ブックキュレーター新潮選書編集長 中島輝尚
そうだ、選書を読もう!
「選書」って、なに?「本を選ぶ」こと?――辞書的にはその通りですが、書籍の世界にはなぜか「○○選書」と名の付くシリーズがたくさん出ています。私ども新潮社が刊行するのは今年で創刊50周年を迎えた「新潮選書」。新書とも学術書とも違う「選書の魅力」とは何かを日々考えながら本を作る立場から、お薦めの5冊を「選書」してみました。
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ドゥルーズの哲学原理
國分 功一郎(著)
2017年の小林秀雄賞を受賞した『中動態の世界』の著者・國分功一郎さんによる「岩波現代全書」所収の一冊。斬新なスピノザ研究で世に出た著者が、重要なスピノザ論でも知られるフランス哲学の巨人の思想、その本質に迫る。難解ではあるが、『中動態・・・』で大きく開花した著者の明晰さと志の高さがしっかりと感じられる。
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近代日本の右翼思想
片山 杜秀(著)
政治思想研究者にして音楽評論家の片山杜秀さんが2007年に「講談社選書メチエ」から刊行した処女作。今でこそ保守や右翼思想の研究書が次々出る時代だが、西田幾多郎までも巻き込み「近代の右翼とは何だったのか」と問うた本書は当時、衝撃的だった。このあと『未完のファシズム』(新潮選書)で思考はさらに深化した。
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団地の空間政治学
原 武史(著)
日本政治思想史研究の原武史さんが2012年に「NHKブックス」から刊行した一冊。鉄道や広場など、文献研究だけでは捉えきれない「空間」の意義に注目する著者が、ここでは戦後の高度成長期に「団地という空間」で展開した政治思想を考察する。姉妹本として作家・重松清さんとの対談『団地の時代』(新潮選書)も必読!
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サイエンス系からも一冊。「選書」とは名告っていないが、東海大学出版部が「フィールドの生物学」と銘打った叢書はどれも面白い。本書の著者はアリの巣に寄生するアリヅカコオロギを主な研究対象とし、裏山で普通に見られる地味な生き物を愛する奇特な人。文章のグルーヴ感が半端でなく、随所で思わず爆笑させてくれる。
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最後に私ども「新潮選書」から一冊(上下巻ですが)。日本近代文学研究者の石原千秋さんが漱石生誕150年の今年に満を持して放つ、これはもう「代表作」と言ってしまいましょう。新潮選書には『漱石とその時代』(江藤淳、全五巻)という必読評伝もありますが、徹底したテキスト分析で漱石文学の謎に肉薄する本書も圧巻!
ブックキュレーター
新潮選書編集長 中島輝尚1961年生まれ。1985年新潮社入社。新潮文庫編集部、「03 Tokyo Calling」編集部、「小説新潮」編集部を経て1995年より出版部勤務。2003年より出版部内「学芸編集部」編集長、2006年より出版部内「新潮選書編集部」編集長。「選書」という器に関わって15年以上になりますが、今なお一作一作について担当者とともに「選書とは何か」「この企画は選書という器にふさわしいか」と自問しながら作り上げてゆく日々です。新潮社サイト内「新潮選書」のページもぜひご覧ください。http://www.shinchosha.co.jp/sensho/
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