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アメリカ文学翻訳者として。名翻訳小説から知る村上春樹の世界観
1979年に『風の歌を聴け』で文壇デビューを飾った村上春樹。「喪失の時代」の旗手ともいわれ、平易な文章に難解な物語が特徴的な作風で、日本文学の国際化にも寄与した「ハルキ・ムラカミ」は、実はアメリカ文学翻訳家という側面も持っています。彼が影響を受け、翻訳を切望したアメリカ文学の作家たちと、隠れた名訳書を紹介します。
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バビロンに帰る
スコット・フィッツジェラルド(著) , 村上 春樹(編訳)
それまで『バビロン再訪』と訳されていた題名を「帰る」とした、こだわりを感じる短編です。ロスト・ジェネレーションを代表するフィッツジェラルドに、喪失の時代を生きた村上春樹が共感を得たのは、容易に想像できます。狂乱の20年代をパリで過ごした家族の喪失と再生の物語は、洗練された語り口で現代によみがえりました。
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愛について語るときに我々の語ること
レイモンド・カーヴァー(著) , 村上 春樹(訳)
村上春樹の翻訳業を語るとき、レイモンド・カーヴァーを忘れることはできません。カーヴァーを日本ではじめて翻訳・紹介したのが村上春樹でした。2人の共通点は、それぞれの国の平凡な日常を平易な言葉と会話で切り取った作風。この17編からなる短編集には、ミニマリストとしてのカーヴァーの魅力が凝縮されています。
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熊を放つ 上
ジョン・アーヴィング(著) , 村上 春樹(訳)
ウィーンを舞台にした2人の青年の出会いと旅、自由と解放を描いたジョン・アーヴィングの処女小説。その翻訳を切望したのは、村上春樹が重視する「物語の復権」を現代に示したかったからでしょうか。カート・ヴォネガットに師事したアーヴィングと、その影響を受けた彼が、物書きとしての初期衝動でつながるのは当然といえるでしょう。
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それまで親しまれてきた清水俊二訳『長いお別れ』から、実に49年ぶりの新訳となった本書。あとがきで「『ロング・グッドバイ』は別格の存在」といい切った村上春樹が、ハードボイルド小説という一点でチャンドラーから受けた影響は計り知れず、探偵 フィリップ・マーロウが語る言葉のどれもが、名セリフとなって息づいています。
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おおきな木
シェル・シルヴァスタイン(作) , 村上 春樹(訳)
2010年に村上春樹が新訳した絵本。内容はとても哲学的です。原題は『The giving tree』(与える木)で、少年とリンゴの木の物語から本当の「幸福」とは何かを問うものです。どの世代も理解できる平易な言葉と深遠な内容は、まさにハルキ・ワールド。本田錦一郎の旧訳との名文比較も興味深い一冊です。
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