業するインド料理店の大部分は、実は、主に北インドの料理を供する店であるため、日本人がインド料理と聞いてイメージする料理は、ほぼ北インド料理という現実があるのだが、
本著は、そういったポピュラーな北インド料理に加え、日本ではマイナーな南インド料理やスリランカ料理まで幅広く取り上げる。

そもそも日本でのインド料理は、あまり地域のバリエーションでカテゴライズされたりしないので、南インド料理やスリランカ料理というカテゴリーの存在を伝えてくれるだけでも、南インド料理の愛好者としては嬉しいかぎりだ。

本著は、いわゆるレシピ本やグルメ本ではなく、インド文化論を意図した著書となっている。インド文化については、本著も含めた多くの著者が、「多様性を許容する統一性」をその特質として論じているが、本著では、これをインド料理という側面から切り取って見せてくれている。

インド文化論の論点としては、そういうわけで、月並みな感じがしないではないのだが、そこにインド料理を絡ませてくる本著には、他のインド文化論とは違い「味付け」のうまさがあるように思った。

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