商品説明
反戦のシンボルにして20世紀を代表する絵画、ピカソの〈ゲルニカ〉。国連本部のロビーに飾られていたこの名画のタペストリーが、2003年のある日、突然姿を消した――誰が〈ゲルニカ〉を隠したのか? ベストセラー『楽園のカンヴァス』から4年。現代のニューヨーク、スペインと大戦前のパリが交錯する、知的スリルにあふれた長編小説。
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紙の本
鮮やかなタペストリー
2016/05/05 07:37
8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「本作は史実に基づいたフィクション」と、最後に記されている。
どこまでが史実でどこからがフィクションなのか美術史に疎いので判然としないが、それがこの作品の傷になるかといえばそんなことはない。
圧倒的な面白さはそういうことさえ忘れさせる。
まったく原田マハという作家は『楽園のカンヴァス』以降、美術にまつわる作品を描かせたら絶品である。
タイトルにあるとおり、この長編小説はあのピカソが描いた名作「ゲルニカ」をめぐる物語だ。
「ゲルニカ」については作品の中にこう記されている。
「一九三七年、ナチス・ドイツがゲルニカに対して行った人類初の無差別空爆。その暴挙に憤怒の炎を燃え上がらせて、ピカソが描ききった巨大な一枚の絵」と。
モノトーンで描かれたこの絵、悲鳴をあげる馬、倒れる兵士、幼児を抱えて泣く女、を実物ではなくとも目にした人は多いだろう。
ピカソはどのようにして「ゲルニカ」を描き、戦争に突入していく欧州の戦火の中をどう生き延びていったのかを縦糸に、2001年9月11日に起こった米国での同時多発テロで愛する夫を失ったニューヨーク近代美術館のキュレーター瑤子が自身企画したピカソの展覧会に「ゲルニカ」を出展させようとする姿を横糸にして、物語のタペストリーは編まれていく。
二つの糸をつなげる人物として描かれるパルドという裕福な青年とルースというこれも裕福な女性は作者の想像であるが、この二人が縦糸のピカソを、横糸の瑤子に密接に絡んでいく。
同時に縦糸と横糸をつなげる重要な役どころである。
史実としてピカソの「ゲルニカ」にまつわる物語を現代にどう蘇らせるか。
戦争にノウを叩きつけた「ゲルニカ」の持っている意味合いを表現するにはどうすればよいか、瑤子の物語はフィクションであるが、それがあることにより「ゲルニカ」が暗幕から姿を現したといえる。
エンタテインメントに分類されるであろう作品だが、読者を十分に満足させることはいうまでもない。
拍手をおくりたい。
紙の本
感銘を受けた重厚な作品
2016/05/26 11:33
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kansha - この投稿者のレビュー一覧を見る
原田マハさんならではの、マハさんにしか書けないような、真骨頂ともいえる作品でした。表紙のゲルニカの絵を何度も観ながら、読み進めました。
ピカソの生きた時代や、ゲルニカ制作に秘められたものが胸の奥に迫ってきます。ピカソの心がひしひしと伝わりました。
バルドとマイテの存在が物語を奥深くしてくれていて、感動的でした。ドラの心の変化していく様子も胸の奥に響きました。
素晴らしい作品。超おすすめです
紙の本
安定の
2017/01/31 11:11
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あや - この投稿者のレビュー一覧を見る
安定の原田マハ先生。
キュレーターでもあるマハ先生だからこそのものがたりです。読み進めていくほど、どんどん引き込まれます。
時代が交互に移りますがそれぞれの場面で、自分がそこにいるような気にさせてくれます。
安定の面白さ、感動を与えていただきました。
紙の本
戦争ほど、残酷なものはない。だが、その戦争に立ち向かった人々がいた。
2022/03/19 07:51
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mitu - この投稿者のレビュー一覧を見る
「芸術は、飾りではない。敵に立ち向かうための武器なのだ」(パブロ・ピカソ)
今世紀最大の芸術作品のひとつであるピカソの大作「ゲルニカ」。
第二次世界大戦の直前の時代。そして、2001年9月11日、ニューヨークで発生した同時多発テロ。
戦争ほど、残酷なものはない。
しかし、半世紀を越えて、人類は戦争という宿命に踊らされていた。
その人類の宿業とも言うべき戦争に、絵筆一本で立ち向かった、20世紀の巨匠ピカソ。時代を超えて彼を慕い、その魂を受け継ぐ人々の物語。
主人公・MoMA(ニューヨーク近代美術館)のキュレーターの瑤子は、苦難を乗り越えたどり着いたクライマックスで語りかける。
「『ピカソの戦争』展。戦争とテロが生み出した第二次大戦下の非常時に、ピカソは絵筆一本で闘いました。絵筆が銃よりも、大砲よりも、空爆よりもずっと強いことを、作品を通して証明したのです」
ピカソに会える。瑶子に会える。バルトに、ドラに、そして楽園のカンヴァスのティムに会える。
心の奥深いところに何かが残る快作。
紙の本
暗幕のゲルニカ
2020/07/15 20:55
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ヨシナリ - この投稿者のレビュー一覧を見る
アートと戦争、天才ピカソ、面白いアートサスペンス。
紙の本
ピカソの代表作「ゲルニカ」をもとにした一大巨編です!
2018/12/21 09:27
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、絵画をモチーフに沢山の傑作小説を書かれている原田マハ氏の作品です。ピカソの一大傑作とも呼ばれる「ゲルニカ」を題材にした一大サスペンスといいますか、一大巨編で、非常に読みごたえがあります。ゲルニカに隠された謎、その意味が同書読んでいくうちによく分かります。物語自体はフィクションですが、ゲルニカというピカソの作品に対する見方や考え方は真実です。
紙の本
芸術品としてだけでなく武器でもある名画
2018/09/17 00:04
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なお - この投稿者のレビュー一覧を見る
1930年代にピカソの母国スペインでフランコ将軍によるクーデターに端を発するスペイン内乱そしてそれを後押しするドイツのヒットラーの時代と9・11以後のテロへの報復の2000年代をパラレルに進行させながら物語は展開されていく。
ドイツ軍によるゲルニカ空爆をきっかけにピカソの名画ゲルニカは生み出された訳ではあるが、その中にいかに戦争とは悲惨であり、戦争ではなんの解決ももたらされないかという深いメッセージが込められていることを知ると同時に人間ピカソのある一面を知ることができ、とても興味深いものであった。
第二次世界大戦から70年経た今現在でも戦争はなくなる兆しは全くありません。たぶんこれが平常であって戦争がないことのほうが異常なのかもしれません。そんな時だからこそこの名画の存在を知るためには本書はうってつけではないかと考えます。
紙の本
今読むべき一冊
2017/06/30 23:59
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
アートサスペンス…というよりも、これはマハさんの暴力へに屈しない、でも暴力で仕返ししない、という強い強いメッセージが込められているんです!!
是非読んでください!!
紙の本
かっこいい
2016/12/07 21:51
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:きよたろ - この投稿者のレビュー一覧を見る
MoMA職員・ピカソの研究者であるヨーコとピカソの恋人であるドラ・マール、二人の女性の視点から物語が描かれています。
自分のすべきこと、自分に与えられた使命に誠実に向き合って必死でがんばってる人の姿はやっぱりかっこいいなと思いました。ヨーコもドラもそしてピカソもみんなかっこいいです。
いつかゲルニカを見に行きたい。この本を読んでからゲルニカを見たらきっとピカソからのメッセージを一層色濃く受けとることができるだろうと思います。
紙の本
アートの力
2017/03/30 21:57
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ムジクムジカミュージック - この投稿者のレビュー一覧を見る
美術にほぼ興味がないのですが、原田さんの本は大好きで、わからないなりに楽しんでいます。音楽の力、アートの力ってよく聞きますが、それって受け取る側にもその素養があってこそだと思う。けれでも、それでも絵で世界に戦いを挑んだ芸術家の魂が、伝わり、受け継がれ、同時代の人達を、未来の人達を突き動かす様が描かれています。
私が書きたかったものが書けたとマハさんがこの本を出す時に言ってたような記憶が・・・違ったかな。今まではあくまでその人の内面の葛藤と自立とその周りの人々との関係性を丁寧にやさしいタッチでえがく個人の生き方に対する小説が多かったし、私はそれが好きです。しかし、今回はもっと大きな訴えたいことが背後にずんとおかれている、それは暗幕をかけているのかもしれないし、かけていないかもしれないそのテーマがこの小説の毛色を少し違ったものにしているようです。
それがいいとか悪いとかではないのだけど、ちょっと雰囲気が違うってことだけ。
紙の本
期待しすぎた!
2017/03/17 10:05
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:imikuto - この投稿者のレビュー一覧を見る
たしかに興味深いことがたっぷり記載してある。
おそらくマハさんにしか描けないのだろう。
でも、おもしろ要素がたくさんありすぎて、収拾がつかなくなった感じがする。
ピカソだから気合を入れすぎたんだろう。
前ミステリー作品、「楽園のカンヴァス」のほうがずっといい。
あれはシンプルにまとまっていて、それでいてあっと驚けた。
ということで、面白さは平均的。
期待しすぎというところもあるが・・・
紙の本
評価の分かれる作品。理由はシンプル。作品の中が分かれているからね。
2017/05/11 21:27
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
書誌情報で読むか迷い、先行書評でも評価が割れていたので
後回しにしていました。
原田マハさんの初期の美術系小説には大変お世話になって
いますが、最近は粗製乱造気味なのでためらっていたのです。
それでも評価する声があったので手にしてみました。
この作品は、ピカソと愛人ドラ・マールを中心に据えた
20世紀のお話と、MOMA(ニューヨーク近代美術館)で
ピカソ展を企画する八神瑤子の21世紀のお話がシンクロして
進んでいきます。
ピカソの話は史実がかなり入っていて、美術系小説の魅力に
あふれています。
MOMAの話は、9.11やその時のアメリカ政府の対応など、
現実に起きたことを題材に取り入れた創作です。
直木賞候補にもなったこの作品、ピカソの話だけだったら
大本命でしょう。評価が分かれる理由が分かりました。
MOMAの創作部分が残念な仕上がりなのです。
うまく読ませる文章力があだになっている気がします。
なんとなく納得させられちゃったけど、しっくりこないなー、
という人が多いのではないでしょうか。
それでもピカソ部分が面白いからいいやと思えばマルですし、
作品全体を見たらバツといったところでしょう。
すみませんが、わたしの評価も分裂です。
バツにするにはピカソ部分がもったいないし、マルにするには
MOMA部分が残念だしという感想です。
以下、ネタバレ的に理由を書きます。
>
>―<ここからややネタバレ気味です>―
20世紀のピカソのお話。
ナチスの支援を受けたフランコ将軍が、スペイン共和国政府を
相手取って内戦を起こし、ついにはスペインを乗っ取ってしまいます。
戦いの一つに、バスク地方の小さな村ゲルニカでの無差別空爆が
あります。当時ピカソはパリに住んでいて、この事件を新聞で知ります。
おりしも、パリ万博のスペイン共和国館への作品展示を
依頼されていたピカソは、すべてを大作ゲルニカに込めて
万博出品となったのです。
スペイン内戦によって生まれたゲルニカ。
万博会場でナチスドイツやイタリア館を向こうに回し、ゲルニカに
よって芸術を通した文化戦争を仕掛けた形になりました。
ピカソパートを読んで、ゲルニカのもたらした功績とあやうさの
背景を知り、戦争には屈しないとのメッセージを受け取りました。
これに対する21世紀のMOMAのお話。
9.11のニューヨークテロがきっかけとなります。
ピカソ展を準備していたMOMAのキュレーター八神は、テロに
屈しないというメッセージ発信のためゲルニカが必要と考えます。
そこから始まる、門外不出の作品ゲルニカをめぐる攻防です。
丁々発止のやり取りはドラマッチックですし、物語性もあります。
ただ一点、それをテロとの戦いになぞらえようとして台無しに
なったのです。アメリカの理屈に引きずられ過ぎです。
暴力に屈しないとして、国家とテロリストを同列に扱ったため、
イラク戦争は安保理の理解を得られずアメリカは孤立しました。
まったく同じ違和感をこの作品に感じます。
小説に政治はあまり持ち込みたくないのですが、なぜバスクの
テロリストなのか不自然極まりないですし、理屈も変です。
少々乱暴な言い方で恐縮ですが、スペイン内戦は国家覇権
争奪の戦いであり、ニューヨークテロは国家転覆を意図する
ものですから、なぞらえること自体が変なのです。
結局そこで物語が崩壊し、いみじくもイラク戦争と9.11の
結びつけの滅茶苦茶さを思い出した次第です。
繊細な問題だけに、テロとの戦いという単純な理屈で
塗りこめようとしたあたりがとても残念でした。
たいへんもったいない作品です。
紙の本
使命
2016/06/18 21:30
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:テラちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ナチスから逃れ、守られて、反戦のシンボルともなったピカソの「ゲルニカ」。世紀の名作に9.11のテロを絡ませて描いた。美術館勤めの経験があり、当然、美術にも詳しい原田氏だけに、本作を書くことは使命だったといえる。構成も緻密で、よくできているとは思うが、世界史や美術に疎いと理解しにくい面はある。逆に、しつこさを感じる部分もあって全体的には中レベルの作品か。
紙の本
内容と作家精神が違てはいないだろうか…
2016/11/14 14:04
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:いち映画ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公はピカソの絵ゲルニカを、あえてアメリカで展示しようと奮闘する。
今、まさにアメリカはイラクに派兵し戦争を始めたところ。
国連の壁にはレプリカのゲルニカに暗幕が掛けられている。ゲルニカの精神に背くかのように。
その戦争に目を背ける行為に反旗を掲げるために主人公はゲルニカを展示するために奮闘する。
もう一つの物語は、ピカソの恋人の目を通し、ピカソのゲルニカの制作に隠れた反戦の情念に近づいていく。
この二つの物語、ゲルニカにまつわる話しと、現代におけるゲルニカの意味についての話が並行して進んでいく。
ダイナミックな物語に身を入れた時、
私の関心は急速に萎んでしまった…
何故かというと以下の文を目にしたからです。
イラクに軍事行為を開始した
アメリカ大統領のジョン・テイラーは……
え!
なんで仮名なのか!
なんで、はっきりとブッシュと書かないのか!
現実の壁に切り込むテーマなのに
作家自身が、あえて避けているように感じてしまった。
白けてしまって、後はほとんど飛ばし読みでした…