ブックキュレーター週刊読書人 角南範子
旅立つところ、帰る場所ー―私的旅の本
黄色と灰色がまじる奇妙に明るい雨曇りの日、小学校低学年の私は教室で油粘土をいじっている。近場の遠足を延期するか決行するか、先生方が様子を見ている隙間の時間だった。海が川にまじるように、日常に非日常が侵入し、私はどこへも行かないままに、それは旅だった。旅とは、旅立つところと帰ってくる場所でこそ感じるものなのかもしれない。
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ふりむく
松尾 たいこ(絵) , 江國 香織(文)
「ふりむく」という言葉が、こんなにこわくて悲しいとは知らなかった。ふりむくには距離が必要だ。離れゆく過程でふりむく。微笑みキスをしながら、いつかの記憶へふりむく。それは旅への一歩目なのかもしれず。否応なく人は一人で、そのことを松尾たいこさんの絵が、江國香織さんの言葉が、やわらかくきっぱりと刻むのだ。
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黄色い本 ジャック・チボーという名の友人 (アフタヌーンKCデラックス)
高野 文子(著)
「チボー家の人々」に読みふける実ッコちゃん。ジャック・チボーの革命世界と自分の生活を重ね合わせるほどのめり込みながら、就職という自分の現実を歩みだす。お父さんや弟の基根ちゃんも、本を大事にし、むやみにありがたがらず、血肉にする、その静けさに心打たれる。なぜかこれも、旅を感じさせる本なのだった。
ブックキュレーター
週刊読書人 角南範子書評紙「週刊読書人」(http://www.dokushojin.co.jp/)編集部に勤務。本と活字に囲まれています(文字通り。机を片付けろと言われます)。(本質はインドア派ですが)趣味は旅、俳句、スケッチ、あとビール。(本質がインドア派なので)旅の長時間の飛行機移動で、本を読んだりビールを飲んだり、が至福です。本にまつわるしあわせな記憶は、幼少期に親戚から段ボール4つ分の本が送られて来たこと。好んで読むジャンルは、小説・ノンフィクション。通勤時間が長いので(&ずぼらなので)、鞄の中に気づくと片手でおさまらないほどの本が入っています。でも、本を読まずにボッーとする時間も好きだったりもします。
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