ブックキュレーター週刊読書人 角南範子
心もとない日にまずは一杯、「飲み物」にまつわる本はいかが?
私にとって本を読むとは、知識を得るより「安らぎ」の方にウエイトがあるらしい。と気付いたのは、時に本の内容から一人歩きして脳内を漂い、私を支えていた言葉のいくつかが、飲み物の名の入った本のタイトルだったからだ。頼りない日、元気が足りない日、まずは一杯、胃ではなく心をうるおす飲み物の本はいかがでしょうか。
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緑色の濁ったお茶あるいは幸福の散歩道
山本 昌代(著)
特別な読書体験として心にあった小説。でも体に障害を持つ女性が出てくる以外、内容を忘れていた。読み返し、文章の佇まいの奇妙さを、改めて好もしく特別に思った。病の話が全編を覆うが、不幸でも不穏でもなく、バランスを欠きつつ調和して、不安定で安定している。そしてどこまでも割切れず、また漠と心に残るのだ。
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冷めない紅茶
小川 洋子(著)
中学の同級生の葬式で再会したK君。K君の自宅には「にじむように美しい」彼女がいる。完璧な清らかさ、胸苦しく満ち足りた午後。「ライオンゴロシ」という植物、返し忘れた十年前の図書室の本と貸出カード、黄金色の校庭に溶ける二人の背中、冷めない紅茶・・・。死と過去が浮遊し、「今」と異なる温度や速度に触れる物語。
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一口含めば頷きあえるその味を、たくさんの単語で、ウィットをちりばめ表現する。「もし僕らのことばが・・・」と呟きたくなるのも分かる。が、ことばにするから感じられ、記憶に残るものもある。スコットランドとアイルランドのウィスキーを巡る旅の記。シングル・モルトをとくとくかけた生牡蠣、その至福を味わいたくなる。
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スープ日乗 鎌倉スープ教室全語録
辰巳 芳子(著)
辰巳さんの語り口のままに記された文字を追っていくと、一杯のスープができ上がる。飲みたい、そして作ってみたいと思う美しいスープ。「ここはスープを習うところではないのよ」「生きやすさを習うところ」と辰巳さん。食材、人生、命と向かい合う丁寧な仕事に、読者の暮しさえ整えられていくような、幸せな錯覚をする。
ブックキュレーター
週刊読書人 角南範子書評紙「週刊読書人」(http://www.dokushojin.co.jp/)編集部に勤務。本と活字に囲まれています(文字通り。机を片付けろと言われます)。(本質はインドア派ですが)趣味は旅、俳句、スケッチ、あとビール。(本質がインドア派なので)旅の長時間の飛行機移動で、本を読んだりビールを飲んだり、が至福です。本にまつわるしあわせな記憶は、幼少期に親戚から段ボール4つ分の本が送られて来たこと。好んで読むジャンルは、小説・ノンフィクション。通勤時間が長いので(&ずぼらなので)、鞄の中に気づくと片手でおさまらないほどの本が入っています。でも、本を読まずにボッーとする時間も好きだったりもします。
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