ブックキュレーター文筆家 藤田祥平
心が痛くてとても読めない小説、あるいは大戦の地獄の文学
「地獄の文学」とでも言いましょうか。先の大戦に関するあまりにも強烈な真実が描かれているため、多くの読者が目を覆い、付き合いきれないと判断し、図書館の片隅で秘蹟のように保管されつづける運命にある五冊を紹介します。心が痛くて、とても読んでいられません。読み通せば、文芸が読者に与えてきた孤独がよりいっそう深まります。
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サンタ・エビータ
トマス・エロイ・マルティネス(著) , 旦 敬介(訳)
恐怖政治によって1946年からアルゼンチン文壇を激しく弾圧した、ペロン政権。そのファースト・レディであったエヴァ・ペロンは、若さと美しさによって国民の心を掌握していたが、子宮癌による死後にさえ遺体のまま祖国の命運を左右し、この一件を文章にまとめようとした作家自身をも、狂気の淵に追いやっていく。
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1945年ドイツ国ドレスデンにて、主人公ビリー・ピルグリムは味方であるイギリス軍による大規模空襲を体験する。この事件とはまったく関係なく「時間から解き放たれた」彼は、自身の出生から死までの時間を縦横無尽に飛びつづける。このタイム・トラベルに関して、ビリーが意思でコントロールできることは何一つない。
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なしくずしの死 上
L‐F.セリーヌ(著) , 高坂 和彦(訳)
第一次世界大戦中、頭蓋骨を銃弾に撃ち抜かれ、それから二度と眠ることができなくなった作家、ルイ=フェルディナン・セリーヌ。昼に医者として人々を診察し、夜に書き続けた彼の傑作『なしくずしの死』は、原稿用紙にぶちまけられた世界に対する罵詈雑言であり、同時に人類に対する激烈なまでの愛の叫びである。
ブックキュレーター
文筆家 藤田祥平1991年大阪府生まれ。京都造形芸術大学文芸表現学科卒。大阪と東京に半々で在住しています。こないだ東京で、文豪っぽいかなと思って下町の築五十年の「ナントカ荘」の部屋を借りたんですが、天井からむかでが落ちてきたので大阪まで逃げ帰りました。帰る家があるって、いいもんですね。http://shoheifujita.smvi.co/
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