ブックキュレーター編集者 三浦岳
読むことで「意識」が拡大・変容する本
本を読むからには、大きく自分が変えられてしまうようなものを読みたい。とくに、一部の小説にはそういう力があると思います。そこで、言葉の使い方や、本の中の世界観や、その他のよくわからないけれど何かの方法で読者の意識を直接つかんで揺すぶってくるような本であり、物語を追体験できるというよりもその本を読むこと自体が独特の体験になるような本を選びました。
- 53
- お気に入り
- 4014
- 閲覧数
-
砂漠ダンス
山下 澄人(著)
魂のようなものが一人称で書いているような不思議な小説。過去・現在・未来から、私・私以外から生から死まで渾然一体となって、読んでいてふらふら飛び回っているような感覚になる。しかし「実験的な小説」という言葉から連想されるような面倒くさいものとはまったく違い、読んでいてかっこいいし面白いし情けなくなったり苦しくなったりもする。
-
人生、しょせん運不運
古山高麗雄(著)
著者の『二十三の戦争短編小説集』とあわせて、折に触れて読み返す。著者が書く一人称の兵隊はいつもへなちょこだ。行軍しながら背負っている荷物の重さに耐えきれなくて、やけくそで道中で荷物を捨ててしまったり。読んでいると戦前戦中のリアルな状況に放り込まれて、先の見えない不安な気持ちに同化して息が苦しくなる。
-
大きな魚をつかまえよう リンチ流アート・ライフ∞瞑想レッスン
デイヴィッド・リンチ(著) , 草坂 虹恵(訳)
サブタイトルには「瞑想レッスン」とあるが、とくに瞑想のノウハウがわかるわけではなく、生とか死とか炎とか闇とかについて、短い文章で語られていく。言葉はやさしいにもかかわらず、説かれていることがさらりと理解を超えていることも多く、頭を働かせているうちに、断章形式とあいまってこの読書自体が暝想になっていくという本。
-
「これは思いつきで適当に書いてるのか?」と思ってしまうくらい、ぱらっと一文、二文読んでみるだけでもめちゃくちゃだ。にもかかわらず、そこから生まれるイメージの飛躍の連続がリズムになって、何を読まされているんだかよくわからないものの、書かれていることをそのままイメージしてしまう自分の脳内プロセスが心地よく、言葉というのは本当に奇妙なものだなと思わされる。
-
最初は、「え、なんでこんな文章なんだ?」と思うほど文法的には破綻した文章なのだが、だんだんくせになってくる。死や生や時間を扱っているといえば扱っているのだが、起承転結のようなストーリーはなく、話は次々と逸脱していく。その文章のスタイルや展開のリズムが日常の人の思考の流れに近いからか、こちらは気がつくとそこから離れて、さまざまな考えごとに引き込まれてしまう。
ブックキュレーター
編集者 三浦岳編集者。担当書に、スコリャーチン『きみの出番だ、同志モーゼル』、岡崎祥久『文学的なジャーナル』、オレスケス他『こうして、世界は終わる』、保坂和志『「30歳までなんか生きるな」と思っていた』『考える練習』、フェラン『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』、春日武彦『本当は不気味で怖ろしい自分探し』、グラスナー『アメリカは恐怖に踊る』、ケイル『明かりが消えて映画がはじまる』、マクゴニガル『スタンフォードの自分を変える教室』、勢古浩爾『結論で読む人生論』、ダックワース『やり抜く力』など。訳書にペレーヴィン『チャパーエフと空虚』『宇宙飛行士オモン・ラー』。
ブックツリーとは?
ブックツリーは、本に精通したブックキュレーターが独自のテーマで集めた数千の本を、あなたの"関心・興味"や"気分"に沿って紹介するサービスです。
会員登録を行い、丸善・ジュンク堂・文教堂を含む提携書店やhontoでの購入、ほしい本・Myブックツリーに追加等を行うことで、思いがけない本が次々と提案されます。
Facebook、Twitterから人気・話題のブックツリーをチェックしませんか?
テーマ募集中!
こんなテーマでブックツリーを作ってほしいというあなたのリクエストを募集中です。あなたのリクエスト通りのブックツリーが現れるかも?
テーマ応募フォーム
こんなテーマでブックツリーを作ってほしいというあなたのリクエストを入力してください。
ご応募ありがとうございました。
このテーマにおける、あなたの”6冊目の本”は?
※投稿された内容は、このページの「みんなのコメント」に掲載されます。
コメントを入力するにはログインが必要です