ブックキュレーターhonto編集員
生きづらさを感じている人にも。中村文則の陰鬱な閉塞感を存分に味わえる小説
中村文則の小説に共通するのは、陰鬱な閉塞感です。彼の小説にある自身のあとがきは、毎回「共に生きましょう」という言葉で結ばれています。「生きづらさ」を感じている人は、自分と似たような人間を登場人物に見いだせるかもしれません。中村文則を読んでみようと思っている方に、著者の小説のなかでも、特に陰鬱な閉塞感が色濃く感じられる本を選びました。
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遮光
中村 文則(著)
事故死した恋人の指を瓶に入れ、黒いビニールで「遮光」して持ち歩く主人公。周囲には、恋人の不在は留学しているからだと嘘をつきつづけます。指への執着、嘘と現実の同一化が次第に狂気となり、主人公を絶望的な結末へ導きます。「死」をテーマに、暗く、希望のない若者の姿を描いた物語が、感情の深部を動かす物語です。
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土の中の子供
中村 文則(著)
親から捨てられ、養父母からは虐待を受けて育った主人公。彼は恐怖の体験を恐怖によって打ち消すために、喧嘩、飛び降りなど、自ら積極的に危険な行為を冒します。悲惨な虐待の記憶、その記憶から抜け出そうとする手段や心象風景は陰鬱です。しかし、何とか生きようとするその姿はまた、刹那的な美しさをも感じさせます。
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悪意の手記
中村 文則(著)
ふとしたことで親友を池に突き落として殺した少年。彼はその贖罪のため、自死することを夢想して生き続けます。しかし、その瞬間が来ないまま時は流れ、大学を中退した彼は年上の女性と暮らすようになります。そこで彼は別の事件に巻きこまれるのですが・・・。手記のかたちで、殺人者の救いなき魂の彷彿を描写した一冊です。
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何もかも憂鬱な夜に
中村 文則(著)
親に捨てられ施設で育ち、今は刑務官をしている主人公は、まもなく死刑が確定する未決囚を担当しています。控訴期限が近づくのに、何も語らない未決囚と、彼に真実を語らせようとする主人公。他者を救おうとしても、相手がそれを望まない、それが生む憂鬱感。殺人や死刑制度の暗部をえぐる一冊でもあります。
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