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小説の極北!?フランスで起こった文学の潮流「ヌーヴォー・ロマン」の世界
第2次世界大戦後、フランスの出版社ミニュイ社を中心に次々と実験的な小説が発表されました。その作品群は従来の小説そのものを根本から問い直すような実験的な内容だったため、「ヌーヴォー・ロマン(新しい小説)」と呼ばれるようになります。新しさと過激さが同居した小説の極北をゆく20世紀の文学潮流、その代表的な作品を紹介します。
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迷路のなかで
ロブ=グリエ(著) , 平岡 篤頼(訳)
ヌーヴォー・ロマンの旗手ロブ=グリエによるミステリー小説のパロディ。雪の降るなか迷路のような街を兵士がひたすらさまよう、ほとんどそれだけの小説です。どこか謎めいた場面が語られるのですが、その実期待していた謎はなかなか明かされず・・・。ミステリー小説というジャンルの解体をたくらんだ野心作といえるでしょう。
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心変わり
ミシェル・ビュトール(作) , 清水 徹(訳)
パリからローマへ向かう列車で、男がローマにいる愛人について夢想しています。初めは喜びとともに彼女を回想していたのですが・・・。本書はその夢想の描き方の「すごみ」だけで、成立しているような小説です。過去・現在・未来の時間が多層的に重ね合わされ、錯綜し、意識に去来する想念の移ろいが細部にわたって執拗に記述されています。
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農耕詩
クロード・シモン(著) , 芳川 泰久(訳)
主人公は3人の「彼」で、彼らはそれぞれ違う時代の三つの戦争(フランス革命、第2次世界大戦、スペイン内戦)を生きています。そんな彼らの生き様が、ほとんど改行なく、過剰に長い文で(途中いくつも括弧が挿入されながら)語られています。時に彼らの存在は時代を超えて混交し、うねる歴史の奔流となって読者を圧倒します。
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事の次第 新装復刊
サミュエル・ベケット(著) , 片山 昇(訳)
最初の文を読み始めたとたん、きっとその異様な文章に衝撃を受けるはずです。泥の中での「ピム」との出会い、そしてそれ以前以後の顛末が三部構成で語られています。そして、その語りのすごみたるや!文章には句読点がなく延々と独り言のような語りが続き、内容にも意味があるのかないのか・・・。正気の向こう側へ、やすやすと連れていかれます。
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女たち 上
P.ソレルス(著) , 鈴木 創士(訳)
とにかくスピード感のある文体で「女」という主題を中心に、政治、革命、哲学、ポルノグラフィ、フェミニズムなど、さまざまなモチーフを横断的に、饒舌に語った小説です。舞台はヌーヴォー・ロマンの申し子であるソレルスが暮らした当時のフランス。実際の交友関係など自伝的要素も旺盛に取り込み、物議を醸した問題作です。
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