ブックキュレーター作家 山田正紀
天地がひっくり返って、目から鱗が落ちてしまう本
この世には、それを読むことで、それまで自分が信じていたことが180度ひっくり返されてしまう本があります。頑迷な固定観念を覆されてしまう本――私の読書の楽しみの一つにそんな本を見つけることがあります。ここではそうした本を並べてみました。
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いずれ読もうと思って『生命40億年全史』という本を書棚に収めておいたのだが、読まずにいるうちに、その分野の次代を担うべき本書が翻訳されてしまった。「地球生物学」はとにかく「宇宙生物学」がこの20年のトレンドになってしまった、という記述に驚かされる。この著者の一人は火星パンスペルミア説を本気で信じているんだぜ。
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マルクス理論は実効性が失われた古い理論であり、ソ連などの抑圧的な体制を生み出してきた元凶であるとされ、いまや嘲罵の対象といっていい。けれども本書の著者はそれは違うという。晩期マルクス理論はこのところにきてようやく研究が進んで、エコロジー、共同体、ジェンダーをも包括する理論であることが究明されつつあるのだという。本当だろうか。本当だとしたら「目から鱗が落ちる」のだが。
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ウイルスはこれまで「生命」ではない、物質だと見なされてきた。けれども最近になって巨大ウイルスの発見があいついで、それまでのウイルス像が大きく揺らぎはじめている。とりわけ、現代までのところ定説である「3ドメイン仮説」を、それにウイルスを加えた「4ドメイン仮説」にすべきである、という説にはワクワクさせられる。
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昭和史をめぐっては実証的研究がめざましい発展を遂げつつあるのだという。にもかかわらず、それらの研究成果を無視した一般歴史書があいかわらずまかり通っているのだという。たとえば最近の研究成果による2・26事変での石原莞爾の立ち位置はこれまで信じられてきた説を180度覆すものだ。この本を読んで驚きたいものである。
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英国のEU離脱。反イスラムなど排外主義のひろがり。トランプ大統領の誕生・・・ポピュリズムは「大衆迎合主義」と訳され。民主主義を否定するものと解釈されることが多いが、そこには別の側面もまた見られるらしい。たとえば徹底したイスラム批判者として知られるオランダのウィルデルスという政治家のこの魅力的な人間像はどうだろう。ポピュリズムをマルチに解明していく本書には驚かされることが多い。
ブックキュレーター
作家 山田正紀1950年、名古屋市生まれ。明治大学政治経済学部卒。作家。SF、ミステリ、冒険小説など多岐にわたって活躍。74年、「神狩り」でデビュー、同作で第6回星雲賞日本短編部門を受賞。82年、『最後の敵』で第3回日本SF大賞、2002年、『ミステリ・オペラ』で第2回本格ミステリ大賞、第55回日本推理作家協会賞を受賞。著書に『宝石泥棒』『ブラックスワン』『人喰いの時代』『屍人の時代』『カムパネルラ』他、多数。
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