ブックキュレーター作家・翻訳家 松田青子
この世界が居心地の悪い人たちに読んでほしい本
いまこの現代社会に生きる人なら誰もが、人間関係や恋愛関係を築くことの難しさや不確かさ、孤独や絶望がデフォルトであることを、どこか知ってしまっているのではないでしょうか。そんなこの世界で、居心地の悪さを感じている人たちに読んでほしい本を集めてみました。
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表題作は、社会に出ていくのが恐ろしくて、トンネルを掘り続ける若者たちが出てきます。「発火点」は発火して死んでしまった両親のように自分もいつか燃えてしまうのではないかと怯えながら暮らす青年、「モータルコンバット」は突然自らのセクシャリティに気づかされる経験をする少年二人の物語。どの作品も登場人物たちの気持ちが痛いほどわかります。
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分解する
リディア・デイヴィス(著) , 岸本 佐知子(訳)
表題作は、恋人と別れた男が彼女に費やした時間とお金を清算しようと延々と計算をしますが、もちろん答えは出ません。「私に関するいくつかの好ましくない点」は、恋人はなぜ自分のことを好きじゃなくなったのか、こちらも延々と考え続ける女が出てきます。終わったことをいつまでも情熱的といってもいいくらいの熱心さで考え続ける登場人物たちがなぜか他人事に思えません。
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アサイラム・ピース
アンナ・カヴァン(著)
収録されているのは、見えない敵がいることを確信している「敵」や、住んでいる家の邪悪な面を感じ取る「変容する家」など。誰のことも、自分のことさえ信用しない語り手が綴る、世界に対する警戒心に満ちた作品の数々を読んでいると、心が静まります。アンナ・カヴァンだけが救える読者の魂というものがあると思います。
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レモン畑の吸血鬼
カレン・ラッセル(著) , 松田 青子(訳)
表題作は、不死の吸血鬼夫婦が、終わりのない夫婦生活に倦怠感を覚え、必死で関係を修復しようとします。「お国のための糸繰り」は明治期の日本を舞台にしていて、富岡製糸場のような工場で働かされている娘たちの体が蚕になってしまいます。現状からなんとか抜け出そうとする登場人物たちの切実さに胸を打たれる作品ばかりです。
ブックキュレーター
作家・翻訳家 松田青子1979年兵庫県生まれ。作家、翻訳家。同志社大学文学部英文学科卒業。著書に、小説『スタッキング可能』『英子の森』『ワイルドフラワーの見えない一年』『おばちゃんたちのいるところ』、エッセイに『読めよ、さらば憂いなし』『ロマンティックあげない』。訳書に、カレン・ラッセル『狼少女たちの聖ルーシー寮』『レモン畑の吸血鬼』、アメリア・グレイ『AM/PM』、アヴィ『はじまりのはじまりのはじまりのおわり』。創作童話に、『なんでそんなことするの?』がある。
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