電子書籍
天路の旅人
著者 沢木耕太郎
第二次大戦末期、敵国の中国大陸の奥深くまで「密偵」として潜入した若者・西川一三。敗戦後もラマ僧に扮したまま、幾度も死線をさまよいながらも、未知なる世界への歩みを止められな...
天路の旅人
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天路の旅人
商品説明
第二次大戦末期、敵国の中国大陸の奥深くまで「密偵」として潜入した若者・西川一三。敗戦後もラマ僧に扮したまま、幾度も死線をさまよいながらも、未知なる世界への歩みを止められなかった。その果てしない旅と人生を、彼の著作と一年間の徹底的なインタビューをもとに描き出す。著者史上最長にして、新たな「旅文学」の金字塔。
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紙の本
気をつけて、だけど恐れずに。
2023/02/10 07:02
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
2023年の年が明けて間もない1月10日、
NHKのクローズアップ現代でノンフィクション作家の沢木耕太郎さんの
インタビューが放送された。
ほとんどテレビに出ない沢木さんを見ながら、
やっぱりこの人、かっこいいなと呆然としていた。
この番組では、沢木さんが9年ぶりに刊行した
長編ノンフィクション『天路の旅人』についてのインタビューが主だったが、
番組の最後には沢木さんからの若い読者へのメッセージなどもあって
30分ながら満足のいく番組だった。
『天路の旅人』は、
第二次世界大戦末期、日本陸軍の密偵として
中国の内蒙古から大陸奥深くへと潜入した25歳の青年、
西川一三の8年に渡る旅を追体験するように描いた
長編ノンフィクション作品。
西川に自分と同じ匂いを感じたのだろう、
沢木さんは生前西川に長時間インタビューをしている。
しかし、沢木さんの都合などがあり、
それが作品になるには25年という時間がかかったという。
その間に西川本人も亡くなっている。
残ったのは西川が生前に書き出版した本とインタビューの記録、
そして西川の生原稿。
これらをもとに、沢木さんはこの長編を書き上げる。
「旅に同じ旅がないように、旅の一日に同じ一日があるわけではない。
次の一日は常に新しい一日なのだ。」
これは本文中にある西川の思いとして書かれた一節だが、
おそらくこれは沢木さん自身の思いと重なっているのだろう。
西川が自由を求めた旅人であったように、
沢木さんもまた止まることのない旅人であり続ける。
先の番組の最後に
沢木さんが語ったメッセージはこうであった。
「気をつけて、だけど恐れずに。」
紙の本
「旅」をすることと、人生を生きることの意味を考えた
2023/02/08 22:47
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゆずりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
西川一三、1918年(大正7年)山口県生まれ。「密偵」として中国大陸の奥深く潜入し、ロブサン・サンボーという名でインドまで旅をした青年。その旅は、困難の連続だった。砂漠、険しい山脈、飢え・・・。
敗戦により密偵としての役割が消滅した後も、西川は放浪の旅を続ける。彼を旅へとつき動かしたものは何なのか。また、帰国後、一年に364日仕事に励む日々を送った理由は何か。
それは読み進めるうちに何となく感じるものがあった。
最初は、使命に対する責任感、未知の土地への好奇心が、若い彼を駆り立てたのだろう。しかし、本の中で、度々繰り返されるのは、旅に同行したり、出会ったりした現地の人々、巡礼のラマ僧たちの純粋できれいな心だ。
そんな、人々との出会いが、西川の生き方を作ったのかもしれない。
地図を片手に、読了したが、これは、「旅」の物語であり、一人の人物の「人生の旅」の物語なのだと感じた。
読み応えのある内容で、充実した時間を過ごすことができた。
紙の本
すばらしい人と旅
2022/11/29 21:17
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ME - この投稿者のレビュー一覧を見る
長い本だったが、いっしょに旅を終えたあとの充実感はかえがたい。すばらしい人と旅を教えてくれた作者に感謝したい。西川一三という人は、この本を読むまで知らなかったが、「生きざま」というようなものを教えてもらった気がする。
紙の本
真骨頂
2024/02/26 12:02
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ブライアン - この投稿者のレビュー一覧を見る
やはり沢木耕太郎はノンフィクション作家なのだと再認識させられる作品でした。
小説も何冊か上梓されていますが、本書のような重厚なノンフィクションこそが真骨頂といえるのではないでしょうか。
紙の本
旅する力
2023/07/28 01:05
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なつみかん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ついに読み終わってしまった。一つの旅が終わったような読了感。
本当にこんな日本人がいたのかと信じられない。
少し西川一三のことをよく書きすぎではないかと思ったりもするくらい、凄すぎる。
こんな人間が実在したのだろうか。
旅を続けた西川一三が急に現実を生きるのもまた興味深い。
紙の本
読書を通じた長い旅路
2023/04/30 09:35
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トリコ - この投稿者のレビュー一覧を見る
沢木さんの長編ノンフィクション。主人公への取材の場面から入り、読者も沢木さんと主人公とともに旅をしているかのように引き込まれます。
紙の本
一気読みの長大紀行文
2023/03/15 21:44
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
長大な紀行文だが、一気読みしてしまった。第二次世界大戦末期、ひとりの日本の若者・西川一三が、中国の、その大陸奥深くまで潜入し、ラマ教の巡礼僧に扮して密偵として行動した。新疆ウイグル自治区近くまで、さらにチベット、インドへ、未知なるものを知るための旅だった。この紀行文はその旅を描いたというより、西川一三そのひとを記録したような物語だった。自分自身には経験できないような、過酷で稀有な、そして最底辺の生活でも生きる輝きがあることを示した、旅人だった。
紙の本
現代人にとっての『天路』とその心のあり方とは
2023/03/12 11:14
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かばおじさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
第二次世界大戦前後にかけ、密偵として内蒙古からチベットを経てインドに至るまでほぼ徒歩で旅した西川一三の8年の物語。
当初は火おこしも満足にできなかった西川が、徐々に旅人としての力をつけ、少しずつ自由を広げていくに従い、逆に無欲となり、その歩みは未知の場所に行ってみたいという純粋な旅に洗練されていく。
本書が特徴的なのは、西川の旅の前後に著者と西川(とそのご家族)のやり取りが記され全三部構成となっている点。
西川は8年間旅を続けたが、著者は25年をかけて本書を執筆したという。
1年間に渡る本人へのインタビュー、帰国後本人が書いた文庫本とその原稿との突合作業、ご家族との面会など、本書出版までの過程も著者にとって『天路の旅』なのだろう。
西川の旅はある日突然終わりを告げる。
帰国後はこれまでの生活が嘘のように地方の一店主として淡々とした日々を過ごし、一市井の人として生涯を終えているが、それは不本意な旅の終わりによる失意によるものではないだろう。
無駄を削ぎ落とし単純化された生活と充足感、どこにいようと持つことができる聖なる時間。その生き方はいわば旅の延長線上にあり、内蒙古の馬のような「自由」を心に持ち続けたのだと思う。
奇しくもコロナ禍で移動の自由が制約され、淡々とした日々を過ごす我々にとって、西川と著者の旅路とその心のあり方は、あるいはこのパンデミックが明けた後も、一つの指針になるのではないだろうか。
紙の本
自分の道を旅から見つける
2023/02/25 16:49
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かずさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
第二次大戦末期自ら「密偵」として蒙古からチベットを経てインドまで旅をした西川一三。巡礼のラマ僧になりきり言葉をほとんど独学で学びながら歩き続けたその姿からは「密偵」と言うより己の道を探し求めた旅人の強い意志が感じられる。日本人と疑われないように本当の巡礼者より深く言葉、作法を学び疑われることなく旅を続けた。最後の結末は同胞によって狂わせられてしまう。日本に送還された後も自分の道を歩き続けたのは、この西域の旅から得たものか。引き込まれるように読んだ。
紙の本
未知の世界が待っている
2023/02/04 09:47
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投稿者:GORI - この投稿者のレビュー一覧を見る
沢木さんは描きながら一緒に旅をしていたのだろう。
自分が深夜急行で描いた旅を思い出しながら描き続けたのだろうと思う。
そんな沢木さんの気持ちが全編に溢れている。
西川一三、第二次世界大戦で中国大陸を密偵として旅した人。
その生涯を、沢木さんは25年かけて世に出した。
未知なる世界への不安と憧れで、読んでいる時は心が揺さぶられ続けられた。
紙の本
西川一三と沢木耕太郎
2023/01/06 17:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
西川一三と沢木耕太郎。時代も旅程も全く違うが旅する二人に共通する「匂い」を感じることができる。小説ではなくドキュメンタリー ルポルタージュなのだが、主人公西川一三の歩みがあまりにも壮大なので、その迫力は凡百の小説を遥かに上回っている。
紙の本
想像を絶する困難な旅の記録
2023/05/04 13:08
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:こばとん - この投稿者のレビュー一覧を見る
沢木耕太郎さんの『天路の旅人』を読んだ。日中戦争さなかの昭和18年から戦後の昭和25年まで足かけ8年に亘り、蒙古人ロブサン・サンボーというラマ教の巡礼僧になりすまして内蒙古から甘粛省・青海省などを経てチベットへ渡り、さらにインド・ネパールまで潜行した西川一三さんの行動と、見たもの・聞いたもの・感じたものの記録だ。西川さんは『秘境西域八年の潜行』(中公文庫など)という厖大な記録を著しているが、これをベースにさらに2年に亘って直接話を聴き、それを元に書かれた大部な本。
西川さんは山口県に生まれ、福岡県の修猷館中学を卒業後満鉄に就職したが、蒙古から新疆にかけての奥地(日本では当時「西北」と呼ばれていた地域)への憧れがあり、恵まれた待遇の満鉄を退社して日本が蒙古に設立した興亜義塾に入学、さらには密偵としてこの西北地域へと向かったのだった。
「西北地域」と言えば、古来、シルクロードとして有名だが、草原や砂漠、無人地帯、さらには雪に覆われた峨々たる山脈が幾重にも重なり、峠越えや激流を渡河する必要も度々ある上、食糧や水の入手も困難で、匪賊に襲われる危険もあるなど、数か月を要する旅には想像を絶する困難が伴う。道案内も必要なので、最低でも数人、匪賊に襲われるのを防ぐために現地で行き会った人とできるだけ大きな集団となって移動するのが望ましい。場合によると、すれ違った隊商と、お互いの多くの家畜が交錯して混乱するため、どさくさに紛れて羊や荷物を載せたヤクを盗まれたりすることもある。路傍に行き倒れの死体を見かけることもあり、これは明日の自分かもしれないとも考えたりもする。
途中で何度も騙されたり、男たちに囲まれて高価なものを古い価値のないものと無理やり交換させられたりすることもあるが、一方で、親切な人の心の温かさにも触れることもある。遊牧民の、何ごとにも縛られない自由な生き方を目の当たりにして、憧れる経験もする。
夜は厳しい寒さの中で大体野宿(逆にインドでは灼熱の気候)。地面に敷物を敷き、その上で着ている毛皮を脱いで布団代わりに身体にかけて丸くなって眠る。時どき親切な人に家に招き入れてもらったり(ただし食事はそれぞれで勝手に)、農家の軒下を借りたり、納屋に入り込んで寝たり。町に入った際には、旅行者のための無料宿泊所に泊まることもある。長期滞在の町の場合は、ラマ寺に入ったり、有力者の家の下男に雇ってもらったりもする。
最後は現地の官憲に逮捕され、日本に送還される。西川さんは、その後も、無欲に、数奇な運命をたどるのである。