不思議な世界に五感が刺激される！五十嵐大介が紡ぐ世界の裏側

人体改造計画から生まれたHA（ヒューマナイズド・アニマル）を主人公とした近未来バイオSFです。もとの動物の能力が残るHAから見た世界や、人間には知覚できない感覚で繰り広げられるバトルアクションなどが、圧倒的な画力で描かれています。現代の生命倫理を冒涜しているともいえるHAたちの、行く末が気になる物語です。

国や時代、目的も異なる魔女たちを描いた連作集です。大きな魔女と対決する小さな魔女である遊牧民の少女、一族と森を焼かれた密林の呪術師の復讐など、彼女たちは世界の摂理をありのままに受け入れたうえで、自らの役割を静かに遂行します。砂漠の乾いた風や熱帯の森の湿度など、魔女たちがまとう空気の肌ざわりさえも感じられる力作です。

東北の山奥の村で暮らす漫画家と愛猫のカボチャ。都会の飼い猫が山深い自然に慣れ親しんで、本能全開のまま自由に生きる姿がコミカルに描かれています。かわいいだけではない、猫の獣性を愛情深く見守る著者の想いが伝わってきます。猫から見た田舎暮らしの本としてもオススメです。

「海獣の子」と呼ばれるジュゴンに育てられた2人の少年と出会った中学生の琉花が、世界の秘密を目撃する海洋冒険譚です。海に落ちた隕石の謎、世界中の水族館で消えていく魚たち、人間たちの思惑など、役に立たない海の底で起こる世界の秘密。圧倒的な画力で描かれる海の絵に、改めて世界の広さと深さを知ることができるでしょう。

「遠野物語」や「日本昔話」のように、私たちの日常生活の裏返しのような奇妙な空間で起こる奇怪な出来事を描いた短編集です。誰もが幼いころに思い描いた不思議な生き物、風変わりな場所、おかしな言葉。漫画として生まれ変わった空想の数々は、読む人によって、それぞれの新たな世界が生まれるに違いありません。